「NCAM」の版間の差分

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==構造==
==構造==
[[image:ncam1.jpg|thumb|350px|'''図1.NCAMの構造とNCAMに結合する分子'''<br>細胞外領域には免疫グロブリンC2サブセットが5つ、フィブロネクチンタイプIII様領域(ただしRGD配列はない)が2つある。分子量140、180 kDaのアイソフォームでは細胎内領域があるが、120 kDa分子のC末端は細胞膜表面のグリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)と結合している。ホモフィリックな結合には3番目のC2領域が関与している。4番目のC2領域とフィブロネクチンタイプIII様領域には、それぞれVASE(varjable alternatively spliced exon)、MSD(muscle specific domain)などの配列が挿入される。発連中の組織では、5番目のC2領域が多量のポリシアル酸(PSA)によって修飾されている。140/180 kDa分子の細胎内領域は、スペクトリンと直接結合している。また、チューブリンとは、キネシン1、MAP1Aなどを介して結合している。]]
[[image:ncam1.jpg|thumb|300px|'''図1.NCAMの構造とNCAMに結合する分子'''<br>細胞外領域には免疫グロブリンC2サブセットが5つ、フィブロネクチンタイプIII様領域(ただしRGD配列はない)が2つある。分子量140、180 kDaのアイソフォームでは細胎内領域があるが、120 kDa分子のC末端は細胞膜表面のグリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)と結合している。ホモフィリックな結合には3番目のC2領域が関与している。4番目のC2領域とフィブロネクチンタイプIII様領域には、それぞれVASE(varjable alternatively spliced exon)、MSD(muscle specific domain)などの配列が挿入される。発連中の組織では、5番目のC2領域が多量のポリシアル酸(PSA)によって修飾されている。140/180 kDa分子の細胎内領域は、スペクトリンと直接結合している。また、チューブリンとは、キネシン1、MAP1Aなどを介して結合している。]]


 NCAMの細胞外領域は、5つの免疫グロブリンC2サブセットと2つの[[フィブロネクチン]]タイプIII様領域(RGD配列はない)からなっている(図1)<ref name=ref20><pubmed>1623208</pubmed></ref>。
 NCAMの細胞外領域は、5つの免疫グロブリンC2サブセットと2つの[[フィブロネクチン]]タイプIII様領域(RGD配列はない)からなっている(図1)<ref name=ref20><pubmed>1623208</pubmed></ref>。
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==サブファミリー==
==サブファミリー==
[[image:ncam2.jpg|thumb|350px|'''図2.NCAM遺伝子の構造(A)、NCAMのRNAプロセシング経路(B)、NCAMの分子構造とエクソンとの関係(C)'''<br>(A)エクソン1から19は番号で上に示してある。挿入配列VASE、MSD(1a・1b・1c)、Sec、AAGは下に記号で示した.(B)エクソンを結ぶ山形の線はスプライシングの様式を示している。膜貫通領域は黒色で,翻訳されない部分は斜線で示してある。Secを使う場合(分泌型)は、それより下流は翻訳されない。(C)NCAMの3つのアイソフォームはすべてエクソン1から14を使う.このほかに120 kDa分子では、エクソン15、140kDa分子ではエクソン16十17十19、180 kDa分子ではエクソン16十17十18十19を使う。筋組織では,筋特異的配列領域(MSD1,37個のアミノ酸残基)がエクソン12と13の間に挿入される(<ref name=ref20><pubmed>1623208</pubmed></ref>を改変)。]]
[[image:ncam2.jpg|thumb|300px|'''図2.NCAM遺伝子の構造(A)、NCAMのRNAプロセシング経路(B)、NCAMの分子構造とエクソンとの関係(C)'''<br>(A)エクソン1から19は番号で上に示してある。挿入配列VASE、MSD(1a・1b・1c)、Sec、AAGは下に記号で示した.(B)エクソンを結ぶ山形の線はスプライシングの様式を示している。膜貫通領域は黒色で,翻訳されない部分は斜線で示してある。Secを使う場合(分泌型)は、それより下流は翻訳されない。(C)NCAMの3つのアイソフォームはすべてエクソン1から14を使う.このほかに120 kDa分子では、エクソン15、140kDa分子ではエクソン16十17十19、180 kDa分子ではエクソン16十17十18十19を使う。筋組織では,筋特異的配列領域(MSD1,37個のアミノ酸残基)がエクソン12と13の間に挿入される(<ref name=ref20><pubmed>1623208</pubmed></ref>を改変)。]]


 主に3つのサブタイプがあり、120kD分子はGPIアンカー型、140/180kD分子は膜貫通型である。180kD分子は[[細胞骨格]]と相互作用を持つ長い細胞内領域を持っている。各アイソフォームは、[[alternative splicing]]によって生成される<ref name=ref15 /> <ref name=ref44><pubmed>3293093</pubmed></ref>(図2)。
 主に3つのサブタイプがあり、120kD分子はGPIアンカー型、140/180kD分子は膜貫通型である。180kD分子は[[細胞骨格]]と相互作用を持つ長い細胞内領域を持っている。各アイソフォームは、[[alternative splicing]]によって生成される<ref name=ref15 /> <ref name=ref44><pubmed>3293093</pubmed></ref>(図2)。
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==発現==
==発現==
[[image:ncam3.jpg|thumb|350px|'''図3.成体ラット海馬におけるNCAM(A)と長鎖の糖鎖ポリシアル酸によって修飾されたPSA-NCAM(B)の発現の比較'''<br>(NCAMは海馬全体に発現している。一方、PSA-NCAMは顆粒細胞層(GCL)内側の新生ニューロンとその軸索(mf, 苔状線維)に発現している。PCL, 錐体細胞層。]]
[[image:ncam3.jpg|thumb|300px|'''図3.成体ラット海馬におけるNCAM(A)と長鎖の糖鎖ポリシアル酸によって修飾されたPSA-NCAM(B)の発現の比較'''<br>(NCAMは海馬全体に発現している。一方、PSA-NCAMは顆粒細胞層(GCL)内側の新生ニューロンとその軸索(mf, 苔状線維)に発現している。PCL, 錐体細胞層。]]


 NCAMは以下のようなさまざまな組織に広く分布している(*は発生期に発現し、成体組織では消失する組織)。:神経組織([[神経細胞]]・[[グリア細胞]]・[[シュワン細胞]]・[[脳脊髄液]])、[[筋組織]]([[骨格筋]]*・[[心筋]]・[[平滑筋]]*)(神経・筋組織は後述)、網膜<ref name=ref6><pubmed>2243247</pubmed></ref>、[[コルチ器]]*<ref name=ref52><pubmed>12640664</pubmed></ref>、[[嗅上皮]]<ref name=ref30><pubmed>2776969</pubmed></ref> <ref name=ref32><pubmed>    1664924</pubmed></ref>、[[味蕾]]<ref name=ref53><pubmed>7814663</pubmed></ref>、[[wikipedia:ja:歯|歯]]*<ref name=ref35><pubmed>9045989</pubmed></ref>、[[wikipedia:ja:表皮|表皮]]、[[パチニ小体]]<ref name=ref34><pubmed>2482863</pubmed></ref>、[[wikipedia:ja:中腎管|中腎管]]*<ref name=ref25><pubmed>2088729</pubmed></ref>、[[下垂体]]<ref name=ref26><pubmed>12114645</pubmed></ref>、[[傍濾細胞]]*([[カルシトニン]]産生細胞)<ref name=ref33><pubmed>8896706</pubmed></ref>、[[膵臓]]([[ラングルハンス島]])<ref name=ref8><pubmed>7962186</pubmed></ref>、[[副腎]]([[wikipedia:ja:皮質|皮質]]・[[髄質]])<ref name=ref26 />、[[wikipedia:ja:卵巣|卵巣]]<ref name=ref26 />、[[wikipedia:ja:精巣|精巣]]<ref name=ref27><pubmed>9639054</pubmed></ref>、[[wikipedia:ja:ナチュラルキラー細胞|ナチュラルキラー(NK)細胞]]<ref name=ref38><pubmed>19278419</pubmed></ref>
 NCAMは以下のようなさまざまな組織に広く分布している(*は発生期に発現し、成体組織では消失する組織)。:神経組織([[神経細胞]]・[[グリア細胞]]・[[シュワン細胞]]・[[脳脊髄液]])、[[筋組織]]([[骨格筋]]*・[[心筋]]・[[平滑筋]]*)(神経・筋組織は後述)、網膜<ref name=ref6><pubmed>2243247</pubmed></ref>、[[コルチ器]]*<ref name=ref52><pubmed>12640664</pubmed></ref>、[[嗅上皮]]<ref name=ref30><pubmed>2776969</pubmed></ref> <ref name=ref32><pubmed>    1664924</pubmed></ref>、[[味蕾]]<ref name=ref53><pubmed>7814663</pubmed></ref>、[[wikipedia:ja:歯|歯]]*<ref name=ref35><pubmed>9045989</pubmed></ref>、[[wikipedia:ja:表皮|表皮]]、[[パチニ小体]]<ref name=ref34><pubmed>2482863</pubmed></ref>、[[wikipedia:ja:中腎管|中腎管]]*<ref name=ref25><pubmed>2088729</pubmed></ref>、[[下垂体]]<ref name=ref26><pubmed>12114645</pubmed></ref>、[[傍濾細胞]]*([[カルシトニン]]産生細胞)<ref name=ref33><pubmed>8896706</pubmed></ref>、[[膵臓]]([[ラングルハンス島]])<ref name=ref8><pubmed>7962186</pubmed></ref>、[[副腎]]([[wikipedia:ja:皮質|皮質]]・[[髄質]])<ref name=ref26 />、[[wikipedia:ja:卵巣|卵巣]]<ref name=ref26 />、[[wikipedia:ja:精巣|精巣]]<ref name=ref27><pubmed>9639054</pubmed></ref>、[[wikipedia:ja:ナチュラルキラー細胞|ナチュラルキラー(NK)細胞]]<ref name=ref38><pubmed>19278419</pubmed></ref>