「自閉スペクトラム症」の版間の差分

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== 成因  ==
== 成因  ==


 レット障害が[[メチル化CpG結合タンパク質2遺伝子]]([[MeCP2]])の変異に起因することが近年報告された。他の下位分類の成因については不明であるが、不適切な養育などによる心因ではなくなんらかの脳機能障害が根底にあると考えられている。
 広汎性発達障害の一卵性双生児における一致率は60~90%と、二卵性双生児(0~24%)に比して高く、その原因には遺伝要因のしめる割合が大きいと考えられている<ref><pubmed> 22688012 </pubmed></ref>。
連鎖解析では、多くの染色体領域との連鎖が報告されている<ref><pubmed> 22688012 </pubmed></ref>。
 
 5%程度の症例では、染色体異常が見られ、そのうち最も多くみられるのは15q11-q13の重複である<ref><pubmed> 22463983 </pubmed></ref>。この染色体異常を再現したモデルマウスが作られ、自閉症の3主徴に相当する行動学的異常を呈するモデルマウスとして注目されている<ref><pubmed> 19563756 </pubmed></ref>。
 
 この領域がインプリンティング領域であることに加え、より重症な表現型を呈するRett症候群の原因遺伝子がメチル化CpG結合蛋白(MeCP2)であること<ref><pubmed> 10508514 </pubmed></ref>などから、ゲノムインプリンティングやDNAメチル化の役割についても関心がもたれている。
 
 Neuroligin(NLGN3、NLGN4)変異を持つ家系の報告が注目された<ref><pubmed> 12669065 </pubmed></ref>。NLGN3のR451C変異のモデルマウスは、自閉症類似の行動学的異常を示すモデルマウスとして研究が進められ、抑制性シナプス伝達の増加などが示されている<ref><pubmed> 17823315 </pubmed></ref>。また、Neurexin 1を断裂するCNVと自閉症の関連も注目され<ref><pubmed> 18179900 </pubmed></ref>、プレシナプスのNeurexinとポストシナプスのNeuroliginの結合がシナプスの形態維持に関わっていることから、自閉症の病態におけるシナプス機能の役割が注目されている。<ref><pubmed> 18923512 </pubmed></ref>
 
 近年、孤発例の自閉症スペクトラム障害で、de novo変異(両親は持っておらず、子に新たに生じた変異)が多く見られることが注目されており、孤発例の10%程度にde novoコピー数変異(CNV)が<ref><pubmed> 17363630 </pubmed></ref>、15%程度にde novo点変異が見いだされている<ref><pubmed> 22495306 </pubmed></ref>。De novo点変異は、父親の年齢が高いほど増加する<ref><pubmed> 22914163 </pubmed></ref>。
 
 その他、結節性硬化症、脆弱X症候群、周産期障害、代謝疾患、染色体異常、先天性風疹症候群などでも自閉症様症状が見られる場合がある<ref><pubmed> 22688012 </pubmed></ref>。
5-46%がてんかんを合併し、約60%にはてんかん性脳波異常がみられるが<ref><pubmed> 20510557 </pubmed></ref>。最近のde novo点変異の研究でも、SCN1A<ref><pubmed> 22495309 </pubmed></ref>、SCN2A<ref><pubmed> 22495306 </pubmed></ref>など、てんかんとの関連が指摘されていた遺伝子の変異が見いだされているなど、共通の病態の存在が示唆される。
 
 脳形態については多くの報告があるが、小脳虫部の体積低下や、発達早期から見られる脳全体の過形成が比較的よく一致した所見である<ref><pubmed> 21130750 </pubmed></ref>。
その特異な対人相互性の障害から、社会性に関わる脳機能との関連に関心が持たれ、機能的脳画像研究が盛んに行われている。中でも、心の理論、すなわち他者の考えを推論する能力に関する課題施行時に、賦活部位が健常者と異なることなどが注目されている<ref><pubmed> 15212111 </pubmed></ref>。
 
 以前は、高い能力を持っているにもかかわらず自らの中に引きこもっていると考えられ、その要因として不適切な養育などが関連すると考えられた時期もあったが、ゲノム研究、脳研究の進歩により、現在ではこうした考えは否定されている。


== 治療・介入  ==
== 治療・介入  ==