「脊髄小脳変性症」の版間の差分

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 ごくまれではあるが、MSAには家族発症例があり、これらの解析から辻らによりCOQ2(コエンザイムQ10合成酵素)遺伝子に変異が同定された。変異が2つあれば発症者となり、変異が1つでは発症リスクを高めることになる。日本人のみに認められるV393A変異はMSAの約9%に見出され(健常者では約3%)、ホモ変異例では脳内のCOQ10量が減少していた。
 ごくまれではあるが、MSAには家族発症例があり、これらの解析から辻らによりCOQ2(コエンザイムQ10合成酵素)遺伝子に変異が同定された。変異が2つあれば発症者となり、変異が1つでは発症リスクを高めることになる。日本人のみに認められるV393A変異はMSAの約9%に見出され(健常者では約3%)、ホモ変異例では脳内のCOQ10量が減少していた。
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|+ 表1.MSA診断基準改訂版 (Gilman S, et al.: Second consensus statement on the diagnosis of multiple system atrophy. Neurology 71(9): 670-676, 2008)
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|'''従来通り、definite, probable, possibleに分類し、さらにMSA-PとMSA-Cに分類する。'''
#Definite MSA<br> 病理学的に,中枢神経に広範に、多数のα-synuclein陽性glial cytoplasmic inclusion(GCI)を認め、線条体黒質系またはオリーブ橋小脳系の変性所見を伴う。
#Probable MSA<br> 孤発性で進行性の成人発症(30歳以降)の変性疾患で、自律神経障害(尿失禁(膀胱からの尿排出をコントロールできない、男性では勃起障害)、または起立後3分以内に少なくとも収縮期血圧が30 mmHg,拡張期血圧が15 mmHg低下する起立性低血圧)に加え、レボドパ反応性の乏しいパーキンソニズム(動作緩慢に、筋強剛、振戦、または姿勢反射障害を伴う)、または小脳症候群(歩行失調に、小脳性構音障害、四肢失調、または小脳性眼球運動障害を伴う)を呈する。
#Possible MSA<br> 孤発性で進行性の成人発症(30歳以降)の変性疾患で、パーキンソニズム、または小脳症候群を呈し、加えて自律神経障害を示唆する所見(他の原因では説明できない尿意促迫、頻尿、残尿、男性では勃起不全、またはprobable MSAの規準を満たさないレベルの起立性低血圧)を少なくとも一つ認め、さらに以下の表で少なくとも一つの所見を満たすもの。<br>
 (1) Possible MSA-P またはMSA-C<br> 腱反射亢進を伴うBabinski徴候陽性、喘鳴。<br>
 (2) Possible MSA-P<br> 急速進行性のパーキンソニズム、レボドパ反応性が乏しいこと、運動症状出現3年以内の姿勢反射障害、
歩行失調・小脳性構音障害・四肢失調・または小脳性眼球運動障害、運動症状出現5年以内の嚥下障害、
MRIにおける被殻・中小脳脚・橋・または小脳の萎縮、FDG-PETにおける被殻・脳幹・または小脳の低代謝。<br>
 (3) Possible MSA-C<br> パーキンソニズム(動作緩慢と筋強剛)、MRIにおける被殻・中小脳脚・または橋の萎縮、FDG-PETにおける被殻の低代謝、SPECTまたはPETにおける黒質線条体ドパミン作動性ニューロンの節前性脱神経 。
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|'''MSAの診断を支持するred flag所見<br>'''
口部顔面ジストニア、頸部前屈、カンプトコルミア(脊柱の高度の前屈)and/or Pisa症候群(脊柱の高度の側屈)、手または足の拘縮、吸気時のため息、高度の発声困難、高度の構音障害、いびきの出現または増悪、手足の冷感、病的笑いまたは病的泣き、jerkyなミオクローヌス様の姿勢振戦または動作性振戦。
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|'''MSAの診断を支持しない所見<br>'''
典型的丸薬丸め様の静止時振戦、臨床的に有意な末梢神経障害、薬剤誘発性でない幻覚、75歳以上の発症、失調症やパーキンソニズムの家族歴、認知症(DSM-IVによる)、多発性硬化症を示唆する大脳白質病変。
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|}


===症候===
===症候===