「超解像蛍光顕微鏡」の版間の差分

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解析で得られる(''x<sub>m</sub>'',''y<sub>m</sub>'')が推定された分子の座標、''w<sub>m</sub>''は輝点の広がり具合に相当し、以下の式から推定した座標の「不確かさ(σ<sub>''x,y''</sub>)''<sub>m</sub>''」を計算する際に用いられる。他のパラメータとして蛍光一分子の発した総フォトン数(''N<sub>m</sub>'')・画像の1ピクセルのサイズ(''a'')・バックグラウンドの総フォトン数(''b<sub>m</sub>'')を用いる。<br>
解析で得られる(''x<sub>m</sub>'',''y<sub>m</sub>'')が推定された分子の座標、''w<sub>m</sub>''は輝点の広がり具合に相当し、以下の式から推定した座標の「不確かさ(σ<sub>''x,y''</sub>)''<sub>m</sub>''」を計算する際に用いられる。他のパラメータとして蛍光一分子の発した総フォトン数(''N<sub>m</sub>'')・画像の1ピクセルのサイズ(''a'')・バックグラウンドの総フォトン数(''b<sub>m</sub>'')を用いる。<br>
  (σ<sub>''x,y''</sub><sup>2</sup>)''<sub>m</sub>'' = (''w<sub>m</sub>''<sup>2</sup> + ''a''<sup>2</sup>/12)/''N<sub>m</sub>'' + 4π<sup>1/2</sup>''w<sub>m</sub>''<sup>3</sup>''b<sub>m</sub>''<sup>2</sup>/''aN<sub>m</sub>''<sup>2</sup> </ref>。座標推定から構築した点は②の元の点に比べて小さくなるが、極小の一点として表されるわけではなく、この点もまた2次元のガウス関数の輝度分布として表わされる。解析により求められた「座標」と「不確かさ」がそれぞれこの2次元のガウス関数の中心と標準偏差になる。また各一分子の輝度の合計が等しくなるように規格化される。この結果、精度が高く推定された点は小さな明るい点として、精度が低く推定された点は大きな暗い点として局在画像上で表わされる。<br>
  (σ<sub>''x,y''</sub><sup>2</sup>)''<sub>m</sub>'' = (''w<sub>m</sub>''<sup>2</sup> + ''a''<sup>2</sup>/12)/''N<sub>m</sub>'' + 4π<sup>1/2</sup>''w<sub>m</sub>''<sup>3</sup>''b<sub>m</sub>''<sup>2</sup>/''aN<sub>m</sub>''<sup>2</sup> </ref>。座標推定から構築した点は②の元の点に比べて小さくなるが、極小の一点として表されるわけではなく、この点もまた2次元のガウス関数の輝度分布として表わされる。解析により求められた「座標」と「不確かさ」がそれぞれこの2次元のガウス関数の中心と標準偏差になる。また各一分子の輝度の合計が等しくなるように規格化される。この結果、精度が高く推定された点は小さな明るい点として、精度が低く推定された点は大きな暗い点として局在画像上で表わされる。<br>
'''④1-Nサイクルの積分によるPALM画像の構築''' 上記①~③操作を全てのPSFPがなくなるまで(Nサイクル)繰り返した後に、③で得られた画像を全て足し合わせる事でPALM画像が得られる<ref group="注">実際は全ての点をPALM画像に入れるのではなく、推定された座標の「不確かさ」やフィッティング誤差による"足切り"操作が行われる。</ref>。最終的に得られるPALM画像の輝度は「蛍光分子がその位置で見つかる可能性」に比例するので、PALM画像は分子の出現確率密度地図に相当する。]]
'''④1-Nサイクルの積分によるPALM画像の構築''' 上記①~③操作を全てのPSFPがなくなるまで(Nサイクル)繰り返した後に、③で得られた画像を全て足し合わせる事でPALM画像が得られる<ref group="注">実際は全ての点をPALM画像に入れるのではなく、推定された座標の「不確かさ」やフィッティング誤差を指標とした"足切り"操作が行われる。</ref>。最終的に得られるPALM画像の輝度は「蛍光分子がその位置で見つかる可能性」に比例するので、PALM画像は分子の出現確率密度地図に相当する。]]


光学顕微鏡の空間分解能は先述のとおり2つの点光源を異なる点として区別する「2点分解能」で表現され、可視光では250 nm程度である。しかしながら、輝点が重ならないほど十分に離れていれば、それを2次元のガウス関数で解析する事で最大1 nm程度の精度でその位置を推定できる。このような蛍光一分子の正確な位置解析は現在FIONA(Fluorescence imaging with one-nanometer accuracy)という名前で知られている<ref><pubmed> 12791999 </pubmed></ref>。Localization microscopy(蛍光一分子局在化顕微鏡法)は、FIONAを利用し光学顕微鏡の分解能を超えた画像を取得する方法である。このようなアイディアは古くから提案されていたが<ref><pubmed> 19859146 </pubmed></ref>、理想的なサンプルを作成するのが困難なため実現はされなかった。例えばGFPを興味のあるタンパク質と融合させ、それを発現した細胞を想定する。この細胞にFIONAを適用しようとすると、ほぼ確実に以下の問題が生じる。<br>
光学顕微鏡の空間分解能は先述のとおり2つの点光源を異なる点として区別する「2点分解能」で表現され、可視光では250 nm程度である。しかしながら、輝点が重ならないほど十分に離れていれば、それを2次元のガウス関数で解析する事で最大1 nm程度の精度でその位置を推定できる。このような蛍光一分子の正確な位置解析は現在FIONA(Fluorescence imaging with one-nanometer accuracy)という名前で知られている<ref><pubmed> 12791999 </pubmed></ref>。Localization microscopy(蛍光一分子局在化顕微鏡法)は、FIONAを利用し光学顕微鏡の分解能を超えた画像を取得する方法である。このようなアイディアは古くから提案されていたが<ref><pubmed> 19859146 </pubmed></ref>、理想的なサンプルを作成するのが困難なため実現はされなかった。例えばGFPを興味のあるタンパク質と融合させ、それを発現した細胞を想定する。この細胞にFIONAを適用しようとすると、ほぼ確実に以下の問題が生じる。<br>
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