「認知的構え」の版間の差分

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====意思決定とメンタルエフォート====
====意思決定とメンタルエフォート====
精神的な努力が報酬などの正の経済価値とどの様に情報として統合されているのかについて、意思決定の枠組みを用いた研究などから活発な議論が起こっている<ref name=Botvinick2015 /><ref name=Shenhav2017 /><ref name=Shenhav2013 / >
 精神的な努力が報酬などの正の経済価値とどの様に情報として統合されているのかについて、意思決定の枠組みを用いた研究などから活発な議論が起こっている<ref name=Botvinick2015 /><ref name=Shenhav2017 /><ref name=Shenhav2013 />[4], [5], [12]。現在の考え方では認知的構えの構築や切り替えやその運用に関わるメンタルエフォートは、課題のゴールに関する報酬の価値によって左右され、この報酬価値に適切な量のメンタルエフォートが用いられるという主張がなされている<ref name=Shenhav2013 />[12]。またこの相対的なメンタルエフォートとその課題のゴールで得られる報酬価値の計算によって、メンタルエフォートを伴う課題を行うかどうかやどの程度の集中度においてそれを実行するかなどが、意思決定的な情報処理によって決まっていると考えられている。
[4], [5], [12]。現在の考え方では認知的構えの構築や切り替えやその運用に関わるメンタルエフォートは、課題のゴールに関する報酬の価値によって左右され、この報酬価値に適切な量のメンタルエフォートが用いられるという主張がなされている<ref name=Shenhav2013 / >
[12]。またこの相対的なメンタルエフォートとその課題のゴールで得られる報酬価値の計算によって、メンタルエフォートを伴う課題を行うかどうかやどの程度の集中度においてそれを実行するかなどが、意思決定的な情報処理によって決まっていると考えられている。


====メンタルエフォートの正・負の報酬価値====
====メンタルエフォートの正・負の報酬価値====
以上の議論の様に認知的構えとそれに関わるメンタルエフォートは全般的に負の報酬価値または経済的なコストを伴うものと考えられているが、何が精神的努力となりまた精神的な疲労となっていくかについては、未だに議論が分かれている<ref name=Inzlicht2018 />
 以上の議論の様に認知的構えとそれに関わるメンタルエフォートは全般的に負の報酬価値または経済的なコストを伴うものと考えられているが、何が精神的努力となりまた精神的な疲労となっていくかについては、未だに議論が分かれている<ref name=Inzlicht2018 />[14]。ある状況ではメンタルエフォートを伴う課題の遂行に関する努力が正の報酬価値を持ちうる事もある。難しい課題を学習し達成していく時の達成感などの感覚<ref name=Csikszentmihalyi1988>M. Csikszentmihalyi, The flow experience and its significance for human psychology, Optim. Exp. Psychol. Stud. Flow Conscious., vol. 2, pp. 15–35, 1988. </ref><ref name=Csikszentmihalyi1992>M. Csikszentmihalyi and I. S. Csikszentmihalyi, Optimal experience: Psychological studies of flow in consciousness. Cambridge university press, 1992.</ref>[62], [63]や、登山やランニングなどに関わる報酬的な要素などが良い例であろう。
[14]。ある状況ではメンタルエフォートを伴う課題の遂行に関する努力が正の報酬価値を持ちうる事もある。難しい課題を学習し達成していく時の達成感などの感覚<ref name=Csikszentmihalyi1988>M. Csikszentmihalyi, ‘The flow experience and its significance for human psychology’, Optim. Exp. Psychol. Stud. Flow Conscious., vol. 2, pp. 15–35, 1988. </ref>
<ref name=Csikszentmihalyi1992>M. Csikszentmihalyi and I. S. Csikszentmihalyi, Optimal experience: Psychological studies of flow in consciousness. Cambridge university press, 1992.</ref>
[62], [63]や、登山やランニングなどに関わる報酬的な要素などが良い例であろう。
==神経基盤==
==神経基盤==
認知的構えの神経メカニズムの説明は脳を構成する要素の規模のレベルで分かれてくる。例えば脳領域レベルでの機能の説明もあれば神経細胞レベルでの情報の表現のレベルもある<ref name=Sakai2008 />
認知的構えの神経メカニズムの説明は脳を構成する要素の規模のレベルで分かれてくる。例えば脳領域レベルでの機能の説明もあれば神経細胞レベルでの情報の表現のレベルもある<ref name=Sakai2008 />