「認知症」の版間の差分

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==== 解剖学的見地から ====
==== 解剖学的見地から ====
====== 前頭葉障害 ======
{| class="wikitable"
 失行、失語、性格変化、意欲・活動性低下、興奮、多幸感、無頓着、脱抑制、大食、注意力低下、記銘力障害、問題解決能力低下など
|+ 表5.解剖学的見地からの病態生理
====== 劣位半球頭頂葉障害 ======
|-
 半側身体失認や[[半側空間無視]]、[[構成失行]]、着衣失行、病態失認、地誌的記憶障害など
|'''前頭葉障害'''
====== 優位半球頭頂葉障害 ======
|[[失行]]、[[失語]]、[[性格変化]]、[[意欲]]・[[活動性]]低下、[[興奮]]、[[多幸感]]、[[無頓着]]、[[脱抑制]]、大食、[[注意力]]低下、[[記銘力]]障害、問題解決能力低下など
 観念失行や観念運動失行
|-
====== 優位半球角回の障害 ======
|'''劣位半球頭頂葉障害'''
 手指失認・左右識別障害・失算・失書を4徴とするGerstmann症候群
|[[半側身体失認]]や[[半側空間無視]]、[[構成失行]]、[[着衣失行]]、[[病態失認]]、[[地誌的記憶障害]]など
====== 側頭葉障害 ======
|-
 Wernicke失語や嗅覚障害、聴覚失認、皮質聾、複合幻聴、Kluver-Bucy症候群、側頭葉内側の障害により記憶障害
|'''優位半球頭頂葉障害'''
====== 後頭葉障害 ======
|[[観念失行]]や[[観念運動失行]]
 半盲、皮質盲、視幻覚、視覚保続、視覚失認、純粋失読、Anton症候群(視覚障害を否認)など
|-
====== 脳梁障害 ======
|'''優位半球角回の障害'''
 左視野の失読や左手の失書・失行、道具の強迫使用、拮抗性失行(離断症候群)
|[[手指失認]]・[[左右識別障害]]・[[失算]]・[[失書]]を4徴とする[[Gerstmann症候群]]
====== 大脳辺縁系(梁下回・帯状回・海馬傍回・鉤・扁桃体・海馬・歯状回・脳弓・中隔核) ======
|-
 Papez回路やYakovlev回路を含み、記憶や情動と関連する。両側海馬障害により近時記憶が、乳頭体病変では遠隔記憶が障害される。
|'''側頭葉障害'''
====== 視床 ======
|[[Wernicke失語]]や[[嗅覚障害]]、[[聴覚失認]]、[[皮質聾]]、[[複合幻聴]]、[[Kluver-Bucy症候群]]、側頭葉内側の障害により[[記憶障害]]
 種々の感覚入力の中継点であり、視床核はPapez回路やYakovlev回路を構成するため、視床障害により記憶・情動障害が起こりえる。
|-
|'''後頭葉障害'''
|[[半盲]]、[[皮質盲]]、[[視幻覚]]、[[視覚保続]]、[[視覚失認]]、[[純粋失読]]、[[Anton症候群]](視覚障害を否認)など
|-
|'''脳梁障害'''
|左視野の[[失読]]や左手の[[失書]]・[[失行]]、[[道具]]の強迫使用、[[拮抗性失行]]([[離断症候群]])
|-
|'''大脳辺縁系<br>(梁下回・帯状回・海馬傍回・鉤・扁桃体・海馬・歯状回・脳弓・中隔核)'''
|[[Papez回路]]や[[Yakovlev回路]]を含み、記憶や[[情動]]と関連する。両側海馬障害により[[近時記憶]]が、[[乳頭体]]病変では遠隔記憶が障害される。
|-
|'''視床'''
|種々の感覚入力の中継点であり、視床核はPapez回路やYakovlev回路を構成するため、視床障害により記憶・情動障害が起こりえる。
|-
|}


==== 各種脳疾患ごとの見地から ====
==== 各種脳疾患ごとの見地から ====
====== アルツハイマー病 ======
{| class="wikitable"
 早期から海馬を中心とする側頭葉内側部、側頭頭頂移行部の萎縮がみられる。記憶障害がほぼ必発である。[[前頭連合野]]は比較的保たれるため初期からの人格変化は稀で礼節は保たれる。
|+ 表6.各種脳疾患ごとの見地から病態生理
====== レビー小体型認知症 ======
|-
 脳血流SPECTにおいて一次視覚野を含めた後頭葉から[[頭頂葉]]の血流低下を認め、幻視や視覚障害を呈するが初期の記銘力障害は目立たないことが多い。
|'''アルツハイマー病'''
====== 前頭側頭葉変性症 ======
|早期から海馬を中心とする[[側頭葉]]内側部、側頭頭頂移行部の萎縮がみられる。記憶障害がほぼ必発である。[[前頭連合野]]は比較的保たれるため初期からの人格変化は稀で礼節は保たれる。
 多幸、脱抑制、異常行動、自発性の低下などが高頻度に認められる一方、[[妄想]]や幻視は少なく初期からの顕著な記憶障害、失語、視空間障害、失行・失認、構成障害は見られない。
|-
====== 嗜銀顆粒性認知症 ======
|'''レビー小体型認知症'''
 側頭葉内側面の迂回回が嗜銀顆粒の好発部位であり、左右差を呈することが多く、物忘れを初発としつつ頑固さや易怒性、自発性低下など前頭側頭葉変性症に類似の症状を呈するが進行は緩徐である。
|[[脳血流SPECT]]において[[一次視覚野]]を含めた[[後頭葉]]から[[頭頂葉]]の血流低下を認め、幻視や視覚障害を呈するが初期の記銘力障害は目立たないことが多い。
====== 血管性認知症 ======
|-
 病態、局在とも多様で不均一である。記憶力の割に人格や理解力などが保たれるまだら状認知症を呈し、階段状に進行する。
|'''前頭側頭葉変性症'''
====== 慢性硬膜下血腫 ======
|多幸、脱抑制、異常行動、自発性の低下などが高頻度に認められる一方、[[妄想]]や幻視は少なく初期からの顕著な記憶障害、失語、視空間障害、失行・失認、[[構成障害]]は見られない。
 局所神経症状がなくとも認知機能障害を呈する場合があり、その機序として血腫による脳循環障害が考えられる。
|-
====== 正常圧水頭症 ======
|'''嗜銀顆粒性認知症'''
 [[脳室]]拡大や正常範囲内での頭蓋内圧上昇をきたし、神経線維の直接圧迫や脳循環障害を介して種々の症状を呈する。タップ[[テスト]]により早期から反応がみられることから脳循環障害の要素が強いと思われる。注意障害や思考・反応・作業速度の低下、語想起能力低下、遂行機能障害など前頭葉機能中心の認知機能障害を呈する。
|側頭葉内側面の迂回回が[[嗜銀顆粒]]の好発部位であり、左右差を呈することが多く、物忘れを初発としつつ頑固さや易怒性、自発性低下など前頭側頭葉変性症に類似の症状を呈するが進行は緩徐である。
====== 硬膜動静脈瘻 ======
|-
 動静脈間シャントにより動脈血流が静脈に流入し、脳静脈還流障害・浮腫などを呈し認知機能障害を発症する。大脳皮質のみならず、Galen大静脈へのシャントによる両側視床の局所血流障害でも発症する。
|'''血管性認知症'''
====== 脳腫瘍 ======
|病態、局在とも多様で不均一である。記憶力の割に人格や理解力などが保たれる[[まだら状認知症]]を呈し、階段状に進行する。
 局在により多彩な症状を呈するが、認知症だけを呈する場合は前頭葉病変が多いとされる。前頭葉穹窿部が両側性に障害されると自発性の欠如が、[[前頭眼窩野]]が両側性に障害されると人格の変化がみられる。
|-
====== 外傷性脳損傷 ======
|'''慢性硬膜下血腫'''
 頭部に対して物理的な衝撃が作用した結果起こる急性の脳損傷で、脳挫傷やびまん性[[軸索]]損傷を主体とし、これによる脳浮腫や脳循環障害などにより広範な脳機能障害が誘発される。
|局所神経症状がなくとも認知機能障害を呈する場合があり、その機序として血腫による脳循環障害が考えられる。
====== 慢性外傷性脳症 ======
|-
 頭部への外力を慢性的に受けることで脳の微小損傷が蓄積し、数年〜数十年後に様々な神経症状と認知機能障害を呈する。詳細な機序は不明だが病理学的にアルツハイマー病との類似性が指摘される。
|'''正常圧水頭症'''
====== Creutzfeldt-Jakob病 ======
|[[脳室]]拡大や正常範囲内での頭蓋内圧上昇をきたし、神経線維の直接圧迫や脳循環障害を介して種々の症状を呈する。タップ[[テスト]]により早期から反応がみられることから脳循環障害の要素が強いと思われる。注意障害や思考・反応・作業速度の低下、語想起能力低下、遂行機能障害など前頭葉機能中心の認知機能障害を呈する。
 MRI拡散強調画像において大脳皮質、大脳基底核、視床に異常信号を認める。食欲不振、倦怠感、[[睡眠障害]]、[[頭痛]]、視覚障害から亜急性に認知症状が進行し、言語障害、性格変化や異常行動、[[小脳]]失調、錐体路・錐体外路徴候、ミオクローヌスを経て無動性無言状態に至る。
|-
|'''硬膜動静脈瘻'''
|[[動静脈間シャント]]により動脈血流が静脈に流入し、脳静脈還流障害・浮腫などを呈し認知機能障害を発症する。大脳皮質のみならず、[[Galen大静脈]]へのシャントによる両側視床の局所血流障害でも発症する。
|-
|'''脳腫瘍'''
|局在により多彩な症状を呈するが、認知症だけを呈する場合は前頭葉病変が多いとされる。[[前頭葉穹窿部]]が両側性に障害されると自発性の欠如が、[[前頭眼窩野]]が両側性に障害されると人格の変化がみられる。
|-
|'''外傷性脳損傷'''
|頭部に対して物理的な衝撃が作用した結果起こる急性の脳損傷で、脳挫傷やびまん性[[軸索]]損傷を主体とし、これによる[[脳浮腫]]や[[脳循環障害]]などにより広範な脳機能障害が誘発される。
|-
|'''慢性外傷性脳症'''
|頭部への外力を慢性的に受けることで脳の微小損傷が蓄積し、数年〜数十年後に様々な神経症状と認知機能障害を呈する。詳細な機序は不明だが病理学的にアルツハイマー病との類似性が指摘される。
|-
|'''Creutzfeldt-Jakob病'''
|MRI拡散強調画像において大脳皮質、大脳基底核、視床に異常信号を認める。食欲不振、倦怠感、[[睡眠障害]]、[[頭痛]]、視覚障害から亜急性に認知症状が進行し、言語障害、性格変化や異常行動、[[小脳失調]]、[[錐体路]]・[[錐体外路徴候]]、[[ミオクローヌス]]を経て[[無動性無言状態]]に至る。
|-
|}


== 治療 ==
== 治療 ==
 認知症を呈する疾患のうち、まずは根治可能な疾患を鑑別し加療する。慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などは外科手術、内分泌・代謝疾患、感染症は内科的治療、薬剤誘発性のものは原因薬剤の中止を行う。他方、アルツハイマー病などの神経変性疾患、[[プリオン病]]、後遺障害の残存しやすい外傷性脳損傷や血管性認知症、ある種の脳腫瘍などは根治困難であり対症療法を検討する。認知症の症状は中核症状と周辺症状(Behavioral psychological symptoms of dementia:BPSD)に二分され、以下にそれぞれの特徴と治療・対処法について記載する。
 認知症を呈する疾患のうち、まずは根治可能な疾患を鑑別し加療する。慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などは外科手術、内分泌・代謝疾患、感染症は内科的治療、薬剤誘発性のものは原因薬剤の中止を行う。他方、アルツハイマー病などの神経変性疾患、[[プリオン病]]、後遺障害の残存しやすい外傷性脳損傷や血管性認知症、ある種の脳腫瘍などは根治困難であり対症療法を検討する。認知症の症状は中核症状と周辺症状(Behavioral psychological symptoms of dementia:BPSD)に二分され、以下にそれぞれの特徴と治療・対処法について記載する。
==== 中核症状 ====
==== 中核症状 ====
 記憶障害、見当識障害、遂行機能障害、計算力低下など進行に伴い出現する普遍的症状を指す。
 記憶障害、見当識障害、遂行機能障害、計算力低下など進行に伴い出現する普遍的症状を指す。
===== アルツハイマー病の中核症状に対する対症療法 =====
===== アルツハイマー病の中核症状に対する対症療法 =====
 認知症の50%を占めるアルツハイマー病に対し本邦で承認されているのは[[コリンエステラーゼ]](cholinesterase:ChE)阻害薬とN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体[[拮抗薬]]である。ChE阻害薬は「アルツハイマー病においてMeynert核の[[アセチルコリン]][[acetylcholine]]:[[ACh]])作動性神経細胞の脱落とACh合成系の活性低下が病態に関連する」という[[コリン]]仮説を基に開発され、[[シナプス]]間隙のACh量を増加させる。一方、NMDA受容体拮抗薬は「アルツハイマー病において、脳内[[グルタミン酸]]濃度の持続的上昇やNMDA受容体へのアミロイドβの結合により[[CA2|Ca2]]+が細胞内に過剰流入し、シナプス後膜電位変化が増大して(シナプティックノイズ)記憶・学習の形成を阻害したり、[[酸化ストレス]]増大や神経[[細胞死]]を招く」というグルタミン酸仮説に基づき開発されている。本剤は持続性の病的な低濃度グルタミン酸刺激に対してはNMDA受容体に結合して過剰Ca2+流入による神経毒性を防ぐが、生理的な神経興奮による一過性の高濃度グルタミン酸刺激に対しては電位依存性にNMDA受容体から解離するため、正常な神経伝達や記憶形成には影響しない。'''表5'''に各薬剤の特徴を示す。<br>
 認知症の50%を占めるアルツハイマー病に対し本邦で承認されているのは[[コリンエステラーゼ]](cholinesterase:ChE)[[阻害薬]]と[[N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体]][[拮抗薬]]である。ChE阻害薬は「アルツハイマー病において[[Meynert核]]のアセチルコリン([[acetylcholine]]:[[ACh]])作動性神経細胞の脱落とACh合成系の活性低下が病態に関連する」という[[コリン]]仮説を基に開発され、[[シナプス]]間隙のACh量を増加させる。
 
 一方、NMDA受容体拮抗薬は「アルツハイマー病において、脳内グルタミン酸濃度の持続的上昇やNMDA受容体へのアミロイドβの結合によりCa<sup>2+</sup>が細胞内に過剰流入し、[[シナプス後膜電位]]変化が増大して(シナプティックノイズ)記憶・学習の形成を阻害したり、[[酸化ストレス]]増大や[[神経細胞死]]を招く」という[[グルタミン酸仮説]]に基づき開発されている。本剤は持続性の病的な低濃度グルタミン酸刺激に対してはNMDA受容体に結合して過剰Ca<sup>2+</sup>流入による神経毒性を防ぐが、生理的な神経興奮による一過性の高濃度グルタミン酸刺激に対しては電位依存性にNMDA受容体から解離するため、正常な神経伝達や記憶形成には影響しない。'''表7'''に各薬剤の特徴を示す。<br>


{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" width="850" height="20""
{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" width="850" height="20""
|+ '''表5.アルツハイマー病([[Alzheimer's disease]] ; AD)治療薬の特徴'''  
|+ '''表7.アルツハイマー病([[Alzheimer's disease]] ; AD)治療薬の特徴'''  
! style="width:14%" | 一般名 !! style="width:12%" | 作用機序 !! style="width:14%" | 適応 !! style="width:23%" | 副次的効果 !! style="width:13%" | 剤型 !! style="width:12%" | 用法(回/日) !! style="width:12%" | 代謝・排泄
! style="width:14%" | 一般名 !! style="width:12%" | 作用機序 !! style="width:14%" | 適応 !! style="width:23%" | 副次的効果 !! style="width:13%" | 剤型 !! style="width:12%" | 用法(回/日) !! style="width:12%" | 代謝・排泄
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<small>VaD:血管性認知症(vascular dementia)、DLB:レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)</small>
<small>VaD:血管性認知症(vascular dementia)、DLB:レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)</small>
<br>
<br>
===== アルツハイマー病以外の認知症性疾患の中核症状に対する対症療法 =====
===== アルツハイマー病以外の認知症性疾患の中核症状に対する対症療法 =====
 血管性認知症ではドーパミン放出促進作用とNMDA受容体拮抗作用を有するアマンタジンが「脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下」に対し保険承認されている他、保険適応外の臨床研究でChE阻害剤が有効とする報告もある。外傷性脳損傷についてはこれも保険適応外だが、注意障害に対しメチルフェニデートやChE阻害剤、アマンタジンなどが有効との報告がある。レビー小体型認知症ではChE阻害剤にて認知機能や妄想、幻覚など臨床症状全般が改善したという報告があり本邦では2014年9月よりアリセプトが承認されている。メマンチンも本邦未承認ではあるがランダム化比較試験で改善が報告されている。しかし前頭側頭葉変性症など他の神経変性疾患や[[プリオン]]病は現状では有効な治療薬はない。
 血管性認知症では[[ドーパミン]]放出促進作用とNMDA受容体拮抗作用を有する[[アマンタジン]]が「脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下」に対し保険承認されている他、保険適応外の臨床研究でChE阻害剤が有効とする報告もある。
 
 外傷性脳損傷についてはこれも保険適応外だが、注意障害に対し[[メチルフェニデート]]やChE阻害剤、アマンタジンなどが有効との報告がある。
 
 レビー小体型認知症ではChE阻害剤にて認知機能や妄想、幻覚など臨床症状全般が改善したという報告があり本邦では2014年9月より[[アリセプト]]が承認されている。メマンチンも本邦未承認ではあるが[[ランダム化比較試験]]で改善が報告されている。しかし前頭側頭葉変性症など他の神経変性疾患やプリオン病は現状では有効な治療薬はない。
 
==== BPSD ====
==== BPSD ====
 かつて認知症の問題行動や異常行動とよばれた概念で行動症状と心理症状に二分される。前者は不穏、多動、徘徊、攻撃性、興奮、拒絶、拒食・異食、不潔行為、つきまとい、概日リズム障害、社会的・性的逸脱行動が、後者は抑うつや不安、[[アパシー]]、幻覚、妄想などがあげられる。認知症患者の約60〜90%が少なくとも1つ以上のBPSD症状を呈し、特に無関心、興奮、易刺激性、抑うつなどの頻度が高いとされる。
 かつて認知症の問題行動や異常行動とよばれた概念で行動症状と心理症状に二分される。前者は[[不穏]]、[[多動]]、[[徘徊]]、[[攻撃性]]、興奮、[[拒絶]]、[[拒食]]・[[異食]]、[[不潔行為]]、[[つきまとい]]、[[概日リズム障害]]、[[社会的逸脱行動|社会的]]・[[性的逸脱行動]]が、後者は抑うつや[[不安]]、[[アパシー]]、[[幻覚]]、[[妄想]]などがあげられる。認知症患者の約60〜90%が少なくとも1つ以上のBPSD症状を呈し、特に無関心、興奮、[[易刺激性]]、抑うつなどの頻度が高いとされる。
 
===== ケアと環境整備による対応 =====
===== ケアと環境整備による対応 =====
 BPSDに対しては原因、誘因、状態を把握し、会話の仕方の工夫(短く簡潔に、穏やかに)や失禁・空腹など身体的問題への対処、不安の原因の除去、首尾一貫した対応、道具の工夫などまずはケア・環境整備により対応する。これらの対応で難しい場合には次の薬物療法を試みる。
 BPSDに対しては原因、誘因、状態を把握し、会話の仕方の工夫(短く簡潔に、穏やかに)や[[失禁]]・空腹など身体的問題への対処、不安の原因の除去、首尾一貫した対応、道具の工夫などまずはケア・環境整備により対応する。これらの対応で難しい場合には次の薬物療法を試みる。
 
===== BPSDに対する薬物療法 =====
===== BPSDに対する薬物療法 =====
 ChE阻害剤など中核症状を改善する薬剤により周辺症状も軽減されることが多く、認知症疾患治療ガイドライン2010コンパクト版2012でも焦燥性興奮、攻撃性、脱抑制、体重減少、レビー小体型認知症における幻覚・妄想やREM[[睡眠]]期行動異常(RBD)などに記載が見られる。また抑肝散など漢方療法も示唆される(詳細は後述)。抗精神病薬では[[非定型抗精神病薬]]が使われやすいが、米国食品衛生局(FDA)より「認知症高齢者の臨床治験において非定型抗精神病薬投与群はプラセボ投与群に比べ死亡率が増加する」という警告が出ており要注意である。2013年7月には「かかりつけ医のためのBPSDに対する[[向精神薬]]使用ガイドライン」が厚生労働省により公表されている。その内容を'''表6'''にまとめた。<br>
 ChE阻害剤など中核症状を改善する薬剤により周辺症状も軽減されることが多く、認知症疾患治療ガイドライン2010コンパクト版2012でも焦燥性興奮、攻撃性、脱抑制、体重減少、レビー小体型認知症における幻覚・妄想やREM[[睡眠]]期行動異常(RBD)などに記載が見られる。また抑肝散など漢方療法も示唆される(詳細は後述)。
 
 [[抗精神病薬]]では[[非定型抗精神病薬]]が使われやすいが、米国食品衛生局(FDA)より「認知症高齢者の臨床治験において非定型抗精神病薬投与群はプラセボ投与群に比べ死亡率が増加する」という警告が出ており要注意である。2013年7月には「かかりつけ医のためのBPSDに対する[[向精神薬]]使用ガイドライン」が厚生労働省により公表されている。その内容を'''表6'''にまとめた。<br>


{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" width="965" height="20""
{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" width="965" height="20""
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|-
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! rowspan="5" | 抗精神病薬
! rowspan="5" | 抗精神病薬
| rowspan="2" style="text-align:center"| SDA || style="text-align:center" | リスペリドン || rowspan="5" style="text-align:center" | 焦燥、興奮、攻撃性<br>または精神病症状 ||・高血糖あるいは糖尿病を合併している場合は第1選択。<br>・DLBではパーキンソン症状の悪化を示しやすいため注意。 || style="text-align:center" | 0.5〜2.0mg
| rowspan="2" style="text-align:center"| SDA || style="text-align:center" | [[リスペリドン]] || rowspan="5" style="text-align:center" | 焦燥、興奮、攻撃性<br>または精神病症状 ||・高血糖あるいは糖尿病を合併している場合は第1選択。<br>・DLBではパーキンソン症状の悪化を示しやすいため注意。 || style="text-align:center" | 0.5〜2.0mg
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| style="text-align:center" | ペロスピロン || ・抗不安薬、眠前薬として使用可。<br>・高血糖/糖尿病合併例では慎重投与。 || style="text-align:center" | 4〜12mg
| style="text-align:center" | [[ペロスピロン]] || ・抗不安薬、眠前薬として使用可。<br>・高血糖/糖尿病合併例では慎重投与。 || style="text-align:center" | 4〜12mg
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| style="text-align:center"| Loose binding || style="text-align:center" | [[クエチアピン]] || ・パーキンソン症状がある場合とDLBでは第1選択、眠前薬として使用可。<br>・高血糖/糖尿病合併例では禁忌。 || style="text-align:center" | 25〜100mg
| style="text-align:center"| Loose binding || style="text-align:center" | [[クエチアピン]] || ・パーキンソン症状がある場合とDLBでは第1選択、眠前薬として使用可。<br>・高血糖/糖尿病合併例では禁忌。 || style="text-align:center" | 25〜100mg
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! rowspan="10" | [[抗うつ薬]]
! rowspan="10" | [[抗うつ薬]]
| rowspan="4" style="text-align:center"| [[SSRI]] || style="text-align:center" | フルボキサミン || rowspan="4" style="text-align:center" | うつ症状、FTDの脱抑制、<br>情動行動、食行動異常 ||・分3、食直後の服用<br>・開始時悪心や嘔吐が出現することあり<br>・高齢者では慎重投与 || style="text-align:center" | 25-75〜75-100mg
| rowspan="4" style="text-align:center"| [[SSRI]] || style="text-align:center" | [[フルボキサミン]] || rowspan="4" style="text-align:center" | うつ症状、FTDの脱抑制、<br>情動行動、食行動異常 ||・分3、食直後の服用<br>・開始時悪心や嘔吐が出現することあり<br>・高齢者では慎重投与 || style="text-align:center" | 25-75〜75-100mg
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| style="text-align:center" | パロキセチン || ・うつ病とうつ状態では用量は右記。原則1週ごとに10mg/日ずつ増量<br>・高齢者では慎重投与(SIADH、出血のリスク増)<br>・分1、夕直後の服用<br>・開始時悪心や嘔吐が出現することあり || style="text-align:center" | 10〜40mg
| style="text-align:center" | [[パロキセチン]] || ・うつ病とうつ状態では用量は右記。原則1週ごとに10mg/日ずつ増量<br>・高齢者では慎重投与(SIADH、出血のリスク増)<br>・分1、夕直後の服用<br>・開始時悪心や嘔吐が出現することあり || style="text-align:center" | 10〜40mg
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| style="text-align:center" | セルトラリン || ・分1<br>・高齢者では慎重投与 || style="text-align:center" | 25〜50mg
| style="text-align:center" | [[セルトラリン]] || ・分1<br>・高齢者では慎重投与 || style="text-align:center" | 25〜50mg
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| style="text-align:center" | エスシタロプラム || ・分1、夕食後<br>・QT延長例は禁忌<br>・肝機能障害、高齢者では10mgを上限が望ましい || style="text-align:center" | 10mg
| style="text-align:center" | [[エスシタロプラム]] || ・分1、夕食後<br>・QT延長例は禁忌<br>・肝機能障害、高齢者では10mgを上限が望ましい || style="text-align:center" | 10mg
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| rowspan="2" style="text-align:center"| [[SNRI]] || style="text-align:center" | ミルナシプラン || style="text-align:center" | うつ症状 ||・分3、[[MAO阻害薬]]との併用は禁忌<br>・[[前立腺]]疾患等合併例では尿閉が起きることあり || style="text-align:center" | 15〜60mg
| rowspan="2" style="text-align:center"| [[SNRI]] || style="text-align:center" | [[ミルナシプラン]] || style="text-align:center" | うつ症状 ||・分3、[[MAO阻害薬]]との併用は禁忌<br>・[[前立腺]]疾患等合併例では尿閉が起きることあり || style="text-align:center" | 15〜60mg
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| style="text-align:center" | デュロキセチン || style="text-align:center" | うつ症状、舌などの[[痛み]]<br>を訴える心気症状に<br>効果がある可能性あり || ・分1、夕直後の服用<br>・SSRI類似の消化器症状が出現することあり<br>・高度の肝・腎機能障害では禁忌<br>・高齢者では慎重投与 || style="text-align:center" | 20〜40mg
| style="text-align:center" | [[デュロキセチン]] || style="text-align:center" | うつ症状、舌などの[[痛み]]<br>を訴える心気症状に<br>効果がある可能性あり || ・分1、夕直後の服用<br>・SSRI類似の消化器症状が出現することあり<br>・高度の肝・腎機能障害では禁忌<br>・高齢者では慎重投与 || style="text-align:center" | 20〜40mg
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| style="text-align:center"| NaSSA || style="text-align:center" | ミルタザピン || style="text-align:center" | うつ症状、抗不安作用、睡眠障害の改善、食欲改善効果 ||・分1、眠気が出やすい、眠前投与<br>・高齢者では血中濃度上昇のリスクあり、慎重投与 || style="text-align:center" | 7.5〜30mg
| style="text-align:center"| NaSSA || style="text-align:center" | [[ミルタザピン]] || style="text-align:center" | うつ症状、抗不安作用、睡眠障害の改善、食欲改善効果 ||・分1、眠気が出やすい、眠前投与<br>・高齢者では血中濃度上昇のリスクあり、慎重投与 || style="text-align:center" | 7.5〜30mg
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| style="text-align:center"| 三環系 || style="text-align:center" | [[アモキサピン]] || style="text-align:center" | うつ症状<br>(SSRI無効時) ||・抗コリン作用、弱心毒性 || style="text-align:center" | 25〜75mg
| style="text-align:center"| 三環系 || style="text-align:center" | [[アモキサピン]] || style="text-align:center" | うつ症状<br>(SSRI無効時) ||・抗コリン作用、弱心毒性 || style="text-align:center" | 25〜75mg
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| style="text-align:center"| 四環系 || style="text-align:center" | [[ミアンセリン]] || style="text-align:center" | せん妄、不眠 ||・弱抗コリン作用、鎮静効果<br>・心毒性なし、分1で眠前投与も可 || style="text-align:center" | 10〜30mg
| style="text-align:center"| 四環系 || style="text-align:center" | [[ミアンセリン]] || style="text-align:center" | せん妄、不眠 ||・弱抗コリン作用、鎮静効果<br>・心毒性なし、分1で眠前投与も可 || style="text-align:center" | 10〜30mg
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| style="text-align:center"| 異環系 || style="text-align:center" | トラゾドン || style="text-align:center" | 焦燥、不眠
| style="text-align:center"| 異環系 || style="text-align:center" | [[トラゾドン]] || style="text-align:center" | 焦燥、不眠
  ||・抗コリン作用、心毒性なし<br>・眠気のため就寝前に投与も可<br>・1〜数回分服、高齢者では安全性未確立 || style="text-align:center" | 25〜100mg
  ||・抗コリン作用、心毒性なし<br>・眠気のため就寝前に投与も可<br>・1〜数回分服、高齢者では安全性未確立 || style="text-align:center" | 25〜100mg
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! rowspan="6" | [[抗不安薬]]/<br>睡眠導入薬
! rowspan="6" | [[抗不安薬]]/<br>睡眠導入薬
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| rowspan="4" style="text-align:center" | ω1受容体<br>[[作動薬]] || style="text-align:center" | ゾルピデム || rowspan="3" style="text-align:center" | 入眠障害 || rowspan="3" | 超短時間作用型 || style="text-align:center" | 5mg
| rowspan="4" style="text-align:center" | ω1受容体<br>[[作動薬]] || style="text-align:center" | [[ゾルピデム]] || rowspan="3" style="text-align:center" | 入眠障害 || rowspan="3" | 超短時間作用型 || style="text-align:center" | 5mg
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| style="text-align:center" | ゾピクロン || style="text-align:center" | 7.5mg
| style="text-align:center" | [[ゾピクロン]] || style="text-align:center" | 7.5mg
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| style="text-align:center" | エスゾピクロン || style="text-align:center" | 1〜2mg
| style="text-align:center" | [[エスゾピクロン]] || style="text-align:center" | 1〜2mg
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| style="text-align:center" | クアゼパム || style="text-align:center" | 中途覚醒/早朝覚醒 || 長時間型、活性代謝物あり || style="text-align:center" | 15mg
| style="text-align:center" | [[クアゼパム]] || style="text-align:center" | 中途覚醒/早朝覚醒 || 長時間型、活性代謝物あり || style="text-align:center" | 15mg
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| style="text-align:center" | メラトニン<br>受容体拮抗薬 || style="text-align:center" | ラメルテオン || style="text-align:center" | 入眠障害 || フルボキサミンとの併用は禁忌 || style="text-align:center" | 8mg
| style="text-align:center" | [[メラトニン<br>受容体拮抗薬]] || style="text-align:center" | [[ラメルテオン]] || style="text-align:center" | 入眠障害 || フルボキサミンとの併用は禁忌 || style="text-align:center" | 8mg
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<small>厚生労働省 かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドラインより改変引用</small><br>
<small>厚生労働省 かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドラインより改変引用</small><br>
<small>SDA:[[セロトニン]]・ドーパミン拮抗薬、DLB:レビー小体型認知症、MARTA:多受容体作用抗精神病薬</small><br>
<small>SDA:[[セロトニン]]・[[ドーパミン]]拮抗薬、DLB:レビー小体型認知症、MARTA:[[多受容体作用抗精神病薬]]</small><br>
<small>FTD:[[前頭側頭型認知症]]、SSRI:選択的セロトニン取り込み阻害薬、SNRI:[[セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬]]、NaSSA:[[ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬]]</small><br>
<small>FTD:[[前頭側頭型認知症]]、SSRI:[[選択的セロトニン取り込み阻害薬]]、SNRI:[[セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬]]、NaSSA:[[ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬]]</small><br>


==== その他の治療アプローチ ====
==== その他の治療アプローチ ====
===== 漢方療法 =====
===== 漢方療法 =====
 保険適応外ではあるが、最もエビデンスレベルが高いのはBPSDに対する抑肝散である。本邦の認知症疾患治療ガイドライン2010コンパクト版2012にも記載があり、実臨床でも頻用されている。抑肝散には甘草が多く含まれるので、偽アルドステロン症や低カリウム血症に注意を要する。また他にも保険適応外ながら釣藤散、抑肝散加陳皮半夏や柴胡加竜骨牡蠣湯、黄連解毒湯、加味温胆湯、加味帰脾湯、八味地黄丸、当帰芍薬散など複数の漢方薬の報告がある。
 保険適応外ではあるが、最もエビデンスレベルが高いのはBPSDに対する抑肝散である。本邦の認知症疾患治療ガイドライン2010コンパクト版2012にも記載があり、実臨床でも頻用されている。抑肝散には[[甘草]]が多く含まれるので、偽[[wikipedia:ja:アルドステロン症|アルドステロン症]]や[[wikipedia:ja:低カリウム血症|低カリウム血症]]に注意を要する。また他にも保険適応外ながら釣藤散、[[抑肝散加陳皮半夏]]や[[柴胡加竜骨牡蠣湯]]、[[黄連解毒湯]]、[[加味温胆湯]]、[[加味帰脾湯]]、[[八味地黄丸]]、[[当帰芍薬散]]など複数の漢方薬の報告がある。
===== 日常生活動作(Activities of daily living:ADL)障害への対応 =====
===== 日常生活動作障害への対応 =====
 認知症の初期には家事動作・服薬管理・買い物・電話・交通機関の利用など社会的活動に必要な、複雑で高度な手段的ADL(instrumental ADL:IADL)から障害される。その後、中等度以降に進行すると食事・排泄・入浴・更衣・整容・移動などの基本的ADL(basic ADL :BADL)が障害される。IADL障害に対しては記憶の代償手段の活用(メモや日毎の内服分包、タイマー使用など)で対応する。症状が進行してBADL障害も出現するようになったら、「できるADL」を評価しながら段階的に介護量を調整し、安全面や負担も考慮して「していくADL」を検討する。また環境設定を統一し、同じ動作・方法を繰り返して[[手続き記憶]]を活用して学習したり、目印や着衣の容易な服への変更など環境整備により自立度を高める。
 認知症の初期には家事動作・服薬管理・買い物・電話・交通機関の利用など社会的活動に必要な、複雑で高度な手段的日常生活動作(ADL、instrumental ADL:IADL)から障害される。その後、中等度以降に進行すると食事・排泄・入浴・更衣・整容・移動などの基本的ADL(basic ADL :BADL)が障害される。IADL障害に対しては記憶の代償手段の活用(メモや日毎の内服分包、タイマー使用など)で対応する。症状が進行してBADL障害も出現するようになったら、「できるADL」を評価しながら段階的に介護量を調整し、安全面や負担も考慮して「していくADL」を検討する。また環境設定を統一し、同じ動作・方法を繰り返して[[手続き記憶]]を活用して学習したり、目印や着衣の容易な服への変更など環境整備により自立度を高める。


===== 非薬物療法 =====
===== 非薬物療法 =====
 認知機能、BPSD、ADLの改善を目指して行う。米国精神医学会の治療ガイドラインによると、標的とされるのは「認知」「刺激」「行動」「感情」の4つで、「認知」に関しては、見当識について他者とコミュニケーションをとりながら繰り返し学習するリアリティオリエンテーション療法、「刺激」については音楽療法などの各種芸術療法、「行動」に関しては行動異常を観察・評価して介入法を導き出すアプローチが、「感情」については過去の思い出について聞き手が受容・[[共感]]的に傾聴する回想法などが試みられる。また他にも認知刺激療法、運動療法などが試みられる。
 認知機能、BPSD、ADLの改善を目指して行う。米国精神医学会の治療ガイドラインによると、標的とされるのは「認知」「刺激」「行動」「感情」の4つで、「認知」に関しては、見当識について他者とコミュニケーションをとりながら繰り返し学習するリアリティオリエンテーション療法、「刺激」については[[音楽療法]]などの各種芸術療法、「行動」に関しては行動異常を観察・評価して介入法を導き出すアプローチが、「感情」については過去の思い出について聞き手が受容・[[共感]]的に傾聴する回想法などが試みられる。また他にも認知刺激療法、運動療法などが試みられる。


== 疫学 ==
== 疫学 ==