脳弓

提供:脳科学辞典
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図1.脳の断面図(脳梁と脳弓)
図中灰色が脳梁(交連線維)と脳弓(連合線維)
神経解剖学講義ノート 寺島俊雄著 金芳堂 p143より改変して転載

羅:fornix 英:fornix 

 脳弓は主として海馬体から出て乳頭体などに至る線維束で、脳梁の下で左右対をなして弓形を画く。これは脳弓柱脳弓体脳弓脚および海馬采に区分される。

解剖

図2 脳弓
赤で示した部分が脳弓である。
図3 脳弓
[1]より改変。右が吻側。
図4 交連前脳弓と交連後脳弓
神経解剖学講義ノート 寺島俊雄著 金芳堂 p149より改変して転載

 脳弓は主として海馬体から出て乳頭体などに至る白い線維束で、脳梁の下で左右対をなして弓形を画く(図1ー3)。これは海馬の大錐体細胞(編集コメント:通常、使われる用語ではないと思いますが、CA2,3の錐体細胞の事でしょうか、また、ca1からの繊維はどうでしょうか)の軸索と海馬台(編集コメント:海馬台に存在する何らかの細胞の軸索ではないかとおもいます)からなり、海馬白板として側脳室表面に広がり、それらがまとまって海馬采(fimbria)を形成する。両側の海馬采は後方へ進むにつれて太くなり、海馬の後端に至って脳梁膨大の下を脳弓脚となって弧を描いて上ると同時に両側のものが互いに近づいてくる。このあたりで多数の線維が反対側の脳弓に入る。すなわち交叉線維が薄く板状に広がって脳弓交連(fornical comissure)を形成する。海馬台より起こり前交連の後方を通過して乳頭体に至る交連後脳弓と、海馬より起こり前交連の前方を通過して中隔野(核)に終わる交連前脳弓がある(図4)[2]

 脳の白質には左右の脳を結ぶ交連線維と同側の大脳半球の異なる領域を繋ぐ連合線維(association fiber)が存在し、後者には隣接する脳回を繋ぐ短い連合線維と異なる領域にまたがる長い連合線維が存在する。脳弓は長い連合線維の代表的なもので海馬体から出て乳頭体などに至る線維束である。また、対側海馬へ投射する交連線維も含まれる(編集コメント:正しいかご確認下さい)。 (脳弓柱、脳弓体について本文でご説明下さい)

機能

図5 Papezの回路
神経解剖学講義ノート 寺島俊雄著 金芳堂 p120より改変して転載

 脳弓は大脳辺縁系をつなぐ線維連絡として知られている。大脳辺縁系の領域は文献により異なるが、古くは1937年に、アメリカの神経解剖学者である James Papez が「帯状回が興奮すると、海馬体、乳頭体、視床前核を経て帯状回に刺激が戻る」という神経回路を想定し、このモデルは古典的な「パペッツの情動回路 Papez circuit」として知られている(図5)。パペッツの理論はマクレーン Paul D.MacLean により、より広い領域に対する、現在の概念に近い「大脳辺縁系」に対して拡張された。現在は辺縁系のうち、扁桃体海馬体の機能が解明されてきている。

脳弓下器官

 近年、脳弓下器官 (subfornical organ; SFO)に血液や脳脊髄液に代表される体液(細胞外)中のNa(ナトリウム)濃度や細胞内のNa濃度の恒常性を保つためのNaxチャンネルというセンサーがあることがわかってきた。Nax中枢神経系では、主に脳室周囲器官 (circumventricular organs;CVOs) に発現しており、脳弓下器官の他には終板脈管器官 (organum vasculosum of the lamina terminalis; OVLT) や最後野 (area postrema) にも存在が確認されている。この3領域は他の多くの脳領域と神経結合をつくっており、脳室表面に位置し、血液脳関門が無いことから、体液中の物質の受容や感知に適した場所であると考えられる [3] [4]。(編集コメント:図6、7を本文でご説明下さい)

関連項目

参考文献

  1. Henry Gray
    Anatomy of the Human Body
    Longman Ltd., Edinburgh, 1973
  2. カーペンター
    神経解剖学 Malcolm B. Carpenter, Jerome Sutin,
    西村書店
  3. 檜山武史、野田昌晴
    脳における体液Naレベル感知機構―グリア細胞が神経活動を制御するしくみの解明
    実験医学, 25(16), 2007
  4. 野田昌晴
    体液 Na+レベルの感知機構
    蛋白質 核酸 酵素, 53(10), 1258-1266, 2008


(執筆者:藤山文乃 執筆協力:赤沢年一 担当編集委員:藤田一郎)