「頭頂連合野」の版間の差分

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頭頂連合野 parietal association area , parietal association cortex
英語名:parietal association area, parietal association cortex


頭頂連合野は中心溝後部に位置する一次体性感覚野を除いたその後方の頭頂葉領域をさす。ヒトでは中心溝とほぼ並行に走る中心後溝の後方領域に相当する。頭頂連合野は更に頭頂間溝により上下に2分され、上方を上頭頂小葉Superior parietal lobule、下方を下頭頂小葉Inferior parietal lobuleという。ヒトでは上頭頂小葉はブロードマンの脳地図の5野と7野、下頭頂小葉は39野(角回)と40野(縁上回)から構成される。一方、マカクサルのブロードマンの脳地図では、上頭頂小葉が5野、下頭頂小葉が7野とされており、ヒトとの不整合があるので注意を要する。
 頭頂連合野は中心溝後部に位置する一次体性感覚野を除いたその後方の頭頂葉領域をさす。ヒトでは中心溝とほぼ並行に走る中心後溝の後方領域に相当する。頭頂連合野は更に頭頂間溝により上下に2分され、上方を上頭頂小葉Superior parietal lobule、下方を下頭頂小葉Inferior parietal lobuleという。ヒトでは上頭頂小葉はブロードマンの脳地図の5野と7野、下頭頂小葉は39野(角回)と40野(縁上回)から構成される。一方、マカクサルのブロードマンの脳地図では、上頭頂小葉が5野、下頭頂小葉が7野とされており、ヒトとの不整合があるので注意を要する。
頭頂連合野は様々な機能を持った多くの領域から構成されている(1)。これらの領域では、主に中心後回体性感覚野からの体性感覚情報、または後頭葉からの視覚情報などがそれぞれ統合される高次感覚野領域、更に側頭葉からの聴覚情報含め複数の感覚種情報が統合される多感覚領域がある。視覚情報に関しては、一次視覚野から始まる大脳皮質視覚情報処理における腹側経路と背側経路のうち、背側経路は頭頂連合野に至り終止する。これらの領域では対象の空間知覚、運動知覚に関わる情報処理が行われている。また、体性感覚情報の統合による自己身体情報をもとに、自己の空間・運動知覚や対象物と自己との相互関係などの情報処理が行われると考えられている。また、運動前野と結びついた運動の発現や調節などの機能(2)および前頭前野機能と結びついた注意の制御(3)など高次脳機能に関わる領域でもある。ヒトでは、左半球の言語野など機能的な左右差が存在する。
頭頂連合野は様々な機能を持った多くの領域から構成されている<ref name=ref1><pubmed>11058227</pubmed></ref>。これらの領域では、主に中心後回体性感覚野からの体性感覚情報、または後頭葉からの視覚情報などがそれぞれ統合される高次感覚野領域、更に側頭葉からの聴覚情報含め複数の感覚種情報が統合される多感覚領域がある。視覚情報に関しては、一次視覚野から始まる大脳皮質視覚情報処理における腹側経路と背側経路のうち、背側経路は頭頂連合野に至り終止する。これらの領域では対象の空間知覚、運動知覚に関わる情報処理が行われている。また、体性感覚情報の統合による自己身体情報をもとに、自己の空間・運動知覚や対象物と自己との相互関係などの情報処理が行われると考えられている。また、運動前野と結びついた運動の発現や調節などの機能<ref name=ref2><pubmed>16271458</pubmed></ref>、および前頭前野機能と結びついた注意の制御<ref name=ref3><pubmed>10700262</pubmed></ref>など高次脳機能に関わる領域でもある。ヒトでは、左半球の言語野など機能的な左右差が存在する。
ヒトの頭頂連合野の脳損傷例では、失行や半側無視など到達運動や把握運動、視線制御や注意などに関する障害例が報告されている。


(1) Lewis JW, Van Essen DC. J Comp Neurol. 2000 Dec 4;428(1):112-37 Corticocortical connections of visual, sensorimotor, and multimodal processing areas in the parietal lobe of the macaque monkey.
 ヒトの頭頂連合野の脳損傷例では、失行や半側無視など到達運動や把握運動、視線制御や注意などに関する障害例が報告されている。


(2) Fogassi L, Luppino G. (2005).Motor functions of the parietal lobe. Current Opinion in Neurobiology, 15:626-631.
== 参考文献 ==
<references />


(3) Nat Neurosci. 2000 Mar;3(3):284-91. The neural mechanisms of top-down attentional control.  Hopfinger JB, Buonocore MH, Mangun GR.
 
Goldenberg, George (2009). "Apraxia and the Parietal Lobes". Neuropsychologia 47 (6): 1449–1459.
(執筆者:田岡三希 担当編集委員:入來篤史)

2013年5月20日 (月) 13:35時点における版

英語名:parietal association area, parietal association cortex

 頭頂連合野は中心溝後部に位置する一次体性感覚野を除いたその後方の頭頂葉領域をさす。ヒトでは中心溝とほぼ並行に走る中心後溝の後方領域に相当する。頭頂連合野は更に頭頂間溝により上下に2分され、上方を上頭頂小葉Superior parietal lobule、下方を下頭頂小葉Inferior parietal lobuleという。ヒトでは上頭頂小葉はブロードマンの脳地図の5野と7野、下頭頂小葉は39野(角回)と40野(縁上回)から構成される。一方、マカクサルのブロードマンの脳地図では、上頭頂小葉が5野、下頭頂小葉が7野とされており、ヒトとの不整合があるので注意を要する。 頭頂連合野は様々な機能を持った多くの領域から構成されている[1]。これらの領域では、主に中心後回体性感覚野からの体性感覚情報、または後頭葉からの視覚情報などがそれぞれ統合される高次感覚野領域、更に側頭葉からの聴覚情報含め複数の感覚種情報が統合される多感覚領域がある。視覚情報に関しては、一次視覚野から始まる大脳皮質視覚情報処理における腹側経路と背側経路のうち、背側経路は頭頂連合野に至り終止する。これらの領域では対象の空間知覚、運動知覚に関わる情報処理が行われている。また、体性感覚情報の統合による自己身体情報をもとに、自己の空間・運動知覚や対象物と自己との相互関係などの情報処理が行われると考えられている。また、運動前野と結びついた運動の発現や調節などの機能[2]、および前頭前野機能と結びついた注意の制御[3]など高次脳機能に関わる領域でもある。ヒトでは、左半球の言語野など機能的な左右差が存在する。

 ヒトの頭頂連合野の脳損傷例では、失行や半側無視など到達運動や把握運動、視線制御や注意などに関する障害例が報告されている。

参考文献

  1. Lewis, J.W., & Van Essen, D.C. (2000).
    Corticocortical connections of visual, sensorimotor, and multimodal processing areas in the parietal lobe of the macaque monkey. The Journal of comparative neurology, 428(1), 112-37. [PubMed:11058227] [WorldCat] [DOI]
  2. Fogassi, L., & Luppino, G. (2005).
    Motor functions of the parietal lobe. Current opinion in neurobiology, 15(6), 626-31. [PubMed:16271458] [WorldCat] [DOI]
  3. Hopfinger, J.B., Buonocore, M.H., & Mangun, G.R. (2000).
    The neural mechanisms of top-down attentional control. Nature neuroscience, 3(3), 284-91. [PubMed:10700262] [WorldCat] [DOI]


(執筆者:田岡三希 担当編集委員:入來篤史)