「視床下核」の版間の差分

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担当編集委員:[https://researchmap.jp/masahikowatanabeo 渡辺 雅彦] (北海道大学大学院医学研究院 解剖学分野 解剖発生学教室)<br>
担当編集委員:[https://researchmap.jp/masahikowatanabeo 渡辺 雅彦] (北海道大学大学院医学研究院 解剖学分野 解剖発生学教室)<br>
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[[Image:STN Fig1.jpg|thumb|300px|'''図1.視床下核を濃い暖色で前額断で示す''']]


羅:nucleus subthalamicus 英:subthalamic nucleus 独:subthalamische Nukleus 仏:noyau sous-thalamique 西:núcleos subtalámicos 英略語:STN 
羅:nucleus subthalamicus 英:subthalamic nucleus 独:subthalamische Nukleus 仏:noyau sous-thalamique 西:núcleos subtalámicos 英略語:STN 
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 視床下核とは、[[大脳基底核]]を構成する核のひとつである。[[大脳皮質]]から興奮性入力を、[[淡蒼球外節]]から抑制性入力を受け、淡蒼球外節・[[淡蒼球内節|内節]]、[[黒質網様部]]に興奮性投射を送る。視床下核が障害を受けると[[ヘミバリスム]]を来す。近年、[[パーキンソン病]]に対する[[脳深部刺激療法]](DBS)のターゲットとして臨床的にも注目されている。
 視床下核とは、[[大脳基底核]]を構成する核のひとつである。[[大脳皮質]]から興奮性入力を、[[淡蒼球外節]]から抑制性入力を受け、淡蒼球外節・[[淡蒼球内節|内節]]、[[黒質網様部]]に興奮性投射を送る。視床下核が障害を受けると[[ヘミバリスム]]を来す。近年、[[パーキンソン病]]に対する[[脳深部刺激療法]](DBS)のターゲットとして臨床的にも注目されている。
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==視床下核とは==
==視床下核とは==
 
[[Image:STN Fig1.jpg|thumb|300px|'''図1.視床下核を濃い暖色で前額断で示す''']]
[[Image:STN Fig2.jpg|thumb|300px|'''図2.大脳基底核を巡る神経回路'''<br>白矢印:グルタミン酸作動性興奮性投射、黒矢印:GABA作動性抑制性投射、灰色矢印:ドーパミン作動性投射]]  
[[Image:STN Fig2.jpg|thumb|300px|'''図2.大脳基底核を巡る神経回路'''<br>白矢印:グルタミン酸作動性興奮性投射、黒矢印:GABA作動性抑制性投射、灰色矢印:ドーパミン作動性投射]]  


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====直接路・間接路モデル====
====直接路・間接路モデル====
[[Image:STN Fig3.jpg|thumb|300px|'''図3.視床下核の機能分化''']]
 以前は、視床下核は淡蒼球外節(external segment of the globus pallidus)と局所的な神経回路を構成しているだけであり、大脳基底核全体の情報処理とは無関係と考えられていた<ref>'''M R DeLong, A P Georgopoulos'''<br>Motor functions of the basal ganglia. In:  Handbook of Physiology, Sect. 1, The Nervous System, vol. I I., Motor Control, Part 2, ed by Brookhart JM, Mountcastle VB, Brooks VB et al, American Physiological Society <br> ''Bethesda,'' 1981, pp. 1017-1061</ref>。
 以前は、視床下核は淡蒼球外節(external segment of the globus pallidus)と局所的な神経回路を構成しているだけであり、大脳基底核全体の情報処理とは無関係と考えられていた<ref>'''M R DeLong, A P Georgopoulos'''<br>Motor functions of the basal ganglia. In:  Handbook of Physiology, Sect. 1, The Nervous System, vol. I I., Motor Control, Part 2, ed by Brookhart JM, Mountcastle VB, Brooks VB et al, American Physiological Society <br> ''Bethesda,'' 1981, pp. 1017-1061</ref>。


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 が提案され、広く認められるようになってきた('''図2''')。<ref name=ref5><pubmed>10899204</pubmed></ref><ref><pubmed>12067746 </pubmed></ref>
 が提案され、広く認められるようになってきた('''図2''')。<ref name=ref5><pubmed>10899204</pubmed></ref><ref><pubmed>12067746 </pubmed></ref>
 
[[Image:STN Fig3.jpg|thumb|300px|'''図3.視床下核の機能分化''']]
====視床下核の体部位局在====
====視床下核の体部位局在====
 視床下核背側部は、大脳皮質[[運動野]]から[[体部位局在]]を保った入力を受けていることから、運動領域と考えられる('''図3''')<ref><pubmed>8786443</pubmed></ref><ref><pubmed>21541304</pubmed></ref>。大脳皮質[[一次運動野]]からは視床下核背側部のうち外側部に、[[補足運動野]]からは内側部に投射している。一次運動野の口腔顔面、上肢、下肢領域からは視床下核外側部において、外側から内側にかけて終止しているのに対し、補足運動野の口腔顔面、上肢、下肢領域からの投射は、内側部において内側から外側に終止している。すなわち、外側部、内側部それぞれに、互いに鏡像関係にあるような体部位再現がある('''図3''')。この運動領域の腹側には[[前頭前野]]から、その一部に[[眼球運動野]]から、最内側部には[[辺縁皮質]]から入力を受ける領域が存在する。したがって、視床下核は上下肢や体幹の運動だけではなく、[[眼球運動]]、前頭前野の機能である高次機能、[[辺縁系]]の機能である[[情動]]などにも関わっていると考えられる。
 視床下核背側部は、大脳皮質[[運動野]]から[[体部位局在]]を保った入力を受けていることから、運動領域と考えられる('''図3''')<ref><pubmed>8786443</pubmed></ref><ref><pubmed>21541304</pubmed></ref>。大脳皮質[[一次運動野]]からは視床下核背側部のうち外側部に、[[補足運動野]]からは内側部に投射している。一次運動野の口腔顔面、上肢、下肢領域からは視床下核外側部において、外側から内側にかけて終止しているのに対し、補足運動野の口腔顔面、上肢、下肢領域からの投射は、内側部において内側から外側に終止している。すなわち、外側部、内側部それぞれに、互いに鏡像関係にあるような体部位再現がある('''図3''')。この運動領域の腹側には[[前頭前野]]から、その一部に[[眼球運動野]]から、最内側部には[[辺縁皮質]]から入力を受ける領域が存在する。したがって、視床下核は上下肢や体幹の運動だけではなく、[[眼球運動]]、前頭前野の機能である高次機能、[[辺縁系]]の機能である[[情動]]などにも関わっていると考えられる。