脳胞

提供:脳科学辞典
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勝山 裕
滋賀医科大学 解剖学講座
DOI:10.14931/bsd.3730 原稿受付日:2013年1月9日 原稿完成日:2014年11月13日
担当編集委員:大隅 典子(東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 脳神経科学コアセンター 発生発達神経科学分野)

英:cerebral vesicle, brain vesicle 独:Gehirnbläschen 仏:vésicules cérébrales, vésicules céphaliques

 ヒト胎生3、4週に観察される神経管前方にある3つの膨隆部をさす。前方より前脳胞、中脳胞、菱脳胞(もしくは後脳胞)という。膨隆の壁は神経組織を分化させ、内腔は脳室となる。さらに第5週には前脳胞が終脳胞と間脳胞に、菱脳胞が後脳胞と髄脳胞に区別され二次脳胞となる。終脳胞は左右に膨出し内腔は側脳室となる。間脳胞内腔、中脳胞内腔、後脳胞内腔はそれぞれ第三脳室、中脳水道、第四脳室になる。終脳胞の背側は大脳皮質となり、腹側からは大脳基底核などが分化する。

図1.神経管の形成
神経管(高橋将文)から引用
図2.三脳胞期と五脳胞期
終脳(黒田 一樹、佐藤 真)から引用
図3.脳胞の発生過程
脳を構成する主要な部位が脳胞の発生に従って、どのように分かれて行くかを示す。

 ヒトの発生では第3週の初めに背側正中外胚葉の肥厚として神経板が出現する。神経板の正中部は陥凹して神経溝となり、その両側は羊膜腔側に隆起して、やがてその突端で融合し管状(神経管)となる(図1)。神経管形成は胚の頸部域から始まり、前後両方へ進む。前方部の閉鎖は頭部側端からも始まる。この過程でまだ閉じておらず羊膜腔に通じている部分を頭側神経孔と呼ぶが、この神経孔が徐々に小さくなる。この時期(胎生3、4週)、神経管前方は後方に比べて膨大してふくらみとして観察される。このふくらみは脳胞(一次脳胞)と呼ばれ、3つの膨隆部をもつことからこの発生段階を三脳胞期一次脳胞期)と言う(図2)。膨隆は前方より前脳胞中脳胞菱脳胞(もしくは後脳胞)からなる。膨隆の壁は神経組織を分化させ、内腔は脳室となる[1]

 第5週に前脳胞が終脳胞間脳胞に、菱脳胞が後脳胞髄脳胞に区別され二次脳胞を形成する。終脳胞は左右に膨出し内腔は側脳室となる(図3)。間脳胞内腔、後脳胞内腔はそれぞれ第三脳室第四脳室になる。中脳胞内腔は大きく形態変化をみせることなく中脳水道となる。終脳の背側は大脳皮質となり、腹側からは大脳基底核などが分化する。間脳胞域からは視床上部視床視床下部が分化する。後脳胞域の背側は小脳が生じ、腹側はを形成する。髄脳域は延髄となり、脊髄につながる[2]

関連項目

参考文献

  1. ラーセン人体発生学(第4版)第9章中枢神経系の発生
    西村書店
  2. O’Rahilly, R., Muller, F.
    Human embryology and teratology 2nd ed.
    Chapter 19 The nervous system
    Wiley-Liss 1996.