腸管神経系

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桑原 厚和
静岡県立大学
DOI:10.14931/bsd.6483 原稿受付日:2015年9月24日 原稿完成日:2015年月日
担当編集委員:伊佐 正(自然科学研究機構生理学研究所)

英語名: Enteric Nervous System 英略:ENS

 腸管神経系は消化管壁に内在する神経系であり、食道から肛門までの消化管全域にわたり神経ネットワークを構築している。縦走筋と輪走筋との間に位置する筋層間神経叢(Auerbach's plexus; Myenteric plexus)と粘膜下組織に位置する粘膜下神経叢(Meissner's Plexus; Submucosal plexus)により構成される。腸管神経系のみで反射弓を構成できるため、消化管運動や粘膜における水や電解質の輸送などの制御は、中枢神経系を介さずに自律的に行うことができる。腸管神経系による自律的制御は外来神経である自律神経系により修飾される。腸管神経系はその自律的制御や中枢神経系に類似する機能に加え、構成するニューロンの数が脊髄に存在するニューロンの数に匹敵することから「第二の脳」とも称される。

はじめに

 腸管神経系は消化管全域に存在する内在性の神経系であり、筋層間神経叢(Auerbach's plexus or Myenteric plexus)と粘膜下神経叢(Meissner's plexus or Submucosal plexus)という2つの神経叢からなる。筋層間神経叢は縦走筋と輪走筋との間に存在し、粘膜下神経叢は粘膜と輪走筋との間の粘膜下組織に存在する。

 自律神経系の一部をなす腸管神経系は、交感神経系や副交感神経系をはじめ、中枢神経系とも緊密に連絡しており、生体全体の生理的制御を行う中枢神経系と協調しながら、消化管における局所的制御を行っている。

 一方、腸管神経系は中枢神経系を介さずに消化管機能を制御できることから「第二の脳」とも呼ばれ、末梢神経系において局所的に自律機能を制御することのできる複雑な神経回路網を有している。すなわち、消化管における様々な物理的・化学的変化を検出し、その情報を統合し、出力を消化管平滑筋や粘膜上皮などの各種効果器へ伝えることができる。消化管壁内に存在する腸管神経系は唯一、末梢神経系で反射弓を構成する神経系である。従って、消化管は副交感神経や交感神経などの外来神経の支配がなくとも、物理的・化学的刺激に応答して蠕動反射や電解質・水分泌反射を誘発することができる。

 本稿では腸管神経系の一般的な構造と主な機能について概説する。

腸管神経系の構造

図1.消化管に分布する腸管神経節
筋層間神経叢(赤)は食道上部から内肛門括約筋に至る消化管全域に分布する。
粘膜下神経叢は主の小腸と大腸に分布する。
孤立神経節は胃や食道の粘膜下と消化管全域の粘膜下に存在する[1]より引用
図2.小腸壁に存在する神経叢
(メルボルン大学 J.B Furness教授の好意により掲載)
A: 消化管壁の模式図
B:横断図

 腸管神経系は食道から肛門に及ぶ消化管と膵臓、胆嚢や胆道系の壁内に存在し、神経節と神経節間を結ぶ神経線維、および粘膜上皮や小動脈などの効果器へ投射する神経線維から成り立っている(図1)。ヒトの腸管神経系に存在する神経細胞の数は4億から6億に達し[1]、他のどの末梢器官に存在する神経細胞の数より多く、脊髄に存在する神経細胞の総数に匹敵する。

 腸管神経節には神経細胞とグリア細胞が存在し、多くの点で中枢神経系の構造に類似している。しかしながら、腸管神経節には結合組織性の要素は存在せず、中枢神経系でみられる血液脳関門のような構造も存在しない[2]

 腸管神経叢に存在する神経線維束には腸管神経系の軸索と消化管に投射する外来神経の軸索及びグリア細胞が含まれる。筋層間神経叢と粘膜下神経叢は、形態的・機能的に互いに連絡し、さらに外来神経である副交感神経系(迷走神経や骨盤神経)や交感神経系(血管運動神経など)とも連絡している(図2)。なお、外来神経の中には中枢神経系からの指令を効果器に伝える遠心性神経ばかりでなく、消化管からの情報を中枢神経系に伝える求心性神経も含まれている。

筋層間神経叢

図3.筋層間神経叢(写真)
モルモット遠位結腸縦走筋‐筋層間神経叢のホールマウント標本を蛍光免疫染色した。
A: 神経性NO 合成酵素(NOS)に対する特異的抗体を一次抗体とした。図中の白線は 500 μm を意味する。
B: NOS (緑)と NPY (赤)の二重染色。NOS 陽性神経の細胞体と神経線維、NPY 陽性の神経膨隆部がみられる。図中の白線は 100 μm を意味する。 [3]より引用

 筋層間神経叢は輪走筋と縦走筋にはさまれて存在する(図2、3)[3]。この神経叢は消化管壁内で環状の神経ネットワークを構築すると共に、食道から肛門までの消化管全長にわたる長軸方向にも連続したネットワークを構築している。

 筋層間神経叢の機能は解剖学的位置から類推されるように、主に消化管運動の制御に関与するが、粘膜下神経叢を介して粘膜上皮の機能である電解質や水の輸送などにも関与している。

粘膜下神経叢

図4.モルモット遠位大腸の粘膜下神経叢
緑:NOS; 赤:NK1受容体
[3]より引用

 粘膜下神経叢は粘膜下組織に存在し、筋層間神経叢と同様に、消化管壁に環状および長軸方向に網の目構造を形成して広がる(図2、4)。しかし、その存在様式は、消化管の部位により筋層間神経叢とは異なる。すなわち、粘膜下神経叢の神経節は小腸と大腸にのみ認められ、食道や胃では観察されない(図1)[1]。一般的に、胃ではごく少数の神経節が粘膜下で観察されるが、神経節や神経節間を連絡する神経線維束は筋層間神経叢に比較して小さい[3]

 粘膜下神経叢の機能は、粘膜上皮における電解質や水の分泌制御および粘膜に存在する小動脈の血流制御などに関与している。

腸管神経系を構成する細胞の分類

図5.S および AH 神経細胞の活動電位
モルモット小腸筋層間神経叢の神経細胞にガラス微小電極を刺入し、1 nA、200 msの脱分極性の電流パルスを加えた時に発生する活動電位を示したものである。[4]より引用改変

 腸管神経系を構成する神経細胞は、形態的・細胞生理学的特徴と神経に含まれる化学物質や神経の走行経路などの組み合わせにより約20種類に分類される(表1)[1]。また、腸管神経系には中枢神経系のそれと類似したグリア細胞も存在する。

 腸管神経系は、神経細胞に含まれる化学物質や放出される伝達物質などにより、内在性求心性神経(intrinsic primary afferent neuron; IPAN[5])、介在神経及び運動神経の3種類を同定することができる。興奮性運動神経細胞に含まれる伝達物質はacetylcholine(ACh)やsubstance P(SP)を代表とするタキキニン類、抑制性運動神経に含まれるものはnitric oxide(NO)、vasoactive intestinal polypeptide(VIP)やATPがある。加えて、電気生理学的特性からS(Synaptic)型とAH(After hyperpolarization)型の2つの型に分類される(図5)[6] [7] [4]

内在性一次求心性神経

図6.腸管神経細胞の形態学的分類
[8]から引用改変

 内在性求心性神経はDogiel II型神経に分類され、消化管の機械的・化学的刺激を感知する感覚神経と考えられている。この神経の細胞体は円形あるいは卵円形(13-47 μm)で、筋層間神経叢及び粘膜下神経叢にある神経細胞の約10-15%を占める[9]。この型の細胞は3~10本の樹状突起と1本の軸索を有していると報告されたが、現在では形態的・機能的研究からすべての突起は軸索であると考えられている[10] [11](図6)。筋層間神経叢からの内在性一次求心性神経線維は粘膜下神経叢へも側枝を伸ばし、粘膜下神経叢に存在する内在性一次求心性神経と共に粘膜にも投射する。内在性一次求心性神経は後根神経節に存在する外来性一次求心性神経(extrinsic primary afferent neuron)と特性が似ており、SPやcalcitonin gene-related peptide(CGRP)を神経伝達物質とする。また、感覚神経としてばかりでなく、侵害受容器としても機能する[5]

 Digiel II型神経は電気生理学的分類におけるAH神経細胞とほぼ一致するので、AH/Type II神経細胞と呼ばれることが多い。AH 神経細胞の“AH”は、後過分極 after-hyperpolarizing の頭文字であり、活動電位の発生後に数秒から数十秒にわたって続く、遅い後過分極が見られるのが特徴である(図5 AH)。通常、AH神経細胞の活動電位は脱分極刺激に反応して75-110 mVという大きな活動電位を1つしか発生しない[4]。また、この神経細胞には速い興奮性シナプス後電位fast excitatory synaptic potential(fast EPSP)は発生せず、細胞体から記録される活動電位は、TTX-感受性のNa+チャネルと非感受性のCa2+チャネルを介した内向き電流からなるため、細胞体の活動電位はTTX存在下でもCa2+電流のみで充分発生させることができる。これに対し、軸索から記録される活動電位はTTXにより遮断されるので、TTX感受性のNa+チャネルは軸索での伝導に関与することが考えられる。

 内在性一次求心性神経は内在性一次求心性神経同士、介在神経および運動神経ともシナプスを形成し、腸管神経系内で反射弓を構成している。そのため、消化管の運動や血流および電解質輸送などの調節は、外来神経の関与がなくても腸管神経系の局所反射により制御することができる。すなわち、局所反射は、消化管内に存在する化学物質や消化管壁の伸展あるいは粘膜への機械的刺激などによる内在性一次求心性神経の興奮により誘発される。

 消化管の伸展や管腔内に存在する化学成分などの生理的状態、あるいは炎症などの病態生理的状態は、常に内在性一次求心性神経をはじめ、腸内分泌細胞や腸管免疫系を構成する細胞により監視されている。消化管に達する外来神経である迷走神経や内臓神経には50,000本以上の求心性神経線維が含まれているが、腸管神経系を構成する神経細胞の約20%は内在性一次求心性神経である。これら外来性および内在性求心性神経は、いずれもSPやCGRPを神経伝達物質とし、TTX-抵抗性電位依存性Na+チャネルや高電位で活性化されるCa2+チャネル等の特性を有している[2]

介在神経

 筋層間神経叢の中で介在神経は口側および肛門側に鎖状にシナプスを作りながら伸びている[12] [13] [8]。介在神経も介在神経同士、内在性一次求心性神経や運動神経ともシナプス結合を有している。モルモット小腸では、3種類の下行性介在神経(ACh/NOS, ACh/5-HT及びACh/SOM)[1]と1種類の上行性介在神経が認められる。モルモット回腸の粘膜下神経叢には、筋層間神経叢に向かって1本の軸索を出すVIP陽性神経が少数存在するが、粘膜や小血管へ側枝を伸ばさないため、両神経叢を結ぶ介在神経と考えられる[14]

運動神経

 消化管を構成する粘膜筋板、輪走筋および縦走筋は、興奮性抑制性の神経支配を受けている。これらの運動神経は単一の軸索を持つS型の神経である。S神経細胞の“S”は synaptic の頭文字であり、近傍の神経線維束を電気刺激することによってfast EPSPが観察されることから命名された。S型神経は比較的高い入力抵抗を示し、脱分極刺激を行っている間は活動電位を発生するばかりでなく、20-100 ms程度の短い後過分極を伴う。また、この神経に発生する活動電位はTTXにより抑制されるため、Na+チャネルによるものである(図5S)。さらに、S型神経細胞においてはfast EPSPの加重により活動電位を発生するが、slow EPSPも記録される。S型神経細胞の形状は様々であるが、全て軸索を1本のみ有する神経細胞でありDogiel II型には分類されない。従って、その機能は運動神経あるいは介在神経と考えられる。

 輪走筋を支配する運動神経の大部分は筋層間神経叢に存在するが、ヒトを含む一部の哺乳類では粘膜下神経叢由来の神経も輪走筋を支配している。括約筋も含めた消化管の輪走筋を支配する運動神経には興奮性と抑制性の2種類がある。興奮性運動神経はAChやSPなどを、抑制性運動神経はNO、VIPおよびATPなどを伝達物質とし[15]、縦が13~35 μm、幅は9~22 μmの扁平な形の細胞体から4~20以上の樹状突起と1本の軸索を出すDogiel I型細胞に分類される(図6)。多くのI型神経の軸索は神経節を出て4ないしそれ以上の神経節を経由して輪走筋層に至る。

 多くの小動物では縦走筋へ投射している運動神経細胞の大部分は筋層間神経叢にあるが、モルモットでは筋層間神経叢にある細胞の約25%が縦走筋を支配している[1]。しかし、ブタのような大きな動物では、縦走筋を支配する運動神経は一部、粘膜下神経叢にも由来する。 粘膜筋板も興奮性と抑制性の運動神経支配を受けるが、その細胞体は粘膜下神経叢に存在する[16] [17]

 粘膜や小動脈に投射している運動神経の細胞体は粘膜下神経叢に存在し[1]、水分や電解質の輸送制御に関与している。粘膜上皮と消化管壁に存在する細動脈を支配する運動神経にはVIP/PACAPを伝達物質とする非コリン作働性分泌運動/血管拡張神経、カルレチニンを含むコリン作働性分泌運動/血管拡張神経、そしてNeuropeptide Y(NPY)を含むコリン作働性分泌運動神経の3種類あると考えられる[18]。VIPおよびその関連ペプチドは粘膜上皮に作用して水の分泌を誘発するが[19]、VIP分泌運動神経は多くの哺乳類で小腸、大腸および胆嚢にも広範囲に分布している[20]

グリア細胞

 腸管神経叢の神経細胞や神経線維を支持している多数のグリア細胞はDogielにより1899年に初めて記載されたが[21]、1970年代に電子顕微鏡レベルでの解析がなされるまで、その詳細については明らかにされなかった[22] [23]。しかしながら、ここ数年、腸管グリアに関しての形態的及び機能的知見が集積しはじめ、消化管機能との関連について注目が集まってきている。

 現在のところ、カルシウム結合タンパクであるS100[24]やglial fibrillary acidic protein(GFAP)[25]およびSOX8、SOX9あるいはSOX10[26]などの転写因子を発現する細胞を腸管グリアと呼んでおり、電気生理学的特性が中枢神経系のアストログリアと極めて類似している[27]。神経細胞よりわずかに多い腸管グリアは腸管神経叢ばかりでなく、粘膜の直下にある結合組織にも存在する[28]。腸管グリア細胞はその形態的特徴と分布域から少なくとも4種類に区別することができる[28]

 粘膜直下に存在する腸管グリアはS100とGFAPを含んでおり、上皮細胞の分化やバリアー機能に重要な因子(S-nitrosoglutathione, 15-deoxy-Δ-12,14-prostaglandin J2(15-d-PGJ)、transforming growth factor β1、proepidermal growth factor)を分泌する[28]。腸管グリアと腸管神経細胞の連絡はconnexin-43が関与する細胞内カルシウム濃度の上昇を介して行われる[29] [30]。腸管神経の保護や再生に関与している腸管グリア[31] [32]には、多くの神経伝達物質受容体や神経調節物質受容体も発現しているため、神経から放出される伝達物質にも反応する[29] [33]。すなわち、腸管神経から放出されたATPが腸管グリア上のP2受容体に結合して腸管グリアを活性化させたり、腸管グリアの減少が消化管運動の減弱を引き起こす[34]

Intestinofugal neurons

 Intestionofugal神経は細胞体が大腸の筋層間神経叢にあり、交感神経節後線維との間にシナプスを作り、消化管全域を支配する交感神経節後線維を支配している[35] [36]。この神経は消化管の輪状筋方向に配置され、壁の伸展や内容物の移動及び消化管の容積変化を感知する機械刺激受容器として機能する。Intestinofugal神経からの情報は交感神経性椎前神経節に伝えられ、交感神経と協調して消化管の全長にわたる運動の制御に関与する[36]。すなわち、大腸の拡張刺激により椎前神経節内でAChを放出し、ニコチン性fast EPSPを発生させ、消化管各部位間における局所反射の求心路を形成する。この細胞は小動物では筋層間神経叢にありDogiel I型の形態を示す[1]が、ブタでは粘膜下神経叢にも認められる[37]

消化管運動の制御

[1] [2] [3] [38]

 腸管神経系は内容物を肛門側へ移動させる蠕動運動、内容物を混和する分節運動、空腹期に十二指腸から回腸末端まで強い収縮が規則正しく伝播する空腹期伝播性収縮運動(interdigestive migrating motor contraction(IMMC))、さらには嘔吐に関連した逆蠕動など各種の運動パターンを制御している。腸管神経系には、この様な多彩な運動パターンを消化管平滑筋に起こさせるような神経回路網が存在する。

 消化管運動の局所反射は、粘膜への機械的・化学的刺激や腸管壁への伸展刺激により誘発される。腸管の伸展刺激による反射は粘膜と粘膜下組織を除去しても発生するので、伸展刺激に反応する内在性一次求心性神経線維は筋層に存在し、筋層間神経叢に存在する介在神経と運動神経により、反射が誘発されることを示している。しかしながら、ヒトを含む大動物では、縦走筋や輪走筋を支配する運動神経は粘膜下神経叢にも存在し、運動反射に関与している[1]。内在性運動反射に関与する内在性一次求心性神経は介在神経とslow EPSPによりシナプス結合し、運動神経は平滑筋に分布している。

 空腹期伝播性収縮運動(IMMC))は、食後に残った残渣や過剰に増殖した小腸の腸内細菌などを取り除き、次の食事に備えるための運動と考えられている。ヒトでは食間期に強い収縮波が90分間隔で胃前庭部から回腸末端まで移動するが、移動速度は1分間に1~4cmと遅い。小腸におけるIMMCはTTXの局所投与やニコチン様受容体の阻害薬であるヘキサメソニウムにより抑制されるため、腸管神経系により制御されていることが考えられる。大腸運動も内容物を輸送するために腸管神経系により制御されている。実際、ヒルシュスプリング病のような先天的に直腸と大腸の腸管神経叢が欠損している患者では、大腸運動はうまく機能しない[38]

水や電解質の輸送および血流の制御

[1] [2] [3] [38]

 小腸と大腸における水と電解質の輸送は、腸管神経系により制御されている。この反射は脳幹にある循環中枢を介した血圧や血流量の変化に反応する抑制性交感神経経路から独立している。電解質や水の輸送およびイオンに対する透過性の調節は、神経伝達物質としてVIPとAChを利用する分泌運動神経により制御されている。ほとんどの分泌運動神経の細胞体は粘膜下神経節に存在する。また、水や電解質の分泌には分泌される水や電解質を供給するための血管拡張を伴う。

 水や電解質の輸送は胃、小腸、大腸、膵臓および胆嚢などで行われ、水は浸透圧活性を有する分子の移動に伴い、粘膜上皮を介して管腔と血管側の間を移動する。小腸管腔に流入する水分量は1日当たり8~9 Lに達するが、これは総血液量を上回る量であり、腸管神経系による水や電解質の輸送制御は、生体の電解質バランスや体液量の制御に極めて重要である。消化管粘膜における水の輸送に伴って栄養素やNa+の吸収が行われ、小腸、大腸、膵臓および胆嚢で行われる管腔内への水の分泌はCl-とHCO3-の分泌を伴う。    粘膜への血液の供給は血管拡張神経を介して制御されており、粘膜の血流量は粘膜上皮の活動に応じて適切に調節されている。一方、腸管神経系には血管収縮神経は存在しない。なお、消化管に供給される総血液量は交感神経性の血管収縮神経により中枢性に制御されている。

 小腸粘膜下神経叢には3種類の分泌運動神経が存在する。1つはVIPを含む非コリン作働性神経であり、他の2つはカルレチニン及びNPYを含むコリン作働性神経である(表1参照)。そのうちVUP含有非コリン作働性神経とカルレチニン陽性コリン作働性神経は粘膜上皮や小動脈を支配しているが、NPY含有コリン作動性分泌運動神経は血管位は側枝を出さず、粘膜上皮のみを支配している[5]

関連項目

参考文献

  1. 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 Resource not found in PubMed.
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