「間脳の発生」の版間の差分

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=== 体性感覚地図 ===
=== 体性感覚地図 ===
 脊椎動物の脳にある感覚性神経回路には、末梢にある受容器の配置がそのままニューロン配置に変換されることで局所対応性地図(トポグラフィックマップ)がつくられる。これは視覚系、聴覚系、体性感覚系、味覚系など様々な感覚系で見られる。間脳の神経核にもそのような地図が発生するが、それらの中ではマウスの体性感覚地図に関する研究が進んでいる。
 脊椎動物の脳にある感覚性神経回路には、末梢にある[[受容器]]の配置がそのままニューロン配置に変換されることで[[局所対応性地図]](トポグラフィックマップ)がつくられる。これは視覚系、聴覚系、体性感覚系、味覚系など様々な感覚系で見られる。間脳の神経核にもそのような地図が発生するが、それらの中ではマウスの[[体性感覚地図]]に関する研究が進んでいる。


 哺乳類の多くでは口の周りに長い毛が見られる。それらはその付け根に血管が入るために空洞になっていることから洞毛と呼ばれる.これらのヒゲは上顎に規則正しい配置で並んでおり、鰓弓神経の一つである三叉神経の上顎枝によって支配されている。三叉神経の軸索は菱脳(後脳)のロンボメア2にある神経根を通って菱脳に入り,菱脳の前方にある三叉神経主知覚核と、後方にある三叉神経脊髄路核に入力する.これらの神経核の中では,神経細胞が洞毛の空間的な配置をそっくりそのまま写し取ったかのように配置されており、その形態はバレレット(barrelettes)と呼ばれている。哺乳類の三叉神経系では,菱脳のニューロンの配置によってつくられた地図がその位置関係を保ったまま間脳へ,そして最終的に終脳の体性感覚野へ伝えられている.間脳の視床後内側腹側核で見られるパターンはバレロイド(barreloids)、終脳で見られるものはバレル(barrels)と呼ばれている。こうした地図は生後に神経活動依存的な仕組みによって形成されるが、発生期に発現する転写因子もその形成に間接的に関わることが知られている。視床腹側内側核のバレロイドの形成は''DRG11''やNMDA受容体の変異体で異常が生じる<ref><pubmed> 20179712 </pubmed></ref>。また、菱脳(後脳)に発現する''Hoxa2''のコンディショナルノックアウトマウスでもその形成が妨げられるが、これは後脳の三叉神経主知覚核にできるバレレットの形成が妨げられたことによる二次的な影響であると考えられる。
 哺乳類の多くでは口の周りに長い毛が見られる。それらはその付け根に血管が入るために空洞になっていることから[[洞毛]]と呼ばれる.これらのヒゲは上顎に規則正しい配置で並んでおり、[[鰓弓神経]]の一つである[[三叉神経]]の上顎枝によって支配されている。三叉神経の軸索は菱脳(後脳)の[[ロンボメア2]]にある神経根を通って菱脳に入り,菱脳の前方にある[[三叉神経主知覚核]]と、後方にある[[三叉神経脊髄路核]]に入力する.これらの神経核の中では,神経細胞が洞毛の空間的な配置をそっくりそのまま写し取ったかのように配置されており、その形態はバレレット(barrelettes)と呼ばれている。哺乳類の三叉神経系では,菱脳のニューロンの配置によってつくられた地図がその位置関係を保ったまま間脳へ,そして最終的に終脳の体性感覚野へ伝えられている.間脳の視床後内側腹側核で見られるパターンはバレロイド(barreloids)、終脳で見られるものはバレル(barrels)と呼ばれている。こうした地図は生後に神経活動依存的な仕組みによって形成されるが、発生期に発現する転写因子もその形成に間接的に関わることが知られている。視床腹側内側核のバレロイドの形成は''[[DRG11]]''や[[NMDA受容体]]の変異体で異常が生じる<ref><pubmed> 20179712 </pubmed></ref>。また、菱脳(後脳)に発現する''[[Hoxa2]]''のコンディショナルノックアウトマウスでもその形成が妨げられるが、これは後脳の三叉神経主知覚核にできるバレレットの形成が妨げられたことによる二次的な影響であると考えられる。


=== 網膜視蓋投射 ===
=== 網膜視蓋投射 ===