「解離症」の版間の差分

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 解離症との鑑別に注意すべき病態には、[[気分障害]]、[[統合失調症]]、[[境界性パーソナリティ障害]](BPD)、[[てんかん]]、[[自閉スペクトラム症]](ASD)、物質関連障害などがある。実際には解離症と気分障害、BPD、ASD、物質関連障害などは併存することが多い。人格同一性や人格状態の交代によって気分の急激な変動や[[自傷行為]]や大量服薬などの衝動的行動がみられるが、これと類似した病像はBPDでもみられ、しばしば解離症の併存診断となる。しかし解離症ではBPDにみられるような激しい攻撃性や操作性、規範や治療構造の逸脱・破壊、理想化や脱価値化などはみられない。解離症すなわちBPDという先入観を拭い去ることが必要である。
 解離症との鑑別に注意すべき病態には、[[気分障害]]、[[統合失調症]]、[[境界性パーソナリティ障害]](BPD)、[[てんかん]]、[[自閉スペクトラム症]](ASD)、物質関連障害などがある。実際には解離症と気分障害、BPD、ASD、物質関連障害などは併存することが多い。人格同一性や人格状態の交代によって気分の急激な変動や[[自傷行為]]や大量服薬などの衝動的行動がみられるが、これと類似した病像はBPDでもみられ、しばしば解離症の併存診断となる。しかし解離症ではBPDにみられるような激しい攻撃性や操作性、規範や治療構造の逸脱・破壊、理想化や脱価値化などはみられない。解離症すなわちBPDという先入観を拭い去ることが必要である。


 解離症にみられる精神病様体験の多くは統合失調症の初期症状に類似しており、鑑別は重要である。解離性同一症では高頻度に[[一級症状]]を呈するという報告がいくつかある。もちろん詳細に体験を聴けば、鑑別はある程度可能である。簡単な一級症状の確認によって安易に統合失調症と診断するのではなく、統合失調症の構造的特徴を把握しておく必要がある。統合失調症では、「気づいた時にはすでに他者に先回りされている」といった時間的/空間的な他者の先行性(「パターン逆転」に由来する)が特異的である<ref name=ref15>'''安永 浩'''<br>分裂病の論理学的精神病理 ―「ファントム空間」論 ―<br>''医学書院''、東京、1977</ref>。初期状態が見出された場合には「パターン逆転」や他者の先行性が確認されることが望ましく、統合失調症のむやみな拡大化は避けるべきであろう。
 解離症にみられる精神病様体験の多くは統合失調症の初期症状に類似しており、鑑別は重要である。解離性同一症では高頻度に[[シュナイダーの一級症状]](自我障害に関わる妄想で、統合失調症に特徴的とされる)を呈するという報告がいくつかある。もちろん詳細に体験を聴けば、統合失調症との鑑別はある程度可能である。簡単な一級症状の確認によって安易に統合失調症と診断するのではなく、統合失調症の構造的特徴を把握しておく必要がある。統合失調症では、「気づいた時にはすでに他者に先回りされている」といった時間的/空間的な他者の先行性(「パターン逆転」に由来する)が特異的である<ref name=ref15>'''安永 浩'''<br>分裂病の論理学的精神病理 ―「ファントム空間」論 ―<br>''医学書院''、東京、1977</ref>。初期状態が見出された場合には「パターン逆転」や他者の先行性が確認されることが望ましく、統合失調症のむやみな拡大化は避けるべきであろう。


==治療==
==治療==
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 人格統合およびリハビリテーションの段階では、正常な生活を営むことに対する恐怖、健康な範囲での危険なことへ立ち向かう恐怖、身体イメージの恐怖、性愛を含む親密性に対する恐怖などの解消を目的とする。そして新たな対処スキルによって世界と関わり合う段階である。日常生活の目標を立て、自信をつけて人格の発達を促していくことが重要である。
 人格統合およびリハビリテーションの段階では、正常な生活を営むことに対する恐怖、健康な範囲での危険なことへ立ち向かう恐怖、身体イメージの恐怖、性愛を含む親密性に対する恐怖などの解消を目的とする。そして新たな対処スキルによって世界と関わり合う段階である。日常生活の目標を立て、自信をつけて人格の発達を促していくことが重要である。
=== 薬物療法 ===
=== 薬物療法 ===
 状態像に合わせて適宜処方する。[[緩和精神安定剤]]や[[睡眠薬]]は漫然と使用しない。緊張、興奮、[[衝動性]]が目立つときは[[バルプロ酸]]などの[[気分安定剤]]や[[抗精神病薬]]を処方することもある。「頭が騒がしい」などの思考促迫、周囲に対する過敏性、幻覚などがみられるときには、[[リスペリドン]]や[[クエチアピン]]など[[非定型抗精神病薬]]を少量処方するのもよい。抑うつ状態が目立つときには[[抗うつ剤]]を適宜処方するが、攻撃性の亢進や軽躁状態がみられることがあるので注意を要する。睡眠薬や[[抗不安薬]]はときに解離を悪化させるため、使用は最小限にとどめる。
 状態像に合わせて適宜処方する。[[抗不安薬]]や[[睡眠薬]]は漫然と使用しない。緊張、興奮、[[衝動性]]が目立つときは[[バルプロ酸]]などの[[気分安定剤]]や[[抗精神病薬]]を処方することもある。「頭が騒がしい」などの思考促迫、周囲に対する過敏性、幻覚などがみられるときには、[[リスペリドン]]や[[クエチアピン]]など[[非定型抗精神病薬]]を少量処方するのもよい。抑うつ状態が目立つときには[[抗うつ薬]]を適宜処方するが、攻撃性の亢進や軽躁状態がみられることがあるので注意を要する。睡眠薬や[[抗不安薬]]はときに解離を悪化させるため、使用は最小限にとどめる。


==疫学==
==疫学==

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