「高次運動野」の版間の差分

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 ラットの大脳皮質で初めて運動野の存在が報告されたのは1982年に遡る。この年にDonoghue & Wiseによって、ラット前頭葉外側部の無顆粒皮質(lateral agranular cortex)への微小電流刺激によって運動を誘発できることが報告され、この領域が一次運動野に相当すると考えられた<ref name="Wise982"><pubmed>6294151</pubmed></ref>。ところが同じ年にNeafsey & Stevertによって、ラット大脳皮質には電気刺激によって前肢の運動を誘発できる領域が前後に各々1つずつ存在することが判明し、それぞれ吻側前肢領域rostral forelimb area (RFA)、尾側前肢領域caudal forelimb areas (CFA)と命名された<ref name="Neafsey1982"><pubmed>7055691</pubmed></ref>。その後、マウスでもラットCFA, RFAに対応する領域の存在が判明している<ref name="Tennant2011"><pubmed>20739477</pubmed></ref>。<br>
 ラットの大脳皮質で初めて運動野の存在が報告されたのは1982年に遡る。この年にDonoghue & Wiseによって、ラット前頭葉外側部の無顆粒皮質(lateral agranular cortex)への微小電流刺激によって運動を誘発できることが報告され、この領域が一次運動野に相当すると考えられた<ref name="Wise982"><pubmed>6294151</pubmed></ref>。ところが同じ年にNeafsey & Stevertによって、ラット大脳皮質には電気刺激によって前肢の運動を誘発できる領域が前後に各々1つずつ存在することが判明し、それぞれ吻側前肢領域rostral forelimb area (RFA)、尾側前肢領域caudal forelimb areas (CFA)と命名された<ref name="Neafsey1982"><pubmed>7055691</pubmed></ref>。その後、マウスでもラットCFA, RFAに対応する領域の存在が判明している<ref name="Tennant2011"><pubmed>20739477</pubmed></ref>。<br>
'''ネコ'''<br>
'''ネコ'''<br>
 ネコ大脳皮質ではcruciate sulcus(十字溝)の入口部を取り囲むように存在する4γ野が霊長類でいう一次運動野に相当すると見なされている<ref><pubmed>9100132</pubmed></ref>。これに対して高次運動野と考えられる領域は複数存在し、このうち4δ野(十字溝背側壁で4γ野のすぐ後方の領域)、6aα野(十字溝腹側壁で4γ野のすぐ内側)、6aγ野(presylvian sulcus外側壁に位置する領域)には皮質脊髄路ニューロンが分布しており、微小電気刺激で反対側の体部位の運動が誘発される[21]。6aβ野(6aα野の更に内側)、6iffu野(6aα野の後方)には皮質脊髄路ニューロンがほとんど存在せず、微小電気刺激で運動を誘発することは難しいが[21]、この2領域及び前出の6aα、6aγ野においては橋延髄網様体(姿勢・歩行制御に関与)に投射するニューロンが証明されている<ref><pubmed> 9368839 </pubmed></ref>。このように組織学的、および電気刺激による知見から、高次運動野と思しきところは複数あるものの、ネコを行動生理学研究に用いた研究の例は少なく、現在のところ、ネコ大脳皮質の高次運動野についての知見は限定的である
 ネコ大脳皮質ではcruciate sulcus(十字溝)の入口部を取り囲むように存在する4γ野が霊長類でいう一次運動野に相当すると見なされている<ref><pubmed>9100132</pubmed></ref>。これに対して高次運動野と考えられる領域は複数存在し、このうち4δ野(十字溝背側壁で4γ野のすぐ後方の領域)、6aα野(十字溝腹側壁で4γ野のすぐ内側)、6aγ野(presylvian sulcus外側壁に位置する領域)には皮質脊髄路ニューロンが分布しており、微小電気刺激で反対側の体部位の運動が誘発される[21]。6aβ野(6aα野の更に内側)、6iffu野(6aα野の後方)には皮質脊髄路ニューロンがほとんど存在せず、微小電気刺激で運動を誘発することは難しいが[21]、この2領域及び前出の6aα、6aγ野においては橋延髄網様体(姿勢・歩行制御に関与)に投射するニューロンが証明されている<ref><pubmed> 9368839 </pubmed></ref>。このように組織学的、および電気刺激による知見から、高次運動野と思しきところは複数あるものの、ネコを行動生理学研究に用いた例は少なく、現在のところ、ネコ大脳皮質の高次運動野についての知見は限定的である


== 関連項目 ==
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