「超解像蛍光顕微鏡」の版間の差分

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光学顕微鏡は、光の屈折、反射などを使って、物体を拡大して観察する器械である。しかし、光という電磁波を利用するため、その分解能は、光の回折限界(可視光では250 nm程度)によって制限される。そのため、従来の光学顕微鏡では、それよりも小さい構造を見る事は出来なかった。螢光顕微鏡とは、励起光を当てて、螢光色素、螢光蛋白質から発せられる螢光を観察する光学顕微鏡であるが、やはり、分解能には制限があった。それに対して、超解像螢光顕微鏡とは、励起照明法や、観察される螢光分子、解析方法などの工夫により、光の回折限界で制限される分解能を超える (超解像)螢光像を作る顕微鏡である。
光学顕微鏡は、光の屈折、反射などを使って、物体を拡大して観察する器械である。しかし、光という電磁波を利用するため、その分解能は、光の回折限界(可視光では250 nm程度)によって制限される。そのため、従来の光学顕微鏡では、それよりも小さい構造を見る事は出来なかった。螢光顕微鏡とは、励起光を当てて、螢光色素、螢光蛋白質から発せられる螢光を観察する光学顕微鏡であるが、やはり、分解能には制限があった。それに対して、超解像螢光顕微鏡とは、励起照明法や、観察される螢光分子、解析方法などの工夫により、光の回折限界で制限される分解能を超える (超解像)螢光像を作る顕微鏡である。
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==超解像蛍光顕微鏡とは==
対物レンズの回折限界で制限される分解能を越える蛍光像を作る顕微鏡のことである。分解能を超える手法としては、RESOLFTを利用するもの、単分子の局在は2点分解能よりも細かく決められる事を利用するもの、励起照明を工夫して回折限界以上の高周波成分の情報を得るもの、統計学的手法を使うものなど、多くの手法が開発、実用化されている。ここでは、光学顕微鏡の分解能について説明し、主要な超解像蛍光顕微鏡手法について、それぞれの利点・欠点等を簡潔に紹介する。
==光学顕微鏡の分解能==
==光学顕微鏡の分解能==
===光の回折と点拡がり関数、エアリーディスク===
===光の回折と点拡がり関数、エアリーディスク===
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高倍率の対物レンズでは、入射角の大きい光の全反射を防いで、開口数を大きくするため、液浸が使われる事が多い。その場合、<math> \mathrm{NA} = n \sin \alpha</math> (<math>n</math>: レンズと物体の間の媒質の屈折率。) となり、開口数が1より大きいレンズも使えるようになる。2点分解能の式は同様である。波長<math>\lambda</math> = 550 nm, 油浸で開口数<math>\mathrm{NA}</math> = 1.4 - 1.6程度だと、分解能<math>R</math>は、240 - 210 nm程度になる。
高倍率の対物レンズでは、入射角の大きい光の全反射を防いで、開口数を大きくするため、液浸が使われる事が多い。その場合、<math> \mathrm{NA} = n \sin \alpha</math> (<math>n</math>: レンズと物体の間の媒質の屈折率。) となり、開口数が1より大きいレンズも使えるようになる。2点分解能の式は同様である。波長<math>\lambda</math> = 550 nm, 油浸で開口数<math>\mathrm{NA}</math> = 1.4 - 1.6程度だと、分解能<math>R</math>は、240 - 210 nm程度になる。
==超解像蛍光顕微鏡==
 
超解像蛍光顕微鏡とは、上述の、対物レンズの回折限界で制限される分解能を越える (超解像)蛍光像を作る顕微鏡のことである。分解能を超える手法としては、RESOLFTを利用するもの、単分子の局在は2点分解能よりも細かく決められる事を利用するもの、励起照明を工夫して回折限界以上の高周波成分の情報を得るもの、統計学的手法を使うものなど、多くの手法が開発、実用化されている。ここでは、代表的なものを紹介する。
===RESOLFT (REversible Saturable OpticaL Fluorescence Transitions)===
===RESOLFT (REversible Saturable OpticaL Fluorescence Transitions)===
<ref><b> S.W. Hell, S. Jakobs, L. Kastrup</b>
<ref><b> S.W. Hell, S. Jakobs, L. Kastrup</b>
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