「CAPS」の版間の差分

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 1992年、145kDのタンパク質がCa<sup>2+</sup>依存的な[[有芯小胞]](DCV)の分泌に重要であることが報告された<ref><pubmed>1516133</pubmed></ref>。後にCAPS1 [[wikipedia:ja:cDNA|cDNA]]cDNAが[[wikipedia:ja:クローニング|クローニング]]クローニングされ、線虫UNC-31の脊椎動物ホモログであることが明らかになった<ref><pubmed>9289490</pubmed></ref>。さらにCAPS1の[[wikipedia:Pleckstrin homology domain|PHドメイン]]は[[wikipedia:ja:ホスファチジルセリン|ホスファチジルセリン]]、[[ホスファチジルイノシトール|ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸]]を介して [[wikipedia:ja:ショウ細胞膜ョウバエ|細胞膜]]に結合すること、C末の135アミノ酸が有芯小胞に結合することなどが分かってきた<ref><pubmed>11927595</pubmed></ref>。2004年には、CAPS1の働きとして、有芯小胞のプライミングステップに関与すると報告された<ref><pubmed>15312653</pubmed></ref>。これがCAPS1の働きとしての最初の主張である。しかし、後のCAPS1 KOマウスを用いた報告では、CAPS1がプライミングステップに重要であるという結論を否定し、有芯小胞への[[カテコールアミン]]のローディングステップに働いているという主張がされた<ref><pubmed>15820695</pubmed></ref>。その後、同グループはCAPS1とCAPS2はシナプス小胞のプライミングステップに関与すると大幅に主張を変えている<ref><pubmed>18022372</pubmed></ref>。また、CAPS1は[[ゴルジ体|ゴルジ]]膜における有芯小胞の生合成に関与するという報告もあり<ref><pubmed>20921225</pubmed></ref>、CAPSタンパク質の働きとしては、有芯小胞の分泌に関与することは明らかなものの、どのステップに関与しているのかについては未だ統一的な見解がない。
 1992年、145kDのタンパク質がCa<sup>2+</sup>依存的な[[有芯小胞]](DCV)の分泌に重要であることが報告された<ref><pubmed>1516133</pubmed></ref>。後にCAPS1 [[wikipedia:ja:cDNA|cDNA]]cDNAが[[wikipedia:ja:クローニング|クローニング]]クローニングされ、線虫UNC-31の脊椎動物ホモログであることが明らかになった<ref><pubmed>9289490</pubmed></ref>。さらにCAPS1の[[wikipedia:Pleckstrin homology domain|PHドメイン]]は[[wikipedia:ja:ホスファチジルセリン|ホスファチジルセリン]]、[[ホスファチジルイノシトール|ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸]]を介して [[wikipedia:ja:ショウ細胞膜ョウバエ|細胞膜]]に結合すること、C末の135アミノ酸が有芯小胞に結合することなどが分かってきた<ref><pubmed>11927595</pubmed></ref>。2004年には、CAPS1の働きとして、有芯小胞のプライミングステップに関与すると報告された<ref><pubmed>15312653</pubmed></ref>。これがCAPS1の働きとしての最初の主張である。しかし、後のCAPS1 KOマウスを用いた報告では、CAPS1がプライミングステップに重要であるという結論を否定し、有芯小胞への[[カテコールアミン]]のローディングステップに働いているという主張がされた<ref><pubmed>15820695</pubmed></ref>。その後、同グループはCAPS1とCAPS2はシナプス小胞のプライミングステップに関与すると大幅に主張を変えている<ref><pubmed>18022372</pubmed></ref>。また、CAPS1は[[ゴルジ体|ゴルジ]]膜における有芯小胞の生合成に関与するという報告もあり<ref><pubmed>20921225</pubmed></ref>、CAPSタンパク質の働きとしては、有芯小胞の分泌に関与することは明らかなものの、どのステップに関与しているのかについては未だ統一的な見解がない。


[[Image:CAPS図1.jpg|thumb|300px|'''図1''']]


== 構造 ==
== 構造 ==
 CAPS1、CAPS2ともに、[[wikipedia:C2_domain|C2ドメイン]]、PHドメインを有し、C末の135アミノ酸で有芯小胞に結合する。C末側はシナプス小胞のプライミングステップに関与するタンパク質であるMunc13と低い相同性がある(図1)。
 CAPS1、CAPS2ともに、[[wikipedia:C2_domain|C2ドメイン]]、PHドメインを有し、C末の135アミノ酸で有芯小胞に結合する。C末側はシナプス小胞のプライミングステップに関与するタンパク質であるMunc13と低い相同性がある(図1)。[[Image:CAPS図1.jpg|thumb|center|300px|'''図1''']]


== 分布 ==
== 分布 ==


 脳組織においてCAPS1は幅広く発現するが、CAPS2は特異的な細胞のみで発現する。CAPS2発現細胞としては、[[大脳]][[介在ニューロン]](一部)、[[海馬]]の[[顆粒細胞]]・[[CA1]][[錐体細胞]]・介在ニューロン(一部)、[[小脳]]の顆粒細胞、[[中脳]]の[[ドーパミン]]産生細胞、[[海馬台]]、[[手綱核]]で強い発現が見られる。CAPS1に関しては殆どの神経細胞で発現が見られる。
 脳組織において[http://mouse.brain-map.org/gene/show/26807 CAPS1]は幅広く発現するが、[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/69540266 CAPS2]は特異的な細胞のみで発現する。CAPS2発現細胞としては、[[大脳]][[介在ニューロン]](一部)、[[海馬]]の[[顆粒細胞]]・[[CA1]][[錐体細胞]]・介在ニューロン(一部)、[[小脳]]の顆粒細胞、[[中脳]]の[[ドーパミン]]産生細胞、[[海馬台]]、[[手綱核]]で強い発現が見られる。CAPS1に関しては殆どの神経細胞で発現が見られる。


 脳以外では、[[副腎髄質]]、 [[wikipedia:ja:ランゲルハンス島|ランゲルハンス島]]などでCAPS1の強い発現が見られ、 [[wikipedia:ja:甲状腺|甲状腺]]の [[wikipedia:ja:濾胞傍細胞|C細胞]]、 [[wikipedia:ja:胃|胃]][[wikipedia:ja:主細胞 (胃)|主細胞]]、 [[wikipedia:ja:気管|気管]]支上皮などでCAPS2の強い発現が見られる。
 脳以外では、[[副腎髄質]]、 [[wikipedia:ja:ランゲルハンス島|ランゲルハンス島]]などでCAPS1の強い発現が見られ、 [[wikipedia:ja:甲状腺|甲状腺]]の [[wikipedia:ja:濾胞傍細胞|C細胞]]、 [[wikipedia:ja:胃|胃]][[wikipedia:ja:主細胞 (胃)|主細胞]]、 [[wikipedia:ja:気管|気管]]支上皮などでCAPS2の強い発現が見られる。
[[Image:CAPS図2.jpg|thumb|300px|'''図2''']]


== 疾患との関係 ==
== 疾患との関係 ==
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 CAPS2 KOマウスは、[[社会性行動]]の異常、[[養育行動の神経回路|母性行動]]の異常、[[多動]]、新奇環境への適応力の低下、小脳VI, VII葉の低形成、[[プルキンエ細胞]]の減少といった自閉症様の形質を示すことが明らかになった。また、ヒト自閉症患者の血中におけるCAPS2の発現を解析したところ、自閉症患者特異的にCAPS2のexon3のスキップが亢進していることが分かった。このexon 3-skipped CAPS2は、[[軸索輸送]]タンパク質であるp150Gluedに結合できず、プレシナプス部に輸送されないことなどが明らかになった。これらの結果から、自閉症患者の脳内では、exon 3-skipped CAPS2の発現によってBDNFの局所的分泌が異常になり、これが神経ネットワークの形成異常につながる可能性が示唆された(図2)<ref><pubmed>17380209</pubmed></ref><ref><pubmed>17344385</pubmed></ref>。
 CAPS2 KOマウスは、[[社会性行動]]の異常、[[養育行動の神経回路|母性行動]]の異常、[[多動]]、新奇環境への適応力の低下、小脳VI, VII葉の低形成、[[プルキンエ細胞]]の減少といった自閉症様の形質を示すことが明らかになった。また、ヒト自閉症患者の血中におけるCAPS2の発現を解析したところ、自閉症患者特異的にCAPS2のexon3のスキップが亢進していることが分かった。このexon 3-skipped CAPS2は、[[軸索輸送]]タンパク質であるp150Gluedに結合できず、プレシナプス部に輸送されないことなどが明らかになった。これらの結果から、自閉症患者の脳内では、exon 3-skipped CAPS2の発現によってBDNFの局所的分泌が異常になり、これが神経ネットワークの形成異常につながる可能性が示唆された(図2)<ref><pubmed>17380209</pubmed></ref><ref><pubmed>17344385</pubmed></ref>。
[[Image:CAPS図2.jpg|thumb|center|300px|'''図2''']]


 
== 参考文献 ==
== 参照文献 ==


<references />
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