「CAPS」の版間の差分

317 バイト追加 、 2013年8月13日 (火)
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
1行目: 1行目:
<div align="right"> 
<font size="+1">[http://researchmap.jp/sadakata 定方 哲史]</font><br>
''群馬大学 先端科学研究指導者育成ユニット''<br>
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2012年3月16日 原稿完成日:2012年3月30日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br>
</div>
{{PBB|geneid=8618}}
{{PBB|geneid=8618}}
{{PBB|geneid=93664}}
{{PBB|geneid=93664}}
英語名:Ca<sup>2+</sup>-dependent activator protein for secretion (CAPS)
英語名:Ca<sup>2+</sup>-dependent activator protein for secretion (CAPS)


 
{{box|text=
 有芯小胞の輸送・分泌に関与する145kDaの水溶性タンパク質。神経系、および内分泌系の細胞に発現が見られる。自閉症や糖尿病などとの関連が示唆されている。
 有芯小胞の輸送・分泌に関与する145kDaの水溶性タンパク質。神経系、および内分泌系の細胞に発現が見られる。自閉症や糖尿病などとの関連が示唆されている。
}}


==ファミリー==
==ファミリー==
16行目: 24行目:


== 構造 ==
== 構造 ==
 CAPS1、CAPS2ともに、[[wikipedia:C2_domain|C2ドメイン]]、PHドメインを有し、C末の135アミノ酸で有芯小胞に結合する。C末側はシナプス小胞のプライミングステップに関与するタンパク質であるMunc13と低い相同性がある(図1)。[[Image:CAPS図1.jpg|thumb|center|300px|'''図1.CAPSタンパク質の構造''']]
 CAPS1、CAPS2ともに、[[wikipedia:C2_domain|C2ドメイン]]、PHドメインを有し、C末の135アミノ酸で有芯小胞に結合する。C末側はシナプス小胞のプライミングステップに関与するタンパク質であるMunc13と低い相同性がある(図1)。[[Image:CAPS図1.jpg|thumb|center|300px|'''図1.CAPSタンパク質の構造''']]


== 分布 ==
== 分布 ==
26行目: 34行目:
== 疾患との関係 ==
== 疾患との関係 ==


 CAPS2遺伝子はヒト7番染色体長腕部にある自閉症責任領域(AUTS1)に位置している。[[自閉症]]は、三歳までに発病する[[精神疾患]]として知られ、「対人関係における障害」、「言語などによるコミュニケーションの障害」、「興味の限局、反復的で常同的な行動」を特徴とした疾患である。人口千人当たり一人以上の割合で発症する非常に発症率の高い病気であるが、その発症メカニズムは明らかになっていない。 [[wikipedia:ja:一卵性双生児|一卵性双生児]]の一致率が70~90%であることから、遺伝子の異常が関与すると考えられている。
 CAPS2遺伝子はヒト7番染色体長腕部にある自閉症責任領域(AUTS1)に位置している。[[自閉症]]は、三歳までに発病する[[精神疾患]]として知られ、「対人関係における障害」、「言語などによるコミュニケーションの障害」、「興味の限局、反復的で常同的な行動」を特徴とした疾患である。人口千人当たり一人以上の割合で発症する非常に発症率の高い病気であるが、その発症メカニズムは明らかになっていない。 [[wikipedia:ja:一卵性双生児|一卵性双生児]]の一致率が70~90%であることから、遺伝子の異常が関与すると考えられている。


 CAPS2 KOマウスは、[[社会性行動]]の異常、[[養育行動の神経回路|母性行動]]の異常、[[多動]]、新奇環境への適応力の低下、小脳VI, VII葉の低形成、[[プルキンエ細胞]]の減少といった自閉症様の形質を示すことが明らかになった。また、ヒト自閉症患者の血中におけるCAPS2の発現を解析したところ、一部の患者にて患者特異的にCAPS2のexon3のスキップが亢進していることが分かった。このexon 3-skipped CAPS2は、[[軸索輸送]]タンパク質であるp150Gluedに結合できず、プレシナプス部に輸送されないことなどが明らかになった。これらの結果から、一部の自閉症患者の脳内では、exon 3-skipped CAPS2の発現によってBDNFの局所的分泌が異常になり、これが神経ネットワークの形成異常につながる可能性が示唆された(図2)<ref><pubmed>17380209</pubmed></ref><ref><pubmed>17344385</pubmed></ref>。
 CAPS2 KOマウスは、[[社会性行動]]の異常、[[養育行動の神経回路|母性行動]]の異常、[[多動]]、新奇環境への適応力の低下、小脳VI, VII葉の低形成、[[プルキンエ細胞]]の減少といった自閉症様の形質を示すことが明らかになった。また、ヒト自閉症患者の血中におけるCAPS2の発現を解析したところ、一部の患者にて患者特異的にCAPS2のexon3のスキップが亢進していることが分かった。このexon 3-skipped CAPS2は、[[軸索輸送]]タンパク質であるp150Gluedに結合できず、プレシナプス部に輸送されないことなどが明らかになった。これらの結果から、一部の自閉症患者の脳内では、exon 3-skipped CAPS2の発現によってBDNFの局所的分泌が異常になり、これが神経ネットワークの形成異常につながる可能性が示唆された(図2)<ref><pubmed>17380209</pubmed></ref><ref><pubmed>17344385</pubmed></ref>。
[[Image:CAPS図2.jpg|thumb|center|300px|'''図2.CAPS2による細胞局所からのBDNF分泌とエクソン3欠損型の分泌障害モデル''']]
 
[[Image:CAPS図2.jpg|thumb|center|300px|'''図2.CAPS2による細胞局所からのBDNF分泌とエクソン3欠損型の分泌障害モデル''']]


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==


<references />
<references />
(執筆者:定方哲史 担当編集委員:柚崎通介)