「腹側線条体」の版間の差分

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 側坐核は解剖・機能的に背側線条体と共通点が多いcoreと、特異な点が多い三日月型のshellとから成る。組織化学的には[[カルビンジン]] (calbindin; calcium-binding protein)染色でshellは薄くcoreは濃く染まる点が種を超えてみられる<ref name=Groenewegen1999><pubmed>10415642</pubmed></ref> 。ただし、coreと背側線条体の境界は不明瞭である。coreに比べ、shellは[[GluR1]]、[[GAP-43]]、[[アセチルコリンエステラーゼ]]、[[オピオイド]][[μ受容体]]結合、[[セロトニン]]、[[サブスタンスP]]が豊富である。[[ドーパミントランスポーター]]はcoreも含め腹側線条体では背側線条体に比べて濃度が低い。これは、腹側線条体に主に投射する[[ドーパミン]]細胞領域のdorsal tierでドーパミントランスポーターの mRNAが低値であることと一致する<ref name=Haber1999><pubmed>10415641</pubmed></ref> 。細胞形態学的には、背側線条体に比べ腹側線条体の細胞はやや小さく、密に分布する傾向にあり、[[パッチ・マトリクス構造|striosome (patch)-matrix構造]]は背側線条体ほど明確に見られない<ref name=Haber1999 /><ref name=Holt1997><pubmed>9214537</pubmed></ref>。  
 側坐核は解剖・機能的に背側線条体と共通点が多いcoreと、特異な点が多い三日月型のshellとから成る。組織化学的には[[カルビンジン]] (calbindin; calcium-binding protein)染色でshellは薄くcoreは濃く染まる点が種を超えてみられる<ref name=Groenewegen1999><pubmed>10415642</pubmed></ref> 。ただし、coreと背側線条体の境界は不明瞭である。coreに比べ、shellは[[GluR1]]、[[GAP-43]]、[[アセチルコリンエステラーゼ]]、[[オピオイド]][[μ受容体]]結合、[[セロトニン]]、[[サブスタンスP]]が豊富である。[[ドーパミントランスポーター]]はcoreも含め腹側線条体では背側線条体に比べて濃度が低い。これは、腹側線条体に主に投射する[[ドーパミン]]細胞領域のdorsal tierでドーパミントランスポーターの mRNAが低値であることと一致する<ref name=Haber1999><pubmed>10415641</pubmed></ref> 。細胞形態学的には、背側線条体に比べ腹側線条体の細胞はやや小さく、密に分布する傾向にあり、[[パッチ・マトリクス構造|striosome (patch)-matrix構造]]は背側線条体ほど明確に見られない<ref name=Haber1999 /><ref name=Holt1997><pubmed>9214537</pubmed></ref>。  


[[File:Nakamura Fig1.png|thumbnail|right|'''図1. Calbindin染色によるげっ歯類の腹側線条体の区分'''<br><ref name=Groenewegen1999><pubmed>10415642</pubmed></ref>より。<br>AcbSh, 側坐核shell; AcbC, 側坐核core; ac, 前交連]]
[[File:Nakamura Fig1.png|thumbnail|right|'''図1. カルビンジン染色によるげっ歯類の腹側線条体の区分'''<br><ref name=Groenewegen1999><pubmed>10415642</pubmed></ref>より。<br>AcbSh, 側坐核shell; AcbC, 側坐核core; ac, 前交連]]
図1  Calbindin染色によるげっ歯類の腹側線条体の区分<ref name=Groenewegen1999><pubmed>10415642</pubmed></ref> 。
AcbSh,Accumbens shell; AcbC,AcbSh core; ac,anterior commissure
 
[[File:Kae Nakamura Fig2.png|thumbnail|right|'''図2 げっ歯類における腹側線条体への出入力'''
[[File:Kae Nakamura Fig2.png|thumbnail|right|'''図2 げっ歯類における腹側線条体への出入力'''
<br>緑色は側坐核core,青色はshellにより強く,白は同様の強度であることを示す。<ref name=Scofield2016><pubmed>27363441</pubmed></ref>  より改変。<br>
<br>緑色は側坐核core,青色はshellにより強く,白は同様の強度であることを示す。<ref name=Scofield2016><pubmed>27363441</pubmed></ref>  より改変。<br>
A8, retrorubral area; ACC, [[前帯状皮質]]; AId, dorsal anterior insular; AIv, ventral anterior insular; dHPC, 背側海馬; dlVP, dorsolateral ventral pallidum; DRN, 背側[[縫線核]]; IL, infralimbic cortex; ILT, interlaminar nuclei of the thalamus; LC, [[青斑核]]; LH, lateral hypothalamus; LPO, lateral preoptic area; NTS, [[孤束核]]; PL, prelimbic cortex; PPN, pedunculopontine nucleus; PVT, paraventricular nucleus of the thalamus; vlVP, ventrolateral ventral pallidum; vmVP, ventromedial ventral pallidum; SNc, [[黒質緻密部]]; SNpr, [[黒質網様部]]]]
A8, 赤核後部; ACC, [[前帯状皮質]]; AId, dorsal anterior insular; AIv, ventral anterior insular; dHPC, 背側海馬; dlVP, dorsolateral ventral pallidum; DRN, 背側[[縫線核]]; IL, 下辺縁皮質; ILT, 視床髄板内核; LC, [[青斑核]]; LH, 外側視床下部; LPO, 外側視索前野; NTS, [[孤束核]]; PL, 前辺縁皮質; PPN, [[脚橋被蓋核]]; PVT, 視床室傍核; vlVP, ventrolateral ventral pallidum; vmVP, ventromedial ventral pallidum; SNc, [[黒質緻密部]]; SNpr, [[黒質網様部]]]]
[[File:Kae Nakamura Fig3.png|thumbnail|right|'''図3 霊長類における腹側線条体への出入力'''<br>
[[File:Kae Nakamura Fig3.png|thumbnail|right|'''図3 霊長類における腹側線条体への出入力'''<br>
<ref name=Haber2011><pubmed></pubmed></ref> より改変<br>
<ref name=Haber2011>'''Haber SN'''<br>Neuroanatomy of Reward: A View from the Ventral Striatum<br>''Neurobiology of Sensation and Reward CRC Press'', 2011.
赤矢印: vmPFCからの入力; 濃オレンジ矢印: 前頭眼窩野からの入力; 淡オレンジ矢印: dACCからの入力;淡黄色矢印:dPFCからの入力;茶色矢印:その他 Amy, 扁桃体; dACC, 背側前帯状皮質; dPFC, dorsal prefrontal cortex; Hipp, 海馬; LHb, [[外側手綱核]]; hypo, [[視床下部]]; OFC, 前頭眼窩野; PPT, pedunculopontine nucleus; S,shell, SNc, 黒質緻密部; STN, [[視床下核]]; Thal, 視床; VP, ventral pallidum; VTA, 腹側被蓋野; vmPFC, ventral medial prefrontal cortex; Ia, agranular insula; Id, dysgranular insula; Ig,granular insula]]
</ref> より改変<br>
赤矢印: vmPFCからの入力; 濃オレンジ矢印: 前頭眼窩野からの入力; 淡オレンジ矢印: dACCからの入力;淡黄色矢印:dPFCからの入力;茶色矢印:その他 Amy, 扁桃体; dACC, 背側前帯状皮質; dPFC, 背外側[[前頭前野]]; Hipp, 海馬; LHb, [[外側手綱核]]; hypo, [[視床下部]]; OFC, 前頭眼窩野; PPT, [[脚橋被蓋核]]; S,shell, SNc, 黒質緻密部; STN, [[視床下核]]; Thal, 視床; VP, [[腹側淡蒼球]]; VTA, [[腹側被蓋野]]; vmPFC, [[腹内側前頭前野]]; Ia, [[無顆粒島]]; Id, [[亜顆粒島]]; Ig, [[顆粒島]]]]


=== 入力 ===
=== 入力 ===
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 扁桃体は辺縁系の一部で、外界の情動的な情報を伝達していると考えられている。この扁桃体から背側線条体への直接的な投射はほとんど存在しない。腹側線条体への投射は扁桃体の基底核と副基底核大細胞部からである。外側部からの腹側線条体への投射は少ない。
 扁桃体は辺縁系の一部で、外界の情動的な情報を伝達していると考えられている。この扁桃体から背側線条体への直接的な投射はほとんど存在しない。腹側線条体への投射は扁桃体の基底核と副基底核大細胞部からである。外側部からの腹側線条体への投射は少ない。


 扁桃体は複数の核から成るが、嗅覚を除くすべてのmodalityの高度知覚処理に関わる基底外側複合体(basolateral nuclear group, BLNG, 外側核、基底核、副基底核、basal and accessory basal nucleiから成る)がshellを除く腹側線条体への主な入力元である<ref name=Iwai1987><pubmed>3611417</pubmed></ref><ref name=Pitkanen1997><pubmed>9364666</pubmed></ref><ref name=Russchen1987><pubmed></pubmed></ref> 。Shellへの扁桃体からの入力はやや複雑であり、基底外側複合体に加え、皮質核・内側核・中心核からの入力がある。中心核には外界(基底外側複合体を介して)や体内の状態(外側視床下部や脳幹を介して)の情報の入力があり、shellでは例えば外界の知覚入力と体内の例えば空腹という状態をあわせて、drive状態にすることに関与する。
 扁桃体は複数の核から成るが、嗅覚を除くすべてのmodalityの高度知覚処理に関わる基底外側複合体(basolateral nuclear group, BLNG, 外側核、基底核、副基底核、basal and accessory basal nucleiから成る)がshellを除く腹側線条体への主な入力元である<ref name=Iwai1987><pubmed>3611417</pubmed></ref><ref name=Pitkanen1997><pubmed>9364666</pubmed></ref><ref name=Russchen1987><pubmed>3549796</pubmed></ref>。Shellへの扁桃体からの入力はやや複雑であり、基底外側複合体に加え、皮質核・内側核・中心核からの入力がある。中心核には外界(基底外側複合体を介して)や体内の状態(外側視床下部や脳幹を介して)の情報の入力があり、shellでは例えば外界の知覚入力と体内の例えば空腹という状態をあわせて、drive状態にすることに関与する。


 海馬はさらに限られた領域であるshell へ投射し、扁桃体からの投射とoverlapしている<ref name=Friedman2002><pubmed>12209848</pubmed></ref><ref name=Saunders1988><pubmed>2454246</pubmed></ref> 。
 海馬はさらに限られた領域であるshell へ投射し、扁桃体からの投射とoverlapしている<ref name=Friedman2002><pubmed>12209848</pubmed></ref><ref name=Saunders1988><pubmed>2454246</pubmed></ref> 。


===== 視床 =====
===== 視床 =====
 腹側線条体は正中視床核群midline nuclei(室傍核paraventricular nucleus、結合核reuniens nucleus、菱形核 rhomboid nucleus、紐傍核paratenial nucleus)と視床髄板内核群intralaminar thalamic nucleiに属する束傍核parafascicular nucleus内側部からの投射を受ける。正中視床核群は前頭葉内側・扁桃体・海馬に投射する辺縁系に属する視床核群である (Gimenez-Amaya et al., 1995)
 腹側線条体は正中視床核群midline nuclei(室傍核paraventricular nucleus、結合核reuniens nucleus、菱形核 rhomboid nucleus、紐傍核paratenial nucleus)と視床髄板内核群intralaminar thalamic nucleiに属する束傍核parafascicular nucleus内側部からの投射を受ける。正中視床核群は前頭葉内側・扁桃体・海馬に投射する辺縁系に属する視床核群である <ref name=Gimenez-Amaya1995><pubmed> 7542290 </pubmed></ref>
===== 中脳ドーパミン細胞群 =====
===== 中脳ドーパミン細胞群 =====
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=== 回路の一部としての腹側線条体 ===
=== 回路の一部としての腹側線条体 ===
 腹側線条体はAlexanderらにより提唱された並列した複数の大脳皮質―線条体―淡蒼球・黒質―大脳皮質ループのうち、limbic loopの一部である<ref name=Alexander1986><pubmed></pubmed></ref> 。さらに、線条体―黒質―線条体「スパイラルループ」の一部としてもとらえられる。腹側線条体は複数の前頭葉皮質・扁桃体・海馬からの入力を集約して受け、さらに腹側被蓋野や黒質緻密部のドーパミン細胞に集約投射する。ドーパミン細胞はその後、線条体を中心に拡散的に投射を返す。このような線条体とドーパミン細胞の間の解剖・機能的な集約・拡散の繰り返しによって感覚入力に報酬情報が統合され、認知・行動の変化に影響を及ぼすメカニズムのひとつと考えられている<ref name=Haber2000><pubmed>10704511</pubmed></ref> 。
 腹側線条体はAlexanderらにより提唱された並列した複数の大脳皮質―線条体―淡蒼球・黒質―大脳皮質ループのうち、limbic loopの一部である<ref name=Alexander1986><pubmed>3085570</pubmed></ref> 。さらに、線条体―黒質―線条体「スパイラルループ」の一部としてもとらえられる。腹側線条体は複数の前頭葉皮質・扁桃体・海馬からの入力を集約して受け、さらに腹側被蓋野や黒質緻密部のドーパミン細胞に集約投射する。ドーパミン細胞はその後、線条体を中心に拡散的に投射を返す。このような線条体とドーパミン細胞の間の解剖・機能的な集約・拡散の繰り返しによって感覚入力に報酬情報が統合され、認知・行動の変化に影響を及ぼすメカニズムのひとつと考えられている<ref name=Haber2000><pubmed>10704511</pubmed></ref> 。


== 機能 ==
== 機能 ==
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 ドーパミンやオピオイドの作用により強迫的な選択行動等がひきおこされることから、側坐核がhedonic(快楽的)な感情のプロセスに関与していることが示された。Berridgeらは、げっ歯類の側坐核の中で吻側―尾側軸の特定の異なる領域が、「快楽や報酬」領域と「恐怖や嫌悪」領域という異なる情動と対応していると報告した<ref name=Berridge2008><pubmed>18311558</pubmed></ref> 。サルでもbicucullineをごく少量注入して異なる腹側線条体領域の活動を局所的に変化させると、行動の抑制と意欲の低下・性的行動の亢進・異常な運動を繰り返す不安様行動が注入個所に特異的に表れた<ref name=Worbe2009><pubmed>19068490</pubmed></ref> 。Shellの内側部は外側視床下部を抑制していて、これを障害すると摂食行動が引き起こされる<ref name=Kelley2005><pubmed>16289609</pubmed></ref> 。
 ドーパミンやオピオイドの作用により強迫的な選択行動等がひきおこされることから、側坐核がhedonic(快楽的)な感情のプロセスに関与していることが示された。Berridgeらは、げっ歯類の側坐核の中で吻側―尾側軸の特定の異なる領域が、「快楽や報酬」領域と「恐怖や嫌悪」領域という異なる情動と対応していると報告した<ref name=Berridge2008><pubmed>18311558</pubmed></ref> 。サルでもbicucullineをごく少量注入して異なる腹側線条体領域の活動を局所的に変化させると、行動の抑制と意欲の低下・性的行動の亢進・異常な運動を繰り返す不安様行動が注入個所に特異的に表れた<ref name=Worbe2009><pubmed>19068490</pubmed></ref> 。Shellの内側部は外側視床下部を抑制していて、これを障害すると摂食行動が引き起こされる<ref name=Kelley2005><pubmed>16289609</pubmed></ref> 。
 線条体には、報酬と関連した感覚刺激や報酬そのものを予測的に期待する発火と、これらの後に反応する発火とが見られる。サルの電気生理学的実験では、背側線条体では課題の比較的前半つまり感覚刺激やその予測に関連した神経発火が見られるのに対し、腹側線条体では、課題の後半つまり報酬の予測や報酬を得た後に発火するものが多く観察されている<ref name=Tremblay2009><pubmed></pubmed></ref><ref name=Nakamura2012><pubmed>23136434</pubmed></ref> 。従って、腹側線条体は報酬を得るというゴールに達するため行動を起こす意欲driving forceの源となっている可能性がある。
 線条体には、報酬と関連した感覚刺激や報酬そのものを予測的に期待する発火と、これらの後に反応する発火とが見られる。サルの電気生理学的実験では、背側線条体では課題の比較的前半つまり感覚刺激やその予測に関連した神経発火が見られるのに対し、腹側線条体では、課題の後半つまり報酬の予測や報酬を得た後に発火するものが多く観察されている<ref name=Tremblay2009>'''Tremblay L, Worbe, Y., Hollerman, J.'''<br>The ventral striatum: a heterogeneous stricture involved in reward processing, motivation, and decision making<br>''Handbook of Reward and Decision Making'': 51-77, 2009</ref><ref name=Nakamura2012><pubmed>23136434</pubmed></ref> 。従って、腹側線条体は報酬を得るというゴールに達するため行動を起こす意欲driving forceの源となっている可能性がある。


 ヒトの非侵襲的イメージングでは腹側線条体が報酬の予測・評価・報酬予測誤差の表現や、動機に基づいた学習に関与していることが示された。報酬の時間的予測については結論に差異がある<ref name=Knutson2001><pubmed>11459880;O'Doherty, 2004 #332</pubmed></ref><ref name=Pagnoni2002><pubmed>11802175</pubmed></ref><ref name=Tanaka2004><pubmed>15235607;Kuhnen, 2005 #3954</pubmed></ref><ref name=O'Doherty2004><pubmed>15087550</pubmed></ref> 。
 ヒトの非侵襲的イメージングでは腹側線条体が報酬の予測・評価・報酬予測誤差の表現や、動機に基づいた学習に関与していることが示された。報酬の時間的予測については結論に差異がある<ref name=Knutson2001><pubmed>11459880</pubmed></ref><ref name=Pagnoni2002><pubmed>11802175</pubmed></ref><ref name=Tanaka2004><pubmed>15235607</pubmed></ref><ref name=O'Doherty2004><pubmed>15087550</pubmed></ref> 。


 Nicolaらは腹側被蓋野・内側前頭葉・扁桃体基底外側複合体の、側坐核単一細胞の発火への影響を調べた。ラットが音を弁別してレバー押しやnose pokeで反応することを学習すると、側坐核ニューロンは音に反応するが、腹側被蓋野・内側前頭葉・扁桃体からの入力をブロックすると側坐核ニューロンの発火は弱まり、弁別反応の正解率も低下する<ref name=Yun2004><pubmed>15044531</pubmed></ref> <ref name=Ishikawa2008><pubmed>18463262</pubmed></ref> ; <ref name=Ambroggi2008><pubmed>18760700</pubmed></ref> 。したがって、これらの領域からの情報が側坐核で統合することが刺激―行動に必須であると結論付けられた。
 Nicolaらは腹側被蓋野・内側前頭葉・扁桃体基底外側複合体の、側坐核単一細胞の発火への影響を調べた。ラットが音を弁別してレバー押しやnose pokeで反応することを学習すると、側坐核ニューロンは音に反応するが、腹側被蓋野・内側前頭葉・扁桃体からの入力をブロックすると側坐核ニューロンの発火は弱まり、弁別反応の正解率も低下する<ref name=Yun2004><pubmed>15044531</pubmed></ref><ref name=Ishikawa2008><pubmed>18463262</pubmed></ref><ref name=Ambroggi2008><pubmed>18760700</pubmed></ref> 。したがって、これらの領域からの情報が側坐核で統合することが刺激―行動に必須であると結論付けられた。


 一方、側坐核は報酬などの目的達成のためのオペラント条件付けそのものというより、現在進行中の行動から、一定の時間を経て別の行動に変化する過程に重要であるという意見がある<ref name=Cardinal2001><pubmed>11375482</pubmed></ref><ref name=Cardinal2002><pubmed>12034134</pubmed></ref><ref name=Nicola2007><pubmed>16983543</pubmed></ref> 。さらに、サルの腹側線条体細胞の特徴として、例えば視覚刺激―>行動という単一試行の課題では課題に反応する細胞の割合は10%前後だが、複数のステップを経て報酬を得るような多試行報酬スケジュール課題では反応する細胞が60%前後と非常に多い。これらはスケジュールのうち特定の段階で、視覚手がかりへの応答や運動への応答報酬投与に応答する<ref name=Shidara1998><pubmed>9502820</pubmed></ref> 。  
 一方、側坐核は報酬などの目的達成のためのオペラント条件付けそのものというより、現在進行中の行動から、一定の時間を経て別の行動に変化する過程に重要であるという意見がある<ref name=Cardinal2001><pubmed>11375482</pubmed></ref><ref name=Cardinal2002><pubmed>12034134</pubmed></ref><ref name=Nicola2007><pubmed>16983543</pubmed></ref> 。さらに、サルの腹側線条体細胞の特徴として、例えば視覚刺激―>行動という単一試行の課題では課題に反応する細胞の割合は10%前後だが、複数のステップを経て報酬を得るような多試行報酬スケジュール課題では反応する細胞が60%前後と非常に多い。これらはスケジュールのうち特定の段階で、視覚手がかりへの応答や運動への応答報酬投与に応答する<ref name=Shidara1998><pubmed>9502820</pubmed></ref> 。  
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* [[嗜癖]]
* [[嗜癖]]
* [[薬物中毒]]
* [[薬物中毒]]
==参考文献==
<references />