「統合失調症」の版間の差分

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==統合失調症とは==
==統合失調症とは==
 統合失調症<ref>以前は「精神分裂病」という訳語が用いられていたが、全国精神障害者家族連合会から日本精神神経学会に対して、人格否定的であり本人にも告げにくいため変えて欲しい、という要望があった。日本精神神経学会は、そもそもschizophreniaは「病」ではなく「症状群」に留まっていること、病名自体が当事者の社会参加を阻んでいる可能性があることに注目し、2002年、「統合失調症」に病名を変更することを定めた。その後は、公的文書を含め、全て「統合失調症」が用いられている。それまでは患者本人に病名を告知しない場合が多かったが、病名変更後は病名を告知することが普通になるなど、治療にも影響を与えた。</ref>とは、主要な[[精神疾患]]のひとつで、日本の精神科入院患者29.7万人のうち17.0万人(57.0%)<ref>精神保健福祉資料-平成25年度6月30日調査の概要</ref>、外来患者290.0万人のうち53.9万人(18.6%)<ref>2011年患者調査</ref>をしめる。未受診者を含めた一般人口の有病率は0.7%で、10歳代後半~30歳代に発症する頻度の高い疾患である。[[wj:WHO|WHO]]などが[[wj:疾病負担|疾病負担]] (global burden of disease, GBD) の指標としている[[wj:障害調整生命年|障害調整生命年]] (disability-adjusted life-years, DALY)における[[wj:生活障害|生活障害]] (years lived with disability, YLL)では、疾患が生活障害を引き起こす程度についはさまざまな疾患のなかで統合失調症の急性期が最大とされている<ref><pubmed>23245605</pubmed></ref>。
 統合失調症<ref group="注">以前は「精神分裂病」という訳語が用いられていたが、全国精神障害者家族連合会から日本精神神経学会に対して、人格否定的であり本人にも告げにくいため変えて欲しい、という要望があった。日本精神神経学会は、そもそもschizophreniaは「病」ではなく「症状群」に留まっていること、病名自体が当事者の社会参加を阻んでいる可能性があることに注目し、2002年、「統合失調症」に病名を変更することを定めた。その後は、公的文書を含め、全て「統合失調症」が用いられている。それまでは患者本人に病名を告知しない場合が多かったが、病名変更後は病名を告知することが普通になるなど、治療にも影響を与えた。</ref>とは、主要な[[精神疾患]]のひとつで、日本の精神科入院患者29.7万人のうち17.0万人(57.0%)<ref>精神保健福祉資料-平成25年度6月30日調査の概要</ref>、外来患者290.0万人のうち53.9万人(18.6%)<ref>2011年患者調査</ref>をしめる。未受診者を含めた一般人口の有病率は0.7%で、10歳代後半~30歳代に発症する頻度の高い疾患である。[[wj:WHO|WHO]]などが[[wj:疾病負担|疾病負担]] (global burden of disease, GBD) の指標としている[[wj:障害調整生命年|障害調整生命年]] (disability-adjusted life-years, DALY)における[[wj:生活障害|生活障害]] (years lived with disability, YLL)では、疾患が生活障害を引き起こす程度についはさまざまな疾患のなかで統合失調症の急性期が最大とされている<ref><pubmed>23245605</pubmed></ref>。


===主体の体験としての精神疾患===
===主体の体験としての精神疾患===
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===検査結果にもとづく診断の現状 ===
===検査結果にもとづく診断の現状 ===
 統合失調症患者の脳構造や脳機能を健常群と比較し、判別を行った研究では、80~85%という正判別率の報告が多い。診断基準にもとづいて明確に統合失調症と診断できる患者を対象とし、詳細な検査方法にもとづくデータに入念な解析を行い、健常者との判別を検討した場合にそうした数字であり、他の精神疾患との判別となると数字はかなり低くなる<ref>注: そうした結果となる理由として、統合失調症という疾患概念が一つの実体に対応しているわけではないこと([[統合失調症#疾患概念|疾患概念]].)、縦断的に病態が進展していると考えられること([[統合失調症#経過についての縦断診断|経過についての縦断診断]])、に加えて、精神疾患の研究で得られる[[wj:バイオマーカー|バイオマーカー]]にいくつかの意味がありうることが挙げられる。病態における意義という点からは概念的に、精神疾患への素因を反映する「[[素因指標]]」、精神疾患の発症や罹患を反映する「[[発症指標]]」、発症後の症状の程度を示す「[[状態指標]]」、疾患としての病状の重症度を反映する「[[病状指標]]」に分けることができる。ひとつのバイオマーカーが複数の指標の意義をもつことがあり、一般的には、素因指標と発症指標、状態指標と病状指標はおおむね類似の病態を反映するという仮定のもとに、それぞれtrait markerとstate markerの用語を対応させることが多い。しかし、素因指標と発症指標を同等に取り扱うと非発症者を発症者と混同することになり、また状態指標と病状指標を区別しないと治療による改善可能性についての判断に影響する可能性がある。</ref>。
 統合失調症患者の脳構造や脳機能を健常群と比較し、判別を行った研究では、80~85%という正判別率の報告が多い。診断基準にもとづいて明確に統合失調症と診断できる患者を対象とし、詳細な検査方法にもとづくデータに入念な解析を行い、健常者との判別を検討した場合にそうした数字であり、他の精神疾患との判別となると数字はかなり低くなる<ref group="注"> そうした結果となる理由として、統合失調症という疾患概念が一つの実体に対応しているわけではないこと([[統合失調症#疾患概念|疾患概念]])、縦断的に病態が進展していると考えられること([[統合失調症#経過についての縦断診断|経過についての縦断診断]])、に加えて、精神疾患の研究で得られる[[wj:バイオマーカー|バイオマーカー]]にいくつかの意味がありうることが挙げられる。病態における意義という点からは概念的に、精神疾患への素因を反映する「[[素因指標]]」、精神疾患の発症や罹患を反映する「[[発症指標]]」、発症後の症状の程度を示す「[[状態指標]]」、疾患としての病状の重症度を反映する「[[病状指標]]」に分けることができる。ひとつのバイオマーカーが複数の指標の意義をもつことがあり、一般的には、素因指標と発症指標、状態指標と病状指標はおおむね類似の病態を反映するという仮定のもとに、それぞれtrait markerとstate markerの用語を対応させることが多い。しかし、素因指標と発症指標を同等に取り扱うと非発症者を発症者と混同することになり、また状態指標と病状指標を区別しないと治療による改善可能性についての判断に影響する可能性がある。</ref>。


==病態生理==
==病態生理==
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#地域社会のなかで日常生活を送れるよう配慮すると、合併症や続発症が少ない
#地域社会のなかで日常生活を送れるよう配慮すると、合併症や続発症が少ない
という指摘がある。
という指摘がある。
== 注釈 ==
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==関連項目==
==関連項目==