「自殺」の版間の差分

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 [[HPA系]]は、生体の[[ストレス反応]]性を規定する主要なシステムである。生体がストレスにさらされると、[[視床下部]]からの[[副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン]](corticotropin-releasing hormone, CRH) 分泌が増加し、下垂体前葉からの[[副腎皮質刺激ホルモン]] (adrenocorticotrophic hormone, ACTH) 分泌および副腎皮質からの[[グルココルチコイド]]の分泌を促進する。分泌されたグルココルチコイドは、生理的レベルでは、[[視床下部]]、[[下垂体前葉]]に分布する[[グルココルチコイド受容体]]への結合を介して、CRHおよびACTHの生合成と放出を抑制している。また、視床下部のCRH産生ニューロンは、さらに上位に位置する[[海馬]]から[[抑制性]]の入力を受けており、生理的レベルのグルココルチコイドは、海馬によるHPA系への抑制を強化する。これらの[[ネガティブ・フィードバック機構]]および[[扁桃体]]から視床下部への[[興奮性]]の入力などを通じて、HPA系は制御されている。HPA系の機能評価として、[[デキサメサゾン]](dexamethasone, DEX)を用いた[[DEX抑制試験]]または[[DEX/CRH抑制試験]]がある。DEXは外因性合成グルココルチコイドホルモンで、その投与によりネガティブ・フィードバックを介してACTH、グルココルチコイド放出を抑制する。
 [[HPA系]]は、生体の[[ストレス反応]]性を規定する主要なシステムである。生体がストレスにさらされると、[[視床下部]]からの[[副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン]](corticotropin-releasing hormone, CRH) 分泌が増加し、下垂体前葉からの[[副腎皮質刺激ホルモン]] (adrenocorticotrophic hormone, ACTH) 分泌および副腎皮質からの[[グルココルチコイド]]の分泌を促進する。分泌されたグルココルチコイドは、生理的レベルでは、[[視床下部]]、[[下垂体前葉]]に分布する[[グルココルチコイド受容体]]への結合を介して、CRHおよびACTHの生合成と放出を抑制している。また、視床下部のCRH産生ニューロンは、さらに上位に位置する[[海馬]]から[[抑制性]]の入力を受けており、生理的レベルのグルココルチコイドは、海馬によるHPA系への抑制を強化する。これらの[[ネガティブ・フィードバック機構]]および[[扁桃体]]から視床下部への[[興奮性]]の入力などを通じて、HPA系は制御されている。HPA系の機能評価として、[[デキサメサゾン]](dexamethasone, DEX)を用いた[[DEX抑制試験]]または[[DEX/CRH抑制試験]]がある。DEXは外因性合成グルココルチコイドホルモンで、その投与によりネガティブ・フィードバックを介してACTH、グルココルチコイド放出を抑制する。


 生体へのストレス負荷が持続するとグルココルチコイド分泌が上昇し、その上昇の持続によって、[[神経栄養因子]]の一つである[[脳由来神経栄養因子]] (brain-derived neurotrophic factor, BDNF) の減少、海馬での神経細胞の傷害や[[神経新生]]の抑制などが生じる<ref name=ref31><pubmed>11931738</pubmed></ref>。海馬の傷害によりHPA系への抑制性の制御は減弱し、その結果HPA系の過活性がもたらされる。ストレス負荷と関連する自殺においても、HPA系の過活性を示唆する報告が多い。結果は必ずしも一致していないものの、うつ病や自殺ではDEXによるグルココルチコイドの抑制がかかりにくい(non-suppression)とされており、HPA系の過活性の存在が示唆されている。non-suppressionは将来の自殺既遂の予測因子ともされており、15年以上にわたるフォローアップ研究において、non-suppressorはsuppressorと比較して約14倍自殺のリスクが高まると報告されている<ref name=ref32><pubmed>    11329397</pubmed></ref>。またnon-suppressorの気分障害では、自殺のリスクが約4.5倍高まるとするメタ解析の報告もある<ref name=ref15 />。その他にも、脳脊髄液におけるCRH濃度の上昇<ref name=ref33><pubmed>11287050</pubmed></ref>、[[前頭葉]]におけるCRH[[結合親和性]]の低下<ref name=ref34><pubmed>2837159</pubmed></ref>、[[下垂体]]と[[副腎]]の肥大<ref name=ref35><pubmed>7803598</pubmed></ref>といったHPA系に関する変化が、うつ病の自殺者で報告されている。
 生体へのストレス負荷が持続するとグルココルチコイド分泌が上昇し、その上昇の持続によって、[[神経栄養因子]]である[[脳由来神経栄養因子]] (brain-derived neurotrophic factor, BDNF) の減少、海馬での神経細胞の傷害や[[神経新生]]の抑制などが生じる<ref name=ref31><pubmed>11931738</pubmed></ref>。海馬の傷害によりHPA系への抑制性の制御は減弱し、その結果HPA系の過活性がもたらされる。ストレス負荷と関連する自殺においても、HPA系の過活性を示唆する報告が多い。結果は必ずしも一致していないものの、うつ病や自殺ではDEXによるグルココルチコイドの抑制がかかりにくい(non-suppression)とされており、HPA系の過活性の存在が示唆されている。non-suppressionは将来の自殺既遂の予測因子ともされており、15年以上にわたるフォローアップ研究において、non-suppressorはsuppressorと比較して約14倍自殺のリスクが高まると報告されている<ref name=ref32><pubmed>    11329397</pubmed></ref>。またnon-suppressorの気分障害では、自殺のリスクが約4.5倍高まるとするメタ解析の報告もある<ref name=ref15 />。その他にも、脳脊髄液におけるCRH濃度の上昇<ref name=ref33><pubmed>11287050</pubmed></ref>、[[前頭葉]]におけるCRH[[結合親和性]]の低下<ref name=ref34><pubmed>2837159</pubmed></ref>、下垂体と副腎の肥大<ref name=ref35><pubmed>7803598</pubmed></ref>といったHPA系に関する変化が、うつ病の自殺者で報告されている。


== 参考文献  ==
== 参考文献  ==
<references /> 
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