「生物学的精神医学」の版間の差分

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===遺伝学===
===遺伝学===


 [[アルツハイマー病]]の神経病理学的変化が、[[ダウン症候群]](21番染色体のトリソミー)では、よく生じることから、家族性アルツハイマー病で、21番染色体の遺伝子の探索が進められ、1991年に、Alison Goateらにより、[[アミロイド前駆蛋白]](amyloid precursor protein)遺伝子の点変異が同定された。これは精神疾患における原因遺伝子の最初の発見であった。
 [[アルツハイマー病]]の神経病理学的変化が、[[ダウン症候群]](21番染色体のトリソミー)では、よく生じることから、家族性アルツハイマー病で、21番染色体の遺伝子の探索が進められ、1991年に、Alison Goateらにより、[[アミロイド前駆タンパク質]](amyloid precursor protein)遺伝子の点変異が同定された。これは精神疾患における原因遺伝子の最初の発見であった。


 その後、分子遺伝学の進歩は著しく、精神疾患の[[感受性遺伝子]](susceptibility gene)の研究が活発に行われている。精神疾患に関連すると報告されている、ほとんどの感受性遺伝子は、アミノ酸配列には影響を及ぼさない、non-coding遺伝子であり、[[wikipedia:ja:遺伝子発現|遺伝子発現]]([[wikipedia:ja:mRNA|mRNA]])の時期、量や[[wikipedia:ja:スプライシング|スプライシング]]に影響しているのかも知れない。以前から、遺伝的素因があると不利な環境の影響を受けやすいことが指摘されていたが、遺伝子発現と環境との相互作用は、さまざまな精神障害の成立機構を解明していく上での重要な課題である。
 その後、分子遺伝学の進歩は著しく、精神疾患の[[感受性遺伝子]](susceptibility gene)の研究が活発に行われている。精神疾患に関連すると報告されている、ほとんどの感受性遺伝子は、アミノ酸配列には影響を及ぼさない、non-coding遺伝子であり、[[wikipedia:ja:遺伝子発現|遺伝子発現]]([[wikipedia:ja:mRNA|mRNA]])の時期、量や[[wikipedia:ja:スプライシング|スプライシング]]に影響しているのかも知れない。以前から、遺伝的素因があると不利な環境の影響を受けやすいことが指摘されていたが、遺伝子発現と環境との相互作用は、さまざまな精神障害の成立機構を解明していく上での重要な課題である。