「磁気共鳴画像法」の版間の差分

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 励起されたスライスやスラブ内での水素原子核集団の分布を知るために、傾斜(勾配)磁場を用いたエンコーディングおよび離散フーリエ変換を用いたデコーディングが必要である。典型的には、RFパルスによる励起に加えて、撮像領域(field-of-view, FOV)の中心部からx方向あるいはy方向に線形に変化する傾斜磁場を追加することで、FOV内の水素原子核の共鳴周波数が位置に依存する状態をつくりだすことが可能となる。そうすれば、FOV内の特定の部位に存在する水素原子核集団は、特定の周波数の電磁波を放出することになるため、位置情報の特定が可能となる。MRIでは傾斜磁場の与え方を工夫することで、測定された電磁波から空間情報を読み取る際に離散フーリエ変換を用いる。
 励起されたスライスやスラブ内での水素原子核集団の分布を知るために、傾斜(勾配)磁場を用いたエンコーディングおよび離散フーリエ変換を用いたデコーディングが必要である。典型的には、RFパルスによる励起に加えて、撮像領域(field-of-view, FOV)の中心部からx方向あるいはy方向に線形に変化する傾斜磁場を追加することで、FOV内の水素原子核の共鳴周波数が位置に依存する状態をつくりだすことが可能となる。そうすれば、FOV内の特定の部位に存在する水素原子核集団は、特定の周波数の電磁波を放出することになるため、位置情報の特定が可能となる。MRIでは傾斜磁場の与え方を工夫することで、測定された電磁波から空間情報を読み取る際に離散フーリエ変換を用いる。


 MRIの測定信号(電磁波)の画像化の理解には、離散フーリエ変換(discrete Fourier transform, DFT)の原理の理解が重要であるため簡単に説明する。フランスの数学者ジョゼフ・フーリエは、あらゆる周期関数(や周期信号)は、三角級数の(無限の)和として表現できることを発見した。すなわち、実数xを変数とする周期2nの周期関数f(x)について、
 MRIの測定信号(電磁波)の画像化の理解には、離散フーリエ変換(discrete Fourier transform, DFT)の原理の理解が重要であるため簡単に説明する。フランスの数学者ジョゼフ・フーリエは、あらゆる周期関数(や周期信号)は、三角級数の(無限の)和として表現できることを発見した。すなわち、実数xを変数とする周期2nの周期関数<math>f(x)</math>について、


a_n=1/π ∫_(-π)^π▒〖f(t) cos⁡〖nt dt,(n=0,1,2,3,)〗 〗
<math>a_n=\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi} f(t)</math>cos<math> nt\ dt,(n=0,1,2,3,\ldots)</math>


b_n=1/π ∫_(-π)^π▒〖f(t) sin⁡〖nt dt,(n=1,2,3,)〗 〗
<math>b_n=\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi} f(t)</math>sin<math> nt\ dt,(n=0,1,2,3,\ldots)</math>


と置くと、
と置くと、


f(x)=a_0/2+∑_(n=1)^∞▒〖(a_n cos⁡〖nx+b_n sin⁡〖nx)〗 〗 〗
<math>f(x)=\frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}(a_n</math>cos<math>nx+b_n</math>sin<math>nx)</math>


と書ける。これを複素数に拡張すれば、
と書ける。これを複素数に拡張すれば、
c_n=1/2π ∫_(-π)^π▒〖f(t) e^(-ιnt) dt,(n=0,±1,±2,)
 
<math>c_n=\frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^\pi f(t) e^{-\iota nt} dt,\ (n=0,\pm1,\pm2,\ldots)</math>


として
として
f(x)=∑_(n=-∞)^∞▒〖(c_n e^(-ixn))〗
 
<math>f(x)=\sum_{n=-\infty}^{\infty}(c_n e^{-ixn})</math>
 
と書ける。
と書ける。


f(x)がデジタル信号で離散化できる場合、上記のフーリエ級数表現を2次元、かつ複素数に拡張したものは以下のようにあらわすことができる(離散フーリエ変換, discrete Fourier transform, DFT)
f(x)がデジタル信号で離散化できる場合、上記のフーリエ級数表現を2次元、かつ複素数に拡張したものは以下のようにあらわすことができる(離散フーリエ変換, discrete Fourier transform, DFT)
F(u,v)=∑_(x=0)^(M-1)▒∑_(y=0)^(N-1)▒〖f(x,y)e^(-ι2π(u/M x+v/N y) ) 〗
 
<math>F(u,v)=\sum_{x=0}^{M-1}\sum_{y=0}^{M-1}f(x,y)e^{-\iota 2\pi(\frac {u}{M}x+\frac{v}{N} y)}</math>
 
また、この逆変換にあたる逆離散フーリエ変換(inverse discrete Fourier transform, IDFT)は以下のようにかける
また、この逆変換にあたる逆離散フーリエ変換(inverse discrete Fourier transform, IDFT)は以下のようにかける
f(x,y)=1/MN ∑_(u=0)^(M-1)▒∑_(v=0)^(N-1)▒〖F(u,v)e^(-ι2π(u/M x+v/N y) ) 〗
 
<math>f(x,y)=\frac{1}{MN}\sum_{u=0}^{M-1}\sum_{v=0}^{N-1}F(u,v)e^{-\iota 2\pi(\frac {u}{M}x+\frac{v}{N} y)}</math>




 これは画素数MxNの画像の画素値が、周波数領域(u,v)空間では波数0~M-1,0~N-1個の三角関数の係数値として表現できることを示している。
 これは画素数MxNの画像の画素値が、周波数領域(u,v)空間では波数0~M-1,0~N-1個の三角関数の係数値として表現できることを示している。
例えばu=1,v=0とした場合、
例えばu=1,v=0とした場合、
F(1,0)=∑_(x=0)^(M-1)▒∑_(y=0)^(N-1)▒〖f(x,y)e^(-ι2π(1/M x) ) 〗
 
<math>F(1,-)=\sum_{x=0}^{M-1}\sum_{y=0}^{M-1}f(x,y)e^{-\iota 2\pi(\frac {1}{M}x)}</math>


となるが、これはMRIでは撮像領域(FOV)の右端から左端にかけて複素数の重み係数
となるが、これはMRIでは撮像領域(FOV)の右端から左端にかけて複素数の重み係数
e^=cos⁡〖θ+i sin⁡θ,θ=[-π π]
 
を画像に乗じたのちに総和をとったことに等しい。同様に、u=2,v=0とした場合には、FOVの右端から左端にかけてθ=[-2π 2π]の重み係数を乗じたのちに総和をとったことに等しい。
<math>e^{i\theta}=</math> cos <math>\theta + i</math>⁡sin<math>\theta, \theta =[-\pi\ \pi]</math>
 
を画像に乗じたのちに総和をとったことに等しい。同様に、u=2,v=0とした場合には、FOVの右端から左端にかけて<math>\theta =[-2\pi\ 2\pi]</math>の重み係数を乗じたのちに総和をとったことに等しい。


 傾斜磁場コイルを用いて空間内に線形の周波数変化をもたらせば、場所に応じた連続的な位相の変化としてこの重み係数を物理的につくりだすことが可能であり、結果として撮像対象にフーリエ変換を行っていることと等しい。
 傾斜磁場コイルを用いて空間内に線形の周波数変化をもたらせば、場所に応じた連続的な位相の変化としてこの重み係数を物理的につくりだすことが可能であり、結果として撮像対象にフーリエ変換を行っていることと等しい。