「電気けいれん療法」の版間の差分

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 このようにECTは早期の症状改善効果を持ち、早急な抗うつ効果が必要とされる症例に有用であり、特に、深刻な[[自殺|自殺念慮]]があり自殺が切迫している状態の早期改善を要する場合<ref name=ref51><pubmed>15863801</pubmed></ref>、精神症状から食事摂取が困難で栄養の維持が困難な場合、全身状態が悪化してきており早期の症状改善を要す場合等には、薬物療法より効果発現や寛解に至るまでが早いECTが選択されうる。ECTの迅速で高い治療効果は、医療経済の観点からも費用対効果比が高いことも示されている<ref name=ref52><pubmed>15774232</pubmed></ref>。さらに、近年は麻酔として[[ケタミン]]麻酔を用い、ECTの効果発現をさらに加速させる試みも行われている<ref name=ref53><pubmed>19935085</pubmed></ref>。
 このようにECTは早期の症状改善効果を持ち、早急な抗うつ効果が必要とされる症例に有用であり、特に、深刻な[[自殺|自殺念慮]]があり自殺が切迫している状態の早期改善を要する場合<ref name=ref51><pubmed>15863801</pubmed></ref>、精神症状から食事摂取が困難で栄養の維持が困難な場合、全身状態が悪化してきており早期の症状改善を要す場合等には、薬物療法より効果発現や寛解に至るまでが早いECTが選択されうる。ECTの迅速で高い治療効果は、医療経済の観点からも費用対効果比が高いことも示されている<ref name=ref52><pubmed>15774232</pubmed></ref>。さらに、近年は麻酔として[[ケタミン]]麻酔を用い、ECTの効果発現をさらに加速させる試みも行われている<ref name=ref53><pubmed>19935085</pubmed></ref>。


===ECTの効果の長期的維持に関する限界、維持薬物療法と維持ECT===
===効果の長期的維持に関する限界、維持薬物療法と維持ECT===
 ECTは高い急性期効果を示す一方で、継続療法を行わない場合は高い再燃率を示すことが知られている。
 ECTは高い急性期効果を示す一方で、継続療法を行わない場合は高い再燃率を示すことが知られている。
 
 
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 LauritzenらはECT後の維持療法としてプラセボと[[イミプラミン]] 、パロキセチンを比較し、6ヵ月以内の再燃はプラセボ群65%に対し、イミプラミン群30%、パロキセチン群10%で、維持療法の薬剤により差を認めたことを報告している<ref name=ref58><pubmed>8911559</pubmed></ref>。
 LauritzenらはECT後の維持療法としてプラセボと[[イミプラミン]] 、パロキセチンを比較し、6ヵ月以内の再燃はプラセボ群65%に対し、イミプラミン群30%、パロキセチン群10%で、維持療法の薬剤により差を認めたことを報告している<ref name=ref58><pubmed>8911559</pubmed></ref>。


 ECT施行前に効果を認めなかった薬剤は維持療法としての効果も乏しいという報告<ref name=ref56 />がある一方で、van den Broekらは、三環系抗うつ剤やリチウム、モノアミン酸化酵素阻害剤などの薬剤に治療抵抗性の患者に対しECT施行後の維持療法としてイミプラミンを使用したRCTを行ったところ、24週後にプラセボ群は80%が再発したのに対して、imipramine群は18%で有意に再発率が低かったと報告しており<ref name=ref59><pubmed>16566622</pubmed></ref>、ECTにより従前の治療抵抗性が改善する可能性も示されている。またSackeimらは、ECT施行後6ヶ月後にプラセボ群では84%が再発したのに対して、ノルトリプチリン群は60%、ノルトリプチリンとリチウム併用群が39%と有意に低く、抗うつ薬の単剤投与よりリチウムの併用が維持療法として有効であったことを報告している<ref name=ref57 />。
 ECT施行前に効果を認めなかった薬剤は維持療法としての効果も乏しいという報告<ref name=ref56 />がある一方で、van den Broekらは、三環系抗うつ剤やリチウム、モノアミン酸化酵素阻害剤などの薬剤に治療抵抗性の患者に対しECT施行後の維持療法としてイミプラミンを使用したRCTを行ったところ、24週後にプラセボ群は80%が再発したのに対して、imipramine群は18%で有意に再発率が低かったと報告しており<ref name=ref59><pubmed>16566622</pubmed></ref>、ECTにより従前の治療抵抗性が改善する可能性も示されている。またSackeimらは、ECT施行後6ヶ月後にプラセボ群では84%が再発したのに対して、[[ノルトリプチリン]]群は60%、ノルトリプチリンとリチウム併用群が39%と有意に低く、抗うつ薬の単剤投与よりリチウムの併用が維持療法として有効であったことを報告している<ref name=ref57 />。


 また、ECTにより急性期症状が寛解した後の維持療法として、安全にECTを行うことができる環境がある場合に限って、薬物療法に加えて、もしくは単独で、継続した低頻度のECTが行われることがある。
 また、ECTにより急性期症状が寛解した後の維持療法として、安全にECTを行うことができる環境がある場合に限って、薬物療法に加えて、もしくは単独で、継続した低頻度のECTが行われることがある。