「結合定数」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
 
(4人の利用者による、間の6版が非表示)
1行目: 1行目:
<div align="right"> 
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0007726 香月 博志]</font><br>
''熊本大学 大学院生命科学研究部 薬物活性学分野''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年2月9日 原稿完成日:2013年7月16日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/haruokasai 河西 春郎](東京大学 大学院医学系研究科)<br>
</div>
英語名:Binding constant  
英語名:Binding constant  


同義語:会合定数 Association constant、親和定数 Affinity constant  
同義語:会合定数 Association constant、親和定数 Affinity constant  


{{box|text=
 結合定数とは、ある分子Aと別の分子Bが[[wikipedia:ja:非共有結合|非共有結合]]([[wikipedia:ja:水素結合|水素結合]]、[[wikipedia:ja:疎水結合|疎水結合]]、[[wikipedia:ja:イオン結合|イオン結合]]など)により結合/解離の[[wikipedia:ja:平衡反応|平衡反応]]を生じる場合に、当該分子間の結合力を数値で表す指標である。低分子量化合物([[生理活性物質]]や薬物など)の[[受容体]]タンパク質や[[wikipedia:ja:血漿|血漿]]タンパク質等への結合の解析、およびタンパク質-タンパク質間相互作用の解析などで用いられる。  
 結合定数とは、ある分子Aと別の分子Bが[[wikipedia:ja:非共有結合|非共有結合]]([[wikipedia:ja:水素結合|水素結合]]、[[wikipedia:ja:疎水結合|疎水結合]]、[[wikipedia:ja:イオン結合|イオン結合]]など)により結合/解離の[[wikipedia:ja:平衡反応|平衡反応]]を生じる場合に、当該分子間の結合力を数値で表す指標である。低分子量化合物([[生理活性物質]]や薬物など)の[[受容体]]タンパク質や[[wikipedia:ja:血漿|血漿]]タンパク質等への結合の解析、およびタンパク質-タンパク質間相互作用の解析などで用いられる。  
}}


==定義==
==定義==
51行目: 60行目:
[[Image:2-ITC.jpg|thumb|250px|'''図2.等温滴定熱量測定により得られる結合等温線の一例''']]  
[[Image:2-ITC.jpg|thumb|250px|'''図2.等温滴定熱量測定により得られる結合等温線の一例''']]  


Isothermal titration calorimetry (ITC) <ref>'''織田昌幸'''<br>等温滴定熱測定.<br>''蛋白質科学会アーカイブ #30'':2008</ref>
Isothermal titration calorimetry (ITC) <ref>'''織田昌幸'''<br>等温滴定熱測定.<br>''蛋[[白質]]科学会アーカイブ #30'':2008</ref>


 分子同士が結合する際に発生する(もしくは吸収される)微小な熱量を一定温度下で測定することにより、当該分子間相互作用の[[wikipedia:ja:熱力学|熱力学]]的プロファイル(結合定数を含む)を精度良く得る手法である。測定対象分子の化学修飾や固定化が不要であり、自然な状態に近い条件下での測定が可能である。実際の測定では、一方の分子の溶液に他方の分子の溶液を一定量ずつ滴下し、その際に生じた熱量変化を測定することで結合等温線(図2)が得られる。この曲線の回帰パラメータより結合定数が求められる。
 分子同士が結合する際に発生する(もしくは吸収される)微小な熱量を一定温度下で測定することにより、当該分子間相互作用の[[wikipedia:ja:熱力学|熱力学]]的プロファイル(結合定数を含む)を精度良く得る手法である。測定対象分子の化学修飾や固定化が不要であり、自然な状態に近い条件下での測定が可能である。実際の測定では、一方の分子の溶液に他方の分子の溶液を一定量ずつ滴下し、その際に生じた熱量変化を測定することで結合等温線(図2)が得られる。この曲線の回帰パラメータより結合定数が求められる。
64行目: 73行目:
===定量的Förster resonance energy transfer (FRET) 解析===
===定量的Förster resonance energy transfer (FRET) 解析===


 FRETは、タンパク質間相互作用の有無を検出する際に盛んに用いられるようになってきた手法の1つであり、解離定数・結合定数の測定にも応用可能である<ref><pubmed> 21595867 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 22711490 </pubmed></ref>。対象とする2つの分子それぞれを蛍光色素や蛍光タンパク質(一方が蛍光のドナー、他方が蛍光のアクセプターとなるもの)で標識しておくと、両分子が結合した際にドナー-アクセプター間のFRETが生じる。遊離ドナー由来の蛍光シグナル、遊離アクセプター由来の蛍光シグナル、およびFRETシグナルを定量的に解析することで、当該分子間の結合の解離定数・結合定数を求めることができる。
 [[FRET]]は、タンパク質間相互作用の有無を検出する際に盛んに用いられるようになってきた手法の1つであり、[[解離定数]]・結合定数の測定にも応用可能である <ref><pubmed> 22711490 </pubmed></ref><ref><pubmed> 21595867 </pubmed></ref>。対象とする2つの分子それぞれを蛍光色素や[[蛍光タンパク質]](一方が蛍光のドナー、他方が蛍光のアクセプターとなるもの)で標識しておくと、両分子が結合した際にドナー-アクセプター間のFRETが生じる。遊離ドナー由来の蛍光シグナル、遊離アクセプター由来の蛍光シグナル、およびFRETシグナルを定量的に解析することで、当該分子間の結合の解離定数・結合定数を求めることができる。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
70行目: 79行目:


==参考文献==
==参考文献==
<references />  
<references />
 
 
(執筆者:香月博志 担当編集委員:河西春郎)

案内メニュー