「知的障害」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/childfuture 船曳 康子]</font><br>
''京都大学 医学研究科''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年4月6日 原稿完成日:2012年5月6日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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英:intellectual disability 独:Geistige Behinderung 仏:Retard mental
英:intellectual disability 独:Geistige Behinderung 仏:Retard mental


同義語:精神遅滞(mental retardation)
同義語:精神遅滞(mental retardation)


「知的障害」という用語は、「精神遅滞」とほぼ同義語として使われるが、次第に前者が使われることが多くなってきている。知能検査で測定した知的機能の遅れだけでなく、生活面における適応機能も評価項目となり、「サポート」の程度を定義づけようとしている。この量を定めるには困難さがあるが、実生活に役立ちやすい利点がある。なお、「知的障害」は発達期に明らかとなるものであり、認知症などの成人・老年期に発症する知的機能の低下とは異なる。更に、全般的な知的水準の遅れであり、部分的に困難さを伴う「学習障害」とも異なる。また、「知的障害」の程度により、原因、特徴、経過が異なるため、一般的に、軽度、中等度、重度、最重度と分類され、それぞれの基準の目安も設けられている。生涯にわたり心理的社会的な支援を必要とすることが多いが、重症度およびそれぞれに見合った適切な支援を受けながら、2次的な問題を予防し、QOLを維持していくことが重要である。
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 「知的障害」という用語は、「精神遅滞」とほぼ同義語として使われるが、次第に前者が使われることが多くなってきている。通常は、知能検査で測定した知的機能の遅れにより定義されるが、本来は、生活面における適応機能の障害も知的障害の大きな要因である。適応機能の障害の程度を定めるのは困難であるが、必要なサポートの大きさによって定義すると、実生活に役立ちやすいという利点がある。なお、「知的障害」は発達期に明らかとなるものであり、認知症などの成人・老年期に発症する知的機能の低下とは異なる。更に、全般的な知的水準の遅れであり、部分的に困難さを伴う「学習障害」とも異なる。また、「知的障害」の程度により、原因、特徴、経過が異なるため、一般的に、軽度、中等度、重度、最重度と分類され、それぞれの基準の目安も設けられている。生涯にわたり心理的社会的な支援を必要とすることが多いが、重症度およびそれぞれに見合った適切な支援を受けながら、2次的な問題を予防し、QOLを維持していくことが重要である。
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==定義==
==定義==
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なお、「[[学習障害]]」という用語もあるが、知的障害は上述のように全体的であるが、学習障害は書字・読字・[[wikipedia:JA:計算|計算]]などの学習に焦点があるという点で区別される。
なお、「[[学習障害]]」という用語もあるが、知的障害は上述のように全体的であるが、学習障害は書字・読字・[[wikipedia:JA:計算|計算]]などの学習に焦点があるという点で区別される。


 適応機能は、[[バインランド適応行動尺度]]のような標準化された尺度を用いることで測定できる。知的障害の最も著名な支援組織である[[wikipedia:American Association on Intellectual and Developmental Disabilities|American Association on Intellectual and Developmental Disabilities]](AAIDD)では、適応機能を知的機能と別に考え、遂行機能に必要な「サポート」の程度を定義づけようとしている<ref name=ref5>American Association on Intellectual and Developmental Disabilities: Mental Retardation: Definition, Classification, and Systems ff Supports.<br>Washington, DC: 2002. </ref>。また、IQ75までを軽度知的障害とし、より多くの人が援助を受けられるようにしている。「サポート」の量を定めるには困難さが伴うが、その視点には実生活に役立ちやすい利点がある。
 適応機能は、[[バインランド適応行動尺度]]のような標準化された尺度を用いることで測定できる。知的障害の最も著名な支援組織である[[wikipedia:American Association on Intellectual and Developmental Disabilities|American Association on Intellectual and Developmental Disabilities]](AAIDD)では、適応機能を知的機能と別に考え、適応機能の程度を、実生活に必要なサポートの大きさによって定義することを提案している<ref name=ref5>American Association on Intellectual and Developmental Disabilities: Mental Retardation: Definition, Classification, and Systems ff Supports.<br>Washington, DC: 2002. </ref>。また、IQ75までを軽度知的障害とし、より多くの人が援助を受けられるようにしている。「サポート」の量を定めるには困難さが伴うが、その視点には実生活に役立ちやすい利点がある。


==重症度==
==重症度==
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* [[学習障害]]
* [[学習障害]]
* [[発達障害]]
* [[発達障害]]
* [[知的障害関連遺伝子]]


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==


<references />
<references />
(執筆者:船曳康子  担当編集委員:加藤忠史)

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