「電気けいれん療法」の版間の差分

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10) Krystal AD, Dean MD, Weiner RD, : ECT stimulus intensity: are present ECT devices too limited? Am J Psychiatry 157 : 963-7, 2000
10) Krystal AD, Dean MD, Weiner RD, : ECT stimulus intensity: are present ECT devices too limited? Am J Psychiatry 157 : 963-7, 2000
11) Krystal AD, Weiner RD, Dean MD, et al : Comparison of seizure duration, ictal EEG, and cognitive effects of ketamine and methohexital anesthesia with ECT. J Neuropsychiatry Clin Neurosci 15 : 27-34, 2003
11) Krystal AD, Weiner RD, Dean MD, et al : Comparison of seizure duration, ictal EEG, and cognitive effects of ketamine and methohexital anesthesia with ECT. J Neuropsychiatry Clin Neurosci 15 : 27-34, 2003
==ECTの作用機序==
ECTの効果発現にかかわる可能性のある物質として、従来は抗うつ効果との関連から、神経伝達物質やその受容体への直接的影響や細胞内情報伝達系に与える影響が注目され、コルチゾール、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、プロラクチン、オキシトシン、バソプレッシン、dehycroepiandrosterone sulfate、tumor necrosis factor α等のECTによる変化が報告されてきた(12)。
近年は、ECTの神経保護作用が注目されるようになり、神経細胞の可塑性、再生、維持に関わる神経栄養因子であるbrain-derived neurotrophic factor(BDNF)が注目されるようになった(13)。
Maranoらは、ECTによるBDNFの増加を確認し、BDNF増加とHAM-D総得点減少が相関すると報告した(12)。また霊長類を用いた研究では、ECTにより海馬での神経新生が促進されたことが報告されている(14)。
gamma-aminobutyric acid(GABA)はうつ状態で減少していると報告されている神経伝達物質であるが、magnetic resonance spectoscopy(MRS)を用いた研究で、ECTにてGABAが増加することが示されている。ECTの施行を繰り返すとけいれん時間の減少やけいれん閾値の上昇がみられ、脳内におけるGABAの増加が関係している可能性がある(15)。
また以前より間脳や脳幹網様体賦活系を中心とする脳幹部に対する作用と治療効果の関連も検討されている。
 このようにECTの有効性における作用機序についての検討は多くなされているものの、現在までECTの明確な作用機序は明らかにされていない。
ECTの作用機序を研究することは、うつ病の本質的な病態の解明につながる可能性もあり重要である。
12) Marano CM, Phatak P, Vemulapalli UR, et al.: Increased plasma concentration of brain-derived neurotrophic factor with electroconvulsive therapy: a pilot study in patients with major depression. J Clin Psychiatry 68: 512-517, 2007
13) Taylor SM: Electroconvulsive therapy, brain-derived neurotrophic factor, and possible neurorestorative benefit of the clinical application of electroconvulsive therapy. J ECT 24: 160-165, 2008
14) Perera TD, Coplan JD, Lisanby SH, et al.: Antidepressant-induced neurogenesis in the hippocampus of adult nonhuman primates. J Neurosci 27: 4894-4901, 2007
15) Bajbouj M, Lang UE, Niehaus L, et al.: Effects of right unilateral electroconvulsive therapy on motor cortical excitability in depressive patients. J Psychiatr Res 40: 322-327, 2006


==ECTの適応と禁忌==
==ECTの適応と禁忌==
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□ ベットに他動的に移動させ2時間安静を保つ(錯乱により隔離拘束が必要なこともある)<br>
□ ベットに他動的に移動させ2時間安静を保つ(錯乱により隔離拘束が必要なこともある)<br>
□ 終了2時間後に飲水、問題なければ食事をとらせる<br>
□ 終了2時間後に飲水、問題なければ食事をとらせる<br>
==ECTの作用機序==
ECTの効果発現にかかわる可能性のある物質として、従来は抗うつ効果との関連から、神経伝達物質やその受容体への直接的影響や細胞内情報伝達系に与える影響が注目され、コルチゾール、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、プロラクチン、オキシトシン、バソプレッシン、dehycroepiandrosterone sulfate、tumor necrosis factor α等のECTによる変化が報告されてきた(12)。
近年は、ECTの神経保護作用が注目されるようになり、神経細胞の可塑性、再生、維持に関わる神経栄養因子であるbrain-derived neurotrophic factor(BDNF)が注目されるようになった(13)。
Maranoらは、ECTによるBDNFの増加を確認し、BDNF増加とHAM-D総得点減少が相関すると報告した(12)。また霊長類を用いた研究では、ECTにより海馬での神経新生が促進されたことが報告されている(14)。
gamma-aminobutyric acid(GABA)はうつ状態で減少していると報告されている神経伝達物質であるが、magnetic resonance spectoscopy(MRS)を用いた研究で、ECTにてGABAが増加することが示されている。ECTの施行を繰り返すとけいれん時間の減少やけいれん閾値の上昇がみられ、脳内におけるGABAの増加が関係している可能性がある(15)。
また以前より間脳や脳幹網様体賦活系を中心とする脳幹部に対する作用と治療効果の関連も検討されている。
 このようにECTの有効性における作用機序についての検討は多くなされているものの、現在までECTの明確な作用機序は明らかにされていない。
ECTの作用機序を研究することは、うつ病の本質的な病態の解明につながる可能性もあり重要である。
12) Marano CM, Phatak P, Vemulapalli UR, et al.: Increased plasma concentration of brain-derived neurotrophic factor with electroconvulsive therapy: a pilot study in patients with major depression. J Clin Psychiatry 68: 512-517, 2007
13) Taylor SM: Electroconvulsive therapy, brain-derived neurotrophic factor, and possible neurorestorative benefit of the clinical application of electroconvulsive therapy. J ECT 24: 160-165, 2008
14) Perera TD, Coplan JD, Lisanby SH, et al.: Antidepressant-induced neurogenesis in the hippocampus of adult nonhuman primates. J Neurosci 27: 4894-4901, 2007
15) Bajbouj M, Lang UE, Niehaus L, et al.: Effects of right unilateral electroconvulsive therapy on motor cortical excitability in depressive patients. J Psychiatr Res 40: 322-327, 2006


==ECTと薬物療法 維持療法を踏まえて==
==ECTと薬物療法 維持療法を踏まえて==
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