「症状評価尺度」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/toshiya.inada 稲田 俊也]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/toshiya.inada 稲田 俊也]</font><br>
''公益財団法人神経研究所附属晴和病院''<br>
''公益財団法人神経研究所附属晴和病院''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2014年1月2日 原稿完成日:2014年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2014年1月2日 原稿完成日:2014年1月14日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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英語名:symptom assessment scale
英語名:symptom assessment scale


{{box|text= 症状評価尺度は、[[精神障害]]における[[精神症状]]の変化や、[[薬物]]・[[ストレス]]などの外的な刺激に対する精神状態や行動特性の変化、あるいは[[パーソナリティ特性]]などの、主として[[ヒト]]のこころの動きに起因する精神や言動の変化などの症状の有無や重症度をできる限り定量的に測定するために開発された尺度である。大きく分けて自己記入式質問表と評価者面接による評価尺度がある。使用するにあたっては、信頼性と妥当性が十分に担保されていることが求められる。具体例としては統合失調症に対するBPRS, PANSS、気分障害に対するHAM-D, SDS, MADRS、不安障害に対するHAM-A, Y-BOCS、認知症におけるHDS-R, MMSEなどがある。}}
{{box|text= 症状評価尺度は、[[精神障害]]における[[精神症状]]の変化や、[[薬物]]・[[ストレス]]などの外的な刺激に対する精神状態や行動特性の変化、あるいは[[パーソナリティ特性]]などの、主として[[ヒト]]のこころの動きに起因する精神や言動の変化などの症状の有無や重症度をできる限り定量的に測定するために開発された尺度である。大きく分けて自己記入式質問票と評価者面接による評価尺度がある。使用にあたっては、信頼性と妥当性が十分に担保されていることが求められる。具体例としては統合失調症に対するBPRS, PANSS, DIEPSS、気分障害に対するHAM-D, SDS, MADRS、不安障害に対するHAM-A, PDSS, Y-BOCS、認知症におけるHDS-R, MMSE, ADASなどがある。}}


== 症状評価尺度とは ==
== 症状評価尺度とは ==
 症状評価尺度(以下、評価尺度)は、[[精神障害]]における[[精神症状]]の変化や、[[薬物]]・[[ストレス]]などの外的な刺激に対する精神状態や行動特性の変化、あるいは[[パーソナリティ特性]]などの、主として[[ヒト]]のこころの動きに起因する精神や言動の変化など、身体医学でしばしば用いられる[[画像診断]]や[[wikipedia:ja:血液検査|血液検査]]などの定量的な計量機器などによっては測定することができないような性質の精神・心理事象について、評価の対象となる症状の有無や重症度をできる限り定量的に測定するために開発されたものであり、精神医学や心理学の領域などで広く用いられている<ref>'''稲田俊也、岩本邦弘''':<br> 観察者による精神科領域の症状評価尺度ガイド 改訂版. じほう、 東京、 2009 </ref><ref>'''稲田俊也、 樋口輝彦''': <br>症状評価法. In: 山内俊雄 (総編集)、 岡崎祐士、神庭重信、小山 司、武田雅俊 (編集): <br>精神科専門医のためのプラクティカル精神医学. 中山書店. 東京、pp213-220、 2009 </ref><ref>'''北村俊則'''<br>精神症状測定の理論と実際(第2版).海鳴社、東京、1995.</ref>。
 症状評価尺度(以下、評価尺度)は、[[精神障害]]における[[精神症状]]の変化や、[[薬物]]・[[ストレス]]などの外的な刺激に対する精神状態や行動特性の変化、あるいは[[パーソナリティ特性]]などの、主として[[ヒト]]のこころの動きに起因する精神や言動の変化など、身体医学でしばしば用いられる[[画像診断]]や[[wj:血液検査|血液検査]]などの定量的な計量機器などによっては測定することができないような性質の精神・心理事象について、評価の対象となる症状の有無や重症度をできる限り定量的に測定するために開発されたものであり、精神医学や心理学の領域などで広く用いられている<ref>'''稲田俊也、岩本邦弘'''<br> 観察者による精神科領域の症状評価尺度ガイド 改訂版<br>''じほう''、東京、 2009</ref> <ref>'''稲田俊也、 樋口輝彦'''<br>症状評価法. In: 山内俊雄 (総編集)、 岡崎祐士、神庭重信、小山 司、武田雅俊 (編集):<br>精神科専門医のためのプラクティカル精神医学<br>''中山書店''、東京、pp213-220、 2009</ref> <ref>'''北村俊則'''<br>精神症状測定の理論と実際(第2版)<br>''海鳴社''、東京、1995</ref>。


== 使用目的 ==
== 使用目的 ==
48行目: 48行目:
 厳密な科学研究のためのデータ収集や客観的な重症度評価を行うためには、評価者面接による評価尺度(いわゆる狭義の評価尺度)を用いることが必要不可欠となる。
 厳密な科学研究のためのデータ収集や客観的な重症度評価を行うためには、評価者面接による評価尺度(いわゆる狭義の評価尺度)を用いることが必要不可欠となる。


 自己記入式質問票よりも被験者のバイアスが入りにくく、被験者の回答の姿勢や表情などが読みとれるなどの利点はあるが、その裏返しに研究者が自らの仮説に合致した方向で評価を行う危険性が指摘されている。これらを克服するために試験デザインにさまざまな工夫(例えば、[[wikipedia:ja:薬効評価|薬効評価]]における[[wikipedia:ja:無作為化プラセボ対照試験|無作為化プラセボ対照試験]]など)がなされている。
 自己記入式質問票よりも被験者のバイアスが入りにくく、被験者の回答の姿勢や表情などが読みとれるなどの利点はあるが、その裏返しに研究者が自らの仮説に合致した方向で評価を行う危険性が指摘されている。これらを克服するために試験デザインにさまざまな工夫(例えば、[[wj:薬効評価|薬効評価]]における[[wj:無作為化プラセボ対照試験|無作為化プラセボ対照試験]]など)がなされている。


== 信頼性と妥当性 ==
== 信頼性と妥当性 ==
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#観察分散(同一の情報が与えられた場合に、その症状の重症度を判断する水準が評定者によって異なるために生じる同一項目内の重症度分散)
#観察分散(同一の情報が与えられた場合に、その症状の重症度を判断する水準が評定者によって異なるために生じる同一項目内の重症度分散)


 がある。これらを防ぐためにさまざまな工夫がなされている。症状の把握や重症度評価のルールを習得するための評価者トレーニングで、評価者間で評価の意見が分かれた場合にはその根拠について議論し、参加する評価者全員が一貫して安定した評価得られるような教育や訓練が行われることが重要であるが、個々の分散要因については、
 がある。これらを防ぐためにさまざまな工夫がなされている。症状の把握や重症度評価のルールを習得するための評価者トレーニングで、評価者間で評価の意見が分かれた場合にはその根拠について議論し、参加する評価者全員が一貫して安定した評価が得られるような教育や訓練が行われることが重要であるが、個々の分散要因については、


#情報分散は、評価者の質問のしかたや質問内容が異なるために、異なった情報が得られることが要因で、異なる評価がされるような事態であり、対策としては面接内容を構造化することであり、これにより信頼性の高まることが示されている。構造化面接が開発されていない評価尺度では、面接手順をできる限り構造化して、質問の違いによる回答のずれを少なくすること
#情報分散は、評価者の質問のしかたや質問内容が異なるために、異なった情報が得られることが要因で、異なる評価がされるような事態であり、対策としては面接内容を構造化することであり、これにより信頼性の高まることが示されている。構造化面接が開発されていない評価尺度では、面接手順をできる限り構造化して、質問の違いによる回答のずれを少なくすること
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===統合失調症の評価尺度===
===統合失調症の評価尺度===
 [[統合失調症]]の重症度を評価する尺度としては、簡便で包括的な精神症状を評価する目的でOverallと Gorham (1962)が開発した18項目版の[[簡易精神症状評価尺度]](Brief Psychiatric Rating Scale; BPRS)や、統合失調症の精神状態を全般的に把握する目的で、Kayら(1991)が開発した30項目からなる[[陽性・陰性症状評価尺度]](Positive and Negative Syndrome Scale; PANSS)などがある。また、統合失調症の生活の質を評価する目的でCarpenterら(1984)が開発した[[クオリティ・オブ・ライフ尺度]](Quality of Life Scale; QLS)、統合失調症の[[認知機能]]を測定する目的でKeefeら (2004)が開発した[[統合失調症認知機能簡易評価尺度]](Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia; BACS)や米国の精神科医や心理学者等の専門家のコンセンサスに基づいて開発された[[MATRICS Consensus Cognitive Battery]] (MCCB) 、このほか、[[抗精神病薬]]の副作用として発現する薬原性[[錐体外路症状]]の重症度を評価する目的で稲田(1996)が開発した9項目からなる[[薬原性錐体外路症状評価尺度]](Drug Induced Extra-Pyramidal Symptoms Scale; DIEPSS)などがある。
 [[統合失調症]]の重症度を評価する尺度としては、簡便で包括的な精神症状を評価する目的でOverallと Gorham (1962)が開発した18項目版の[[簡易精神症状評価尺度]](Brief Psychiatric Rating Scale; BPRS)や、統合失調症の精神状態を全般的に把握する目的で、Kayら(1991)が開発した30項目からなる[[陽性・陰性症状評価尺度]](Positive and Negative Syndrome Scale; PANSS)などがある。また、統合失調症の生活の質を評価する目的でCarpenterら(1984)が開発した[[クオリティ・オブ・ライフ尺度]](Quality of Life Scale; QLS)、統合失調症の[[認知機能]]を測定する目的でKeefeら (2004)が開発した[[統合失調症認知機能簡易評価尺度]](Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia; BACS)や米国の精神科医や心理学者等の専門家のコンセンサスに基づいて開発された[[マトリックス・コンセンサス認知機能バッテリー]](MATRICS Consensus Cognitive Battery; MCCB)、このほか、[[抗精神病薬]]の副作用として発現する薬原性[[錐体外路症状]]の重症度を評価する目的で稲田(1996)が開発した9項目からなる[[薬原性錐体外路症状評価尺度]](Drug Induced Extra-Pyramidal Symptoms Scale; DIEPSS)などがある。


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110行目: 110行目:
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 名称
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 名称
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 目的
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 目的
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 開発者・開発年
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 開発者(公表年)
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|簡易精神症状評価尺度<br>(Brief Psychiatric Rating Scale; BPRS)
|簡易精神症状評価尺度<br>(Brief Psychiatric Rating Scale; BPRS)
|簡便で包括的な精神症状の重症度評価
|簡便で包括的な精神症状の重症度評価
|Overallと Gorham(1962)<ref>'''Overall JE, Gorham DR'''<br>The brief psychiatric rating scale. <br>''Psychological Reports'' 1962 vol. 10, pp799­-812. 1962</ref>
|Overallと Gorham(1962)<ref>'''J E Overall, D R Gorham'''<br>The brief psychiatric rating scale. <br>''Psychological Reports'' 1962 vol. 10, pp799­-812. 1962</ref>
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|陽性・陰性症状評価尺度<br>(Positive and Negative Syndrome Scale; PANSS)
|陽性・陰性症状評価尺度<br>(Positive and Negative Syndrome Scale; PANSS)
|全般的な精神状態の重症度評価
|全般的な精神状態の重症度評価
|Kayら(1991)<ref>'''Kay, Stanley R.'''<br>Positive and Negative Syndromes in Schizophrenia<br>Routledge Mental Health, pp. 33–36. 1991</ref>
|Kayら(1991)<ref>'''S R Kay, L A Opler, A Fiszbein'''<br>Positive and negative syndrome scale. <br>''Multi-Health System Inc.'' Tronto, Canada, 1991. </ref>
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|クオリティ・オブ・ライフ尺度<br>(Quality of Life Scale; QLS)
|クオリティ・オブ・ライフ尺度<br>(Quality of Life Scale; QLS)
|生活の質(QOL)の重症度評価
|生活の質(QOL)の重症度評価
|Carpenterら(1984)<ref><pubmed>6474101</pubmed></ref>
|Carpenterら(1984)<ref><pubmed>6474101</pubmed></ref>
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|統合失調症認知機能簡易評価尺度<br>(Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia; BACS)
|統合失調症認知機能簡易評価尺度<br>(Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia; BACS)
|認知機能の重症度評価
|簡便な認知機能の重症度評価
|Keefeら(2004)<ref><pubmed>15099610</pubmed></ref>
|Keefeら(2004)<ref><pubmed>15099610</pubmed></ref>
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|MATRICS Consensus Cognitive Battery (MCCB)
|マトリックス・コンセンサス認知機能バッテリー<br>(MATRICS Consensus Cognitive Battery; MCCB)
|認知機能の重症度評価
|全般的な認知機能の重症度評価
|The Measurement and Treatment Research to Improve Cognition in Schizophrenia (MATRICS) initiative<ref><pubmed>15531401</pubmed></ref>
|GreenとNuechterlein(2004)<ref><pubmed>15531401</pubmed></ref>
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|-
|薬原性錐体外路症状評価尺度<br>(Drug Induced Extra-Pyramidal Symptoms Scale; DIEPSS)
|薬原性錐体外路症状評価尺度<br>(Drug Induced Extra-Pyramidal Symptoms Scale; DIEPSS)
|抗精神病薬の副作用として発現する錐体外路症状の重症度評価
|抗精神病薬で発現する錐体外路症状の重症度評価
|稲田(1996)<ref>'''稲田俊也著、八木剛平監修'''<br>薬原性錐体外路症状の評価と診断、DIEPSSの解説と利用の手引き<br>''星和書店'' 東京 1996</ref>
|稲田(1996)<ref>'''稲田俊也著、八木剛平監修'''<br>薬原性錐体外路症状の評価と診断、DIEPSSの解説と利用の手引き<br>''星和書店'' 東京 1996</ref>
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===気分障害の評価尺度===
===気分障害の評価尺度===
 うつ病の重症度を評価する尺度としては、Hamilton (1960) が開発した[[ハミルトンうつ病評価尺度]](Hamilton Depression Scale; HAM-D)をはじめ、MontgomeryとAsberg (1979) が開発した10項目からなる[[モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度]] (Montgomery-Asberg Depression Rating Scale; MADRS)、 Rushら (1986) が開発した30項目からなる[[医師版うつ病症候学評価尺度]] (Inventory of Depressive Symptomatology-Clinician Rating; IDS-C)などがある。また、うつ病の自己記入式質問票にはZung(1965)が開発した[[Self-rating Depression Scale]](SDS)などがある。一方、[[躁病]]エピソードの重症度を評価する尺度としてはYoungら(1978)が開発した[[ヤング躁病評価尺度]](Young Mania Rating Scale; YMRS)がある。
 うつ病の重症度を評価する尺度としては、Hamilton (1960) が開発した[[ハミルトンうつ病評価尺度]](Hamilton Depression Scale; HAM-D)をはじめ、MontgomeryとAsberg (1979) が開発した10項目からなる[[モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度]] (Montgomery-Asberg Depression Rating Scale; MADRS)、 Rushら (1986) が開発した30項目からなる[[医師版うつ病症候学評価尺度]] (Inventory of Depressive Symptomatology-Clinician Rating; IDS-C)などがある。また、うつ病の自己記入式質問票にはZung(1965)が開発した[[自記式抑うつ質問票]](Self-rating Depression Scale; SDS)などがある。一方、[[躁病]]エピソードの重症度を評価する尺度としてはYoungら(1978)が開発した[[ヤング躁病評価尺度]](Young Mania Rating Scale; YMRS)がある。


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146行目: 146行目:
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 名称
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 名称
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 目的
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 目的
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 開発者・開発年
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 開発者(公表年)
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|ハミルトンうつ病評価尺度<br>(Hamilton Depression Scale; HAM-D)
|ハミルトンうつ病評価尺度<br>(Hamilton Depression Scale; HAM-D)
|重症度
|既にうつ病と診断された患者に対する抑うつ症状の重症度評価
|Hamilton (1960) <ref><pubmed>14399272</pubmed></ref>
|Hamilton (1960) <ref><pubmed>14399272</pubmed></ref>
|-
|-
|モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度<br>(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale; MADRS)
|モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度<br>(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale; MADRS)
|重症度
|身体症状を極力除外して精神症状を重視したうつ病の重症度評価
|MontgomeryとAsberg (1979)<ref><pubmed>444788</pubmed></ref>
|MontgomeryとAsberg (1979)<ref><pubmed>444788</pubmed></ref>
|-
|-
|医師版うつ病症候学評価尺度<br>(Inventory of Depressive Symptomatology-Clinician Rating; IDS-C)
|医師版うつ病症候学評価尺度<br>(Inventory of Depressive Symptomatology-Clinician Rating; IDS-C)
|重症度
|不安・非定型・メランコリー型の特徴を含むうつ病の重症度評価
|Rushら (1986)<ref><pubmed>3737788</pubmed></ref>
|Rushら (1986)<ref><pubmed>3737788</pubmed></ref>
|-
|-
|Self-rating Depression Scale(SDS)
|自記式抑うつ質問票<br>(Self-rating Depression Scale; SDS)
|自己記入式質問票
|抑うつ症状の自覚の程度を評価する自己記入式質問票
|Zung(1965)<ref><pubmed>14221692</pubmed></ref>  
|Zung(1965)<ref><pubmed>14221692</pubmed></ref>  
|-
|-
|ヤング躁病評価尺度<br>(Young Mania Rating Scale; YMRS)
|ヤング躁病評価尺度<br>(Young Mania Rating Scale; YMRS)
|躁病エピソードの重症度
|躁病エピソードの重症度評価
|Youngら(1978)<ref><pubmed>728692</pubmed></ref>
|Youngら(1978)<ref><pubmed>728692</pubmed></ref>
|-
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171行目: 171行目:


===不安障害の評価尺度===
===不安障害の評価尺度===
 [[不安障害]]を評価する尺度としては、不安障害全般の重症度を評価する目的でHamilton(1959)が開発した[[ハミルトン不安尺度]](Hamilton Anxiety Scale; HAM-A)をはじめ、[[社交不安障害]]の重症度を評価する目的でLiebowitzら(1999)が開発した[[リーボヴィッツ社交不安尺度]](Liebowitz Social Anxiety Scale; L-SAS)、[[パニック障害]]の重症度を評価する目的でShearら(2001)が開発した[[パニック障害重症度評価尺度]] (Panic Disorder Severity Scale; PDSS)、[[強迫性障害]]の重症度を評価する目的でGoodmanら(1989)が開発した[[エール・ブラウン強迫尺度]] (Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale; Y-BOCS)などがある。
 [[不安障害]]を評価する尺度としては、不安障害全般の重症度を評価する目的でHamilton(1959)が開発した[[ハミルトン不安尺度]](Hamilton Anxiety Scale; HAM-A)をはじめ、[[社交不安障害]]の重症度を評価する目的でLiebowitz(1987)が開発した[[リーボヴィッツ社交不安尺度]](Liebowitz Social Anxiety Scale; L-SAS)、[[パニック障害]]の重症度を評価する目的でShearら(2001)が開発した[[パニック障害重症度評価尺度]] (Panic Disorder Severity Scale; PDSS)、[[強迫性障害]]の重症度を評価する目的でGoodmanら(1989)が開発した[[エール・ブラウン強迫尺度]] (Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale; Y-BOCS)などがある。


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178行目: 178行目:
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 名称
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 名称
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 目的
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 目的
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 開発者・開発年
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 開発者(公表年)
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|ハミルトン不安尺度<br>(Hamilton Anxiety Scale; HAM-A)
|ハミルトン不安尺度<br>(Hamilton Anxiety Scale; HAM-A)
|不安障害全般
|不安障害全般の重症度評価
|Hamilton(1959)<ref><pubmed>13638508</pubmed></ref>
|Hamilton(1959)<ref><pubmed>13638508</pubmed></ref>
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|-
|リーボヴィッツ社交不安尺度<br>(Liebowitz Social Anxiety Scale; L-SAS)
|リーボヴィッツ社交不安尺度<br>(Liebowitz Social Anxiety Scale; L-SAS)
|社交不安障害の重症度
|社交不安障害の重症度評価
|Liebowitzら(1999)<ref>Liebowitz MR. Social Phobia. Mod Probl Pharmacopsychiatry 1987;22:141-173</ref>
|Liebowitz(1987)<ref>'''M R Liebowitz'''<br>Social Phobia.<br>''Mod Probl Pharmacopsychiatry'' 1987;22:141-173</ref>
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|-
|パニック障害重症度評価尺度<br>(Panic Disorder Severity Scale; PDSS)
|パニック障害重症度評価尺度<br>(Panic Disorder Severity Scale; PDSS)
|パニック障害の重症度
|パニック障害の重症度評価
|Shearら(2001)<ref><pubmed>11591432</pubmed></ref>
|Shearら(2001)<ref><pubmed>11591432</pubmed></ref>
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|-
|エール・ブラウン強迫尺度<br>(Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale; Y-BOCS)
|エール・ブラウン強迫尺度<br>(Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale; Y-BOCS)
|強迫性障害の重症度
|強迫性障害の重症度評価
|Goodmanら(1989)<ref><pubmed>2684084</pubmed></ref>
|Goodmanら(1989)<ref><pubmed>2684084</pubmed></ref>
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199行目: 199行目:


===認知症の評価尺度===
===認知症の評価尺度===
 [[認知症]]のスクリーニング検査としては長谷川(1974)が開発した[[改訂長谷川式簡易知能評価スケール]](HDS-R)やFolsteinら(1975)が開発した11項目の[[ミニメンタルステイト検査]](Mini Mental State Examination; MMSE)などがある。また、[[アルツハイマー型認知症]]患者にみられる精神症状の重症度を評価する尺度としては、Reisbergら(1987)が開発した25項目からなる[[アルツハイマー病行動病理学尺度]]([[Behavioral Pathology in Alzheimer's disease]]; Behave-AD)やMohsら(1983)が開発した[[アルツハイマー病評価尺度]] (Alzheimer's Disease Assessment Scale; ADAS) などがある。
 [[認知症]]のスクリーニング検査としては長谷川(1974)が開発した[[改訂長谷川式簡易知能評価スケール]](Hasegawa Dementia Scale, Revised; HDS-R)やFolsteinら(1975)が開発した11項目の[[ミニメンタルステイト検査]](Mini Mental State Examination; MMSE)などがある。また、[[アルツハイマー型認知症]]患者にみられる精神症状の重症度を評価する尺度としては、Reisbergら(1987)が開発した25項目からなる[[アルツハイマー病行動病理学尺度]]([[Behavioral Pathology in Alzheimer's disease]]; Behave-AD)やMohsら(1983)が開発した[[アルツハイマー病評価尺度]] (Alzheimer's Disease Assessment Scale; ADAS) などがある。


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206行目: 206行目:
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 名称
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 名称
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 目的
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 目的
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 開発者・開発年
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 開発者(公表年)
|-  
|-  
|改訂長谷川式簡易知能評価スケール<br>(HDS-R)
|改訂長谷川式簡易知能評価スケール<br>(Hasegawa Dementia Scale, Revised; HDS-R)
|スクリーニング検査
|認知症のスクリーニング検査
|加藤ら(1991) <ref>'''加藤伸司、下垣光、小野寺敦志、植田宏樹、老川賢三、池田一彦、小坂敦二、今井幸充、長谷川和夫'''<br>改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の作成,老年精神医学雑誌,2:1339-1347(1991)</ref>
|加藤ら(1991)<ref>'''加藤伸司、下垣光、小野寺敦志、植田宏樹、老川賢三、池田一彦、小坂敦二、今井幸充、長谷川和夫'''<br>改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の作成<br>''老年精神医学雑誌''、2:1339-1347(1991)</ref>
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|-
|ミニメンタルステイト検査<br>(Mini Mental State Examination; MMSE)
|ミニメンタルステイト検査<br>(Mini Mental State Examination; MMSE)
|スクリーニング検査
|認知症のスクリーニング検査
|Folsteinら(1975)<ref><pubmed>1202204</pubmed></ref>
|Folsteinら(1975)<ref><pubmed>1202204</pubmed></ref>
|-
|-
|[[アルツハイマー病]]行動病理学尺度<br>(Behavioral Pathology in Alzheimer's Disease; Behave-AD)
|[[アルツハイマー病]]行動病理学尺度<br>(Behavioral Pathology in Alzheimer's Disease; Behave-AD)
|アルツハイマー型認知症患者にみられる精神症状の重症度
|アルツハイマー型認知症患者にみられる精神症状(周辺症状としての行動・心理症状)の重症度評価
|Reisbergら(1987)<ref><pubmed>3553166</pubmed></ref>     
|Reisbergら(1987)<ref><pubmed>3553166</pubmed></ref>     
|-
|-
|アルツハイマー病評価尺度<br> (Alzheimer's Disease Assessment Scale; ADAS)  
|アルツハイマー病評価尺度<br>(Alzheimer's Disease Assessment Scale; ADAS)  
|アルツハイマー型認知症患者にみられる精神症状の重症度
|アルツハイマー型認知症患者にみられる認知機能10項目と非認知機能11項目の重症度評価
|Mohsら(1983)<ref><pubmed>6635122</pubmed></ref>
|Mohsら(1983)<ref><pubmed>6635122</pubmed></ref>
|-
|-
231行目: 231行目:
*[[不安神経症]]
*[[不安神経症]]
*[[認知症]]
*[[認知症]]
*[[操作的診断基準]]


==参考文献==
==参考文献==
<references />
<references />