「電気穿孔法」の版間の差分

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 生体内の細胞への電気穿孔はin vivo electroporationと呼ばれる。体外培養胚などへの電気穿孔はex vivo electroporationと呼ばれることもある。マウス胎仔のin vivo electroporationでは、子宮の外からDNAなどを注入し、子宮の外側を電極で挟むことで電気穿孔するin utero electroporationが一般的である。in utero electroporation後の胎仔は子宮とともに母体に戻せば、生育でき出産も可能である<ref name=ref14><pubmed>21963197</pubmed></ref>。一方、胎生12.5日以前では子宮の外から胎仔が見にくいなどの理由により、子宮壁を切開後にDNAなどを注入し、胎仔の入った卵黄囊を電極で挟み電気穿孔するexo utero electroporationも用いられる<ref name=ref14><pubmed>21963197</pubmed></ref><ref name=ref18><pubmed>21963197</pubmed></ref>。exo utero electroporationを施した胎仔は子宮壁を縫わずに母体に戻すことで生育可能であるが、出産後の仔マウスが必要な場合、母マウスは自力で出産できないため出産期に帝王切開を要する。
 生体内の細胞への電気穿孔はin vivo electroporationと呼ばれる。体外培養胚などへの電気穿孔はex vivo electroporationと呼ばれることもある。マウス胎仔のin vivo electroporationでは、子宮の外からDNAなどを注入し、子宮の外側を電極で挟むことで電気穿孔するin utero electroporationが一般的である。in utero electroporation後の胎仔は子宮とともに母体に戻せば、生育でき出産も可能である<ref name=ref14><pubmed>21963197</pubmed></ref>。一方、胎生12.5日以前では子宮の外から胎仔が見にくいなどの理由により、子宮壁を切開後にDNAなどを注入し、胎仔の入った卵黄囊を電極で挟み電気穿孔するexo utero electroporationも用いられる<ref name=ref14><pubmed>21963197</pubmed></ref><ref name=ref18><pubmed>21963197</pubmed></ref>。exo utero electroporationを施した胎仔は子宮壁を縫わずに母体に戻すことで生育可能であるが、出産後の仔マウスが必要な場合、母マウスは自力で出産できないため出産期に帝王切開を要する。
 脳室に注入された分子は、脳室から漏れ出なければ拡散による希釈が限定的であるため、脳室の周囲の細胞への導入は比較的容易である。胎仔期の神経幹細胞や神経前駆細胞は脳室に接しており、遺伝子導入の格好の標的となる。大脳などでは、発生の時期により神経幹細胞から生み出される神経細胞の種類が異なるため、時期を選ぶことにより特定の種類の神経細胞のみで遺伝子を発現することが可能となる<ref name=ref14><pubmed>21963197</pubmed></ref><ref name=ref15><pubmed>21963197</pubmed></ref>。同一の胎仔に異なる時期で2回電気穿孔することもできる<ref name=ref15><pubmed>21963197</pubmed></ref>。<br>
 脳室に注入された分子は、脳室から漏れ出なければ拡散による希釈が限定的であるため、脳室の周囲の細胞への導入は比較的容易である。胎仔期の神経幹細胞や神経前駆細胞は脳室に接しており、遺伝子導入の格好の標的となる。大脳などでは、発生の時期により神経幹細胞から生み出される神経細胞の種類が異なるため、時期を選ぶことにより特定の種類の神経細胞のみで遺伝子を発現することが可能となる<ref name=ref14><pubmed>21963197</pubmed></ref><ref name=ref15><pubmed>21963197</pubmed></ref>。同一の胎仔に異なる時期で2回電気穿孔することもできる<ref name=ref15><pubmed>21963197</pubmed></ref>。<br>
 ニワトリやマウス以外の動物にも応用されており、大脳の他にも脊髄や小脳、網膜、筋肉、精巣など多くの組織でin vivo electroporationを用いた遺伝子導入に成功している<ref name=ref17-21><pubmed>21963197</pubmed></ref><br>
 ニワトリやマウス以外の動物にも応用されており、大脳の他にも脊髄<ref name=ref18><pubmed>21963197</pubmed></ref>や小脳<ref name=ref17><pubmed>21963197</pubmed></ref>、網膜<ref name=ref19><pubmed>21963197</pubmed></ref>、筋肉<ref name=ref20><pubmed>21963197</pubmed></ref>、精巣<ref name=ref21><pubmed>21963197</pubmed></ref>など多くの組織でin vivo electroporationを用いた遺伝子導入に成功している。<br>
 胎仔や組織のレベルで遺伝子を解析できる点が最大の長所であり、熟練すればマウス胎仔で9割近い生存率と9割を越える遺伝子導入効率が得られるが、技術的に注意を要する点があるのが欠点である。遺伝子は陽極側の細胞のみに限定的に導入される特長を有するため、陰極側の遺伝子導入されない部位との比較が容易であり、遺伝子の機能や発現制御機構の解析に威力を発揮する。
 胎仔や組織のレベルで遺伝子を解析できる点が最大の長所であり、熟練すればマウス胎仔で9割近い生存率と9割を越える遺伝子導入効率が得られるが、技術的に注意を要する点があるのが欠点である。遺伝子は陽極側の細胞のみに限定的に導入される特長を有するため、陰極側の遺伝子導入されない部位との比較が容易であり、遺伝子の機能や発現制御機構の解析に威力を発揮する。


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