「視床ゲート機構」の版間の差分

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英:thalamic gating
英:thalamic gating
(狭義:Sensory gating of thalamus)
 (狭義:sensory gating of thalamus)
{{box|text= 末梢からの感覚情報が視床を経由する際に、上位中枢である大脳皮質へ送る情報を選択する機構。抑制性細胞の集合体である視床網様核が中心的な役割を担っていると考えられる。感覚系視床において主に取り上げられることが多い概念だが、運動系視床においても関与する回路は似ており、同様のゲート機構があると考えられている。}}
{{box|text= 末梢からの感覚情報が視床を経由する際に、上位中枢である大脳皮質へ送る情報を選択する機構。抑制性細胞の集合体である視床網様核が中心的な役割を担っていると考えられる。感覚系視床において主に取り上げられることが多い概念だが、運動系視床においても関与する回路は似ており、同様のゲート機構があると考えられている。}}


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 感覚系、特に視覚系においては古くからこの回路に着目し、視床網様核を中心とした抑制系が大脳皮質への情報のゲート機構を果たしている可能性が示唆されてきた<ref><pubmed>196301</pubmed></ref><ref><pubmed>7812144</pubmed></ref>3,4。感覚系のみならず、運動系視床においても視床網様核を介した同様の機構が存在する<ref><pubmed>9464683</pubmed></ref><ref name=LamYW2015><pubmed>25717161</pubmed></ref>5,6。さらに、[[マカクサル]]を用いた解剖学的研究において[[前頭前野]]からも視床網様核が投射を受けることが分かっており<ref><pubmed> 16837581</pubmed></ref>7、感覚・運動系のみならず、注意などに関わる前頭前野も視床網様核を介して視床ゲート機構を制御していると考えられる。
 感覚系、特に視覚系においては古くからこの回路に着目し、視床網様核を中心とした抑制系が大脳皮質への情報のゲート機構を果たしている可能性が示唆されてきた<ref><pubmed>196301</pubmed></ref><ref><pubmed>7812144</pubmed></ref>3,4。感覚系のみならず、運動系視床においても視床網様核を介した同様の機構が存在する<ref><pubmed>9464683</pubmed></ref><ref name=LamYW2015><pubmed>25717161</pubmed></ref>5,6。さらに、[[マカクサル]]を用いた解剖学的研究において[[前頭前野]]からも視床網様核が投射を受けることが分かっており<ref><pubmed> 16837581</pubmed></ref>7、感覚・運動系のみならず、注意などに関わる前頭前野も視床網様核を介して視床ゲート機構を制御していると考えられる。
 
 
 こうした視床ゲート機構を作り出すには、視床と同様、視床網様核も[[トポグラフィー]]を持ち、さらに視床網様核が視床に対して[[側方抑制]](Lateral inhibition)を与えていることが必要である。それらを支持する回路基盤がトポグラフィー<ref name=LamYW2015/><ref><pubmed>6386105</pubmed></ref><ref><pubmed>12106177</pubmed></ref><ref name=LamYW2005><pubmed>16160090</pubmed></ref><ref name=LamYW2007><pubmed>17881481</pubmed></ref>6,8-11、側方抑制<ref name=LamYW2005/><ref name=LamYW2007/><ref><pubmed>8698882</pubmed></ref><ref><pubmed>28916470</pubmed></ref>10-13('''図3A''')の両面で示されてきた。また、視床と視床網様核が[[反回抑制]]の回路('''図3B''')を形成しているものもあり、これらは[[睡眠]]―覚醒時の視床の神経活動の同期性を調節していると考えられており、大脳皮質への情報の伝達へ重要な役割を果たしている可能性がある<ref><pubmed>21102447</pubmed></ref>14。
 こうした視床ゲート機構を作り出すには、視床と同様、視床網様核も[[トポグラフィー]]を持ち、さらに視床網様核が視床に対して[[側方抑制]](lateral inhibition)を与えていることが必要である。それらを支持する回路基盤がトポグラフィー<ref name=LamYW2015/><ref><pubmed>6386105</pubmed></ref><ref><pubmed>12106177</pubmed></ref><ref name=LamYW2005><pubmed>16160090</pubmed></ref><ref name=LamYW2007><pubmed>17881481</pubmed></ref>6,8-11、側方抑制<ref name=LamYW2005/><ref name=LamYW2007/><ref><pubmed>8698882</pubmed></ref><ref><pubmed>28916470</pubmed></ref>10-13('''図3A''')の両面で示されてきた。また、視床と視床網様核が[[反回抑制]]の回路('''図3B''')を形成しているものもあり、これらは[[睡眠]]―覚醒時の視床の神経活動の同期性を調節していると考えられており、大脳皮質への情報の伝達へ重要な役割を果たしている可能性がある<ref><pubmed>21102447</pubmed></ref>14。


== 具体例 ==
== 具体例 ==