「高次運動野」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/hmushiake 虫明 元]、[http://researchmap.jp/read0092785 松坂 義哉]、[http://researchmap.jp/read0168035 嶋 啓節]、[http://researchmap.jp/read0149915 中島 敏]、奥山 澄人</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/hmushiake 虫明 元]、[http://researchmap.jp/read0092785 松坂 義哉]、[http://researchmap.jp/read0149915 中島 敏]</font><br>
''東北大学 医学系研究科''<br>
''東北大学 医学系研究科''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年3月29日 原稿完成日:2015年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年3月29日 原稿完成日:2016年1月5日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中 啓治](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中 啓治](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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英語名: higher-order motor related areas
英語名: higher-order motor related areas


[[Image:高次運動関連領野図1.jpg|thumb|300px|'''図1.Brodmann <ref name=ref1>'''Brodmann K'''<br>Vergleichende Lokalisationslehre der Grosshirnrinde, in ihren Prinzipien dargestellt auf Grund des Zellenbaues. <br>Barth, Leipzig, 1909</ref>, およびVogtとVogt <ref name=ref2>'''Vogt C, Vogt O'''<br>Allgemeinere Ergebnisse unserer Hirnforschung.<br>''J Psychol Neurol.: 1919, 25:277-462</ref>( によるサル脳の細胞構築による分類''']]
{{box|text= 高次運動野とは大脳皮質運動野のうち、[[一次運動野]]以外の皮質運動野の総称である。高次運動野は一次運動野と同様に脳幹・脊髄に投射し、また電気刺激によって運動を惹起する。高次運動野の損傷は一次運動野とは異なり明確な麻痺を生じない一方、状況に応じた適切な運動を遂行できない[[wikipedia:Ideomotor_apraxia|観念運動失行]] ideomotor apraxiaと呼ばれる症状を引き起こす。更に脳機能研究の結果、高次運動野は運動の実行自体よりも、運動の随意的な選択・準備・切り替え、複数の運動の組み合わせなどに関与していることが判明した。これらの所見から、高次運動野の主な役割は運動を目的を持って状況適応的に発現させる、つまり運動に必要な筋活動自体の制御よりも高次なレベルでの運動制御であると考えられている。}}


[[Image:高次運動関連領野図2.jpg|thumb|300px|'''図2.サル皮質運動関連領野の区分 (Takadaら<ref name=ref3><pubmed>15217388</pubmed></ref>から)''']]
== 歴史的背景-複数の皮質運動野の発見 ==
 [[大脳皮質]][[前頭葉]]と運動の関係が注目されたのは1870年に遡る。この年、ドイツの解剖学者[[w:Eduard Hitzig|Hitzig]]と[[w:Gustav Fritsch|Fritsch]]によって、[[イヌ]]の大脳の一部に微弱な電気刺激によって運動を誘発できる領野 (motor strip)のある事が発見された<ref name="Hitzig1870">'''Eduard Hitzig & Gustav Fritsch'''<br>Über die elektrische Erregbarkeit des Grosshirns<br>Archiv für Anatomie, Physiologie und Wissenschaftliche Medicin, Leipzig, 37:300-32, 1870</ref>。後にDavid Ferrierによってこの領野は[[霊長類]]([[マカクザル]])では中心前回([[Brodmann]]分類の[[4野]])に該当することが判明し、この領野は[[中心前回運動野]] precentral motor cortex、後に[[一次運動野]] primary motor cortexと命名された。


[[Image:高次運動関連領野図3.jpg|thumb|300px|'''図3.Rizzolatti のF-命名法による運動関連領野の分類''']]
 ところが、その後の研究によって一次運動野よりも前方の大脳皮質においても、


[[Image:高次運動関連領野図4.jpg|thumb|300px|'''図4.Strickのグループによる大脳半球内側部の運動関連領野の分類''']]
#電気刺激によって運動を誘発できる
#一次運動野に比べれば不明瞭であるものの誘発運動の[[体部位再現]]がみられる
#[[脊髄]]に投射するニューロンの集団が存在する


[[Image:高次運動関連領野図5.jpg|thumb|300px|'''図5.左:ヒトBrodmannの分類マップに運動関連領野を記載 右:帯状皮質運動野の拡大図''']]
 等が判明した<ref name="Penfield1951"><pubmed> 14867993 </pubmed></ref><ref name="Dum1991"><pubmed> 1705965 </pubmed></ref><ref><pubmed> 7680069 </pubmed></ref><ref><pubmed> 7538558 </pubmed></ref><ref><pubmed> 8815929 </pubmed></ref>。こうした発見によって、前頭葉には一次運動野だけでなく、それ以外にも多数の皮質運動野([[非一次運動野]] non-primary motor areas)が存在することが明らかになった。


==分類 ==
 更に一次運動野と非一次運動野の破壊症状は重要な点で異なる事が判明した。まず、片側大脳半球の一次運動野を傷害すると、反対側の体に著明な麻痺を生じる。ところが、非一次運動野の破壊によっては軽度の麻痺を生じるのみで速やかに回復する。即ち、運動自体を遂行する能力には重大な障害を引き起こさない。その一方で、非一次運動野の破壊の結果、自発的な運動や[[発語]]が極度に減少する、又は逆に意図しない運動の発現を引き起こす、複数の運動を正しい順序で遂行できなくなる、様々な[[感覚]]入力に応じて適切な運動を使い分けることが出来なくなる、等の[[失行]]と呼ばれる症状が出現する。
 [[wikipedia:JA:霊長類|霊長類]]動物([[wikipedia:JA:サル|サル]])では、古典的には [[wikipedia:Korbinian Brodmann|Brodmann]] <ref name=ref1>'''Brodmann K'''<br>Vergleichende Lokalisationslehre der Grosshirnrinde, in ihren Prinzipien dargestellt auf Grund des Zellenbaues. <br>Barth, Leipzig, 1909</ref>, およびVogtとVogt <ref name=ref2>'''Vogt C, Vogt O'''<br>Allgemeinere Ergebnisse unserer Hirnforschung.<br>''J Psychol Neurol.: 1919, 25:277-462</ref>(図1)が細胞構築から、現在の運動関連領野区分けの原形となる優れた分類を行っている。少し古い脳生理・解剖学の教科書、あるいは専門書の記述では、皮質[[前頭葉]]の[[一次運動野]](M1)は、[[中心溝]]のすぐ前方に位置しており、M1の前方の外側面には[[運動前野]](PM) が、内側面には[[補足運動野]](SMA)が記載されている。


 その後の研究により、大脳皮質外側面の運動関連領野の分類に関して、主に3つの運動野、すなわちM1,[[PMd]],および[[PMc]]に区分される時期が続いた。しかし、最近の研究により、より細分されることが明らかになり、PMdとPMcは、それぞれ前後方向に2つの領域、[[PMdr]]と[[PMdc]]、および[[PMvr]]と[[PMvc]]に区分されることが多く、外側面全体では5つの運動野に区分けされるようになっている<ref name=ref3><pubmed>15217388</pubmed></ref>(図2)。Rizzolatti のグループによる類似の区分け(F命名法)を図3に示す<ref><pubmed>11580891</pubmed></ref>。一方、BarbasとPandya<ref><pubmed>3558879</pubmed></ref>、Morecraft<ref><pubmed>14689472</pubmed></ref>はPMv を前後方向ではなく、上・下方向(6Vaと6Vb)に細分しているが、現在までの生理学的知見では前後方向に区分するのが適当であるように思われる。
 こうした観察結果から、非一次運動野は筋活動自体の制御よりも、状況に応じた適切な運動の発現というより高次なレベルでの制御に関わっている事が伺われ、[[高次運動野]]と呼ばれるに至った<ref><pubmed>3921995</pubmed></ref>


 上記の外側面に存在する5つの運動関連領野に加えて、大脳半球内側面にも、大まかに区分して3つの運動関連領野、すなわち補足運動野(SMA),[[前補足運動野]](Pre-SMA)、および[[帯状皮質運動野]]が存在する。帯状皮質運動野は正確には[[吻側帯状皮質運動野]](CMAr)と、2つの[[尾側帯状皮質運動野]](CMAdとCMAv)に区分されるので、正確には大脳内側面には5つの運動関連領野が存在すると言える<ref><pubmed>1705965</pubmed></ref><ref>'''Dum RP, Strick PL'''<br>Motor areas in the frontal lobe of the primate. <br>''Physiol Behav'':2002, 77: 677- 682, </ref><ref><pubmed>7538558</pubmed></ref><ref><pubmed>8670662</pubmed></ref>(図4)。まとめると、サルの大脳皮質には、M1を含め、合計10個の運動関連領野が存在する([[眼球運動]]関連領野を除く)。
== 高次運動野の機能 ==
 高次運動野の研究は霊長類([[ヒト]][[サル]])を中心に進められてきた。高次運動野の機能については、初期にはその[[破壊症状]]からの推測に留まっていたが、20世紀後半からのエバーツに始まる行動中のサル運動野のニューロン活動を観察する手法の導入、およびヒトの脳活動計測技術の進歩が詳細な機能解剖学を可能にし、高次運動野は一次運動野と異なる運動野群として確立された。現在までに高次運動野の機能として以下の働きが知られている。


==機能==
=== 行動の認知的制御 ===
 これら10ヶ所の運動関連領野の働きについては現在、精力的に研究が進められているものの、各領野の実体の解明は簡単ではなく、例えばM1の機能に関してでさえ、運動のパラメター、例えば力の大きさ、方向、距離などの制御に関わっていることに疑いはないものの、M1の特定の細胞が、どのパラメターの制御に関わっているかを因果関係的に証明するのは簡単ではない<ref><pubmed>2707351</pubmed></ref>。また、運動前野 (PM) の背側部 (PMd) と腹側部 (PMv) で機能の一端が生理学的に明らかになったのは近年になってからである<ref><pubmed>17317152</pubmed></ref><ref><pubmed>17686916</pubmed></ref><ref><pubmed>19889843</pubmed></ref><ref><pubmed>3920943</pubmed></ref>
 認知的行動制御とは状況に応じて適切な刺激や反応を選択したり,その環境的文脈を維持・監視したりしながら,目標志向的な行動を生み出す能力をいう<ref name="Botvinick2001"><pubmed>11488380</pubmed></ref>。高次運動野の活動は運動出力自体よりも、状況・文脈に依存した運動の選択・準備・遂行に強く関連しており、また、前述のように高次運動野の損傷は目標志向的な運動の生成に障害をもたらす。


==ヒト運動関連領野==
=== 脊髄・一次運動野の損傷時における機能の代償 ===
 最後に、図5にヒトの運動関連領野の区分をBrodmann の地図に重ねて表示したもの<ref>'''虫明 元、宮井一郎'''<br>学習と脳:器用さを獲得する脳<br>''サイエンス社''、2007</ref>、および帯状皮質の部分を拡大したマップ<ref><pubmed>1705965</pubmed></ref>(Ridderinkhof et al., 2004)を示した。ヒトとサルの運動関連領野の構成は基本的に相同であると思われるが、実験上の制限から、解剖学および生理学的にサルで適用されているような区分けは現状では難しい。特に、帯状皮質運動野に関して、サルでは吻側帯状皮質運動野はBrodmann の24野、尾側帯状皮質運動野は23野に存在するが、ヒトでは[[前帯状皮質運動野]](RCZ: rostral cingulate zone, 或いはACC: anterior cingulate cortex)の本体はBrodmann の32野(一部24野)にあり、[[後帯状皮質運動野]](CCZ: caudal cingulate zone)は、ほぼ24野に位置している<ref><pubmed>15486290</pubmed></ref>(図5)。近年、ヒトとサルの詳細についての比較なしに、ACCの機能仮説を組み立てている総説・論文があるが、主たる根拠となっているヒトf-MRI 実験から導かれた仮説とサル細胞活動から得られた説の整合性には注意深い実験内容(記録部位・課題設定)の比較検証が必須である。
 高次運動野は、一次運動野や脊髄の損傷による運動障害からの回復期に活動が増大することが報告されている<ref name="Aizawa1991"><pubmed>1864337</pubmed></ref><ref name="Nishimura2007"><pubmed>18006750</pubmed></ref>。前述のように高次運動野からは脊髄や[[脳幹]]への投射があることが知られており、一次運動野や脊髄の損傷により失われた随意的な筋活動の制御をこうした経路を通して代償していると考えられている。
 
=== 運動学習 ===
 高度に習熟した運動の遂行には、一次運動野や[[小脳]]が主体として働く。しかし、新しい順序運動を学習するときには、一次運動野だけでなく高次運動野・[[前頭前野]]などを含む広範な神経回路網が活性化することが報告されている<ref name="Jenkins1994"><pubmed>8207487</pubmed></ref><ref name="Hikosaka1996"><pubmed>8836248</pubmed></ref><ref name="Sakai1998"><pubmed>9465007</pubmed></ref>。更に運動学習初期の高次運動野への[[GABAA受容体|GABAa受容体]][[作動薬]]投与は学習に顕著な障害をもたらす一方、すでに獲得したmotor skillの遂行には影響を及ぼさない。そこで、高次運動野は運動の学習において働くと考えられている。<br>
 
== 様々な動物における高次運動野の研究の現状 ==
 
=== 霊長類(ヒト、サル) ===
[[Image:Human-monkey-motor-cortex.png|thumb|right|375px|'''図1.ヒト(左)及びマカクザル(右)における皮質運動野。'''<br>出典: BrainInfo (1991-present), National Primate Research Center, University of Washington, http://www.braininfo.org より一部編集して転載。<br>MI: 一次運動野; SMA proper: 補足運動野; pre-SMA: 前補足運動野; PMDr, PMDc: 背側運動前野吻側部/尾側部; PMVr, PMVc: 腹側運動野吻側部/尾側部。CMAr: 吻側帯状皮質運動野; CMAd: 背側帯状皮質運動野; CMAv: 腹側帯状皮質運動野; FEF: 前頭眼野。cs: 中心溝; cgs: 帯状溝; sfrs: 上前頭溝; ifrs: 下前頭溝; sprs: 上中心前溝; sras: 弓状溝上枝; iras: 弓状溝下枝; prs: 主構。<br>ヒトとサルの帯状皮質運動野の対応・位置関係についてはAmiezらの論文を参照<ref name="Amiez2012"><pubmed> 23131805 </pubmed></ref>。]]
 現時点(2015年12月)では、以下の領野が知られている(図1)。なお、各領野の詳細についてはそれぞれの項目を参照すること。<br>
'''[[運動前野]]'''<br>
: Brodmannの[[6野]]外側部を占める皮質運動野であり、Fultonによってはじめてその概念が確立された<ref>'''Fulton, JF'''<br> Definition of the motor and premotor areas<br>Brain Res., 58: 311-316, 1935</ref>。感覚情報に基づく運動の選択・実行に中心的な役割を果たしており、この領域の傷害の結果、与えられた手がかり刺激による適切な運動の選択(感覚運動連関)に著しい困難をきたす<ref name="Petrides1982"><pubmed>7126320</pubmed></ref><ref name="Halsband1985"><pubmed>7104700</pubmed></ref>。<br>
: 運動前野は細胞構築や線維連絡の違いから[[腹側運動前野]](ventral premotor area, PMv)、並びに[[背側運動前野]](dorsal premotor area, PMd)に分類されるが、これらの領域の感覚運動連関における役割は異なると考えられる。例えば、背側運動前野へのムシモール(GABAa受容体作動薬)注入による機能障害は条件運動課題(例、赤い[[wj:発光ダイオード|発光ダイオード]]が点灯した時には手首を伸展し、緑色が点灯した時には屈曲するなど)に著しい支障をきたす一方、腹側運動前野への[[ムシモール]]注入はそうした症状を引き起こさない<ref name="Kurata1994"><pubmed> 8201409 </pubmed></ref>。従って感覚情報による適切な運動の選択には背側運動前野が主に関与していると考えられる。一方、腹側運動前野へのムシモール注入は[[プリズム適応]]に障害をもたらすが、背側運動前野の不活性化はプリズム適応に障害をきたさないので、視覚情報による運動の空間的制御には主として腹側運動前野が関与していると考えられる<ref name="Kurata1999"><pubmed> 10200227 </pubmed></ref>。<br>
: なお、各運動前野は吻側部と尾側部に分けられており、特に[[腹側運動前野吻側部]]は[[ミラーニューロン]]が発見されたことで有名である。<br>
'''[[補足運動野]]・[[前補足運動野]]'''<br>
: 6野内側部を占める皮質運動領野であり、[[Penfield]]らによって発見された<ref name="Penfield1951"></ref>。その後、[[6野]]内側部前方部と後方部は解剖学的にも生理学的にも異なる性質を持つことが明らかになり、現在では前方領域を前補足運動野、後方領域を(狭義の)補足運動野として区別する。<br>
: 補足運動野は運動前野とは対照的に記憶など内的な情報による運動の制御に関与しており、この領域の損傷によって自発的な発語・運動が著しく困難になる[[無動性無言症]][[akinetic mutism]]が生じる他、覚えた手順に従った動作の実行が困難になるなどの運動障害が出現する。一方、前補足運動野はルーチン化した動作の切り換えや新しい動作手順の習得など運動の適応的な制御に寄与している。<br>
'''[[帯状皮質運動野]]'''<br>
: [[帯状溝]]の内部に存在する皮質運動野である。[[辺縁系]]と密接な神経連絡を持ち、[[報酬]]情報による運動の制御に関与する。なお帯状皮質運動野は、前方部の吻側帯状皮質運動野(rostral cingulate motor area)及び後方部の尾側帯状皮質運動野(caudal cingulate motor area)に大別されるが、後者は更に背側、及び腹側帯状皮質運動野(dorsal and ventral cingulate motor areas)に細分されることもある<ref name="Dum1991"></ref>。<br>
 
=== 霊長類以外 ===
 霊長類以外の[[哺乳類]]のうち、[[ラット]]や[[マウス]]、[[ネコ]]については複数の皮質運動野の存在することが知られている。しかし、現時点では、それらの領域が運動の発現において筋活動の制御以外の役割を果たしているかどうかについてはデータが不十分である。従って、これらの領域が霊長類の高次運動野に相当するかどうかは今後の研究課題である。<br>
[[Image:Rat_RFA_CFA.png|thumb|right|400px|'''図2.ラット吻側及び尾側前肢領域(rostral and caudal forelimb areas)。'''各領野の座標はNeafsey & Sievert 1982<ref name="Neafsey1982"></ref>を参照。]]
[[Image:CatBrain.png|thumb|right|400px|'''図3.ネコ皮質運動野。'''左はネコ大脳半球の概観。図の左側が前。cruciate s.: 十字溝; presylvian s.: 前シルヴィウス溝。右は左大脳半球の十字溝、前シルヴィウス溝を展開し、電気刺激による誘発運動の局在を示した図。]]
 
'''ラット・マウス'''<br>
: ラットの大脳皮質で初めて運動野の存在が報告されたのは1982年に遡る。この年にDonoghue & Wiseによって、ラット前頭葉外側部の[[無顆粒皮質]](lateral agranular cortex)への微小電流刺激によって運動を誘発できることが報告され、この領域が一次運動野に相当すると考えられた<ref name="Wise982"><pubmed>6294151</pubmed></ref>。ところが同じ年にNeafsey & Stevertによって、ラット大脳皮質には電気刺激によって前肢の運動を誘発できる領域が前後に各々1つずつ存在することが判明し、それぞれ[[吻側前肢領域]] rostral forelimb area (RFA)、[[尾側前肢領域]] caudal forelimb areas (CFA)と命名された<ref name="Neafsey1982"><pubmed>7055691</pubmed></ref>。その後、マウスでもラットCFA, RFAに対応する領域の存在が判明している<ref name="Tennant2011"><pubmed>20739477</pubmed></ref>。<br>
 
 
'''ネコ'''<br>
: ネコ大脳皮質では[[十字溝]] (cruciate sulcus)の入口部を取り囲むように存在する[[4γ野]]が霊長類でいう一次運動野に相当すると見なされている<ref name="Ghosh1997"><pubmed>9100132</pubmed></ref>。これに対して高次運動野と考えられる領域は複数存在し、このうち[[4δ野]](十字溝後壁で4γ野のすぐ後方の領域)、[[6aα野]](十字溝前壁で4γ野のすぐ内側)、[[6aγ野]]([[presylvian sulcus]]外側壁に位置する領域)には[[皮質脊髄路]]ニューロンが分布しており、微小電気刺激で反対側の体部位の運動が誘発される<ref name="Ghosh1997"></ref>。[[6aβ野]](6aα野の更に内側)、[[6iffu野]](6aα野の後方)には皮質脊髄路ニューロンがほとんど存在せず、微小電気刺激で運動を誘発することは難しいが<ref name="Ghosh1997"></ref>、この2領域及び前出の6aα、6aγ野においては[[橋延髄網様体]](姿勢・歩行制御に関与)に投射するニューロンが同定されている<ref><pubmed> 9368839 </pubmed></ref>。このように組織学的、および電気刺激による知見から、高次運動野と思しきところは複数あるものの、ネコを行動生理学研究に用いた例は少なく、現在のところ、ネコ大脳皮質の高次運動野についての知見は限定的である。
 
== 関連項目 ==
* [[前頭葉]]
* [[一次運動野]]
* [[運動前野]]
* [[補足運動野]]
* [[前補足運動野]]
* [[前頭眼野]]
* [[補足眼野]]


== 引用文献 ==
== 引用文献 ==


<references/>
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2016年1月5日 (火) 20:36時点における最新版

虫明 元松坂 義哉中島 敏
東北大学 医学系研究科
DOI:10.14931/bsd.856 原稿受付日:2012年3月29日 原稿完成日:2016年1月5日
担当編集委員:田中 啓治(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)

英語名: higher-order motor related areas

 高次運動野とは大脳皮質運動野のうち、一次運動野以外の皮質運動野の総称である。高次運動野は一次運動野と同様に脳幹・脊髄に投射し、また電気刺激によって運動を惹起する。高次運動野の損傷は一次運動野とは異なり明確な麻痺を生じない一方、状況に応じた適切な運動を遂行できない観念運動失行 ideomotor apraxiaと呼ばれる症状を引き起こす。更に脳機能研究の結果、高次運動野は運動の実行自体よりも、運動の随意的な選択・準備・切り替え、複数の運動の組み合わせなどに関与していることが判明した。これらの所見から、高次運動野の主な役割は運動を目的を持って状況適応的に発現させる、つまり運動に必要な筋活動自体の制御よりも高次なレベルでの運動制御であると考えられている。

歴史的背景-複数の皮質運動野の発見

 大脳皮質前頭葉と運動の関係が注目されたのは1870年に遡る。この年、ドイツの解剖学者HitzigFritschによって、イヌの大脳の一部に微弱な電気刺激によって運動を誘発できる領野 (motor strip)のある事が発見された[1]。後にDavid Ferrierによってこの領野は霊長類(マカクザル)では中心前回(Brodmann分類の4野)に該当することが判明し、この領野は中心前回運動野 precentral motor cortex、後に一次運動野 primary motor cortexと命名された。

 ところが、その後の研究によって一次運動野よりも前方の大脳皮質においても、

  1. 電気刺激によって運動を誘発できる
  2. 一次運動野に比べれば不明瞭であるものの誘発運動の体部位再現がみられる
  3. 脊髄に投射するニューロンの集団が存在する

 等が判明した[2][3][4][5][6]。こうした発見によって、前頭葉には一次運動野だけでなく、それ以外にも多数の皮質運動野(非一次運動野 non-primary motor areas)が存在することが明らかになった。

 更に一次運動野と非一次運動野の破壊症状は重要な点で異なる事が判明した。まず、片側大脳半球の一次運動野を傷害すると、反対側の体に著明な麻痺を生じる。ところが、非一次運動野の破壊によっては軽度の麻痺を生じるのみで速やかに回復する。即ち、運動自体を遂行する能力には重大な障害を引き起こさない。その一方で、非一次運動野の破壊の結果、自発的な運動や発語が極度に減少する、又は逆に意図しない運動の発現を引き起こす、複数の運動を正しい順序で遂行できなくなる、様々な感覚入力に応じて適切な運動を使い分けることが出来なくなる、等の失行と呼ばれる症状が出現する。

 こうした観察結果から、非一次運動野は筋活動自体の制御よりも、状況に応じた適切な運動の発現というより高次なレベルでの制御に関わっている事が伺われ、高次運動野と呼ばれるに至った[7]

高次運動野の機能

 高次運動野の研究は霊長類(ヒトサル)を中心に進められてきた。高次運動野の機能については、初期にはその破壊症状からの推測に留まっていたが、20世紀後半からのエバーツに始まる行動中のサル運動野のニューロン活動を観察する手法の導入、およびヒトの脳活動計測技術の進歩が詳細な機能解剖学を可能にし、高次運動野は一次運動野と異なる運動野群として確立された。現在までに高次運動野の機能として以下の働きが知られている。

行動の認知的制御

 認知的行動制御とは状況に応じて適切な刺激や反応を選択したり,その環境的文脈を維持・監視したりしながら,目標志向的な行動を生み出す能力をいう[8]。高次運動野の活動は運動出力自体よりも、状況・文脈に依存した運動の選択・準備・遂行に強く関連しており、また、前述のように高次運動野の損傷は目標志向的な運動の生成に障害をもたらす。

脊髄・一次運動野の損傷時における機能の代償

 高次運動野は、一次運動野や脊髄の損傷による運動障害からの回復期に活動が増大することが報告されている[9][10]。前述のように高次運動野からは脊髄や脳幹への投射があることが知られており、一次運動野や脊髄の損傷により失われた随意的な筋活動の制御をこうした経路を通して代償していると考えられている。

運動学習

 高度に習熟した運動の遂行には、一次運動野や小脳が主体として働く。しかし、新しい順序運動を学習するときには、一次運動野だけでなく高次運動野・前頭前野などを含む広範な神経回路網が活性化することが報告されている[11][12][13]。更に運動学習初期の高次運動野へのGABAa受容体作動薬投与は学習に顕著な障害をもたらす一方、すでに獲得したmotor skillの遂行には影響を及ぼさない。そこで、高次運動野は運動の学習において働くと考えられている。

様々な動物における高次運動野の研究の現状

霊長類(ヒト、サル)

図1.ヒト(左)及びマカクザル(右)における皮質運動野。
出典: BrainInfo (1991-present), National Primate Research Center, University of Washington, http://www.braininfo.org より一部編集して転載。
MI: 一次運動野; SMA proper: 補足運動野; pre-SMA: 前補足運動野; PMDr, PMDc: 背側運動前野吻側部/尾側部; PMVr, PMVc: 腹側運動野吻側部/尾側部。CMAr: 吻側帯状皮質運動野; CMAd: 背側帯状皮質運動野; CMAv: 腹側帯状皮質運動野; FEF: 前頭眼野。cs: 中心溝; cgs: 帯状溝; sfrs: 上前頭溝; ifrs: 下前頭溝; sprs: 上中心前溝; sras: 弓状溝上枝; iras: 弓状溝下枝; prs: 主構。
ヒトとサルの帯状皮質運動野の対応・位置関係についてはAmiezらの論文を参照[14]

 現時点(2015年12月)では、以下の領野が知られている(図1)。なお、各領野の詳細についてはそれぞれの項目を参照すること。
運動前野

 Brodmannの6野外側部を占める皮質運動野であり、Fultonによってはじめてその概念が確立された[15]。感覚情報に基づく運動の選択・実行に中心的な役割を果たしており、この領域の傷害の結果、与えられた手がかり刺激による適切な運動の選択(感覚運動連関)に著しい困難をきたす[16][17]
 運動前野は細胞構築や線維連絡の違いから腹側運動前野(ventral premotor area, PMv)、並びに背側運動前野(dorsal premotor area, PMd)に分類されるが、これらの領域の感覚運動連関における役割は異なると考えられる。例えば、背側運動前野へのムシモール(GABAa受容体作動薬)注入による機能障害は条件運動課題(例、赤い発光ダイオードが点灯した時には手首を伸展し、緑色が点灯した時には屈曲するなど)に著しい支障をきたす一方、腹側運動前野へのムシモール注入はそうした症状を引き起こさない[18]。従って感覚情報による適切な運動の選択には背側運動前野が主に関与していると考えられる。一方、腹側運動前野へのムシモール注入はプリズム適応に障害をもたらすが、背側運動前野の不活性化はプリズム適応に障害をきたさないので、視覚情報による運動の空間的制御には主として腹側運動前野が関与していると考えられる[19]
 なお、各運動前野は吻側部と尾側部に分けられており、特に腹側運動前野吻側部ミラーニューロンが発見されたことで有名である。

補足運動野前補足運動野

 6野内側部を占める皮質運動領野であり、Penfieldらによって発見された[2]。その後、6野内側部前方部と後方部は解剖学的にも生理学的にも異なる性質を持つことが明らかになり、現在では前方領域を前補足運動野、後方領域を(狭義の)補足運動野として区別する。
 補足運動野は運動前野とは対照的に記憶など内的な情報による運動の制御に関与しており、この領域の損傷によって自発的な発語・運動が著しく困難になる無動性無言症akinetic mutismが生じる他、覚えた手順に従った動作の実行が困難になるなどの運動障害が出現する。一方、前補足運動野はルーチン化した動作の切り換えや新しい動作手順の習得など運動の適応的な制御に寄与している。

帯状皮質運動野

 帯状溝の内部に存在する皮質運動野である。辺縁系と密接な神経連絡を持ち、報酬情報による運動の制御に関与する。なお帯状皮質運動野は、前方部の吻側帯状皮質運動野(rostral cingulate motor area)及び後方部の尾側帯状皮質運動野(caudal cingulate motor area)に大別されるが、後者は更に背側、及び腹側帯状皮質運動野(dorsal and ventral cingulate motor areas)に細分されることもある[3]

霊長類以外

 霊長類以外の哺乳類のうち、ラットマウスネコについては複数の皮質運動野の存在することが知られている。しかし、現時点では、それらの領域が運動の発現において筋活動の制御以外の役割を果たしているかどうかについてはデータが不十分である。従って、これらの領域が霊長類の高次運動野に相当するかどうかは今後の研究課題である。

図2.ラット吻側及び尾側前肢領域(rostral and caudal forelimb areas)。各領野の座標はNeafsey & Sievert 1982[20]を参照。
図3.ネコ皮質運動野。左はネコ大脳半球の概観。図の左側が前。cruciate s.: 十字溝; presylvian s.: 前シルヴィウス溝。右は左大脳半球の十字溝、前シルヴィウス溝を展開し、電気刺激による誘発運動の局在を示した図。

ラット・マウス

 ラットの大脳皮質で初めて運動野の存在が報告されたのは1982年に遡る。この年にDonoghue & Wiseによって、ラット前頭葉外側部の無顆粒皮質(lateral agranular cortex)への微小電流刺激によって運動を誘発できることが報告され、この領域が一次運動野に相当すると考えられた[21]。ところが同じ年にNeafsey & Stevertによって、ラット大脳皮質には電気刺激によって前肢の運動を誘発できる領域が前後に各々1つずつ存在することが判明し、それぞれ吻側前肢領域 rostral forelimb area (RFA)、尾側前肢領域 caudal forelimb areas (CFA)と命名された[20]。その後、マウスでもラットCFA, RFAに対応する領域の存在が判明している[22]


ネコ

 ネコ大脳皮質では十字溝 (cruciate sulcus)の入口部を取り囲むように存在する4γ野が霊長類でいう一次運動野に相当すると見なされている[23]。これに対して高次運動野と考えられる領域は複数存在し、このうち4δ野(十字溝後壁で4γ野のすぐ後方の領域)、6aα野(十字溝前壁で4γ野のすぐ内側)、6aγ野(presylvian sulcus外側壁に位置する領域)には皮質脊髄路ニューロンが分布しており、微小電気刺激で反対側の体部位の運動が誘発される[23]6aβ野(6aα野の更に内側)、6iffu野(6aα野の後方)には皮質脊髄路ニューロンがほとんど存在せず、微小電気刺激で運動を誘発することは難しいが[23]、この2領域及び前出の6aα、6aγ野においては橋延髄網様体(姿勢・歩行制御に関与)に投射するニューロンが同定されている[24]。このように組織学的、および電気刺激による知見から、高次運動野と思しきところは複数あるものの、ネコを行動生理学研究に用いた例は少なく、現在のところ、ネコ大脳皮質の高次運動野についての知見は限定的である。

関連項目

引用文献

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