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''名古屋市立大学 大学院医学研究科''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年11月27日 原稿完成日:2014年1月20日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子](東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター [[脳神経]]科学コアセンター 発生発達神経科学分野)<br>
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英語名:Ventricular zone  独:ventrikulare zone 仏:ventriculaire zone
英語名:Ventricular zone  独:ventrikulare zone 仏:ventriculaire zone
英語略名 : VZ
英語略名 : VZ


 脳室帯は、発生期の脳内における[[脳室]]を取り囲む脳室周囲層の最も脳室側 (内側) の一層である。1970 年にBoulder Committeeが、発生初期の中枢神経系を脳室側から軟膜にむかって4つの区域 (zone) に分け、脳室側から脳室帯(ventricular zone), 脳室下帯(subventricular zone), 中間帯(intermediate zone), [[辺縁帯]](marginal zone)と命名した<ref name=ref1><pubmed> 5414696 </pubmed></ref>(図1)。発生初期の脳室帯は神経上皮細胞と呼ばれる[[神経幹細胞]]によって構成され、[[大脳皮質]]を構成するための神経系細胞の供給源となっている。
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 脳室帯は、発生期の脳内における[[脳室]]を取り囲む脳室周囲層の最も脳室側 (内側) の一層である。発生初期の脳室帯は[[神経上皮細胞]]と呼ばれる[[神経幹細胞]]によって構成され、[[大脳皮質]]を構成するための神経系細胞の供給源となっている。
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[[ファイル:図1.jpg|500px|thumb|right|図1. 神経上皮細胞の分化過程 <br> 神経管を構成する神経上皮細胞はニューロンを産生し、脳の基本構造をつくる。神経上皮細胞は、胎児期から新生児期の間、脳室面と脳表層に突起を伸ばしており、放射状グリアと呼ばれる。成体期になると、側脳室外側壁の放射状グリアは上衣細胞とアストロサイトに分化する(文献2改変)。]]
[[ファイル:図1.jpg|350px|thumb|right|'''図1. 神経上皮細胞の分化過程''' <br> 神経管を構成する神経上皮細胞はニューロンを産生し、脳の基本構造をつくる。神経上皮細胞は、胎児期から新生児期の間、脳室面と脳表層に突起を伸ばしており、放射状グリアと呼ばれる。成体期になると、側脳室外側壁の放射状グリアは上衣細胞とアストロサイトに分化する(<ref name=ref2><pubmed> 19555289 </pubmed></ref>改変)。]]


==脳室帯とは==
 脳室帯は、発生期の脳内における[[脳室]]を取り囲む脳室周囲層の最も脳室側 (内側) の一層である。1970 年にBoulder Committeeが、発生初期の中枢神経系を脳室側から軟膜にむかって4つの区域 (zone) に分け、脳室側から脳室帯(ventricular zone)、[[脳室下帯]](subventricular zone)、[[中間帯]](intermediate zone)、[[辺縁帯]](marginal zone)と命名した<ref name=ref1><pubmed>5414696</pubmed></ref>(図1)。発生初期の脳室帯は[[神経上皮細胞]]と呼ばれる[[神経幹細胞]]によって構成され、[[大脳皮質]]を構成するための神経系細胞の供給源となっている。


==脳室帯を構成する細胞==
==発生==
 脳室帯を構成する細胞は、発生がすすむにつれて性質が変化する。発生のステージに従って形態が変化するとともに、[[分化]]能力も変化していく(図1)<ref name=ref1 />。
 脳室帯を構成する細胞は、発生がすすむにつれて性質が変化する。発生のステージに従って形態が変化するとともに、[[分化]]能力も変化していく(図1)<ref name=ref1 />。
発生初期においては、[[神経管]]の壁は神経上皮と呼ばれ、脳室面と[[基底膜]](後の軟膜)の間に挟まれた神経幹細胞によって構成されている。[[皮質板]](cortical plate)が形成される頃になると、神経上皮の肥厚に伴って神経幹細胞は放射状に伸長した形態を示し、[[放射状グリア]]と呼ばれるようになる。この時、放射状グリアは細胞体を脳室帯に残したまま、伸長した放射状線維の先端を基底膜に付着させることによって上皮構造を維持している。幹細胞から生まれた新生ニューロンは、脳室帯を離れて辺縁帯直下まで放射状に移動する<ref><pubmed> 19555289 </pubmed></ref>。


 新生児期になると、[[側脳室]]外側壁の放射状グリアは、神経幹細胞の性質をもつアストロサイトと運動性の繊毛を有する[[上衣細胞]]へ分化する<ref><pubmed> 15634762 </pubmed></ref>。このとき上衣細胞が脳室面に並び、その隣(皮質側)の層が脳室下帯になる。この上衣細胞の層と脳室下帯の構造は、その後成体期でも維持される。元々発生期の脳内の層を表す言葉として命名 <ref name=ref1 /> された脳室帯および脳室下帯と区別するため、成体脳における上衣細胞の単層を上衣層(ependymal layer)、その内側の層(皮質側)を上衣下層(subependymal layer)と呼ぶこともある。
[[ファイル:VZ-Fig2.jpg|350px|thumb|right|'''図2. 神経上皮細胞の細胞周期とエレベーター運動''' <br> 神経上皮細胞は核のエレベーター運動を行っており、この運動は細胞周期のリズムと連動している。脳室面で対称分裂あるいは非対称分裂が起こる。]]
 
===発生初期===


 [[神経管]]の壁は神経上皮と呼ばれ、脳室面と[[基底膜]](後の[[軟膜]])の間に挟まれた神経幹細胞によって構成されている。[[皮質板]](cortical plate)が形成される頃になると、神経上皮の肥厚に伴って神経幹細胞は放射状に伸長した形態を示し、[[放射状グリア]]と呼ばれるようになる。この時、放射状グリアは[[細胞体]]を脳室帯に残したまま、伸長した放射状線維の先端を基底膜に付着させることによって上皮構造を維持している。


==神経上皮細胞/放射状グリアのマーカー==
 神経上皮細胞は脳室面で[[細胞分裂]]([[M期]])を行う<ref>'''Sauer FC'''<br>Mitosis in the neural tube<br>''J. Comp. Neurol.'': 1935, 62(2);377-405</ref> <ref><pubmed> 21441895 </pubmed></ref> (図2)。その過程で神経上皮細胞の核は、[[細胞周期]]に応じて脳室面から脳膜面の間を上下に移動し、[[エレベーター運動]]と呼ばれる。神経上皮が「[[偽重層]]」を示すのはこのためである。発生初期の神経上皮細胞は対称分裂することによって自己複製をくり返す。この対称分裂によって、脳室面に並ぶ神経上皮細胞数が爆発的に増加し、脳室帯を拡大する。対称分裂による神経上皮細胞の拡大産生期が終わる頃、非対称分裂が始まる。すなわち、1つの神経上皮細胞から1つの神経上皮細胞と1つの新生ニューロンが産生される。新生ニューロンは、脳室帯から放射状に移動し、適切な場所で移動を停止し、成熟ニューロンへと分化していく<ref name=ref2 />。このような新生ニューロンの放射状移動によって、脳は放射状に拡大(radial expansion)していく。このように、神経上皮細胞の非対称分裂がくり返されることによって、脳室帯の維持と大脳皮質の形成を同時になし得ている<ref><pubmed> 7482803 </pubmed></ref>
 神経上皮細胞/放射状グリアの分子マーカーがいくつか同定されている<ref><pubmed> 16243597 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 11076748 </pubmed></ref>。Sox2(SRY-box 2)<ref><pubmed> 15866195 </pubmed></ref>および [[PAX6|Pax6]]([[paired box]] 6)<ref><pubmed> 11050125 </pubmed></ref> <ref name=ref8><pubmed> 9856459 </pubmed></ref>などの[[転写因子]]や、脳に存在する[[脂肪酸結合タンパク質]]である[[FABP7]](fatty acid biding protein 7)/ [[BLBP]][[brain lipid binding protein]])<ref><pubmed> 8161459 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 7956838 </pubmed></ref>、中間径フィラメントタンパク質であるnestin<ref><pubmed> 3357014 </pubmed></ref>、放射状グリアのマーカーであるRC2(radial glial cell marker-2)<ref name=ref12><pubmed> 10657706 </pubmed></ref>、RNA結合タンパク質 Musashi1<ref name=ref12 />などは発生初期の神経上皮細胞から発現している。これらのうちPax6は神経上皮細胞の未分化性の維持に重要であり、FABP7の発現を制御する<ref><pubmed> 16237179 </pubmed></ref>。中間径フィラメントタンパク質であるvimentin <ref><pubmed> 7026573 </pubmed></ref>、カルシウム結合タンパク質であるS100β<ref><pubmed> 12561079 </pubmed></ref>、アストロサイト特異的なグルタミン酸トランスポーター (GLAST) <ref><pubmed> 9364068 </pubmed></ref>、グルタミン合成酵素 (GS) <ref><pubmed> 8095865 </pubmed></ref>、細胞外マトリックス糖タンパク質であるtenascin-C (TN-C)<ref name=ref8 />などは放射状グリアに発現する。


===新生児期===
 [[側脳室]]外側壁の放射状グリアは、神経幹細胞の性質をもつ[[アストロサイト]]と運動性の[[wikipedia:ja:繊毛|繊毛]]を有する[[上衣細胞]]へ分化する<ref><pubmed> 15634762 </pubmed></ref>。このとき上衣細胞が脳室面に並び、その隣(皮質側)の層が脳室下帯になる。


==神経上皮細胞の細胞分裂と大脳皮質の形成==
===成体期===
 神経上皮細胞の核は、[[細胞周期]]に応じて脳室面から脳膜面の間を上下に[[エレベーター運動]]し、脳室面で[[細胞分裂]]([[M期]])を行う<ref>'''Sauer FC'''<br>Mitosis in the neural tube<br>''J. Comp. Neurol.'': 1935, 62(2);377-405</ref> <ref><pubmed> 21441895 </pubmed></ref> (図2)。神経上皮が「偽重層」を示すのはこのためである。発生初期の神経上皮細胞は対称分裂することによって自己複製をくり返す。この対称分裂によって、脳室面に並ぶ神経上皮細胞数が爆発的に増加し、脳室帯を拡大する。対称分裂による神経上皮細胞の拡大産生期が終わる頃、非対称分裂が始まる。すなわち、1つの神経上皮細胞から1つの神経上皮細胞と1つの新生ニューロンが産生される。新生ニューロンは、脳室帯から軟膜側へ放射状に移動し、適切な場所で移動を停止し、成熟ニューロンへと分化していく。このような新生ニューロンの放射状移動によって、脳は放射状に拡大(radial expansion)していく。このように、神経上皮細胞の非対称分裂がくり返されることによって、脳室帯の維持と大脳皮質の形成を同時になし得ている<ref><pubmed> 7482803 </pubmed></ref>。
 新生児期に形成された上衣細胞の層と脳室下帯の構造は、その後成体期でも維持される。元々発生期の脳内の層を表す言葉として命名 <ref name=ref1 /> された脳室帯および脳室下帯と区別するため、成体脳における上衣細胞の単層を[[上衣層]](ependymal layer)、その内側の層(皮質側)を[[上衣下層]](subependymal layer)と呼ぶこともある。


[[ファイル:VZ-Fig2.jpg|500px|thumb|right|図2. 神経上皮細胞の細胞周期とエレベーター運動 <br> 神経上皮細胞は核のエレベーター運動を行っており、この運動は細胞周期のリズムと連動している。脳室面で対称分裂あるいは非対称分裂が起こる。]]
==マーカータンパク質==
 神経上皮細胞/放射状グリアの分子マーカーがいくつか同定されている<ref><pubmed> 16243597 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 11076748 </pubmed></ref>。
 
===神経上皮細胞マーカー===
 [[SRY-box 2]]([[Sox2]])<ref><pubmed> 15866195 </pubmed></ref>および [[paired box 6]]([[Pax6]])<ref><pubmed> 11050125 </pubmed></ref> <ref name=ref8><pubmed> 9856459 </pubmed></ref>などの[[転写因子]]や、脳に存在する[[脂肪酸結合タンパク質]] ([[fatty acid biding protein 7]], [[FABP7]]) / [[brain lipid binding protein]]([[BLBP]])<ref><pubmed> 8161459 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 7956838 </pubmed></ref>、[[中間径フィラメント]]タンパク質であるネスチン<ref><pubmed> 3357014 </pubmed></ref>、放射状グリアのマーカーである[[radial glial cell marker-2]]([[RC2]])<ref name=ref12><pubmed> 10657706 </pubmed></ref>、RNA結合タンパク質 [[Musashi1]]<ref name=ref12 />などは発生初期の神経上皮細胞から発現している。これらのうち[[PAX6|Pax6]]は神経上皮細胞の未分化性の維持に重要であり、FABP7の発現を制御する<ref><pubmed> 16237179 </pubmed></ref>。
 
===放射状グリアマーカー===
 [[中間径フィラメント]]タンパク質である[[ビメンチン]]<ref><pubmed> 7026573 </pubmed></ref>、カルシウム結合タンパク質である[[S100β]]<ref><pubmed> 12561079 </pubmed></ref>、アストロサイト特異的な[[グルタミン酸トランスポーター]] ([[GLAST]])<ref><pubmed> 9364068 </pubmed></ref>、[[グルタミン合成酵素]] ([[GS]]) <ref><pubmed> 8095865 </pubmed></ref>、[[細胞外マトリックス]]糖タンパク質である[[テネシンC]] ([[TN-C]])<ref name=ref8 />などは放射状グリアに発現する。


==関連項目==
==関連項目==
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==参考文献==
==参考文献==
<references/>
<references/>
(執筆者 : 岸本憲人、澤本和延  担当編集委員 : 大隅典子)

2014年6月26日 (木) 11:46時点における最新版

岸本 憲人澤本 和延
名古屋市立大学 大学院医学研究科
DOI:10.14931/bsd.4501 原稿受付日:2013年11月27日 原稿完成日:2014年1月20日
担当編集委員:大隅 典子(東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 脳神経科学コアセンター 発生発達神経科学分野)

英語名:Ventricular zone 独:ventrikulare zone 仏:ventriculaire zone

英語略名 : VZ

 脳室帯は、発生期の脳内における脳室を取り囲む脳室周囲層の最も脳室側 (内側) の一層である。発生初期の脳室帯は神経上皮細胞と呼ばれる神経幹細胞によって構成され、大脳皮質を構成するための神経系細胞の供給源となっている。

図1. 神経上皮細胞の分化過程
 神経管を構成する神経上皮細胞はニューロンを産生し、脳の基本構造をつくる。神経上皮細胞は、胎児期から新生児期の間、脳室面と脳表層に突起を伸ばしており、放射状グリアと呼ばれる。成体期になると、側脳室外側壁の放射状グリアは上衣細胞とアストロサイトに分化する([1]改変)。

脳室帯とは

 脳室帯は、発生期の脳内における脳室を取り囲む脳室周囲層の最も脳室側 (内側) の一層である。1970 年にBoulder Committeeが、発生初期の中枢神経系を脳室側から軟膜にむかって4つの区域 (zone) に分け、脳室側から脳室帯(ventricular zone)、脳室下帯(subventricular zone)、中間帯(intermediate zone)、辺縁帯(marginal zone)と命名した[2](図1)。発生初期の脳室帯は神経上皮細胞と呼ばれる神経幹細胞によって構成され、大脳皮質を構成するための神経系細胞の供給源となっている。

発生

 脳室帯を構成する細胞は、発生がすすむにつれて性質が変化する。発生のステージに従って形態が変化するとともに、分化能力も変化していく(図1)[2]

図2. 神経上皮細胞の細胞周期とエレベーター運動
 神経上皮細胞は核のエレベーター運動を行っており、この運動は細胞周期のリズムと連動している。脳室面で対称分裂あるいは非対称分裂が起こる。

発生初期

 神経管の壁は神経上皮と呼ばれ、脳室面と基底膜(後の軟膜)の間に挟まれた神経幹細胞によって構成されている。皮質板(cortical plate)が形成される頃になると、神経上皮の肥厚に伴って神経幹細胞は放射状に伸長した形態を示し、放射状グリアと呼ばれるようになる。この時、放射状グリアは細胞体を脳室帯に残したまま、伸長した放射状線維の先端を基底膜に付着させることによって上皮構造を維持している。

 神経上皮細胞は脳室面で細胞分裂M期)を行う[3] [4] (図2)。その過程で神経上皮細胞の核は、細胞周期に応じて脳室面から脳膜面の間を上下に移動し、エレベーター運動と呼ばれる。神経上皮が「偽重層」を示すのはこのためである。発生初期の神経上皮細胞は対称分裂することによって自己複製をくり返す。この対称分裂によって、脳室面に並ぶ神経上皮細胞数が爆発的に増加し、脳室帯を拡大する。対称分裂による神経上皮細胞の拡大産生期が終わる頃、非対称分裂が始まる。すなわち、1つの神経上皮細胞から1つの神経上皮細胞と1つの新生ニューロンが産生される。新生ニューロンは、脳室帯から放射状に移動し、適切な場所で移動を停止し、成熟ニューロンへと分化していく[1]。このような新生ニューロンの放射状移動によって、脳は放射状に拡大(radial expansion)していく。このように、神経上皮細胞の非対称分裂がくり返されることによって、脳室帯の維持と大脳皮質の形成を同時になし得ている[5]

新生児期

 側脳室外側壁の放射状グリアは、神経幹細胞の性質をもつアストロサイトと運動性の繊毛を有する上衣細胞へ分化する[6]。このとき上衣細胞が脳室面に並び、その隣(皮質側)の層が脳室下帯になる。

成体期

 新生児期に形成された上衣細胞の層と脳室下帯の構造は、その後成体期でも維持される。元々発生期の脳内の層を表す言葉として命名 [2] された脳室帯および脳室下帯と区別するため、成体脳における上衣細胞の単層を上衣層(ependymal layer)、その内側の層(皮質側)を上衣下層(subependymal layer)と呼ぶこともある。

マーカータンパク質

 神経上皮細胞/放射状グリアの分子マーカーがいくつか同定されている[7] [8]

神経上皮細胞マーカー

 SRY-box 2Sox2[9]および paired box 6Pax6[10] [11]などの転写因子や、脳に存在する脂肪酸結合タンパク質 (fatty acid biding protein 7, FABP7) / brain lipid binding proteinBLBP[12] [13]中間径フィラメントタンパク質であるネスチン[14]、放射状グリアのマーカーであるradial glial cell marker-2RC2[15]、RNA結合タンパク質 Musashi1[15]などは発生初期の神経上皮細胞から発現している。これらのうちPax6は神経上皮細胞の未分化性の維持に重要であり、FABP7の発現を制御する[16]

放射状グリアマーカー

 中間径フィラメントタンパク質であるビメンチン[17]、カルシウム結合タンパク質であるS100β[18]、アストロサイト特異的なグルタミン酸トランスポーター (GLAST)[19]グルタミン合成酵素 (GS) [20]細胞外マトリックス糖タンパク質であるテネシンC (TN-C)[11]などは放射状グリアに発現する。

関連項目

参考文献

  1. 1.0 1.1 Kriegstein, A., & Alvarez-Buylla, A. (2009).
    The glial nature of embryonic and adult neural stem cells. Annual review of neuroscience, 32, 149-84. [PubMed:19555289] [PMC] [WorldCat] [DOI]
  2. 2.0 2.1 2.2 (1970).
    Embryonic vertebrate central nervous system: revised terminology. The Boulder Committee. The Anatomical record, 166(2), 257-61. [PubMed:5414696] [WorldCat] [DOI]
  3. Sauer FC
    Mitosis in the neural tube
    J. Comp. Neurol.: 1935, 62(2);377-405
  4. Kosodo, Y., Suetsugu, T., Suda, M., Mimori-Kiyosue, Y., Toida, K., Baba, S.A., ..., & Matsuzaki, F. (2011).
    Regulation of interkinetic nuclear migration by cell cycle-coupled active and passive mechanisms in the developing brain. The EMBO journal, 30(9), 1690-704. [PubMed:21441895] [PMC] [WorldCat] [DOI]
  5. Rakic, P. (1995).
    A small step for the cell, a giant leap for mankind: a hypothesis of neocortical expansion during evolution. Trends in neurosciences, 18(9), 383-8. [PubMed:7482803] [WorldCat] [DOI]
  6. Spassky, N., Merkle, F.T., Flames, N., Tramontin, A.D., García-Verdugo, J.M., & Alvarez-Buylla, A. (2005).
    Adult ependymal cells are postmitotic and are derived from radial glial cells during embryogenesis. The Journal of neuroscience : the official journal of the Society for Neuroscience, 25(1), 10-8. [PubMed:15634762] [PMC] [WorldCat] [DOI]
  7. Mori, T., Buffo, A., & Götz, M. (2005).
    The novel roles of glial cells revisited: the contribution of radial glia and astrocytes to neurogenesis. Current topics in developmental biology, 69, 67-99. [PubMed:16243597] [WorldCat] [DOI]
  8. Malatesta, P., Hartfuss, E., & Götz, M. (2000).
    Isolation of radial glial cells by fluorescent-activated cell sorting reveals a neuronal lineage. Development (Cambridge, England), 127(24), 5253-63. [PubMed:11076748] [WorldCat]
  9. Episkopou, V. (2005).
    SOX2 functions in adult neural stem cells. Trends in neurosciences, 28(5), 219-21. [PubMed:15866195] [WorldCat] [DOI]
  10. Stoykova, A., Treichel, D., Hallonet, M., & Gruss, P. (2000).
    Pax6 modulates the dorsoventral patterning of the mammalian telencephalon. The Journal of neuroscience : the official journal of the Society for Neuroscience, 20(21), 8042-50. [PubMed:11050125] [PMC] [WorldCat]
  11. 11.0 11.1 Götz, M., Stoykova, A., & Gruss, P. (1998).
    Pax6 controls radial glia differentiation in the cerebral cortex. Neuron, 21(5), 1031-44. [PubMed:9856459] [WorldCat] [DOI]
  12. Feng, L., Hatten, M.E., & Heintz, N. (1994).
    Brain lipid-binding protein (BLBP): a novel signaling system in the developing mammalian CNS. Neuron, 12(4), 895-908. [PubMed:8161459] [WorldCat] [DOI]
  13. Kurtz, A., Zimmer, A., Schnütgen, F., Brüning, G., Spener, F., & Müller, T. (1994).
    The expression pattern of a novel gene encoding brain-fatty acid binding protein correlates with neuronal and glial cell development. Development (Cambridge, England), 120(9), 2637-49. [PubMed:7956838] [WorldCat]
  14. Frederiksen, K., & McKay, R.D. (1988).
    Proliferation and differentiation of rat neuroepithelial precursor cells in vivo. The Journal of neuroscience : the official journal of the Society for Neuroscience, 8(4), 1144-51. [PubMed:3357014] [WorldCat]
  15. 15.0 15.1 Kaneko, Y., Sakakibara, S., Imai, T., Suzuki, A., Nakamura, Y., Sawamoto, K., ..., & Okano, H. (2000).
    Musashi1: an evolutionally conserved marker for CNS progenitor cells including neural stem cells. Developmental neuroscience, 22(1-2), 139-53. [PubMed:10657706] [WorldCat] [DOI]
  16. Arai, Y., Funatsu, N., Numayama-Tsuruta, K., Nomura, T., Nakamura, S., & Osumi, N. (2005).
    Role of Fabp7, a downstream gene of Pax6, in the maintenance of neuroepithelial cells during early embryonic development of the rat cortex. The Journal of neuroscience : the official journal of the Society for Neuroscience, 25(42), 9752-61. [PubMed:16237179] [PMC] [WorldCat] [DOI]
  17. Schnitzer, J., Franke, W.W., & Schachner, M. (1981).
    Immunocytochemical demonstration of vimentin in astrocytes and ependymal cells of developing and adult mouse nervous system. The Journal of cell biology, 90(2), 435-47. [PubMed:7026573] [PMC] [WorldCat] [DOI]
  18. Vives, V., Alonso, G., Solal, A.C., Joubert, D., & Legraverend, C. (2003).
    Visualization of S100B-positive neurons and glia in the central nervous system of EGFP transgenic mice. The Journal of comparative neurology, 457(4), 404-19. [PubMed:12561079] [WorldCat] [DOI]
  19. Shibata, T., Yamada, K., Watanabe, M., Ikenaka, K., Wada, K., Tanaka, K., & Inoue, Y. (1997).
    Glutamate transporter GLAST is expressed in the radial glia-astrocyte lineage of developing mouse spinal cord. The Journal of neuroscience : the official journal of the Society for Neuroscience, 17(23), 9212-9. [PubMed:9364068] [WorldCat]
  20. Akimoto, J., Itoh, H., Miwa, T., & Ikeda, K. (1993).
    Immunohistochemical study of glutamine synthetase expression in early glial development. Brain research. Developmental brain research, 72(1), 9-14. [PubMed:8095865] [WorldCat] [DOI]