「高速液体クロマトグラフィー」の版間の差分

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[[ファイル:HPLC 図2_横.jpg|thumb|600px|'''図2. (A) OPA化のアミノ基の反応.  (B) 実験に用いたHPLCのフローチャート.  (C)OPA化アミノ酸のクロマトグラム(0.5~20 pmol/μL 標準物質).<br />(D) OPA化アミノ酸のクロマトグラム(脳組織ホモジネートのサンプル).'''<br />[分析条件] 装置:Shimadzu SCL-10Avpシステム, オートサンプラー:GILSON 232XLシステム,カラム:COSMOSIL 5C18-MS-II(4.6ID×150 mm), 流速:0.8 ml/min, カラム温度:36 ℃, 励起波長:340 nm, 蛍光波長:445 nm.]]
[[ファイル:HPLC 図2_横.jpg|thumb|600px|'''図2. (A) OPA化のアミノ基の反応.  (B) 実験に用いたHPLCのフローチャート.  (C)OPA化アミノ酸のクロマトグラム(0.5~20 pmol/μL 標準物質).<br />(D) OPA化アミノ酸のクロマトグラム(脳組織ホモジネートのサンプル).'''<br />[分析条件] 装置:Shimadzu SCL-10Avpシステム, オートサンプラー:GILSON 232XLシステム,カラム:COSMOSIL 5C18-MS-II(4.6ID×150 mm), 流速:0.8 ml/min, カラム温度:36 ℃, 励起波長:340 nm, 蛍光波長:445 nm.]]


#蛍光検出の原理<br> OPA法は、[[wikipedia:JA:オルトフタルアルデヒド|オルトフタルアルデヒド]](o-Phthalaldehyde, OPA)、[[wikipedia:JA:メルカプトエタノール|メルカプトエタノール]]、アミノ酸由来のアミノ基が環化反応し蛍光を発する物質になり、分析を可能にする方法である(図2-A)。OPA誘導体は、励起波長350±10 nm,蛍光波長450±10 nm程度で蛍光検出することができる。一般に誘導化する場合は過剰の試薬を加えなければならず、残った蛍光誘導化試薬が蛍光を発して分析する物質の妨害となり分析が困難になることがある。その点OPAは、環化反応しないと蛍光を発しないため残存する誘導化試薬を気にする必要がないのが利点である。一方OPA試薬の欠点として、蛍光の持続時間が短いこと、第2級アミンと反応しないため[[wikipedia:JA:プロリン|プロリン]]や[[wikipedia:JA:ヒドロキシプロリン|ヒドロキシプロリン]]の検出はできないことがあげられる。
====蛍光検出の原理====
#測定例1 (グラジエント法)<br> 脳組織ホモジネートを用いて、[[興奮性アミノ酸]]である[[グルタミン酸]]と[[抑制性アミノ酸]]である[[GABA]]を測定した例を述べる。<br> 図2-Bに示したHPLCの構成で、グラジエント法を用いて分析した。移動相は2種類あり、移動相Aの組成は、100 mM リン酸緩衝液(pH 5.6)、移動相Bの組成は100%[[wikipedia:JA:アセトニトリル|アセトニトリル]]でステップワイズに濃度を変え、25分間で1分析を行った(グラジエントの条件:0 min&rarr;1 min 15%, 1 min&rarr;4.5 min 16%,  4.5 min&rarr;8 min 21%, 8 min&rarr;11 min 24%, 11 min&rarr;13.5 min 31%, 13.5 min&rarr;16.5 min 35%, 16.5 min&rarr;25 min 15%)。蛍光誘導化試薬は、OPA試薬7.5 mgをメタノール300 μLで溶解した後、2メルカプトエタノールを7.5μLを加え、さらにミリQ水1200 μLを加えた。100 mMホウ酸緩衝液(pH 10.0)は、Na<sub>4</sub>B<sub>4</sub>O<sub>7</sub>・10H<sub>2</sub>O 1.905 gをミリQ水50 mLに溶解し調製した。<br> 試料の前処理として、摘出した脳組織にすみやかに5〜10倍量の0.2 M過塩素酸(PCA)(100 μM [[wikipedia:JA:EDTA|EDTA]]・2Na含有)を加え、超音波で30秒間ホモジナイズした。次に、除タンパクを完全にするため氷中で30分間放置した後、4 ℃で10,000 rpm &times; 15分間遠心し、上清を採取した。上清は20倍に希釈し、15 μLを HPLCサンプルとした。サンプルは、オートサンプラー内にてOPA試薬と反応し、HPLCで分析した。すなわち蛍光誘導化のため反応型のオートサンプラーのサンプルラックを12 ℃に冷却、蛍光誘導化試薬15 μL、サンプル15 μL、100 mM ホウ酸緩衝液(pH 10.0)20 μLを加え30 ℃で2分間インキュベートし、誘導体化されたサンプル35 μLをHPLCにインジェクションした。<br > 分析例として、図2に0.5~20 pmol/μLのスタンダード(C)と脳組織をホモジネートしたサンプル(D)を分析したクロマトグラフを示した。定量限界は、0.5 pmol/μLであった。このクロマト条件においては、脳内のグルタミン酸とGABAの濃度は充分な測定感度範囲に入り、その他の生体アミノ酸([[アスパラギン酸]]、[[wikipedia:JA:セリン|セリン]]、[[wikipedia:JA:アスパラギン|アスパラギン]]、[[wikipedia:JA:アルギニン|アルギニン]]、[[グリシン]]、[[wikipedia:JA:アラニン|アラニン]]、[[wikipedia:JA:タウリン|タウリン]])も同時一斉分析を行うことが可能である。
 
#測定例2 (スイッチングバルブ法)<br> 図3-Aに示したHPLCの構成で、アイソクラティック法を用いて脳組織のホモジネートを分析した。<br />移動相は2種類あり、移動相Aに[[wikipedia:JA:クエン酸|クエン酸]]−リン酸緩衝液 pH 5.8, 12%アセトニトリル、移動相Bにクエン酸−リン酸緩衝液 pH 6.2, 25%アセトニトリルを用い15分間で1分析を行った。スイッチングバルブは、インジェクションから1分30秒で切り替わり、12分後に元の流路に戻るセッティングをした。蛍光誘導化試薬は、OPA試薬5 mgをメタノール200 μLで溶解した後、2メルカプトエタノール5 μL、0.1 M Na<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>溶液800 μL加え、調製した。試料の前処理は、測定例(1)と同様に行い、上清を1200倍に希釈して15 μLをHPLCサンプルにした。蛍光誘導化のため、オートサンプラーのサンプルラックを12 ℃に冷却、蛍光誘導化試薬15 μL、サンプル15 μLを加え30 ℃で2分間インキュベートし、誘導体化されたサンプル10 μLをインジェクションした。
 OPA法は、[[wikipedia:JA:オルトフタルアルデヒド|オルトフタルアルデヒド]](o-Phthalaldehyde, OPA)、[[wikipedia:JA:メルカプトエタノール|メルカプトエタノール]]、アミノ酸由来のアミノ基が環化反応し蛍光を発する物質になり、分析を可能にする方法である(図2-A)。OPA誘導体は、励起波長350±10 nm,蛍光波長450±10 nm程度で蛍光検出することができる。一般に誘導化する場合は過剰の試薬を加えなければならず、残った蛍光誘導化試薬が蛍光を発して分析する物質の妨害となり分析が困難になることがある。その点OPAは、環化反応しないと蛍光を発しないため残存する誘導化試薬を気にする必要がないのが利点である。一方OPA試薬の欠点として、蛍光の持続時間が短いこと、第2級アミンと反応しないため[[wikipedia:JA:プロリン|プロリン]]や[[wikipedia:JA:ヒドロキシプロリン|ヒドロキシプロリン]]の検出はできないことがあげられる。
 
====測定例1(グラジエント法)====
 
 脳組織ホモジネートを用いて、[[興奮性アミノ酸]]である[[グルタミン酸]]と[[抑制性アミノ酸]]である[[GABA]]を測定した例を述べる。<br> 図2-Bに示したHPLCの構成で、グラジエント法を用いて分析した。移動相は2種類あり、移動相Aの組成は、100 mM リン酸緩衝液(pH 5.6)、移動相Bの組成は100%[[wikipedia:JA:アセトニトリル|アセトニトリル]]でステップワイズに濃度を変え、25分間で1分析を行った(グラジエントの条件:0 min&rarr;1 min 15%, 1 min&rarr;4.5 min 16%,  4.5 min&rarr;8 min 21%, 8 min&rarr;11 min 24%, 11 min&rarr;13.5 min 31%, 13.5 min&rarr;16.5 min 35%, 16.5 min&rarr;25 min 15%)。蛍光誘導化試薬は、OPA試薬7.5 mgをメタノール300 μLで溶解した後、2メルカプトエタノールを7.5μLを加え、さらにミリQ水1200 μLを加えた。100 mMホウ酸緩衝液(pH 10.0)は、Na<sub>4</sub>B<sub>4</sub>O<sub>7</sub>・10H<sub>2</sub>O 1.905 gをミリQ水50 mLに溶解し調製した。<br> 試料の前処理として、摘出した脳組織にすみやかに5〜10倍量の0.2 M過塩素酸(PCA)(100 μM [[wikipedia:JA:EDTA|EDTA]]・2Na含有)を加え、超音波で30秒間ホモジナイズした。次に、除タンパクを完全にするため氷中で30分間放置した後、4 ℃で10,000 rpm &times; 15分間遠心し、上清を採取した。上清は20倍に希釈し、15 μLを HPLCサンプルとした。サンプルは、オートサンプラー内にてOPA試薬と反応し、HPLCで分析した。すなわち蛍光誘導化のため反応型のオートサンプラーのサンプルラックを12 ℃に冷却、蛍光誘導化試薬15 μL、サンプル15 μL、100 mM ホウ酸緩衝液(pH 10.0)20 μLを加え30 ℃で2分間インキュベートし、誘導体化されたサンプル35 μLをHPLCにインジェクションした。<br > 分析例として、図2に0.5~20 pmol/μLのスタンダード(C)と脳組織をホモジネートしたサンプル(D)を分析したクロマトグラフを示した。定量限界は、0.5 pmol/μLであった。このクロマト条件においては、脳内のグルタミン酸とGABAの濃度は充分な測定感度範囲に入り、その他の生体アミノ酸([[アスパラギン酸]]、[[wikipedia:JA:セリン|セリン]]、[[wikipedia:JA:アスパラギン|アスパラギン]]、[[wikipedia:JA:アルギニン|アルギニン]]、[[グリシン]]、[[wikipedia:JA:アラニン|アラニン]]、[[wikipedia:JA:タウリン|タウリン]])も同時一斉分析を行うことが可能である。
 
====測定例2(スイッチングバルブ法)====
 
 図3-Aに示したHPLCの構成で、アイソクラティック法を用いて脳組織のホモジネートを分析した。<br />移動相は2種類あり、移動相Aに[[wikipedia:JA:クエン酸|クエン酸]]−リン酸緩衝液 pH 5.8, 12%アセトニトリル、移動相Bにクエン酸−リン酸緩衝液 pH 6.2, 25%アセトニトリルを用い15分間で1分析を行った。スイッチングバルブは、インジェクションから1分30秒で切り替わり、12分後に元の流路に戻るセッティングをした。蛍光誘導化試薬は、OPA試薬5 mgをメタノール200 μLで溶解した後、2メルカプトエタノール5 μL、0.1 M Na<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>溶液800 μL加え、調製した。試料の前処理は、測定例(1)と同様に行い、上清を1200倍に希釈して15 μLをHPLCサンプルにした。蛍光誘導化のため、オートサンプラーのサンプルラックを12 ℃に冷却、蛍光誘導化試薬15 μL、サンプル15 μLを加え30 ℃で2分間インキュベートし、誘導体化されたサンプル10 μLをインジェクションした。


[[ファイル:HPLC 図3_横.jpg|thumb|600px|'''図 3.  (A) HPLCのフローチャート.  (B) 2 pmol/μLのスタンダード.  (C) 脳組織ホモジネートのサンプル.'''<br />[分析条件] 装置:ポンプHITACHI L-2130,検出器:EICOM L7480とGL Sciences GL-7453A,カラムオーブン:EICOM CTC-100,デガッサー:EICOM DG-100,オートサンプラー:EICOM,ソフトウェア:PowerChrom EPC-500,トラップカラム:COSMOSIL Guard 5C18-MS-II(4.6ID×10 mm), 分離用カラム:COSMOSIL 5C18-MS-II(4.6ID×150 mm), 流速:1.1 ml/min, カラム温度:36 ℃, 励起波長:340 nm, 蛍光波長:440 nm.]]
[[ファイル:HPLC 図3_横.jpg|thumb|600px|'''図 3.  (A) HPLCのフローチャート.  (B) 2 pmol/μLのスタンダード.  (C) 脳組織ホモジネートのサンプル.'''<br />[分析条件] 装置:ポンプHITACHI L-2130,検出器:EICOM L7480とGL Sciences GL-7453A,カラムオーブン:EICOM CTC-100,デガッサー:EICOM DG-100,オートサンプラー:EICOM,ソフトウェア:PowerChrom EPC-500,トラップカラム:COSMOSIL Guard 5C18-MS-II(4.6ID×10 mm), 分離用カラム:COSMOSIL 5C18-MS-II(4.6ID×150 mm), 流速:1.1 ml/min, カラム温度:36 ℃, 励起波長:340 nm, 蛍光波長:440 nm.]]