「症状評価尺度」の版間の差分

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===統合失調症の評価尺度===
===統合失調症の評価尺度===
 [[統合失調症]]の重症度を評価する尺度としては、簡便で包括的な精神症状を評価する目的でOverallと Gorham (1962)が開発した18項目版の[[簡易精神症状評価尺度]](Brief Psychiatric Rating Scale; BPRS)や、統合失調症の精神状態を全般的に把握する目的で、Kayら(1991)が開発した30項目からなる[[陽性・陰性症状評価尺度]](Positive and Negative Syndrome Scale; PANSS)などがある。また、統合失調症の生活の質を評価する目的でCarpenterら(1984)が開発した[[クオリティ・オブ・ライフ尺度]](Quality of Life Scale; QLS)、統合失調症の認知機能を測定する目的でKeefeら (2004)が開発した[[統合失調症認知機能簡易評価尺度]](Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia; BACS)や米国の精神科医や心理学者等の専門家のコンセンサスに基づいて開発された[[MATRICS Consensus Cognitive Battery]] (MCCB) 、このほか、[[抗精神病薬]]の副作用として発現する薬原性[[錐体外路症状]]の重症度を評価する目的で稲田(1996)が開発した9項目からなる[[薬原性錐体外路症状評価尺度]](Drug Induced Extra-Pyramidal Symptoms Scale; DIEPSS)などがある。
 [[統合失調症]]の重症度を評価する尺度としては、簡便で包括的な精神症状を評価する目的でOverallと Gorham (1962)が開発した18項目版の[[簡易精神症状評価尺度]](Brief Psychiatric Rating Scale; BPRS)や、統合失調症の精神状態を全般的に把握する目的で、Kayら(1991)が開発した30項目からなる[[陽性・陰性症状評価尺度]](Positive and Negative Syndrome Scale; PANSS)などがある。また、統合失調症の生活の質を評価する目的でCarpenterら(1984)が開発した[[クオリティ・オブ・ライフ尺度]](Quality of Life Scale; QLS)、統合失調症の認知機能を測定する目的でKeefeら (2004)が開発した[[統合失調症認知機能簡易評価尺度]](Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia; BACS)や米国の精神科医や心理学者等の専門家のコンセンサスに基づいて開発された[[MATRICS Consensus Cognitive Battery]] (MCCB) 、このほか、[[抗精神病薬]]の副作用として発現する薬原性[[錐体外路症状]]の重症度を評価する目的で稲田(1996)が開発した9項目からなる[[薬原性錐体外路症状評価尺度]](Drug Induced Extra-Pyramidal Symptoms Scale; DIEPSS)などがある。
{| class="wikitable"
|+ 表1.統合失調症の評価尺度
|-
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 名称
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 目的
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 開発者・開発年
|-
|簡易精神症状評価尺度<br>(Brief Psychiatric Rating Scale; BPRS)
|簡便で包括的な精神症状を評価する目的
|Overallと Gorham (1962)<ref>'''Overall JE, Gorham DR'''<br>The brief psychiatric rating scale. <br>''Psychological Reports'' 1962 vol. 10, pp799­-812. (1962)</ref>
|-
|陽性・陰性症状評価尺度<br>(Positive and Negative Syndrome Scale; PANSS)
|統合失調症の精神状態を全般的に把握する目的
|Kayら(1991)<ref>'''Kay, Stanley R.'''<br>Positive and Negative Syndromes in Schizophrenia<br>Routledge Mental Health, pp. 33–36. (1991)</ref>
|-
|クオリティ・オブ・ライフ尺度<br>(Quality of Life Scale; QLS)
|統合失調症の生活の質を評価する目的
|Carpenterら(1984)
|-
|統合失調症認知機能簡易評価尺度<br>(Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia; BACS)
|統合失調症の認知機能を測定する目的
|Keefeら (2004)<ref><pubmed>15099610</pubmed></ref>
|-
|MATRICS Consensus Cognitive Battery (MCCB)
|米国の精神科医や心理学者等の専門家のコンセンサスに基づいて開発
|
|-
|薬原性錐体外路症状評価尺度<br>(Drug Induced Extra-Pyramidal Symptoms Scale; DIEPSS)
|抗精神病薬の副作用として発現する薬原性錐体外路症状の重症度を評価する目的
|稲田(1996)
|-
|}


===気分障害の評価尺度===
===気分障害の評価尺度===
 うつ病の重症度を評価する尺度としては、Hamilton (1960) が開発した[[ハミルトンうつ病評価尺度]](Hamilton Depression Scale; HAM-D)をはじめ、MontgomeryとAsberg (1979) が開発した10項目からなる[[モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度]] (Montgomery-Asberg Depression Rating Scale; MADRS)、 Rushら (1986) が開発した30項目からなる[[医師版うつ病症候学評価尺度]] (Inventory of Depressive Symptomatology-Clinician Rating; IDS-C)などがある。また、うつ病の自己記入式質問票にはZung(1965)が開発した[[Self-rating Depression Scale]](SDS)などがある。一方、[[躁病]]エピソードの重症度を評価する尺度としてはYoungら(1978)が開発した[[ヤング躁病評価尺度]](Young Mania Rating Scale; YMRS)がある。
 うつ病の重症度を評価する尺度としては、Hamilton (1960) が開発した[[ハミルトンうつ病評価尺度]](Hamilton Depression Scale; HAM-D)をはじめ、MontgomeryとAsberg (1979) が開発した10項目からなる[[モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度]] (Montgomery-Asberg Depression Rating Scale; MADRS)、 Rushら (1986) が開発した30項目からなる[[医師版うつ病症候学評価尺度]] (Inventory of Depressive Symptomatology-Clinician Rating; IDS-C)などがある。また、うつ病の自己記入式質問票にはZung(1965)が開発した[[Self-rating Depression Scale]](SDS)などがある。一方、[[躁病]]エピソードの重症度を評価する尺度としてはYoungら(1978)が開発した[[ヤング躁病評価尺度]](Young Mania Rating Scale; YMRS)がある。
{| class="wikitable"
|+ 表2.気分障害の評価尺度
|-
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 名称
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 目的
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 開発者・開発年
|-
|ハミルトンうつ病評価尺度<br>(Hamilton Depression Scale; HAM-D)
|うつ病の重症度を評価する尺度として
|Hamilton (1960)
|-
|モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度<br>(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale; MADRS)
|うつ病の重症度を評価する尺度として
|MontgomeryとAsberg (1979)
|-
|医師版うつ病症候学評価尺度<br>(Inventory of Depressive Symptomatology-Clinician Rating; IDS-C)
|うつ病の重症度を評価する尺度として
|Rushら (1986)
|-
|Self-rating Depression Scale(SDS)
|うつ病の自己記入式質問票
|Zung(1965)
|-
|ヤング躁病評価尺度<br>(Young Mania Rating Scale; YMRS)
|躁病エピソードの重症度を評価する尺度として
|Youngら(1978)
|-
|}


===不安障害の評価尺度===
===不安障害の評価尺度===
 [[不安障害]]を評価する尺度としては、不安障害全般の重症度を評価する目的でHamilton(1959)が開発した[[ハミルトン不安尺度]](Hamilton Anxiety Scale; HAM-A)をはじめ、[[社交不安障害]]の重症度を評価する目的でLiebowitzら(1999)が開発した[[リーボヴィッツ社交不安尺度]](Liebowitz Social Anxiety Scale; L-SAS)、[[パニック障害]]の重症度を評価する目的でShearら(2001)が開発した[[パニック障害重症度評価尺度]] (Panic Disorder Severity Scale; PDSS)、[[強迫性障害]]の重症度を評価する目的でGoodmanら(1989)が開発した[[エール・ブラウン強迫尺度]] (Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale; Y-BOCS)などがある。
 [[不安障害]]を評価する尺度としては、不安障害全般の重症度を評価する目的でHamilton(1959)が開発した[[ハミルトン不安尺度]](Hamilton Anxiety Scale; HAM-A)をはじめ、[[社交不安障害]]の重症度を評価する目的でLiebowitzら(1999)が開発した[[リーボヴィッツ社交不安尺度]](Liebowitz Social Anxiety Scale; L-SAS)、[[パニック障害]]の重症度を評価する目的でShearら(2001)が開発した[[パニック障害重症度評価尺度]] (Panic Disorder Severity Scale; PDSS)、[[強迫性障害]]の重症度を評価する目的でGoodmanら(1989)が開発した[[エール・ブラウン強迫尺度]] (Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale; Y-BOCS)などがある。
{| class="wikitable"
|+ 表3.不安障害の評価尺度
|-
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 名称
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 目的
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 開発者・開発年
|-
|ハミルトン不安尺度<br>(Hamilton Anxiety Scale; HAM-A)
|不安障害全般の重症度を評価する目的
|Hamilton(1959)
|-
|リーボヴィッツ社交不安尺度<br>(Liebowitz Social Anxiety Scale; L-SAS)
|社交不安障害の重症度を評価する目的
|Liebowitzら(1999)
|-
|パニック障害重症度評価尺度<br>(Panic Disorder Severity Scale; PDSS)
|パニック障害の重症度を評価する目的
|Shearら(2001)
|-
|エール・ブラウン強迫尺度<br>(Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale; Y-BOCS)
|強迫性障害の重症度を評価する目的
|Goodmanら(1989)
|-
|}


===認知症の評価尺度===
===認知症の評価尺度===
 [[認知症]]のスクリーニング検査としては長谷川(1974)が開発した[[改訂長谷川式簡易知能評価スケール]](HDS-R)やFolsteinら(1975)が開発した11項目の[[ミニメンタルステイト検査]](Mini Mental State Examination; MMSE)などがある。また、[[アルツハイマー型認知症]]患者にみられる精神症状の重症度を評価する尺度としては、Reisbergら(1987)が開発した25項目からなる[[アルツハイマー病行動病理学尺度]](Behavioral Pathology in [[Alzheimer’s disease|Alzheimer’s Disease]]; Behave-AD)やMohs ら(1983)が開発した[[アルツハイマー病評価尺度]] (Alzheimer's Disease Assessment Scale; ADAS) などがある。
 [[認知症]]のスクリーニング検査としては長谷川(1974)が開発した[[改訂長谷川式簡易知能評価スケール]](HDS-R)やFolsteinら(1975)が開発した11項目の[[ミニメンタルステイト検査]](Mini Mental State Examination; MMSE)などがある。また、[[アルツハイマー型認知症]]患者にみられる精神症状の重症度を評価する尺度としては、Reisbergら(1987)が開発した25項目からなる[[アルツハイマー病行動病理学尺度]](Behavioral Pathology in [[Alzheimer's disease|Alzheimer's Disease]]; Behave-AD)やMohsら(1983)が開発した[[アルツハイマー病評価尺度]] (Alzheimer's Disease Assessment Scale; ADAS) などがある。
 
{| class="wikitable"
|+ 表4.認知症の評価尺度
|-
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 名称
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 目的
| style="text-align:center; background-color:#ddf" | 開発者・開発年
|-
|改訂長谷川式簡易知能評価スケール<br>(HDS-R)
|認知症のスクリーニング検査
|長谷川(1974)
|-
|ミニメンタルステイト検査<br>(Mini Mental State Examination; MMSE)
|認知症のスクリーニング検査
|Folsteinら(1975)
|-
|アルツハイマー病行動病理学尺度<br>(Behavioral Pathology in Alzheimer's Disease; Behave-AD)
|アルツハイマー型認知症患者にみられる精神症状の重症度を評価する尺度
|Reisbergら(1987)
|-
|アルツハイマー病評価尺度<br> (Alzheimer's Disease Assessment Scale; ADAS)
|アルツハイマー型認知症患者にみられる精神症状の重症度を評価する尺度
|Mohsら(1983)
|-
|}


==参考文献==
==参考文献==
<references />


稲田俊也、岩本邦弘: 観察者による精神科領域の症状評価尺度ガイド 改訂版. じほう、 東京、 2009  
稲田俊也、岩本邦弘: 観察者による精神科領域の症状評価尺度ガイド 改訂版. じほう、 東京、 2009