「頭頂連合野」の版間の差分

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''独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター''<br>
''独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2013年5月20日 原稿完成日:2013年6月XX日<br>担当編集委員:[http://researchmap.jp/atsushiiriki 入來篤史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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英語名:parietal association area, parietal association cortex
英語名:parietal association area, parietal association cortex
{{box|text= 中心溝後部に位置する一次体性感覚野を除いたその後方の頭頂葉領域をさす。中心後溝の後方領域に相当し、頭頂間溝よりも上方を上頭頂小葉、下方を下頭頂小葉という。様々な機能を持った多くの領域から構成され、体性感覚情報、視覚情報などがそれぞれ統合される高次感覚野領域、聴覚情報含め複数の感覚種情報が統合される多感覚領域がある。一次視覚野から始まる大脳皮質視覚情報処理における背側経路が終止し、空間知覚、運動知覚に関わる情報処理が行われている。また、体性感覚情報の統合による自己身体情報をもとに、空間・運動知覚や対象物ととの相互関係などの情報処理が行われる。また、運動前野と結びついた運動の発現や調節などの機能、および前頭前野機能と結びついた注意の制御など高次脳機能に関わる。脳損傷例では、失行や半側無視など到達運動や把握運動、視線制御や注意などに関する障害される。}}


[[image:頭頂連合野.jpg|thumb|350px|'''図.ヒトの頭頂連合野''']]
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2020年9月12日 (土) 16:42時点における最新版

田岡三希
独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター
DOI:10.14931/bsd.3858 原稿受付日:2013年5月20日 原稿完成日:2013年6月14日
担当編集委員:入來篤史(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)

英語名:parietal association area, parietal association cortex

 中心溝後部に位置する一次体性感覚野を除いたその後方の頭頂葉領域をさす。中心後溝の後方領域に相当し、頭頂間溝よりも上方を上頭頂小葉、下方を下頭頂小葉という。様々な機能を持った多くの領域から構成され、体性感覚情報、視覚情報などがそれぞれ統合される高次感覚野領域、聴覚情報含め複数の感覚種情報が統合される多感覚領域がある。一次視覚野から始まる大脳皮質視覚情報処理における背側経路が終止し、空間知覚、運動知覚に関わる情報処理が行われている。また、体性感覚情報の統合による自己身体情報をもとに、空間・運動知覚や対象物ととの相互関係などの情報処理が行われる。また、運動前野と結びついた運動の発現や調節などの機能、および前頭前野機能と結びついた注意の制御など高次脳機能に関わる。脳損傷例では、失行や半側無視など到達運動や把握運動、視線制御や注意などに関する障害される。

図.ヒトの頭頂連合野

 頭頂連合野は中心溝後部に位置する一次体性感覚野を除いたその後方の頭頂葉領域をさす。ヒトでは中心溝とほぼ並行に走る中心後溝の後方領域に相当する(図)。頭頂連合野は更に頭頂間溝により上下に2分され、上方を上頭頂小葉Superior parietal lobule、下方を下頭頂小葉Inferior parietal lobuleという。ヒトでは上頭頂小葉はブロードマンの脳地図5野7野、下頭頂小葉は39野角回)と40野縁上回)から構成される。一方、マカクサルのブロードマンの脳地図では、上頭頂小葉が5野、下頭頂小葉が7野とされており、ヒトとの不整合があるので注意を要する。

 頭頂連合野は様々な機能を持った多くの領域から構成されている[1]。これらの領域では、主に中心後回体性感覚野からの体性感覚情報、または後頭葉からの視覚情報などがそれぞれ統合される高次感覚野領域、更に側頭葉からの聴覚情報含め複数の感覚種情報が統合される多感覚領域がある。視覚情報に関しては、一次視覚野から始まる大脳皮質視覚情報処理における腹側経路背側経路のうち、背側経路は頭頂連合野に至り終止する。これらの領域では対象の空間知覚運動知覚に関わる情報処理が行われている。また、体性感覚情報の統合による自己身体情報をもとに、自己の空間・運動知覚や対象物と自己との相互関係などの情報処理が行われると考えられている。また、運動前野と結びついた運動の発現や調節などの機能[2]、および前頭前野機能と結びついた注意の制御[3]など高次脳機能に関わる領域でもある。ヒトでは、左半球の言語野など機能的な左右差が存在する。

 ヒトの頭頂連合野の脳損傷例では、失行半側無視など到達運動や把握運動、視線制御注意などに関する障害例が報告されている。

参考文献

  1. Lewis, J.W., & Van Essen, D.C. (2000).
    Corticocortical connections of visual, sensorimotor, and multimodal processing areas in the parietal lobe of the macaque monkey. The Journal of comparative neurology, 428(1), 112-37. [PubMed:11058227] [WorldCat] [DOI]
  2. Fogassi, L., & Luppino, G. (2005).
    Motor functions of the parietal lobe. Current opinion in neurobiology, 15(6), 626-31. [PubMed:16271458] [WorldCat] [DOI]
  3. Hopfinger, J.B., Buonocore, M.H., & Mangun, G.R. (2000).
    The neural mechanisms of top-down attentional control. Nature neuroscience, 3(3), 284-91. [PubMed:10700262] [WorldCat] [DOI]