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<font size="+1">[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀]</font><br> | ||
''独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター''<br> | ''独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年9月18日 原稿完成日:2014年4月7日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br> | ||
</div> | </div> | ||
英:[[Förster]] resonance energy transfer 英略称:FRET 独:Förster-Resonanzenergietransfer 仏:transfert d'énergie entre molécules fluorescentes | 英:[[Förster]] resonance energy transfer 英略称:FRET 独:Förster-Resonanzenergietransfer 仏:transfert d'énergie entre molécules fluorescentes | ||
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===プローブの分解に伴うFRETの変化を検出するプローブ=== | ===プローブの分解に伴うFRETの変化を検出するプローブ=== | ||
この原理は、FRETプローブの最も初期に導入されたデザインである(図5A)。プロテアーゼによって分解される配列の両端にドナーとアクセプターを連結する。プロテアーゼによって、この配列が分解されるとドナーとアクセプターの間に起きていたFRETが解消されることによって、プロテアーゼの活性を評価する。例として、[[wj:第X因子|第X因子]]、[[ | この原理は、FRETプローブの最も初期に導入されたデザインである(図5A)。プロテアーゼによって分解される配列の両端にドナーとアクセプターを連結する。プロテアーゼによって、この配列が分解されるとドナーとアクセプターの間に起きていたFRETが解消されることによって、プロテアーゼの活性を評価する。例として、[[wj:第X因子|第X因子]]、[[カスパーゼ]]などの[[プロテアーゼ]]活性のプローブが挙げられる<ref name=ref5><pubmed>8707050</pubmed></ref> <ref name=ref6><pubmed>9518501</pubmed></ref> <ref name=ref7><pubmed>12409609</pubmed></ref> <ref name=ref8><pubmed>21637712</pubmed></ref> <ref name=ref9><pubmed>17946841</pubmed></ref>。このプローブのデザインの短所としては、反応が不可逆的であるために、一つの実験系で何度も測定することが困難であることである。 | ||
===二分子間相互作用を利用したFRETプローブ=== | ===二分子間相互作用を利用したFRETプローブ=== | ||
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====生体膜上の小分子==== | ====生体膜上の小分子==== | ||
このプローブは、主に、[[wj:脂質|脂質]]分子に応用されてきた(図5G)。ドナー、脂質結合ドメイン、アクセプターがヘリックス構造で連結され、[[グリシン]]-グリシン配列をその途中に導入することで、そこを中心に一方の蛍光タンパク質が回転することができる。膜結合ドメインを用いて、プローブを結合させる。脂質分子が増えた際に、脂質結合ドメインが脂質分子を認識し、構造変化が起き、ドナーとアクセプターの距離が縮まりFRETが生じる。[[ジアシルグリセロール]]<ref name=ref20><pubmed>16990811</pubmed></ref>、[[ホスファチジルイノシトール|イノシトールリン脂質]]群<ref name=ref21><pubmed>14528311</pubmed></ref><ref | このプローブは、主に、[[wj:脂質|脂質]]分子に応用されてきた(図5G)。ドナー、脂質結合ドメイン、アクセプターがヘリックス構造で連結され、[[グリシン]]-グリシン配列をその途中に導入することで、そこを中心に一方の蛍光タンパク質が回転することができる。膜結合ドメインを用いて、プローブを結合させる。脂質分子が増えた際に、脂質結合ドメインが脂質分子を認識し、構造変化が起き、ドナーとアクセプターの距離が縮まりFRETが生じる。[[ジアシルグリセロール]]<ref name=ref20><pubmed>16990811</pubmed></ref>、[[ホスファチジルイノシトール|イノシトールリン脂質]]群<ref name=ref21><pubmed>14528311</pubmed></ref> <ref name=ref18685081><pubmed>18685081</pubmed></ref>を測定するために用いられている。 | ||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
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|rowspan="21" | 生体内小分子|| [[カルシウム]] ||Cameleon|| 1997 || E || <ref name=ref16 /> | |rowspan="21" | 生体内小分子|| [[カルシウム]] ||Cameleon|| 1997 || E || <ref name=ref16 /> | ||
|- | |- | ||
|[[サイクリックGMP]] ([[cGMP]]) ||CGY, Cygnet, pGES-DE2, cGi|| 2000, 2001, 2006 ||D || <ref><pubmed>11140757</pubmed></ref><ref><pubmed>11226257</pubmed></ref><ref><pubmed>16369548</pubmed></ref><ref><pubmed>23801067</pubmed></ref> | |[[サイクリックGMP]] ([[cGMP]]) ||CGY, Cygnet, pGES-DE2, cGi|| 2000, 2001, 2006 ||D || <ref name=ref11140757><pubmed>11140757</pubmed></ref><ref><pubmed>11226257</pubmed></ref><ref><pubmed>16369548</pubmed></ref><ref><pubmed>23801067</pubmed></ref> | ||
|- | |- | ||
|[[サイクリックAMP]] ([[cAMP]]) ||Epac|| 2000,2004 || B, D || <ref><pubmed>11872839</pubmed></ref><ref><pubmed> 15231839</pubmed></ref> | |[[サイクリックAMP]] ([[cAMP]]) ||Epac|| 2000,2004 || B, D || <ref><pubmed>11872839</pubmed></ref><ref><pubmed> 15231839</pubmed></ref> | ||
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|[[wj:リボース|リボース]]||FLIPrib|| 2003 || D || <ref><pubmed>14550551</pubmed></ref> | |[[wj:リボース|リボース]]||FLIPrib|| 2003 || D || <ref><pubmed>14550551</pubmed></ref> | ||
|- | |- | ||
|rowspan="25" | タンパク質リン酸化酵素 || [[カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質リン酸化酵素II]] ([[CaMKII]]) ||Camui α, green-Camui α, Camk2a reporter|| 2005, 2009, 2011, 2013 || D || <ref name=ref11> <ref><pubmed> 19295602</pubmed></ref><ref name=ref23602566><pubmed> 23602566</pubmed></ref><ref name=ref21506563><pubmed> 21506563</pubmed></ref> | |rowspan="25" | タンパク質リン酸化酵素 || [[カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質リン酸化酵素II]] ([[CaMKII]]) ||Camui α, green-Camui α, Camk2a reporter|| 2005, 2009, 2011, 2013 || D || <ref name=ref11 /> <ref name=ref19295602><pubmed>19295602</pubmed></ref> <ref name=ref23602566><pubmed> 23602566</pubmed></ref> <ref name=ref21506563><pubmed> 21506563</pubmed></ref> | ||
|- | |- | ||
| [[Src]] ||Srcus|| 2005, 2005, 2007 || F || <ref name=ref19 /> <ref><pubmed> 15846350</pubmed></ref><ref><pubmed> 17284441</pubmed></ref> | | [[Src]] ||Srcus|| 2005, 2005, 2007 || F || <ref name=ref19 /> <ref><pubmed> 15846350</pubmed></ref><ref><pubmed> 17284441</pubmed></ref> | ||
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| [[Rab5]] ||Raichu-Rab5|| 2008 || E || <ref><pubmed>18385674</pubmed></ref> | | [[Rab5]] ||Raichu-Rab5|| 2008 || E || <ref><pubmed>18385674</pubmed></ref> | ||
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| [[Rho]] ||Raichu-RhoA|| 2003, 2011 || B, E || <ref name=ref21423166><pubmed>21423166</pubmed></ref><ref><pubmed> 12860967</pubmed></ref> | | [[Rho]] ||Raichu-RhoA|| 2003, 2011 || B, E || <ref name=ref21423166><pubmed>21423166</pubmed></ref> <ref><pubmed> 12860967</pubmed></ref> | ||
|- | |- | ||
| [[Cdc42]] ||Raichu-cdc42|| 2004, 2011 || B, E || <ref name=ref14570905 /><ref name=ref21423166 /> | | [[Cdc42]] ||Raichu-cdc42|| 2004, 2011 || B, E || <ref name=ref14570905 /><ref name=ref21423166 /> | ||
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|rowspan="6" | [[脂質]] || [[ホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸]] ([[PIP3|PIP<sub>3</sub>]]) ||Fllip, FLIMPA|| 2003 || G || <ref name=ref21 /> | |rowspan="6" | [[脂質]] || [[ホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸]] ([[PIP3|PIP<sub>3</sub>]]) ||Fllip, FLIMPA|| 2003 || G || <ref name=ref21 /> | ||
|- | |- | ||
| [[ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸]] ([[PIP2|PI(4,5)P<sub>2</sub>]]) ||Pippi-PI(4,5)P<sub>2</sub>|| 2008 || G || <ref name=ref18685081 | | [[ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸]] ([[PIP2|PI(4,5)P<sub>2</sub>]]) ||Pippi-PI(4,5)P<sub>2</sub>|| 2008 || G || <ref name=ref18685081 /> | ||
|- | |- | ||
| [[ホスファチジルイノシトール-3,4-二リン酸]] ([[PI(3,4)P2|PI(3,4)P<sub>2</sub>]]) ||Pippi-PI(3,4)P<sub>2</sub>|| 2008 || G || <ref name=ref18685081 /> | | [[ホスファチジルイノシトール-3,4-二リン酸]] ([[PI(3,4)P2|PI(3,4)P<sub>2</sub>]]) ||Pippi-PI(3,4)P<sub>2</sub>|| 2008 || G || <ref name=ref18685081 /> | ||
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| [[ホスファチジン酸]] ||Pii|| 2010 || G || <ref><pubmed>20826779</pubmed></ref> | | [[ホスファチジン酸]] ||Pii|| 2010 || G || <ref><pubmed>20826779</pubmed></ref> | ||
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| [[ジアシルグリセロール]] (DAG) ||Daglas, DIGDA|| 2006, 2008 || G || <ref name=ref18685081 /><ref name=ref20 /> | | [[ジアシルグリセロール]] (DAG) ||Daglas, DIGDA|| 2006, 2008 || G || <ref name=ref18685081 /> <ref name=ref20 /> | ||
|- | |- | ||
|rowspan="6" | タンパク質相互作用 || [[アクチン]] || ||2004, 2008 || C || <ref name=ref10 /> <ref><pubmed> 18512154</pubmed></ref> | |rowspan="6" | タンパク質相互作用 || [[アクチン]] || ||2004, 2008 || C || <ref name=ref10 /> <ref name=ref18512154><pubmed>18512154</pubmed></ref> | ||
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| [[3-ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1]]([[phosphoinositide-dependent protein kinase 1]], [[PDK1]])-[[タンパク質キナーゼB]] ([[protein kinase B]], [[PKB]], [[Akt]])相互作用 || ||2007 || B || <ref name=ref17407381 /> | | [[3-ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1]]([[phosphoinositide-dependent protein kinase 1]], [[PDK1]])-[[タンパク質キナーゼB]] ([[protein kinase B]], [[PKB]], [[Akt]])相互作用 || ||2007 || B || <ref name=ref17407381 /> | ||
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現在多くの場合GFPあるいはその関連タンパク質が用いられている。 | 現在多くの場合GFPあるいはその関連タンパク質が用いられている。 | ||
蛍光強度比イメージングの場合は、GFPの色彩変異体であるシアン色蛍光タンパク質CFPと黄色蛍光タンパク質YFPのFRETペアがよく用いられている。CFPの中でも、Ceruleanが明るい蛍光を示すためこれを用いるべきである。YFPの変異体の中では、Venus、Ypetがよい。いずれも若干の凝集傾向が有り、これはタンパク質表面にある三つのアラニン残基のメチル基によるものとされており、それを変異させたmonomeric GFP (A206K変異体)で凝集を避ける事が出来る<ref name=ref11988576><pubmed>11988576</pubmed></ref><ref name=ref18512154 | 蛍光強度比イメージングの場合は、GFPの色彩変異体であるシアン色蛍光タンパク質CFPと黄色蛍光タンパク質YFPのFRETペアがよく用いられている。CFPの中でも、Ceruleanが明るい蛍光を示すためこれを用いるべきである。YFPの変異体の中では、Venus、Ypetがよい。いずれも若干の凝集傾向が有り、これはタンパク質表面にある三つのアラニン残基のメチル基によるものとされており、それを変異させたmonomeric GFP (A206K変異体)で凝集を避ける事が出来る<ref name=ref11988576><pubmed>11988576</pubmed></ref> <ref name=ref18512154 />。一方で、プロテアーゼプローブなどでは、FRETダイナミックレンジが改善するという報告もある<ref name=ref15696158><pubmed>15696158</pubmed></ref> | ||
<ref name=ref17586775><pubmed>17586775</pubmed></ref>。CFPとYFPはいずれもGFPの変異体で殆ど同一の配列である為か、トランスジェニック動物が作りにくい事が経験的に知られている{kamioka, 2012}。 | <ref name=ref17586775><pubmed>17586775</pubmed></ref>。CFPとYFPはいずれもGFPの変異体で殆ど同一の配列である為か、トランスジェニック動物が作りにくい事が経験的に知られている{kamioka, 2012}。 | ||
近年、Clover(緑色域)とmRuby2(赤色域)がより良いFRETペアであると報告されている<ref><pubmed>22961245</pubmed></ref>。 | 近年、Clover(緑色域)とmRuby2(赤色域)がより良いFRETペアであると報告されている<ref><pubmed>22961245</pubmed></ref>。 | ||
一方、蛍光寿命イメージングとしてはドナーとしてmGFP、アクセプターとしてmRFPもしくはmCherryが用いられる。この場合、アクセプターの蛍光強度は問題ではないので蛍光を発しないREACh, darkVenus, superREAChなども用いられる<ref name=ref16537489><pubmed>16537489</pubmed></ref><ref name=ref18512154 | 一方、蛍光寿命イメージングとしてはドナーとしてmGFP、アクセプターとしてmRFPもしくはmCherryが用いられる。この場合、アクセプターの蛍光強度は問題ではないので蛍光を発しないREACh, darkVenus, superREAChなども用いられる<ref name=ref16537489><pubmed>16537489</pubmed></ref><ref name=ref18512154 /> <ref name=ref18302935><pubmed>18302935</pubmed></ref>。 | ||
これらのプローブはどうしてもある程度細胞内に過剰発現する事になる為、それ自体が細胞機能に影響を与える事が有る。そのため、観察したい細胞機能が影響受けていないかは厳密に限局すべきである。 | これらのプローブはどうしてもある程度細胞内に過剰発現する事になる為、それ自体が細胞機能に影響を与える事が有る。そのため、観察したい細胞機能が影響受けていないかは厳密に限局すべきである。 | ||
359行目: | 358行目: | ||
ところが通常用いられる蛍光色素では5-10 nm程度の範囲まででFRETが観察されるのに対し、抗体自体が15 nmの大きさを持っている。また抗体のヒンジ部分で自由に折れ曲がる事が可能である。しかも2個の抗体を用いる。これらを考慮に入れると、目的とする分子の構造変化や相互作用が起こっていてもFRETが検出できない可能性がある。逆に仮にFRETが起きたとしても目的とするタンパク質が本当に相互作用しているかの実証とはならない。確実に言えるのは二つの抗原部位が数十nm以内に存在するという事実だけである。その為、タンパク質の構造変化を見るような実験には用いるのは難しい。また、免疫染色である為、固定したサンプルを用いなければならない。 | ところが通常用いられる蛍光色素では5-10 nm程度の範囲まででFRETが観察されるのに対し、抗体自体が15 nmの大きさを持っている。また抗体のヒンジ部分で自由に折れ曲がる事が可能である。しかも2個の抗体を用いる。これらを考慮に入れると、目的とする分子の構造変化や相互作用が起こっていてもFRETが検出できない可能性がある。逆に仮にFRETが起きたとしても目的とするタンパク質が本当に相互作用しているかの実証とはならない。確実に言えるのは二つの抗原部位が数十nm以内に存在するという事実だけである。その為、タンパク質の構造変化を見るような実験には用いるのは難しい。また、免疫染色である為、固定したサンプルを用いなければならない。 | ||
しかし、最近intrabody、nanobody、FingRなどと呼ばれる希望するタンパク質と特異的に結合する小型のタンパク質配列をデザインする方法が開発されつつある<ref name=ref23836932 ><pubmed> 23836932 </pubmed></ref><ref name=ref23791193><pubmed> 23791193 </pubmed></ref><ref name=ref24005308 ><pubmed> 24005308 </pubmed></ref><ref name=ref16053141 ><pubmed> 16053141 </pubmed></ref>。これを用いると、任意の分子に結合する、抗体よりも小型で、かつ遺伝子によってコードされる蛍光ラベルが可能となるであろう。このような方法を用いる事により、GFP融合タンパクによらない、内在性のタンパク質の相互作用を検出できる可能性がある。 | |||
<ref name=ref23791193><pubmed> 23791193 </pubmed></ref><ref name=ref24005308 ><pubmed> 24005308 </pubmed></ref>。これを用いると、任意の分子に結合する、抗体よりも小型で、かつ遺伝子によってコードされる蛍光ラベルが可能となるであろう。このような方法を用いる事により、GFP融合タンパクによらない、内在性のタンパク質の相互作用を検出できる可能性がある。 | |||
==神経科学分野への応用例 == | ==神経科学分野への応用例 == | ||
1997年、宮脇らによって、CFPおよびYFPを利用した、細胞内[[カルシウム]] プローブ、カメレオンが開発され<ref name=ref16 />、さらに、cAMP<ref><pubmed>10620803</pubmed></ref>, cGMP<ref | 1997年、宮脇らによって、CFPおよびYFPを利用した、細胞内[[カルシウム]] プローブ、カメレオンが開発され<ref name=ref16 />、さらに、cAMP<ref><pubmed>10620803</pubmed></ref>, cGMP<ref name=ref11140757 />、リン酸化<ref name=ref19 />を初めとした主要な細胞内シグナル伝達分子のFRETプローブが次々と作製され、分子のリアルタイムな活性および局在の活性の解明に大きく貢献した。 | ||
2000年初期に記憶の形成に必須なシグナル分子、Ca<sup>2+</sup>/カルモデュリン依存性タンパク質キナーゼII (CaMKII)の活性化を評価するためのFRETプローブ、 Camuiが開発された<ref name=ref11 />。CaMKIIはそれまでは、一旦活性化されたらその活性が自己リン酸化により持続する事で、長期に亘る記憶に必要なシナプス反応の増強を維持すると考えられてきたが、実際にはCaMKIIの活性化は一過性である事が示された<ref name=ref19295602 | 2000年初期に記憶の形成に必須なシグナル分子、Ca<sup>2+</sup>/カルモデュリン依存性タンパク質キナーゼII (CaMKII)の活性化を評価するためのFRETプローブ、 Camuiが開発された<ref name=ref11 />。CaMKIIはそれまでは、一旦活性化されたらその活性が自己リン酸化により持続する事で、長期に亘る記憶に必要なシナプス反応の増強を維持すると考えられてきたが、実際にはCaMKIIの活性化は一過性である事が示された<ref name=ref19295602 />。 | ||
一方、[[樹状突起]][[スパイン]])の形態を制御する[[アクチン]]の重合を可視化するためのFRETプローブが開発され、アクチンの重合が長期増強現象に伴い引き起こされる事、またそれが長期間維持される事が示された<ref name=ref10 />。その調節の上流にある[[Rho族低分子量Gタンパク質]][[Cdc42]]、[[RhoA]]の活性も同様に維持される事が判った <ref | 一方、[[樹状突起]][[スパイン]])の形態を制御する[[アクチン]]の重合を可視化するためのFRETプローブが開発され、アクチンの重合が長期増強現象に伴い引き起こされる事、またそれが長期間維持される事が示された<ref name=ref10 />。その調節の上流にある[[Rho族低分子量Gタンパク質]][[Cdc42]]、[[RhoA]]の活性も同様に維持される事が判った<ref name=ref19295602 /> <ref><pubmed>18556515</pubmed></ref> <ref name=ref21423166 />。 | ||
個体においてもFRET測定法が導入されている。神経回路ネットワークにおける[[シナプス]]の役割を解明する目的で、[[フェレット]]の[[大脳皮質]][[視覚野]]にCaMKIIプローブを発現し、[[片眼剥奪]]によって、神経回路ネットワークに変化を起こした時のCaMKIIの活性化の変化を観測している<ref><pubmed>22160721</pubmed></ref>。また、神経活動をモニターする膜電位プローブを開発し[[マウス]]の[[洞毛]] | 個体においてもFRET測定法が導入されている。神経回路ネットワークにおける[[シナプス]]の役割を解明する目的で、[[フェレット]]の[[大脳皮質]][[視覚野]]にCaMKIIプローブを発現し、[[片眼剥奪]]によって、神経回路ネットワークに変化を起こした時のCaMKIIの活性化の変化を観測している<ref><pubmed>22160721</pubmed></ref>。また、神経活動をモニターする膜電位プローブを開発し[[マウス]]の[[洞毛]](ヒゲ)刺激の投射先である[[体性感覚野]][[バレル皮質]]での入力特異的な神経の活性化を観察している<ref><pubmed>20622860</pubmed></ref>。 | ||
病態との関係では、神経細胞内のカルシウム濃度を測定するために、[[オレゴングリーンBAPTA]]の蛍光寿命の変化から、カルシウム濃度を測定し、[[アストロサイト]]でのカルシウム濃度が、[[アルツハイマー病]]モデル[[マウス]]と正常マウスで異なることが報告されている<ref><pubmed>19251629</pubmed></ref>。 | 病態との関係では、神経細胞内のカルシウム濃度を測定するために、[[オレゴングリーンBAPTA]]の蛍光寿命の変化から、カルシウム濃度を測定し、[[アストロサイト]]でのカルシウム濃度が、[[アルツハイマー病]]モデル[[マウス]]と正常マウスで異なることが報告されている<ref><pubmed>19251629</pubmed></ref>。 | ||
Homo-FRETも応用されている。CaMKIIは12量体を形成しているが、異方性の変化を基に、その構造中に二量体の単位が存在し、活性化に伴う二量体同士の位置関係が変化することが明らかにされている<ref><pubmed>19339497</pubmed></ref>。 | Homo-FRETも応用されている。CaMKIIは12量体を形成しているが、異方性の変化を基に、その構造中に二量体の単位が存在し、活性化に伴う二量体同士の位置関係が変化することが明らかにされている<ref><pubmed>19339497</pubmed></ref>。 | ||
== 将来展望 == | == 将来展望 == |