「Gタンパク質共役型受容体」の版間の差分

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===== * クラス F: Frizzled/Smoothened =====
===== * クラス F: Frizzled/Smoothened =====
Wntシグナルを活性化するFrizzledとヘッジホッグシグナルを活性化するSmoothenedが含まれる。
Wntシグナルを活性化するFrizzledとヘッジホッグシグナルを活性化するSmoothenedが含まれる。
=== 構造と翻訳後修飾 ===
=== 翻訳後修飾によるGPCRの調節 ===
GPCRは細胞質膜を貫通する7つのαへリックス構造をとり、N末端側が細胞外にC末端側が細胞内に存在し、3つの細胞外ループ(Extracellular loop; ECL1/2/3) と3つの細胞内ループ(Intracellular loop; ICL1/2/3)を持つ。数多くの翻訳後修飾によるGPCRの機能調節が報告されており、以下に代表的なものをあげる。ただし、800種以上あるGPCRの中には例外も存在する。
GPCRは細胞質膜を貫通する7つのαへリックス構造をもち、N末端側が細胞外にC末端側が細胞内に存在し、3つの細胞外ループ(Extracellular loop; ECL1/2/3) と3つの細胞内ループ(Intracellular loop; ICL1/2/3)を持つ。数多くの翻訳後修飾によるGPCRの機能調節が報告されており、以下に代表的なものをあげる。ただし、800種以上あるGPCRの中には例外も存在する。
===== * 糖鎖修飾 =====
===== * 糖鎖修飾 =====
多くのGPCRのN末端領域と細胞外ループは糖鎖修飾を受ける。最もよく知られているのがN型グリコシル化で受容体タンパク質の合成過程において粗面小胞体でオリゴ糖トランスフェラーゼによって付加される。N型グリコシル化のコンセンサス配列はAsn-X-Ser/Thr (XはPro以外のアミノ酸)であり、アスパラギン(Asn)に修飾を受ける<ref><pubmed> 6847620 </pubmed></ref>。多くのクラスAのGPCRでは1~複数個の、クラスB及びクラスCのGPCRではそれより多くの糖鎖修飾付加が報告されており<ref><pubmed> 10465525 </pubmed></ref><ref><pubmed> 25981296 </pubmed></ref>、細胞質膜上への発現や輸送、リガンドとの結合、Gタンパク質との結合<ref><pubmed> 26100877 </pubmed></ref>等への影響が報告されている。
多くのGPCRのN末端領域と細胞外ループは糖鎖修飾を受ける。最もよく知られているのがN型グリコシル化で受容体タンパク質の合成過程において粗面小胞体でオリゴ糖トランスフェラーゼによって付加される。N型グリコシル化のコンセンサス配列はAsn-X-Ser/Thr (XはPro以外のアミノ酸)であり、アスパラギン(Asn)に修飾を受ける<ref><pubmed> 6847620 </pubmed></ref>。多くのクラスAのGPCRでは1~複数個の、クラスB及びクラスCのGPCRではそれより多くの糖鎖修飾付加が報告されており<ref><pubmed> 10465525 </pubmed></ref><ref><pubmed> 25981296 </pubmed></ref>、細胞質膜上への発現や輸送、リガンドとの結合、Gタンパク質との結合<ref><pubmed> 26100877 </pubmed></ref>等への影響が報告されている。
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クラスAのGPCRではN末端細胞外領域と細胞外ループに、クラスBやクラスCでは細胞外領域のドメイン内部において2つのシステイン残基間の共有結合(S-S結合)が複数存在する。ジスルフィド結合は小胞体でタンパク質ジスルフィドイソメラーゼを介して行われ、受容体の構造の安定化、細胞外ドメインの形成、リガンドの結合等に関与する<ref><pubmed> 25981296 </pubmed></ref>。
クラスAのGPCRではN末端細胞外領域と細胞外ループに、クラスBやクラスCでは細胞外領域のドメイン内部において2つのシステイン残基間の共有結合(S-S結合)が複数存在する。ジスルフィド結合は小胞体でタンパク質ジスルフィドイソメラーゼを介して行われ、受容体の構造の安定化、細胞外ドメインの形成、リガンドの結合等に関与する<ref><pubmed> 25981296 </pubmed></ref>。
===== * パルミトイル化 =====
===== * パルミトイル化 =====
多くのGPCRでは7番目の膜貫通領域直近のC末端側領域に存在する保存されたシステイン残基がS-ルミトイル化修飾を受ける。S-パルミトイル化修飾とは飽和脂肪酸であるパルミチン酸( C<sub>16</sub>H<sub>32</sub>O<sub>2</sub>)がシステイン残基のチオール基にチオエステル結合で付加される可逆的な修飾で細胞質側に存在するDHHCタンパク質ファミリーを介する<ref><pubmed> 20168314 </pubmed></ref>。多くはC末端領域に1~3個のパルミトイル化修飾が見つかっておりパルミトイル化されたC末端領域は新たな細胞内ループを形成する。パルミトイル化修飾によるGPCRの機能調節は多岐に渡り各受容体によって異なるが、受容体の成熟、細胞質膜へ発現や輸送、Gタンパク質との結合への影響、脱感作やインターナリゼーションに関与することが報告されている<ref><pubmed> 19131499 </pubmed></ref>。
多くのGPCRでは7番目の膜貫通領域直近のC末端側領域に存在する保存されたシステイン残基がS-パルミトイル化修飾を受ける。S-パルミトイル化修飾とは飽和脂肪酸であるパルミチン酸( C<sub>16</sub>H<sub>32</sub>O<sub>2</sub>)がシステイン残基のチオール基にチオエステル結合で付加される可逆的な修飾であり、細胞質側に存在するDHHCタンパク質ファミリーを介する<ref><pubmed> 20168314 </pubmed></ref>。多くはC末端領域に1~3個のパルミトイル化修飾が見つかっておりパルミトイル化されたC末端領域は新たな細胞内ループを形成する。パルミトイル化修飾によるGPCRの機能調節は多岐に渡り、各受容体によって異なるが、受容体の成熟、細胞質膜へ発現や輸送、Gタンパク質との結合への影響、脱感作やインターナリゼーションに関与することが報告されている<ref><pubmed> 19131499 </pubmed></ref>。
===== * リン酸化 =====
===== * リン酸化 =====
多くのGPCRは細胞内ループと細胞質側に位置するC末端側領域にリン酸化修飾を受けるセリン、トレオニン残基を持つ。リガンドと結合した受容体はGタンパク質または、他の結合タンパク質を介して下流にシグナルを伝達し、活性化したタンパク質リン酸化酵素(タンパク質リン酸化酵素A;PKA、タンパク質リン酸化酵素C;PKC、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ;GRK等)によりリン酸化修飾される。一般的にリン酸化された受容体は構造変化、もしくは、βアレスチンと結合することでGタンパク質との結合を阻害されGタンパク質を介したシグナルは収束し脱感作する。また、βアレスチンと結合した受容体はクラスリンと結合しエンドサイト―シスによって細胞質膜上より取り除かれる。一つの受容体は、通常複数のリン酸化酵素によって複数の部位にリン酸化修飾を受け、これはリガンドの種類や活性化時間、組織・細胞種によっても大きく異なる。リン酸化修飾を介した受容体の機能調節は多岐に渡り、一か所のリン酸化修飾ではその調節機能の説明が難しく、リン酸化修飾パターンを「バーコード」として認識するモデルが提唱されている<ref><pubmed> 21868357 </pubmed></ref><ref><pubmed> 21177246 </pubmed></ref>。
多くのGPCRは細胞内ループと細胞質側に位置するC末端側領域にリン酸化修飾を受けるセリン、トレオニン残基を持つ。リガンドと結合した受容体はGタンパク質または、他の結合タンパク質を介して下流にシグナルを伝達し、活性化したタンパク質リン酸化酵素(タンパク質リン酸化酵素A;PKA、タンパク質リン酸化酵素C;PKC、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ;GRK等)によりリン酸化修飾される。一般的にリン酸化された受容体は構造変化、もしくは、βアレスチンと結合することでGタンパク質との結合を阻害されGタンパク質を介したシグナルは収束し脱感作する。また、βアレスチンと結合した受容体はクラスリンと結合しエンドサイト―シスによって細胞質膜上より取り除かれる。一つの受容体は、通常複数のリン酸化酵素によって複数の部位にリン酸化修飾を受け、これはリガンドの種類や活性化時間、組織・細胞種によっても大きく異なる。リン酸化修飾を介した受容体の機能調節は多岐に渡り、一か所のリン酸化修飾ではその調節機能の説明が難しく、リン酸化修飾パターンを「バーコード」として認識するモデルが提唱されている<ref><pubmed> 21868357 </pubmed></ref><ref><pubmed> 21177246 </pubmed></ref>。
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G<sub>βγ</sub>と結合したG<sub>α</sub>はGDPとの親和性が上がることから、G<sub>βγ</sub>の第一の機能はG<sub>αβγ</sub>三量体を不活性状態に保つことだと考えられる。一方で、G<sub>αi/o</sub>と共役するGPCRではG<sub>βγ</sub>のシグナル伝達が重要となる。G<sub>i/o</sub>はG<sub>s</sub>やG<sub>q</sub>と比較して細胞内に高濃度で存在するため、G<sub>αi/o</sub>共役型GPCRが活性化すると放出されるG<sub>βγ</sub>の量は多くなる。G<sub>βγ</sub>はG<sub>αi/o</sub>共役型GPCRの下流でGタンパク質活性化カリウム(GIRK)チャネルやP/Q型とN型の電位依存性カルシウムチャネル、さらにはホスホリパーゼC、PI<sub>3</sub>キナーゼなどを活性化することが知られている。
G<sub>βγ</sub>と結合したG<sub>α</sub>はGDPとの親和性が上がることから、G<sub>βγ</sub>の第一の機能はG<sub>αβγ</sub>三量体を不活性状態に保つことだと考えられる。一方で、G<sub>αi/o</sub>と共役するGPCRではG<sub>βγ</sub>のシグナル伝達が重要となる。G<sub>i/o</sub>はG<sub>s</sub>やG<sub>q</sub>と比較して細胞内に高濃度で存在するため、G<sub>αi/o</sub>共役型GPCRが活性化すると放出されるG<sub>βγ</sub>の量は多くなる。G<sub>βγ</sub>はG<sub>αi/o</sub>共役型GPCRの下流でGタンパク質活性化カリウム(GIRK)チャネルやP/Q型とN型の電位依存性カルシウムチャネル、さらにはホスホリパーゼC、PI<sub>3</sub>キナーゼなどを活性化することが知られている。
==== Gタンパク質非依存的シグナリング ====
==== Gタンパク質非依存的シグナリング ====
リガンド刺激により活性化し細胞内領域をリン酸化された受容体は、βアレスチン1/2と結合することで1)Gタンパク質シグナルが収束し、2)エンドサイト―シスにより細胞外リガンドのアクセスを阻害する。一般的にはこの状態を脱感作というが、細胞内小胞に乗った受容体はβアレスチンを介してGタンパク質非依存的に下流にシグナルを伝達する。例えば、β<sub>2</sub>アドレナリン受容体、アンジオテンシン1a受容体、P<sub>2</sub>Y<sub>2</sub>受容体、CB<sub>1</sub>受容体ではβアレスチンを介してERK1/2 (Extracellullar signal-regulated kinase)の経路を活性化する<ref><pubmed> 26471844 </pubmed></ref>。
リガンド刺激により活性化し細胞内領域をリン酸化された受容体は、βアレスチン1/2と結合することで、1)Gタンパク質シグナルが収束し、2)エンドサイト―シスにより細胞外リガンドのアクセスを阻害する。一般的にはこの状態を脱感作というが、細胞内小胞に乗った受容体はβアレスチンを介してGタンパク質非依存的に下流にシグナルを伝達する。例えば、β<sub>2</sub>アドレナリン受容体、アンジオテンシン1a受容体、P<sub>2</sub>Y<sub>2</sub>受容体、CB<sub>1</sub>受容体ではβアレスチンを介してERK1/2 (Extracellullar signal-regulated kinase)の経路を活性化する<ref><pubmed> 26471844 </pubmed></ref>。




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