「視床下部」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/akihiroyamanaka/ 山中 章弘]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/akihiroyamanaka/ 山中 章弘]</font><br>
''名古屋大学 環境医学研究所 ストレス受容・応答研究部門''<br>
''名古屋大学 環境医学研究所 ストレス受容・応答研究部門''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年5月25日 原稿完成日:2015年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年5月25日 原稿完成日:2019年2月4日<br>
担当編集委員:[https://researchmap.jp/masahikowatanabeo 渡辺 雅彦] (北海道大学大学院医学研究院 解剖学分野 解剖発生学教室)<br>
担当編集委員:[https://researchmap.jp/masahikowatanabeo 渡辺 雅彦] (北海道大学大学院医学研究院 解剖学分野 解剖発生学教室)<br>
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Tuberomammillary nucleus: TMN  
Tuberomammillary nucleus: TMN  


 乳頭体の外殻に位置する結節乳頭体核は[[ヒスタミン]]神経系の起始核であり、[[覚醒中枢]]の一つと考えられている。ここからヒスタミン作動性ニューロンは脳内のほぼ全域にわたる幅広い領域に投射しており、ヒスタミン作動性ニューロンが活性化すると覚醒レベルが高まる<ref><pubmed> 12700104 </pubmed></ref>。[[wj:風邪薬|風邪薬]]として用いられる第一世代の[[ヒスタミンH1受容体]][[阻害薬]]の服用が眠気をもたらすのは、このヒスタミンによる覚醒系が抑制されるからである。  
 乳頭体の外殻に位置する結節乳頭体核は[[ヒスタミン]]神経系の起始核であり、[[覚醒中枢]]の一つと考えられている。ここからヒスタミン作動性ニューロンは脳内のほぼ全域にわたる幅広い領域に投射しており、ヒスタミン作動性ニューロンが活性化すると覚醒レベルが高まる<ref><pubmed> 12700104 </pubmed></ref>。[[wj:風邪薬|風邪薬]]として用いられる第一世代のヒスタミン[[H1受容体]][[阻害薬]]の服用が眠気をもたらすのは、このヒスタミンによる覚醒系が抑制されるからである。


=== 背内側核  ===
=== 背内側核  ===
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Ventromedial hypothalamic nucleus: VMN  
Ventromedial hypothalamic nucleus: VMN  


 腹内側核は視床下部の中で大きく明瞭な核であり、小型または中型の細胞から構成されている。[[満腹中枢]]としての機能は1940年代に行われた腹内側核の除去が動物に肥満をもたらすという様々な実験結果から提唱されたものであり、1970年代に肥満をもたらしているのは室傍核など腹内側核の周辺組織の受けた損傷であるというGoldらによる異論<ref><pubmed> 4795550 </pubmed></ref>があったものの、現在でも摂食行動と体重維持を制御しているものと考えられている<ref><pubmed> 16412483 </pubmed></ref>。
 腹内側核は視床下部の中で大きく明瞭な核であり、小型または中型の細胞から構成されている。[[満腹中枢]]としての機能は1940年代に行われた腹内側核の除去が動物に肥満をもたらすという様々な実験結果から提唱されたものであり、1970年代に肥満をもたらしているのは室傍核など腹内側核の周辺組織の受けた損傷であるというGoldらによる異論<ref><pubmed> 4795550 </pubmed></ref>があったものの、現在でも[[摂食行動]]と体重維持を制御しているものと考えられている<ref><pubmed> 16412483 </pubmed></ref>。


 また、最近では腹内側核の神経細胞を[[光遺伝学的]]手法により活性化させると、攻撃行動あるいは性行動が引き起こされるという報告がなされている<ref><pubmed> 21307935 </pubmed></ref>。攻撃行動の際に活性化している神経細胞群は生殖行動の際には抑制されており、二つの行動を切り替えるスイッチとしてはたらいている可能性がある。  
 また、最近では腹内側核の神経細胞を[[光遺伝学的]]手法により活性化させると、[[攻撃行動]]あるいは[[性行動]]が引き起こされるという報告がなされている<ref><pubmed> 21307935 </pubmed></ref>。攻撃行動の際に活性化している神経細胞群は生殖行動の際には抑制されており、二つの行動を切り替えるスイッチとしてはたらいている可能性がある。


=== 外側野===  
=== 外側野===