「脳梗塞」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0165172 細見 直永]、[http://researchmap.jp/read0088926 松本 昌泰]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0165172 細見 直永]、[http://researchmap.jp/read0088926 松本 昌泰]</font><br>
''広島大学大学院 [[脳神経]]内科学''<br>
''広島大学大学院 脳神経内科学''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年2月24日 原稿完成日:2016年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年2月24日 原稿完成日:2016年3月4日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0141446 漆谷 真](京都大学 大学院医学研究科)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0141446 漆谷 真](滋賀医科大学 医学部 脳神経内科)<br>
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*[[CT]]:脳梗塞急性期の来院時には脳出血との鑑別目的にて撮像される。脳梗塞超急性期に明らかな低吸収域として病巣が検出されることは少なく、明らかな低吸収域が検出されるまでには12時間以上かかることも多い。また、脳梗塞の超急性期に認められる微細なCT上の変化(早期虚血性変化(early CT sign))として、[[皮髄境界]]の消失、[[レンズ核]]の不明瞭化、脳溝の消失などが知られている。早期虚血性変化の診断には熟達が必要であるが、[http://melt.umin.ac.jp/MELT_WEB_SWFObj_Final/ "Early CT signs判読トレーニング"]サイトにてe-learningで画像診断訓練を行うことができる。CT画像の所見に基づき早期虚血性変化が認められる領域を評価し、減点法により虚血領域を評価するAlbert Stroke Program Early CT Score(ASPECTS)も脳梗塞サイズを半定量評価するのに有効である。
*[[CT]]:脳梗塞急性期の来院時には脳出血との鑑別目的にて撮像される。脳梗塞超急性期に明らかな低吸収域として病巣が検出されることは少なく、明らかな低吸収域が検出されるまでには12時間以上かかることも多い。また、脳梗塞の超急性期に認められる微細なCT上の変化(早期虚血性変化(early CT sign))として、[[皮髄境界]]の消失、[[レンズ核]]の不明瞭化、脳溝の消失などが知られている。早期虚血性変化の診断には熟達が必要であるが、[http://melt.umin.ac.jp/MELT_WEB_SWFObj_Final/ "Early CT signs判読トレーニング"]サイトにてe-learningで画像診断訓練を行うことができる。CT画像の所見に基づき早期虚血性変化が認められる領域を評価し、減点法により虚血領域を評価するAlbert Stroke Program Early CT Score(ASPECTS)も脳梗塞サイズを半定量評価するのに有効である。
*[[MRI]]:脳梗塞超急性期には[[T1強調画像|T1]]・[[T2強調画像]]などのMRIシーケンスでは病巣の検出が困難である。しかしながら、[[拡散強調画像]]により、早期から病巣を高信号域として確認することが可能である。[[MRA]]により頭蓋内の狭窄・閉塞血管を把握することは治療方針決定のためにも必要である。
*[[MRI]]:脳梗塞超急性期には[[T1強調画像|T1]]・[[T2強調画像]]などのMRIシーケンスでは病巣の検出が困難である。しかしながら、[[拡散強調画像]]により、早期から病巣を高信号域として確認することが可能である。[[MRA]]により頭蓋内の狭窄・閉塞血管を把握することは治療方針決定のためにも必要である。
頸動脈エコー]]:頭蓋外血管とくに[[wikipedia:ja:頸動脈|頸動脈]]分岐部の[[wikipedia:ja:動脈硬化|動脈硬化]]病変や[[wikipedia:ja:内頸動脈|内頸動脈]]や[[椎骨動脈]]などの動脈解離が脳梗塞の原因となりえる。頸動脈エコーは頸部血管の状態の把握が簡便であり非侵襲検査であることから必須の検査である。
*[[wj:頸動脈|頸動脈]][[wj:超音波検査|エコー]]:頭蓋外血管とくに[[wikipedia:ja:頸動脈|頸動脈]]分岐部の[[wikipedia:ja:動脈硬化|動脈硬化]]病変や[[wikipedia:ja:内頸動脈|内頸動脈]]や[[椎骨動脈]]などの動脈解離が脳梗塞の原因となりえる。頸動脈エコーは頸部血管の状態の把握が簡便であり非侵襲検査であることから必須の検査である。
*[[wikipedia:ja:心電図|心電図:[[心原性脳塞栓症]]の原因となる心筋梗塞・心筋症などの検出のために必要な検査である。また動脈硬化性脳梗塞である[[アテローム血栓性脳梗塞]]や[[ラクナ梗塞]]には[[wikipedia:ja:冠動脈|冠動脈]]疾患が合併する可能性があり、この評価としても必要である。
*[[wikipedia:ja:心電図|心電図]]:[[心原性脳塞栓症]]の原因となる心筋梗塞・心筋症などの検出のために必要な検査である。また動脈硬化性脳梗塞である[[アテローム血栓性脳梗塞]]や[[ラクナ梗塞]]には[[wikipedia:ja:冠動脈|冠動脈]]疾患が合併する可能性があり、この評価としても必要である。
*[[wikipedia:ja:心エコー|心エコー]](経胸壁及び経食道):心原性脳塞栓症の原因となる心疾患を検出する。心腔内に血栓が検出されることもあるが、心原性脳塞栓症の原因心疾患の同定には血栓自体の検出は必須ではない。また心腔内のモヤモヤエコーが高度であれば、塞栓症リスクが高度となることが知られている。
*心エコー(経胸壁及び経食道):心原性脳塞栓症の原因となる心疾患を検出する。心腔内に血栓が検出されることもあるが、心原性脳塞栓症の原因心疾患の同定には血栓自体の検出は必須ではない。また心腔内のモヤモヤエコーが高度であれば、塞栓症リスクが高度となることが知られている。


 これらの検査の結果をふまえて、脳梗塞の病型分類を行い、各病型に応じた急性期治療と再発予防治療を行う必要がある。
 これらの検査の結果をふまえて、脳梗塞の病型分類を行い、各病型に応じた急性期治療と再発予防治療を行う必要がある。
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[[image:脳梗塞1.png|thumb|350px|'''図1.CHADS2 スコア'''<br>心房細動の脳卒中発症率をリスク数により層別。
[[image:脳梗塞1.png|thumb|350px|'''図1.CHADS2 スコア'''<br>心房細動の脳卒中発症率をリスク数により層別。
最大6点で、0点は抗血栓薬不要、1点はワルファリン治療を考慮、2点以上はワルファリン治療を推奨。(文献<ref name=ref1><pubmed>11401607</pubmed></ref>より作図)]]
最大6点で、0点は抗血栓薬不要、1点はワルファリン治療を考慮、2点以上はワルファリン治療を推奨。(文献<ref name=ref1><pubmed>11401607</pubmed></ref>より作図)]]
[[image:脳梗塞2.png|thumb|350px|'''図2.ABCD2 スコア'''<br>一過性脳虚血発作の脳卒中発症率をリスク数にて層別。
最大7点で4点以上が緊急入院の適応。(文献<ref name=ref4><pubmed>17258668</pubmed></ref>より引用)]]


 脳梗塞は、①心原性脳塞栓症、②アテローム血栓性脳梗塞、③ラクナ梗塞、④その他の4病型に分けられる。
 脳梗塞は、①心原性脳塞栓症、②アテローム血栓性脳梗塞、③ラクナ梗塞、④その他の4病型に分けられる。
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====一過性脳虚血発作====
====一過性脳虚血発作====
[[image:脳梗塞2.png|thumb|350px|'''図2.ABCD2 スコア'''<br>一過性脳虚血発作の脳卒中発症率をリスク数にて層別。
最大7点で4点以上が緊急入院の適応。(文献<ref name=ref4><pubmed>17258668</pubmed></ref>より引用)]]
 一過性脳虚血発作(transient ischemic attack: TIA)は、片麻痺や失語などの明らかな脳の局所神経症状(巣症状)が出現し、24時間以内に完全に消失するものと定義されているが、通常は数分から数十分以内に症状が完全消失し、長くても1時間以内に改善する場合が大半である。原因としては頸動脈分岐部のアテローム動脈硬化病変に形成された壁在血栓が剥離して、微小塞栓として脳動脈を一過性に閉塞し発症する病態が多い(微小塞栓機序)。ただし、高度の狭窄や閉塞による潜在的な脳血流不全状態があるときに、脱水や血圧低下などにより、一過性に血流不全状態が強くなり症状を発現する病態(血行力学的機序)や心房細動などの心原性による病態もある。いずれの病態においても、TIAは来るべき脳梗塞の前触れ、危険信号であり、速やかに対処すべき非常に重要な病態である。
 一過性脳虚血発作(transient ischemic attack: TIA)は、片麻痺や失語などの明らかな脳の局所神経症状(巣症状)が出現し、24時間以内に完全に消失するものと定義されているが、通常は数分から数十分以内に症状が完全消失し、長くても1時間以内に改善する場合が大半である。原因としては頸動脈分岐部のアテローム動脈硬化病変に形成された壁在血栓が剥離して、微小塞栓として脳動脈を一過性に閉塞し発症する病態が多い(微小塞栓機序)。ただし、高度の狭窄や閉塞による潜在的な脳血流不全状態があるときに、脱水や血圧低下などにより、一過性に血流不全状態が強くなり症状を発現する病態(血行力学的機序)や心房細動などの心原性による病態もある。いずれの病態においても、TIAは来るべき脳梗塞の前触れ、危険信号であり、速やかに対処すべき非常に重要な病態である。


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