「神経細胞移動」の版間の差分

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神経細胞移動 英語名:neuronal migration  
神経細胞移動 英語名:neuronal migration  


神経細胞移動は、[[中枢神経系]]の様々な部位の発生過程で認められる。これは多くの部位において、神経細胞が産生される部位と、配置されて実際に機能する部位とが異なることに起因する。このような発生様式は複雑な神経細胞の配置を可能にし、効率良い神経連絡の基礎を提供する。中でも[[大脳皮質]]を構成する[[興奮性神経細胞]]と[[抑制性神経細胞]]の移動様式は詳しく研究されている。また[[小脳]]の顆粒細胞やプルキンエ細胞、さらに[[海馬]]の錐体細胞や顆粒細胞、脳幹の神経核、[[扁桃体]]の核など、様々な部位の神経細胞移動が研究されており、それぞれ独特の移動様式が認められている。また海馬の歯状回を構成する顆粒細胞や[[嗅球]]の介在神経細胞は成体になっても産生され、移動し、配置される。  
神経細胞移動は、[[中枢神経系]]の様々な部位の発生過程で認められる。これは多くの部位において、神経細胞が産生される部位と、配置されて実際に機能する部位とが異なることに起因する。このような発生様式は複雑な神経細胞の配置を可能にし、正しい神経回路の基礎を提供する。中でも[[大脳皮質]]を構成する[[興奮性神経細胞]]と[[抑制性神経細胞]]の移動様式は詳しく研究されている。また[[小脳]]の顆粒細胞やプルキンエ細胞、さらに[[海馬]]の錐体細胞や顆粒細胞、脳幹の神経核、[[扁桃体]]の核など、様々な部位の神経細胞移動が研究されており、それぞれ独特の移動様式が認められている。また海馬の歯状回を構成する顆粒細胞や[[嗅球]]の介在神経細胞は成体になっても産生され、移動し、配置される。  


 図:放射状移動と接線方向移動  
 図:放射状移動と接線方向移動  
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== 大脳皮質興奮性神経細胞に見られる放射状移動  ==
== 大脳皮質興奮性神経細胞に見られる放射状移動  ==


[[大脳]]は脳表面側の神経細胞が密に存在する[[灰白質]]と、脳深部の主に[[軸索]]の通り道となる[[白質]]からなる。灰白質は狭義の[[大脳皮質]]であり、皮質神経細胞が整然と配置し、約6層(生物種や領野、分け方によって変動がある)からなる層構造を形成している。大脳皮質はその70~80%が興奮性神経細胞であり、これらは胎生期に、[[外套]](pallium;広義の大脳皮質)の[[脳室]]に面した部分である[[脳室帯]](ventricular zone)、もしくはそれに隣接した[[脳室下帯]](subventricular zone)により産生され、脳表面側へと移動する。これを放射状移動(radial migration)と呼ぶ。皮質神経細胞はマウスでは胎生12〜16日目に産生され、最初に産まれた皮質神経細胞の集団は、すでに脳表面側に形成されている[[プレプレート]](preplate)に割って入り、これを脳表面側の[[辺縁帯]](marginal zone)と、脳室側の[[サブプレート]](subplate)とに分け、その間にサンドイッチされるように配置される。その後に産まれた皮質神経細胞も順次、脳表面へと移動するが、その際にすでに移動を終了している皮質神経細胞を全て乗り越えて辺縁帯直下に達し、配置される。このため、大脳皮質では早生まれのものほど脳の深層側に、遅生まれのものほど表層側に配置される。これをインサイドアウト様式と呼ぶ。発生期において移動を終了した皮質神経細胞が高密度に集まる部分を[[皮質板]](cortical plate)と呼び、生後の灰白質(大脳皮質)の原型を作る。
大脳皮質(大脳灰白質)においては、神経細胞が整然と配置し、約6層からなる層構造を形成する。大脳皮質の神経細胞はその70~80%が興奮性神経細胞であり、これらは胎生期に、[[外套]](pallium;広義の大脳皮質)の[[脳室]]に面した部分である[[脳室帯]](ventricular zone)、もしくはそれに隣接した[[脳室下帯]](subventricular zone)により産生され、脳表面側へと移動する。これを放射状移動(radial migration)と呼ぶ。皮質神経細胞はマウスでは胎生12〜16日目に産生され、最初に産まれた皮質神経細胞の集団は、すでに脳表面側に形成されている[[プレプレート]](preplate)に割って入り、これを脳表面側の[[辺縁帯]](marginal zone)と、脳室側の[[サブプレート]](subplate)とに分け、その間にサンドイッチされるように配置される。その後に産まれた皮質神経細胞も順次、脳表面へと移動するが、その際にすでに移動を終了している皮質神経細胞を全て乗り越えて辺縁帯直下に達し、配置される。このため、大脳皮質では早生まれのものほど脳の深層側に、遅生まれのものほど表層側に配置される。これをインサイドアウト様式と呼ぶ。発生期において移動を終了した皮質神経細胞が高密度に集まる部分を[[皮質板]](cortical plate)と呼び、生後の灰白質(大脳皮質)の原型となる。


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