「ヒスタミン」の版間の差分

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 H1受容体を例にとり説明する。受容体は、活性化状態と不活性化状態という2つの状態(コンフォメーション)をとりうる。[[アゴニスト]](ヒスタミン)が結合した場合には、ほとんどが活性化状態になる。アゴニストがない状況では、大部分は不活性化状態にあるが一部は活性化状態にある。従って、わずかではあるが、受容体シグナル伝達が起こっている。[[アンタゴニスト]](拮抗薬)は、通常受容体結合部位に結合して、アゴニストの結合を邪魔する(受容体に結合するが反応を起こさない)ものを言う。その定義においては、アンタゴニストは、受容体の活性化状態、不活性化状態の割合に影響を与えない。
 H1受容体を例にとり説明する。受容体は、活性化状態と不活性化状態という2つの状態(コンフォメーション)をとりうる。[[アゴニスト]](ヒスタミン)が結合した場合には、ほとんどが活性化状態になる。アゴニストがない状況では、大部分は不活性化状態にあるが一部は活性化状態にある。従って、わずかではあるが、受容体シグナル伝達が起こっている。[[アンタゴニスト]](拮抗薬)は、通常受容体結合部位に結合して、アゴニストの結合を邪魔する(受容体に結合するが反応を起こさない)ものを言う。その定義においては、アンタゴニストは、受容体の活性化状態、不活性化状態の割合に影響を与えない。


 [[インバースアゴニスト]]は、受容体のほとんどを不活性状態に移行させるものを言う。従ってインバースアゴニストが存在すると、アゴニストがなくてもわずかに起こっていた受容体反応を抑えることができる。この概念が有用になるのは、例えばアレルギー鼻炎の場合である。この症状が進んだ場合にはH1受容体レベルの上昇が考えられる<ref>'''堀尾修平'''<br>ヒスタミン受容体をめぐるクロストーク<br>''生物物理: 50:290-293 '':2010</ref>[20]。すると、ヒスタミンが遊離されていない場合でも、H1受容体反応が進行しアレルギー反応が出てしまう。この反応はさらにH1受容体レベルを上げる。この悪循環を断ち切るには、H1受容体のインバースアゴニストを、できる限り早期に利用するのが有効である<ref><pubmed>26598006</pubmed></ref>[21]。ほとんどのH1受容体拮抗薬はインバースアゴニストである。
 [[インバースアゴニスト]]は、受容体のほとんどを不活性状態に移行させるものを言う。従ってインバースアゴニストが存在すると、アゴニストがなくてもわずかに起こっていた受容体反応を抑えることができる。この概念が有用になるのは、例えばアレルギー性鼻炎の場合である。この症状が進んだ場合にはH1受容体レベルの上昇が考えられる<ref>'''堀尾修平'''<br>ヒスタミン受容体をめぐるクロストーク<br>''生物物理: 50:290-293 '':2010</ref>[20]。すると、ヒスタミンが遊離されていない場合でも、H1受容体反応が進行しアレルギー反応が出てしまう。この反応はさらにH1受容体レベルを上げる。この悪循環を断ち切るには、H1受容体のインバースアゴニストを、できる限り早期に利用するのが有効である<ref><pubmed>26598006</pubmed></ref>[21]。ほとんどのH1受容体拮抗薬はインバースアゴニストである。


 H1受容体の結晶構造がX線解析から明らかになった<ref><pubmed>21697825</pubmed></ref>[22]。インバースアゴニストであるドキセピンが結合した不活性化状態の構造を見たものである。今後さらに特異性の高いH1拮抗薬の開発に役立つと考えられる。
 H1受容体の結晶構造がX線解析から明らかになった<ref><pubmed>21697825</pubmed></ref>[22]。インバースアゴニストであるドキセピンが結合した不活性化状態の構造を見たものである。今後さらに特異性の高いH1拮抗薬の開発に役立つと考えられる。

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