15,998
回編集
細 (→疾患との関わり) |
細編集の要約なし |
||
(同じ利用者による、間の1版が非表示) | |||
30行目: | 30行目: | ||
'''⑤''' リン酸化UblがRING0に結合し、安定的な活性化構造となる。RING1に結合したユビキチン結合酵素(E2)と協働して、基質(S)にユビキチンを転移する。<br>]] | '''⑤''' リン酸化UblがRING0に結合し、安定的な活性化構造となる。RING1に結合したユビキチン結合酵素(E2)と協働して、基質(S)にユビキチンを転移する。<br>]] | ||
==構造== | ==構造== | ||
ヒトParkinタンパク質は465 アミノ酸残基からなり、N末端のユビキチン様ドメイン(Ubl)、C末端に2つの[[RING fingerモチーフ]](RING1, RING2)とIn-Between-RINGs (IBR)という構造をもつ('''図2''')。その後、UblとRNIG1-IBR-RING2の間に、RING様構造が見つかり、[[RING0]](またはUPD; unique parkin domain)と呼ばれる<ref name=Hristova2009><pubmed>19339245</pubmed></ref> ('''図2''')。Parkinは、RING-IBR-RINGドメインを有するRBR型[[ユビキチンリガーゼ]]に分類され、同様の構造をもヒトユビキチンリガーゼに、[[HOIL-1]], [[ | ヒトParkinタンパク質は465 アミノ酸残基からなり、N末端のユビキチン様ドメイン(Ubl)、C末端に2つの[[RING fingerモチーフ]](RING1, RING2)とIn-Between-RINGs (IBR)という構造をもつ('''図2''')。その後、UblとRNIG1-IBR-RING2の間に、RING様構造が見つかり、[[RING0]](またはUPD; unique parkin domain)と呼ばれる<ref name=Hristova2009><pubmed>19339245</pubmed></ref> ('''図2''')。Parkinは、RING-IBR-RINGドメインを有するRBR型[[ユビキチンリガーゼ]]に分類され、同様の構造をもヒトユビキチンリガーゼに、[[HOIL-1]], [[HHARI]], [[DORFIN]]がある。タンパク質の全体構造は2013-2015年に解かれ、コンパクトに折り畳まれた状態であることが明らかとなった<ref name=Trempe2013><pubmed>23661642</pubmed></ref><ref name=Wauer2015><pubmed>26161729</pubmed></ref>('''図3''')。 | ||
==活性化機構== | ==活性化機構== | ||
82行目: | 82行目: | ||
ショウジョウバエでは、ParkinやPINK1変異でミトコンドリア呼吸鎖複合体サブユニット群の半減期が長くなっており、マイトファジー以外の選択的なミトコンドリアタンパク質分解機構も提唱されている<ref name=Vincow2013><pubmed>23509287</pubmed></ref><ref name=McLelland2016><pubmed>27458136</pubmed></ref> 。 | ショウジョウバエでは、ParkinやPINK1変異でミトコンドリア呼吸鎖複合体サブユニット群の半減期が長くなっており、マイトファジー以外の選択的なミトコンドリアタンパク質分解機構も提唱されている<ref name=Vincow2013><pubmed>23509287</pubmed></ref><ref name=McLelland2016><pubmed>27458136</pubmed></ref> 。 | ||
常染色体性潜性若年性パーキンソニズム脳[[アストロサイト]]の形態的異常や患者[[iPS細胞]]で作製した中脳[[オルガノイド]]でのアストロサイトの分化能低下<ref name=Kano2020> | 常染色体性潜性若年性パーキンソニズム脳[[アストロサイト]]の形態的異常や患者[[iPS細胞]]で作製した中脳[[オルガノイド]]でのアストロサイトの分化能低下<ref name=Kano2020><pubmed>33298969</pubmed></ref> 、Parkinノックアウトマウスにおいてアストロサイトのミトコンドリア損傷の報告<ref name=Schmidt2011><pubmed>21212098</pubmed></ref> がある。 | ||
免疫・炎症へのParkinの関与が示唆されている。PINK1とParkinは、ミトコンドリアの[[抗原提示経路]]に関わる分子[[Sorting nexin-9]]を分解し、[[T細胞]]への抗原提示を阻害する。Parkinのこの機能が過剰な免疫反応を抑制している可能性が報告された<ref name=Matheoud2016><pubmed>27345367</pubmed></ref> . PINK1, Parkinノックアウトマウスでは、ミトコンドリアへの強い負荷(激しい運動やミトコンドリアDNAへの構成的な変異の蓄積)により、[[STING経路]]を介した炎症性[[サイトカイン]]の上昇がみられる <ref name=Sliter2018><pubmed>30135585</pubmed></ref> 。STINGは血清中に遊離した損傷ミトコンドリアのDNAを認識し、自然免疫を活性化する。ミトコンドリアストレスで生した損傷ミトコンドリアのPINK1-Parkin経路を介したマイトファジーでの除去が、炎症の沈静化に寄与していることが示唆されている。 | 免疫・炎症へのParkinの関与が示唆されている。PINK1とParkinは、ミトコンドリアの[[抗原提示経路]]に関わる分子[[Sorting nexin-9]]を分解し、[[T細胞]]への抗原提示を阻害する。Parkinのこの機能が過剰な免疫反応を抑制している可能性が報告された<ref name=Matheoud2016><pubmed>27345367</pubmed></ref> . PINK1, Parkinノックアウトマウスでは、ミトコンドリアへの強い負荷(激しい運動やミトコンドリアDNAへの構成的な変異の蓄積)により、[[STING経路]]を介した炎症性[[サイトカイン]]の上昇がみられる <ref name=Sliter2018><pubmed>30135585</pubmed></ref> 。STINGは血清中に遊離した損傷ミトコンドリアのDNAを認識し、自然免疫を活性化する。ミトコンドリアストレスで生した損傷ミトコンドリアのPINK1-Parkin経路を介したマイトファジーでの除去が、炎症の沈静化に寄与していることが示唆されている。 |