「身体図式」の版間の差分

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== 身体に関わる意識 ==
== 身体に関わる意識 ==


 意識下で作動する身体図式は、[[身体イメージ]]とは区別される (body image)。身体イメージとは、「私は、身長170cmで、瘦せ型である。大きな耳を持っている。」というような顕在的な自己身体に関する知識を指す<ref name=ref2>'''Gallagher, S.''' <br>How the Body Shapes the Mind (p. 304). <br>Oxford University Press. 2006, ISBN: 9780191622571</ref> <ref name=ref3>'''田中彰吾'''<br>身体イメージの哲学 Body Image. <br>''Clinical Neuroscience.'' 2011; 29, p.868-871.</ref>。自己概念としての身体と区別して、潜在的な身体図式の存在を主張する根拠とされてきた現象が、[[幻影肢]]である。幻影肢とは、戦場での負傷や交通事故などによって、四肢を切断する手術を受けたひとが、既に存在しないはずの手足の末端に痛み(幻肢痛)や[[wikipedia:JA:かゆみ|かゆみ]]を感じる現象を指す。幻影肢は、特に手足の切断手術の場合は90%以上という高い頻度で出現するが、 四肢に限らず、顔面、[[wikipedia:JA:乳房|乳房]]、[[wikipedia:JA:耳|耳]]、[[wikipedia:JA:内蔵|内蔵]]など身体のどの部分でも生じ、時間の経過とともにほぼ消失すると言われている。
 意識下で作動する身体図式は、[[身体イメージ]]とは区別される (body image)。身体イメージとは、「私は、身長170cmで、瘦せ型である。大きな耳を持っている。」というような顕在的な自己身体に関する知識を指す<ref name=ref2>'''Gallagher, S.''' <br>How the Body Shapes the Mind (p. 304). <br>Oxford University Press. 2006, ISBN 9780191622571</ref> <ref name=ref3>'''田中彰吾'''<br>身体イメージの哲学 Body Image. <br>''Clinical Neuroscience.'' 2011; 29, p.868-871.</ref>。自己概念としての身体と区別して、潜在的な身体図式の存在を主張する根拠とされてきた現象が、[[幻影肢]]である。幻影肢とは、戦場での負傷や交通事故などによって、四肢を切断する手術を受けたひとが、既に存在しないはずの手足の末端に痛み(幻肢痛)や[[wikipedia:JA:かゆみ|かゆみ]]を感じる現象を指す。幻影肢は、特に手足の切断手術の場合は90%以上という高い頻度で出現するが、 四肢に限らず、顔面、[[wikipedia:JA:乳房|乳房]]、[[wikipedia:JA:耳|耳]]、[[wikipedia:JA:内蔵|内蔵]]など身体のどの部分でも生じ、時間の経過とともにほぼ消失すると言われている。


 田中と湯浅<ref name=ref4>'''田中彰吾、 湯浅泰雄'''<br>身体図式からイマジナル・ボディへ<br>''人体科学'' 2001; 21-29.</ref>は現象学的な観点から幻影肢と身体図式の関係について、次のように述べている。
 田中と湯浅<ref name=ref4>'''田中彰吾、 湯浅泰雄'''<br>身体図式からイマジナル・ボディへ<br>''人体科学'' 2001; 21-29.</ref>は現象学的な観点から幻影肢と身体図式の関係について、次のように述べている。