「L1」の版間の差分

2,161 バイト追加 、 2012年3月5日 (月)
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
12行目: 12行目:
== L1の機能 ==
== L1の機能 ==
 ホモフィリック結合とヘテロフィリック結合により細胞間接着を媒介する。またL1の接着性および細胞骨格との連結は時空間的に制御されるため、L1は単なる静的な細胞間接着だけでなく、動的な細胞間相互作用(細胞移動など)にも関与する。神経系での具体的なL1の機能として、神経細胞移動の促進、軸索伸長の促進、軸索束形成の促進、ミエリン形成の促進、シナプス可塑性の制御などが報告されている。また、L1とニューロピリン-1のヘテロ2量体はセマフォリン3A受容体として機能し、軸索の反発性ガイダンスを媒介する。
 ホモフィリック結合とヘテロフィリック結合により細胞間接着を媒介する。またL1の接着性および細胞骨格との連結は時空間的に制御されるため、L1は単なる静的な細胞間接着だけでなく、動的な細胞間相互作用(細胞移動など)にも関与する。神経系での具体的なL1の機能として、神経細胞移動の促進、軸索伸長の促進、軸索束形成の促進、ミエリン形成の促進、シナプス可塑性の制御などが報告されている。また、L1とニューロピリン-1のヘテロ2量体はセマフォリン3A受容体として機能し、軸索の反発性ガイダンスを媒介する。
 L1の機能は、細胞内領域のリン酸化/脱リン酸化、エンドサイト−シス/エキソサイトーシス、細胞骨格との連結、プロテオリシスなどによって制御されている。27番目のエクソンがコードするアミノ酸配列RSLEと隣接するチロシン残基は、クラスリンアダプターAP2の認識配列YRSLを構成する。このチロシンがリン酸化された状態ではAP2に認識されないが、チロシンが脱リン酸化されたL1はAP2に認識されてクラスリン依存性エンドサイト−シス経路により細胞内へ取り込まれる。取り込まれたL1は細胞内小胞輸送を経てエキソサイトーシスされる。L1のエンドサイト−シスとエキソサイトーシスは、細胞接着を空間的に制御して細胞移動に重要な役割を担う。L1は、アンキリンやERMなどの分子を介してアクチン骨格と結合し、神経突起が伸長するための駆動力を伝達する。蛋白質分解酵素ADAM(a disintegrin and metalloprotease)はL1細胞外領域を細胞膜近傍で切断し、遊離したL1細胞外領域は隣接細胞あるいは同一細胞のインテグリンに結合して細胞移動を促進する。また、ADAMによるプロテオリシスに続き、γ-セクレターゼが膜貫通領域を切断し、遊離したL1細胞内領域は核内に移行して遺伝子の転写を制御する。
== L1と疾患 ==
ヒトL1遺伝子はXq28に存在する。L1の遺伝子変異は、伴性劣性遺伝性水頭症とMASA症候群(精神発達遅滞、失語症、痙性歩行、母指の内転屈曲)の原因となることが報告されているが、これらの疾患は連続したスペクトラムであり、L1症候群と総称される。病理学的には、脳梁低形成、錐体路低形成、小脳虫部低形成を示し、特発性水頭症と比較して脳室腹腔シャント術後の予後は不良である。L1ノックアウトマウスも類似の神経発生異常を示し、L1症候群の発症機序の研究に利用されている。