「病識」の版間の差分

6 バイト追加 、 2012年1月21日 (土)
44行目: 44行目:
 一方、[[前頭前野]]内側部が自己の感情状態、[[思考]]、自己の性格特性など自分自身の主観的状態を含む[[内的表象]]と密接に関連していることから<ref>'''十一元三'''<br>広汎性発達障害と前頭葉<br>''臨床精神医学:'' 2003, 32:395-404</ref>、この部位の関与も推定できる。なお Parelladaら<ref><pubmed>20884756</pubmed></ref>は初回エピソード精神病患者(統合失調症圏53例、それ以外57例)を踏査し、[[前頭葉]]および[[頭頂葉]]の[[灰白質]]の減少が2年後の精神病症状についての病識と有意に相関することを報告している。
 一方、[[前頭前野]]内側部が自己の感情状態、[[思考]]、自己の性格特性など自分自身の主観的状態を含む[[内的表象]]と密接に関連していることから<ref>'''十一元三'''<br>広汎性発達障害と前頭葉<br>''臨床精神医学:'' 2003, 32:395-404</ref>、この部位の関与も推定できる。なお Parelladaら<ref><pubmed>20884756</pubmed></ref>は初回エピソード精神病患者(統合失調症圏53例、それ以外57例)を踏査し、[[前頭葉]]および[[頭頂葉]]の[[灰白質]]の減少が2年後の精神病症状についての病識と有意に相関することを報告している。


 これまでの実証的研究では、Youngら<ref><pubmed>8398943</pubmed></ref>は、31例の統合失調症患者を対象に、前頭葉機能を反映すると[[ウィスコンシン・カード分類課題]]、[[verbal fluency test]]、[[trail making test]]を実施し、現在の症状に対する認識と誤った帰属(SUMDによる評価)とが、WCSTの成績低下と相関していたことを報告しているなど、前頭葉機能と病識との関連を報告したものが多くみられる。
 これまでの実証的研究では、Youngら<ref><pubmed>8398943</pubmed></ref>は、31例の統合失調症患者を対象に、前頭葉機能を反映すると[[ウィスコンシン・カード分類課題]](WCST)、[[verbal fluency test]]、[[trail making test]]を実施し、現在の症状に対する認識と誤った帰属(SUMDによる評価)とが、WCSTの成績低下と相関していたことを報告しているなど、前頭葉機能と病識との関連を報告したものが多くみられる。


 Queeら<ref><pubmed>21097989</pubmed></ref>は270例の非感情病圏の精神病患者を調査し、神経認知機能よりも社会的認知機能のほうが病識との関連性が高いことを報告し、情動認識や相手の心を推測する機能が関連している可能性について述べているなど、社会的認知の脳科学の発展に伴い、それとの関連で病識欠如の成因を想定しようとする考え方が見られるようになっている。
 Queeら<ref><pubmed>21097989</pubmed></ref>は270例の非感情病圏の精神病患者を調査し、神経認知機能よりも社会的認知機能のほうが病識との関連性が高いことを報告し、情動認識や相手の心を推測する機能が関連している可能性について述べているなど、社会的認知の脳科学の発展に伴い、それとの関連で病識欠如の成因を想定しようとする考え方が見られるようになっている。