「脳室」の版間の差分

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[[Image:meninges.png|thumb|300px|'''図2.脳室と脳脊髄液'''<br />文献<ref name=terashima /> p181より改変して転載]]
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 ヒトの場合、[[脳脊髄液]]が産生される脳内の腔であり、通常は四つの脳室がある。左右一対の[[側脳室]]と、正中に[[第三脳室]]、[[第四脳室]]がある。これらは相互に連絡があり、そして[[くも膜下腔]]へと接続されることで、脳脊髄液は脳室内を循環する。
 [[脳脊髄液]]が産生される脳内の腔。ヒトの場合、左右に一対の[[側脳室]]と、正中に[[第三脳室]]、[[第四脳室]]が一つずつの、計四つの脳室がある。これらは相互に連絡があり、[[くも膜下腔]]へと接続されることで、脳脊髄液は脳室内を循環する。


== 側脳室==
== 側脳室==

2012年8月27日 (月) 14:40時点における版

英:cerebral ventricle

図1.脳室の展開図
文献[1] p183より改変して転載
図2.脳室と脳脊髄液
文献[1] p181より改変して転載

 脳脊髄液が産生される脳内の腔。ヒトの場合、左右に一対の側脳室と、正中に第三脳室第四脳室が一つずつの、計四つの脳室がある。これらは相互に連絡があり、くも膜下腔へと接続されることで、脳脊髄液は脳室内を循環する。

側脳室

図3.脈絡叢(サル)
神戸大学医学部寺島俊雄教授 恵与
文献[1] p184より許可を得て転載(編集コメント:スケールバー、染色法を御願い致します)

 側脳室(lateral ventricle)とは、左右の大脳半球の内部に対称性に存在する一対の空間(脳室)である。側脳室の脈絡叢で作られた脳脊髄液は、内側の室間孔モンロー孔、Monro foramen)を通じて第三脳室に入り、第三脳室の脈絡叢で作られた分とともに中脳水道から第四脳室に向かう。

第三脳室

 左右の側脳室より、室間孔(モンロー孔)によって接続されており、中脳水道により、第四脳室に通じる。第三脳室(third ventricle)の両壁は間脳が占めており、このうち側壁は視床、腹壁と側腹壁は視床下部に接している。左右の視床をつなぐ視床間橋が第三脳室を通り抜けている。

第四脳室

 菱脳(後脳)中にあり、第三脳室より中脳水道によって接続されている。中央の正中孔(マジャンディー孔)と左右一対の外側孔(ルシュカ孔)でくも膜下腔と交通する。この部のクモ膜小脳の尾側面で深く折れ込まないで脊髄のあたりまでなだらかに延びているので、クモ膜下腔は延髄後面と小脳の間で若干広がっている。この部分を小脳延髄槽と呼び、ルシュカ孔・マジャンディ孔から出た脳脊髄液はこの小脳延髄槽に流れ込む。第四脳室(fourth ventricle)は、平らな菱形窩と、菱形窩の周りから小脳に延びる上髄帆下髄帆の間でテントのような形になっている [2]

水頭症

 脳脊髄液の産生・循環・吸収などいずれかの異常により髄液が頭蓋腔内に貯まり、脳室が正常より大きくなる病気である。脳脊髄液による脳の圧迫が、脳機能に影響を与える。おもに乳幼児に多くみられる。

 原因は、先天奇形に伴うもの、脳の器質的疾患によるもの、感染症トキソプラズマが有名)などによるものがあるが、症状としては脳圧が上がることによる頭痛嘔吐視神経の圧迫による視力低下や視力異常、失明があり、これらの症状が天気による気圧の変化に影響されることがある。治療法は、脳室と腹腔とを繋ぐように皮下にチューブを通す脳室―腹腔短絡術(V-P shunt)を行うのが一般的である。その他に、脳室と心房とを繋ぐ脳室―心房短絡術(V-A shunt)、腰椎硬膜下腔と腹腔とを繋ぐ腰椎―腹腔短絡術(L-P shunt)も行われる [3]

血液脳関門と脳室周囲器官

図4.脳弓下器官から室傍核への投射終末
佐賀大学医学部河野史教授 恵与(編集コメント:動物種、スケールバー、染色法を御願い致します)
図5.脳弓下器官から終板器官への投射終末
佐賀大学医学部河野史教授 恵与(編集コメント:動物種、スケールバー、染色法を御願い致します)

 血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)とは、血液と脳(そして脊髄を含む中枢神経系)の組織液との間の物質交換を制限する機構である。これは実質的に「血液と脳脊髄液との間の物質交換を制限する機構」=血液髄液関門 (blood-CSF barrier) でもあることになる。ただし、血液脳関門は脳室周囲器官には存在しない。これは、これらの組織が分泌するホルモンなどの物質を全身に運ぶ必要があるためである。視床下部には終板器官(organum vasculosum of the lamina terminalis, OVLT)、脳弓下器官 (subfornical organ, SFO)、視索前野(preoptic area)がありお互いにネットワークを作りながら神経内分泌系や自律神経の中枢として機能している。例えば室傍核(paraventricular nucleus:PVN)は第三脳室に面しており、バゾプレッシンオキシトシンを産生する神経分泌ニューロン軸索下垂体後葉に投射し, 神経内分泌系の調節を担っている [4] [5]

関連項目

参考文献

  1. 1.0 1.1 1.2 寺島俊雄
    神経解剖学講義ノート
    金芳堂
  2. カーペンター
    神経解剖学 Malcolm B. Carpenter, Jerome Sutin,
    西村書店
  3. 編集 武内一夫
    標準脳神経外科学
    医学書院
  4. Hamamura, M., Onaka, T., & Yagi, K. (1986).
    Parvocellular neurosecretory neurons: converging inputs after saphenous nerve and hypovolemic stimulations in the rat. The Japanese journal of physiology, 36(5), 921-33. [PubMed:3031348] [WorldCat] [DOI]
  5. Leng, G., Luckman, S.M., Dyball, R.E., Dye, S., & Hamamura, M. (1993).
    Inputs from the nucleus tractus solitarii to the magnocellular neurosecretory system. Regulatory peptides, 45(1-2), 103-7. [PubMed:8511332] [WorldCat] [DOI]


(執筆者:藤山文乃 執筆協力:赤沢年一 担当編集委員:藤田一郎)