「Cre/loxPシステム」の版間の差分

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=== Cre発現依存的遺伝子発現  ===
=== Cre発現依存的遺伝子発現  ===


 ある遺伝子を細胞あるいは動物個体の組織で高発現させるためには組織特異的プロモーターの下流に目的の遺伝子をつなげた外来遺伝子を構築し導入する方法が用いられる。 しかし、そのプロモーターによる発現量が低かった場合には以下の方法を用いることでプロモーターの組織特性を保ちながら目的遺伝子の高発現が期待できる。 まず、組織特異的プロモーターの下流にCre遺伝子をつけた外来遺伝子および[[サイトメガロウイルス]](CMV)プロモーターなどの高発現が期待できるプロモーター下流に2つのloxP配列に挟まれた[[wikipedia:ja:ポリアデニル化|polyA付加シグナル]]などの転写停止配列、さらにその下流に目的の遺伝子をつなげた外来遺伝子をそれぞれ構築する。これらの外来遺伝子を同時に導入すると、組織特異的プロモーターが働く部位ではloxP配列間の転写停止配列が欠損し、その下流に位置する目的遺伝子が高発現する。一方、組織特異的プロモーターが働かない部位では[[wikipediaLja:転写停止配列|転写停止配列]]が存在するため目的の遺伝子は発現しない(図5)。
 ある遺伝子を細胞あるいは動物個体の組織で高発現させるためには組織特異的プロモーターの下流に目的の遺伝子をつなげた外来遺伝子を構築し導入する方法が用いられる。 しかし、そのプロモーターによる発現量が低かった場合には以下の方法を用いることでプロモーターの組織特性を保ちながら目的遺伝子の高発現が期待できる。 まず、組織特異的プロモーターの下流にCre遺伝子をつけた外来遺伝子および[[サイトメガロウイルス]](CMV)プロモーターなどの高発現が期待できるプロモーター下流に2つのloxP配列に挟まれた[[wikipedia:ja:ポリアデニル化|polyA付加シグナル]]などの転写停止配列、さらにその下流に目的の遺伝子をつなげた外来遺伝子をそれぞれ構築する。これらの外来遺伝子を同時に導入すると、組織特異的プロモーターが働く部位ではloxP配列間の転写停止配列が欠損し、その下流に位置する目的遺伝子が高発現する。一方、組織特異的プロモーターが働かない部位では[[wikipedia:Transcription_(genetics)#Termination|転写停止配列]]が存在するため目的の遺伝子は発現しない(図5)。


[[Image:CreloxP図5.jpg|thumb|right|300px|'''図5.Cre発現依存的遺伝子発現''']]
[[Image:CreloxP図5.jpg|thumb|right|300px|'''図5.Cre発現依存的遺伝子発現''']]
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=== 培養細胞における選択マーカーの除去  ===
=== 培養細胞における選択マーカーの除去  ===


 培養細胞に外来遺伝子を導入する際、細胞の遺伝子が導入された細胞を選択をするために[[wikipedia:ja:ネオマイシン|ネオマイシン]]耐性遺伝子など[[wikipedia:ja:薬剤耐性遺伝子|薬剤耐性遺伝子]]を選択マーカーとして用いる。しかし、目的の細胞が得られた後にはこれらの選択マーカー遺伝子を発現するための[[プロモーター]]が内在性のプロモーターに干渉する例があるために、選択後は除くことが望ましい。この場合にもCre/loxPシステムが利用される。細胞に導入する外来遺伝子の選択マーカーは2つのloxP配列で挟まれた形にしておく。この選択マーカーを除くためにCreとともに[[wikipedia:ja:ピューロマイシン|ピューロマイシン]]耐性遺伝子を発現するプラスミドpCrePacを一過性に導入し、ピューロマイシン存在下で培養するとCreにより選択マーカーが除去された細胞のみが生存する(図6)<ref><pubmed> 9421534 </pubmed></ref>。
 [[培養細胞]]に外来遺伝子を導入する際、細胞の遺伝子が導入された細胞を選択をするために[[wikipedia:ja:ネオマイシン|ネオマイシン]]耐性遺伝子など[[wikipedia:ja:薬剤耐性遺伝子|薬剤耐性遺伝子]]を選択マーカーとして用いる。しかし、目的の細胞が得られた後にはこれらの選択マーカー遺伝子を発現するためのプロモーターが内在性のプロモーターに干渉する例があるために、選択後は除くことが望ましい。この場合にもCre/loxPシステムが利用される。細胞に導入する外来遺伝子の選択マーカーは2つのloxP配列で挟まれた形にしておく。この選択マーカーを除くためにCreとともに[[wikipedia:ja:ピューロマイシン|ピューロマイシン]]耐性遺伝子を発現するプラスミドpCrePacを一過性に導入し、ピューロマイシン存在下で培養するとCreにより選択マーカーが除去された細胞のみが生存する(図6)<ref><pubmed> 9421534 </pubmed></ref>。


[[Image:Crelox図6.jpg|thumb|right|300px|'''図6.培養細胞における選択マーカーの除去''']]
[[Image:Crelox図6.jpg|thumb|right|300px|'''図6.培養細胞における選択マーカーの除去''']]