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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]</font><br>
''京都橘大学 健康科学部心理学科''<br>
''京都橘大学 健康科学部心理学科''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2017年2月1日 原稿完成日:2017年XX月XX日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2017年2月1日 原稿完成日:2018年1月2日<br>
担当編集委員:宮川剛<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tsuyoshimiyakawa 宮川 剛](藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 システム医科学)<br>
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英語名:spatial memory 独:räumliches Gedächtnis 仏:mémoire spatiale
英語名:spatial memory 独:räumliches Gedächtnis 仏:mémoire spatiale


{{box|text= 動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。}}
{{box|text= 空間記憶は、目的のものを探す、目的地へ向かう、家に戻るなど、我々の日常生活の至る場面で駆動する記憶である。神経科学アプローチからの空間研究は、Tolmanによる認知地図理論をベースに進展し、海馬が空間記憶の中枢であるという仮説が実証された。近年の神経科学的手法の進歩により、空間記憶の分類や記憶過程に対応した海馬内領域の機能分化を示す実験的証拠が得られている。}}
 
 本解説では、空間記憶の測定や分類、空間記憶を担う神経基盤について、動物実験を中心に解説する。加えて、ヒトの空間記憶と脳の可塑性について、学習および発達的視点から解説する。<u>(編集部コメント:「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。)</u>


==空間記憶とは==
==空間記憶とは==
 動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。通常我々は特別な努力なく空間的な定位や移動を行っているが、動物にとって空間記憶は生命活動を維持するために必要不可欠な機能である。空間とは何かについての哲学的論争において、カントは「空間」は生得的に人間の感性にそなわった主観的な形式であると主張した。一方、デカルトは「空間」とは物体が存在する場所そのものであるから、物体がなくなれば空間が消失すると考えた。心理学者Tolmanの「空間」の位置づけは、経験主義という点において、これらと対立するものであったが、物体の配置に関する空間的知識(サーヴェイ的知識、認知地図的知識)は、物体と物体の相対関係についての主観的な認知を想定している点から、両者と相反するものではない。神経科学アプローチからの空間研究は、空間が絶対的なものであるか相対的なものであるかについての哲学的議論を離れ、Tolmanによる認知地図理論をベースに進展した。この他、空間的知識には、ランドマークに関する知識やルート的知識<ref><pubmed>1101663</pubmed></ref>、また環境の形態の知識<ref><pubmed>3742991 </pubmed></ref>があり、空間記憶とはこういった知識の獲得に必要とされる認知機能である。


<u>(編集部コメント:イントロですので、認知地図ではなく、空間記憶についてのご解説をお願いします。研究の歴史や、空間記憶の概念の形成に至るまでの経過などについてお願いいたします。)</u>
==認知地図==
 
Tolman<ref><pubmed>18870876</pubmed></ref>は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。
 動物は、餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動をとる。それには、自身の位置や目的の場所を定位する、あるいは、その地点まで移動するというナビゲーション能力が必要である。Tolman<ref><pubmed>18870876</pubmed></ref>は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。


 認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動<ref><pubmed>13376757</pubmed></ref>や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動<ref>'''Tolman,E.C. & Honzik, C. H.'''<br>Introduction and removal of reward, and maze performance in rats<br>''University of California Publications in Psychology.'':1930,4;257–275</ref>によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson & McNaughton<ref name=ref01><pubmed>8351520 </pubmed></ref>の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。
 認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動<ref><pubmed>13376757</pubmed></ref>や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動<ref>'''Tolman,E.C. & Honzik, C. H.'''<br>Introduction and removal of reward, and maze performance in rats<br>''University of California Publications in Psychology.'':1930,4;257–275</ref>によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson & McNaughton<ref name=ref01><pubmed>8351520 </pubmed></ref>の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。
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 [[8方向放射状迷路]]<ref>'''Olton, D.S.,& Samuelson, R.J.'''<br>Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.<br>''Animal Behavior Processes.'':1976,2:97–116</ref>での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。
 [[8方向放射状迷路]]<ref>'''Olton, D.S.,& Samuelson, R.J.'''<br>Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.<br>''Animal Behavior Processes.'':1976,2:97–116</ref>での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。


 例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。迷路課題においては、その試行で選択した走路と選択していない走路を記憶し、その次の試行ではキャンセル記憶を指す。
 例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。
 
 また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。この空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶であり、1試行にのみ有効で次の試行においてキャンセルされる空間作業記憶と区別される。
 また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。
 これらの二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた<ref><pubmed>2623016 </pubmed></ref>。
 
 この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた<ref><pubmed>2623016 </pubmed></ref>。


=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み ===
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み ===
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 海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。
 海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。


 海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討された。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。
 海馬内の機能分化は、David Marr<ref name=marr><pubmed> 4399412 </pubmed></ref>が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。


 Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた<ref name=nakazawa />。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターンコンプリーション能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターンセパレーション能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させることや、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いことが根拠である。
 Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた<ref name=nakazawa />。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターン完成能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターン分離能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させること<ref><pubmed>17303747</pubmed></ref>や、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いこと <ref><pubmed>17556551</pubmed></ref> が根拠である。


 [[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域(CA1,CA3,歯状回)の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった<ref><pubmed>19378463</pubmed></ref>。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。
 [[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域(CA1,CA3,歯状回)の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった<ref><pubmed>19378463</pubmed></ref>。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。
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 発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。
 発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。


 子どもの空間認知はランドマーク(目印)を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形(俯瞰図)に統合することができる段階をたどる<ref><pubmed></pubmed>1101663</ref>。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる<ref><pubmed>6617310</pubmed></ref>。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である<ref>'''Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.''' <br>Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances<br>''Annals of the Association of American Geographers'' 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]</ref>。
 子どもの空間認知はランドマーク(目印)を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形(俯瞰図)に統合することができる段階をたどる<ref><pubmed> 1101663 </pubmed></ref>。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる<ref><pubmed>6617310</pubmed></ref>。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である<ref>'''Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.''' <br>Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances<br>''Annals of the Association of American Geographers'' 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]</ref>。


 この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある<ref name=ref02>'''Dudchenko, P. A.'''<br>Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.<br>New York: Oxford University Press; 2010.</ref>。
 この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある<ref name=ref02>'''Dudchenko, P. A.'''<br>Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.<br>New York: Oxford University Press; 2010.</ref>。

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