「自己意識」の版間の差分

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*内省
*内省
*日記を書く
*日記を書く
*白昼夢
*[[wikipedia:ja:白昼夢|白昼夢]]
*瞑想
*瞑想
*小さな鏡
*小さな鏡
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==自己意識特性==
==自己意識特性==
 自己自身に対する意識を向けやすさには個人差がある。フェニグスタイン<ref>'''A Fenigstein, M F Scheier, A H Buss'''<br>Public and private self-consciousness<br>Journal of Consulting and Clinical Psychology: 1975, 43; 522–7</ref>らは自己意識特性を測定するために、自己意識尺度(self-consciousness scale)を作成した。日本語版自己意識尺度は菅原健介氏により1984年に作成された<ref>'''菅原健介'''<br>自意識尺度(self-consciousness scale)日本語版作成の試み<br>心理学研究: 1984, 55; 184-8</ref>。自己意識と同様に、外から見える自己の側面に注意を向ける程度の個人差を示す公的自己意識特性と、外からは見えない自己の側面に注意を向ける程度の個人差を示す私的自己意識特性の2つに分けて測定される。
 自己自身に対する意識を向けやすさには個人差がある。フェニグスタイン<ref>'''A Fenigstein, M F Scheier, A H Buss'''<br>Public and private self-consciousness<br>Journal of Consulting and Clinical Psychology: 1975, 43; 522–7</ref>らは自己意識特性を測定するために、[[wikipedia:ja:自己意識尺度|自己意識尺度]](self-consciousness scale)を作成した。日本語版自己意識尺度は菅原健介氏により1984年に作成された<ref>'''菅原健介'''<br>自意識尺度(self-consciousness scale)日本語版作成の試み<br>心理学研究: 1984, 55; 184-8</ref>。自己意識と同様に、外から見える自己の側面に注意を向ける程度の個人差を示す公的自己意識特性と、外からは見えない自己の側面に注意を向ける程度の個人差を示す私的自己意識特性の2つに分けて測定される。


==自己意識の発達==
==自己意識の発達==
 自己意識を調べる有力な方法としてこれまで多く用いられてきたのが、Gallup(1970)によって考案されたマークテストである<ref><pubmed>4982211 </pubmed></ref>。動物が鏡に映った自分を自分と認識できるかどうか(鏡映認知)を調べることによって、自己意識を測ろうという目的を持って開発されたテストである。対象動物を麻酔で眠らせている間に、視覚的に確認できない場所(例:おでこ)に色のついたマークをつける。麻酔から醒めた後に鏡を見せたとき、対象動物がどのような行動を取るのかを観察する。このとき直接見えない自分のおでこを触るという行動がみられたならば、鏡に映っているのが自分であると認識できているとみなされる。マークを触るということは、自己の身体についてのイメージを持っていて、それと鏡の中の像が異なることに気づいていることを意味しており、自己意識の存在を示す証拠と考えられる。チンパンジーやオランウータンなどの大型類人猿はこのマークテストを通過するが、サルは通過しないことが知られている。近年はゾウやイルカなどもマークテストを通過することが報告されている<ref><pubmed> 17075063</pubmed></ref><ref><pubmed> 11331768</pubmed></ref>。ヒトの赤ちゃんの場合、生後1歳半から2歳頃になるとマークテストを通過する。これは「当惑する」「嫉妬する」などの自己を意識した行動が表れる時期とも合致するため、ヒトは2歳前後に自己意識を獲得すると推測されている<ref><pubmed> 2702864 </pubmed></ref>。これは公的自己意識に相当するものと考えられるが、私的自己意識が発達し、自分の内的状態を表現できるのはもう少し後の時期と考えられている。
 自己意識を調べる有力な方法としてこれまで多く用いられてきたのが、Gallup(1970)によって考案されたマークテストである<ref><pubmed>4982211 </pubmed></ref>
 
 動物が鏡に映った自分を自分と認識できるかどうか([[wikipedia:ja:鏡映認知|鏡映認知]])を調べることによって、自己意識を測ろうという目的を持って開発されたテストである。対象動物を麻酔で眠らせている間に、視覚的に確認できない場所(例:おでこ)に色のついたマークをつける。麻酔から醒めた後に鏡を見せたとき、対象動物がどのような行動を取るのかを観察する。このとき直接見えない自分のおでこを触るという行動がみられたならば、鏡に映っているのが自分であると認識できているとみなされる。マークを触るということは、自己の身体についてのイメージを持っていて、それと鏡の中の像が異なることに気づいていることを意味しており、自己意識の存在を示す証拠と考えられる。[[wikipedia:ja:チンパンジー|チンパンジー]]や[[wikipedia:ja:オランウータン|オランウータン]]などの大型[[wikipedia:ja:類人猿|類人猿]]はこのマークテストを通過するが、[[wikipedia:ja:サル|サル]]は通過しないことが知られている。近年は[[wikipedia:ja:ゾウ|ゾウ]]や[[wikipedia:ja:イルカ|イルカ]]などもマークテストを通過することが報告されている<ref><pubmed> 17075063</pubmed></ref><ref><pubmed> 11331768</pubmed></ref>。[[wikipedia:ja:ヒト|ヒト]]の赤ちゃんの場合、生後1歳半から2歳頃になるとマークテストを通過する。これは「当惑する」「嫉妬する」などの自己を意識した行動が表れる時期とも合致するため、ヒトは2歳前後に自己意識を獲得すると推測されている<ref><pubmed> 2702864 </pubmed></ref>。これは公的自己意識に相当するものと考えられるが、私的自己意識が発達し、自分の内的状態を表現できるのはもう少し後の時期と考えられている。


==自己意識の脳内基盤==
==自己意識の脳内基盤==
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===自己内省に関する脳内基盤===
===自己内省に関する脳内基盤===
 自己の内面に対する意識に関わる脳領域を調べるために、自己の身体状態、感情、特性などを評価する自己内省課題が用いられている。これらの課題を行っているときには、帯状回皮質(cingulate cortex)や楔前部(precuneus)を含む大脳皮質正中内側部構造(cortical midline structure)の活動が増大することが報告されている<ref><pubmed>15301749</pubmed></ref>。
 自己の内面に対する意識に関わる脳領域を調べるために、自己の身体状態、感情、特性などを評価する自己内省課題が用いられている。これらの課題を行っているときには、[[帯状回皮質]](cingulate cortex)や[[楔前部]](precuneus)を含む[[大脳皮質]]正中内側部構造(cortical midline structure)の活動が増大することが報告されている<ref><pubmed>15301749</pubmed></ref>。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==