「脊髄小脳変性症」の版間の差分

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== 臨床症状 ==
== 臨床症状 ==
 脊髄小脳変性症で認められる臨床症状は、小脳やその経路に起因する症状、個々の疾患に合併する他の神経部位に起因する症状 (末梢神経障害や自律神経障害など) を認める。この項では、主に小脳に起因する症状について、概説する。
 脊髄小脳変性症で認められる臨床症状は、小脳やその経路に起因する症状、個々の疾患に合併する他の神経部位に起因する症状 (末梢神経障害や自律神経障害など) を認める。この項では、主に小脳に起因する症状について、概説する。
小脳失調の臨床症状は、小脳の障害される部位により、様々な症状を認める<ref name=筧慎治2015>筧慎治, 石川享宏, 本多武尊, 三苫博. (2015)<br> 【小脳の最新知見-基礎研究と臨床の最前線】小脳は何をしているか 構造と機能の最先端 小脳の機能 平衡、協調運動機能. 医学のあゆみ. 255, 947-954</ref> 。
小脳失調の臨床症状は、小脳の障害される部位により、様々な症状を認める<ref name=筧慎治2015>'''筧慎治, 石川享宏, 本多武尊, 三苫博 (2015)'''<br> 【小脳の最新知見-基礎研究と臨床の最前線】小脳は何をしているか 構造と機能の最先端 小脳の機能 平衡、協調運動機能. 医学のあゆみ. 255, 947-954</ref> 。
=== 大脳小脳 (小脳半球外側部) の障害 ===
=== 大脳小脳 (小脳半球外側部) の障害 ===
(図3)
 小脳半球外側部と歯状核からなる大脳小脳は、脊髄などの末梢から直接入力は少なく、大脳皮質から橋を経由して入力を受ける。出力は、歯状核を起始部として、視床や赤核へ入力される。視床から大脳皮質広範囲に投射することにより、四肢の遠位筋の運動制御が行われる。そのため、同部位の障害では、運動分解 (decomposition) や、測定異常 (dysmetria) 、反復拮抗運動不能 (adiadochokinesis) など四肢の運動症状を認める ('''図3''')。
 小脳半球外側部と歯状核からなる大脳小脳は、脊髄などの末梢から直接入力は少なく、大脳皮質から橋を経由して入力を受ける。出力は、歯状核を起始部として、視床や赤核へ入力される。視床から大脳皮質広範囲に投射することにより、四肢の遠位筋の運動制御が行われる。そのため、同部位の障害では、運動分解 (decomposition) や、測定異常 (dysmetria) 、反復拮抗運動不能 (adiadochokinesis) など四肢の運動症状を認める。
=== 脊髄小脳(小脳虫部、小脳半球内側部)の障害 ===
=== 脊髄小脳(小脳虫部、小脳半球内側部)の障害 ===
(図4)
 小脳虫部および小脳半球内側部と中位核 (球状核、栓状核) からなる脊髄小脳は、脊髄からの触覚、圧覚、位置覚などの体性感覚の情報入力を受け、前庭や網様体へ投射し、前庭脊髄路、網様体脊髄路を経由して脊髄に出力される。これらの出力は、最終的に体幹筋に支配し姿勢制御に重要であり、脊髄小脳の障害では、小脳性の体幹失調や歩行障害を起こす ('''図4''')
 小脳虫部および小脳半球内側部と中位核 (球状核、栓状核) からなる脊髄小脳は、脊髄からの触覚、圧覚、位置覚などの体性感覚の情報入力を受け、前庭や網様体へ投射し、前庭脊髄路、網様体脊髄路を経由して脊髄に出力される。これらの出力は、最終的に体幹筋に支配し姿勢制御に重要であり、脊髄小脳の障害では、小脳性の体幹失調や歩行障害を起こす。
=== 前庭小脳 (片葉小節葉) の障害 ===
=== 前庭小脳 (片葉小節葉) の障害 ===
(図5)
 前庭小脳 (片葉小節葉) は、三半規管や耳石器などの前庭から入力を受ける。また、中脳および視覚野から視覚入力も受ける。前庭小脳からの出力は、前庭神経核に投射される。同部は、前庭眼反射の制御を行っており、障害されることにより眼振、眼球測定異常、前庭眼反射の異常などの眼球運動障害を起こす ('''図5''')
 前庭小脳 (片葉小節葉) は、三半規管や耳石器などの前庭から入力を受ける。また、中脳および視覚野から視覚入力も受ける。前庭小脳からの出力は、前庭神経核に投射される。同部は、前庭眼反射の制御を行っており、障害されることにより眼振、眼球測定異常、前庭眼反射の異常などの眼球運動障害を起こす。


== 治療 ==
== 治療 ==