「Gタンパク質共役型受容体」の版間の差分

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N末端の細胞外領域が比較的短く、複数個の膜貫通領域によってリガンド結合部位が形成される。全GPCRの85%を占める古典的なGPCRであり、ロドプシン、アドレナリン受容体、ムスカリン性アセチルコリン受容体、嗅覚受容体などを含む。クラスA受容体はさらにリガンドの種類によってA1-A19のサブグループに分けられている。
N末端の細胞外領域が比較的短く、複数個の膜貫通領域によってリガンド結合部位が形成される。全GPCRの85%を占める古典的なGPCRであり、ロドプシン、アドレナリン受容体、ムスカリン性アセチルコリン受容体、嗅覚受容体などを含む。クラスA受容体はさらにリガンドの種類によってA1-A19のサブグループに分けられている。
===== * クラス B:  セクレチン様受容体 =====
===== * クラス B:  セクレチン様受容体 =====
N末端側の細胞外領域が長くリガンド結合部位を形成する。セクレチン様とAdhesion型GPCRの2つのサブグループに分けられる。セクレチン様受容体にはセクレチン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン等のペプチドホルモンに結合する受容体がある。一方で、Adhesion型GPCRは巨大なN末端部位に様々なドメイン構造を持ち細胞外マトリックスとの相互作用が示唆されているが、その多くはリガンドが不明である。
N末端側の細胞外領域が長くリガンド結合部位を形成する。セクレチン様とAdhesion型GPCRの2つのサブグループに分けられる。セクレチン様受容体にはセクレチン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン等のペプチドホルモンに結合する受容体がある。一方で、Adhesion型GPCRは巨大なN末端部位に様々なドメイン構造を持ち細胞外マトリックスとの相互作用が示唆されているが、その多くはリガンドが不明である<ref><pubmed> 23863939 </pubmed></ref>。
===== * クラス C:  代謝型グルタミン酸受容体 =====
===== * クラス C:  代謝型グルタミン酸受容体 =====
N末端側の細胞外領域が長くリガンド結合部位を形成する。 細胞外領域に結合する生理的リガンド(orthosteric ligand)に加えて、膜貫通領域部位に結合し受容体の活性状態を変化させるアロステリックリガンド(allosteric ligand)を持つ受容体も報告されている。代謝型グルタミン酸受容体の他に、GABA<sub>B</sub>受容体、カルシウム感知受容体がこのクラスに含まれる。
N末端側の細胞外領域が長くリガンド結合部位を形成する。 細胞外領域に結合する生理的リガンド(orthosteric ligand)に加えて、膜貫通領域部位に結合し受容体の活性状態を変化させるアロステリックリガンド(allosteric ligand)を持つ受容体も報告されている<ref><pubmed> 23903222 </pubmed></ref>。代謝型グルタミン酸受容体の他に、GABA<sub>B</sub>受容体、カルシウム感知受容体がこのクラスに含まれる。
===== * クラス F: Frizzled/Smoothened =====
===== * クラス F: Frizzled/Smoothened =====
Wntシグナルを活性化するFrizzledとヘッジホッグシグナルを活性化するSmoothenedが含まれる。
Wntシグナルを活性化するFrizzledとヘッジホッグシグナルを活性化するSmoothenedが含まれる。

2016年1月12日 (火) 15:30時点における版

英:Metabotropic receptor, G protein-coupled receptor (GPCR), seven transmembrane receptor、独:Metabotroper Rezeptor、仏:Récepteur métabotrope 同義語:代謝型受容体、代謝調節型受容体、Gタンパク質共役型受容体、7回膜貫通型受容体

代謝活性型受容体とは真核細胞の細胞質膜上もしくは、細胞内部の構成膜上に存在する受容体の一種。神経伝達物質と結合し細胞内に情報伝達を引き起こす受容体には、大きく分けてイオンを直接透過させるイオンチャネル型受容体と代謝活性型受容体の二つがある。ここでは代謝活性型受容体のうち三量体Gタンパク質と共役し細胞内に情報を伝達するGタンパク質共役型受容体(GPCR)に焦点を絞り説明する。

Gタンパク質共役型受容体

GPCRは別名7回膜貫通型受容体と言われるように、7つのαへリックス構造が細胞質膜を貫通し、N末端は細胞外にC末端領域は細胞内に位置する。細胞外からの様々なシグナル(神経伝達物質、ホルモン、化学物質、光等)を受容すると、GPCRは構造変化を起こし、細胞質側に結合している三量体Gタンパク質に対してグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)として働く。GDP型からGTP型へと変換されたGタンパク質は、つづいて効果器の活性を変化させることで、細胞外シグナルが細胞内へと伝達される。現在使用されている薬剤のおよそ40%がGPCRを標的としており、GPCRの機構解明に大きく貢献した Brian K. Kobilka と Robert J. Lefkowitz が2012年にノーベル化学賞を共同受賞した[1]

分類

ヒトでは800種以上のGPCRが見つかっており、その半数は感覚(嗅覚、味覚、視覚、フェロモン)に対する受容体である。残りの半数の内、3分の2はその他の様々な生理機能(神経系、内分泌系)に関与し、3分の1は生理的なリガンドが不明もしくは機能不明なオーファン受容体 (orphan receptor)である。これまでに様々な方法で分類が試みられているが、ここでは代表的なクラスの概要を説明する。

* クラス A: ロドプシン様受容体

N末端の細胞外領域が比較的短く、複数個の膜貫通領域によってリガンド結合部位が形成される。全GPCRの85%を占める古典的なGPCRであり、ロドプシン、アドレナリン受容体、ムスカリン性アセチルコリン受容体、嗅覚受容体などを含む。クラスA受容体はさらにリガンドの種類によってA1-A19のサブグループに分けられている。

* クラス B: セクレチン様受容体

N末端側の細胞外領域が長くリガンド結合部位を形成する。セクレチン様とAdhesion型GPCRの2つのサブグループに分けられる。セクレチン様受容体にはセクレチン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン等のペプチドホルモンに結合する受容体がある。一方で、Adhesion型GPCRは巨大なN末端部位に様々なドメイン構造を持ち細胞外マトリックスとの相互作用が示唆されているが、その多くはリガンドが不明である[2]

* クラス C: 代謝型グルタミン酸受容体

N末端側の細胞外領域が長くリガンド結合部位を形成する。 細胞外領域に結合する生理的リガンド(orthosteric ligand)に加えて、膜貫通領域部位に結合し受容体の活性状態を変化させるアロステリックリガンド(allosteric ligand)を持つ受容体も報告されている[3]。代謝型グルタミン酸受容体の他に、GABAB受容体、カルシウム感知受容体がこのクラスに含まれる。

* クラス F: Frizzled/Smoothened

Wntシグナルを活性化するFrizzledとヘッジホッグシグナルを活性化するSmoothenedが含まれる。

GPCRシグナル経路

Gタンパク質シグナリング

GPCRに共役しているGタンパク質はα、β、γの三つのサブユニットの複合体であり、βとγサブユニットは常に複合体で挙動する。GPCRが不活性状態であるとき、Gタンパク質は三量体Gαγβとして存在しGαはGDPと結合しており不活性型をとる。GPCRにリガンドが結合し活性化すると、GαはGDPをより高濃度に存在するGTPへ交換し、さらにGβγから解離し活性型となる。解離したGαとGβγはそれぞれの効果器にシグナルを伝える。GαはGTPアーゼ活性を持つため結合したGTPは時間経過と共にGDPに加水分解される。GDP型GαはGβγと再結合し不活性状態三量体Gαγβへと戻る。

Gαシグナリング

Gαには多くの組織に分布する4つのサブクラス(Gαs, Gαi/o, Gαq/11, Gα12/13)と、感覚器に特異的に発現するGαolf (嗅覚ニューロン)、Gαt (トランスデューシン;視細胞網膜桿体・錐体外節)、Gαgust (ガストデューシン;味細胞)がある。下記にアドレナリン受容体とヒスタミン受容体の例をあげているが、このように同じリガンドで活性化される同ファミリー受容体においても、共役するGαタンパク質の違いが細胞応答の違いを生み出す。

  • Gs ファミリー

Gαs ; アデニル酸シクラーゼを活性化させ細胞内のcAMP濃度を上昇させる。
例)β1/2/3アドレナリン受容体、ヒスタミンH2受容体

Gαolf ; アデニル酸シクラーゼを活性化させ細胞内のcAMP濃度を上昇させる(嗅覚受容体)。

  • Gi/o ファミリー

Gαi/o ; アデニル酸シクラーゼの活性を抑制する。
例)α2アドレナリン受容体、ヒスタミンH3/4受容体

Gαt; ホスホジエステラーゼを活性化しcGMPの濃度を減少させる(ロドプシン)。

Gαgust; ホスホジエステラーゼを活性化する(味覚受容体)。

  • Gq/11 ファミリー

Gαq/11 ; ホスホリパーゼCを活性化しジアシルグリセロールの産生とIP3を介したCa2+の上昇を引き起こす。
例)α1アドレナリン受容体、ヒスタミンH1受容体

  • G12/13 ファミリー

Gα12/13 ; 細胞骨格、細胞間結合などに関与する。

Gβγシグナリング

Gβγと結合したGαはGDPとの親和性が上がることから、Gβγの第一の機能はGαβγ三量体を不活性状態に保つことだと考えられる。一方で、Gαi/oと共役するGPCRではGβγのシグナル伝達が重要となる。Gi/oはGsやGqと比較して細胞内に高濃度で存在するため、Gαi/o共役型GPCRが活性化すると放出されるGβγの量は多くなる。GβγはGαi/o共役型GPCRの下流でGタンパク質活性化カリウム(GIRK)チャネルやP/Q型とN型の電位依存性カルシウムチャネル、さらにはホスホリパーゼC、PI3キナーゼなどを活性化することが知られている。

Gタンパク質非依存的シグナル経路

GPCRシグナルの終結

関連項目

参考文献

  1. Clark, R.B. (2013).
    Profile of Brian K. Kobilka and Robert J. Lefkowitz, 2012 Nobel laureates in chemistry. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 110(14), 5274-5. [PubMed:23412332] [PMC] [WorldCat] [DOI]
  2. Hollenstein, K., Kean, J., Bortolato, A., Cheng, R.K., Doré, A.S., Jazayeri, A., ..., & Marshall, F.H. (2013).
    Structure of class B GPCR corticotropin-releasing factor receptor 1. Nature, 499(7459), 438-43. [PubMed:23863939] [WorldCat] [DOI]
  3. Wootten, D., Christopoulos, A., & Sexton, P.M. (2013).
    Emerging paradigms in GPCR allostery: implications for drug discovery. Nature reviews. Drug discovery, 12(8), 630-44. [PubMed:23903222] [WorldCat] [DOI]